.hack昔話 - 狐憑き - 2007/03/17(Sat) 21:17:13 [No.381] |
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洞窟は、松明を掲げてもなお暗く、どこまでも深く続いているかのようでした。 こういう未開の地にはどんな危険があるか分かったものではありません。しかし、ハセヲさんは「とりあえず獣神像行こう」的なノリでずんずん進んでいきます。 洞窟の中はヒンヤリとしていてなかなか気持ちがいいのですが、潮風を溜め込んでるせいか、どこかジメジメしていて不快でした。 ハセ「ったく、何でこんなことに…」 暗さと重さで陰鬱になってきます。死の恐怖時代は一人でいるのが普通だったのですが、あれだけたくさんいた仲間と離れてしまうと、心細さはもうピークです。付き合う前とふられた後の差ですね。 見知らぬ土地の暗くて狭い洞窟の中、ごつごつした床や寒さに体力を奪われ、ハセヲさんの精神力はゆっくりと、限界へと近づいていました。 堪えかねて声さえあげます。 ハセ「おーい、誰もいないのかーー!!? いたら返事してくれーー!!!」 ノーエコー。 ハセヲさんの悲痛な叫び声は、壁に跳ね返りながら深い闇の奥へと吸い込まれていきました。 同時に、ハセヲさんは心から何かが抜けていくのを感じ、体中がずしっと重くなるのを感じます。足には力が入らず、ハセヲさんは壁にもたれてそのままその場に座り込んでしまいました。 ハセ「ちくしょう…何だよこの重い展開……どこがパロディーだってんだよ………」 心なしか、そんなことをつぶやいています。このお話のハセヲさんは基本的にヘタヲなのです。 もういいや。 そう思い、眠気にまぶたを任せたその時――― ―――ふと、落ちてくる水滴の音に混じり、かすかに音が聞こえたような気がしました。 最初、布を擦り合わせるかのようにかすかだったその音は、だんだんとはっきりとした靴の音へと変わり、こちらのほうへと近づいてきます。かつん、かつんと小さな音は、洞窟中を跳ね返り、大きく鋭い響きとなってこちらの耳に伝わります。 このときハセヲさんの心を支配したのは、仲間かもしれないと言う期待感ではありませんでした。 足元さえ不確かな暗闇の中から、得体の知れないものが徐々に近づいてくるという、えもいえないような恐怖感です。 うろ覚えですが、洞窟などで遭難したとき普通の人はだいたい3日ぐらいで発狂してしまうそうです。 それほど苦しい状況の中これだけの恐怖を感じたせいで、ハセヲさんの限界は一気に早まってしまったようです。 ハセ「あ…あぁ……っ!!」 恐怖に胸がザワリとします。 それを皮切りに、限界寸前だったハセヲさんはついに限界を迎えました。 ハセ「あ、ぅああああああああああああぁぁっッ!!!」 スケィスが暴走したときのような絶叫でハセヲさんは立ち上がり、足音の反対側へと夢中で走り出しました。疲れで動けなかったことなど忘れ、もつれる足で暗闇の中を懸命に走ります。 暗い中、途中壁にぶつかり転びながら、もうどれくらい走ったころでしょうか? あるいはそんなに時間なんて経っていなかったのかもしれません。頭の中は真っ白です。 ハセヲさんは、ついに足音に追いつかれてしまいました。 肩をがっとつかまれて、振りほどこうと必死にもがきますが… ――を………セヲ、ハセヲ!!! エン「ハセヲ、落ち着いて!! 大丈夫……!!?」 ハセ「ああぁっ……って、え、エンデュランスか……?」 呼び止められて正気に返ってみれば、仲間の一人がそこにいました。 エン「さっき洞窟を通りかかったときに、ハセヲの声が聞こえた気がしたから……。驚かせてごめんね……怪我はない…?」 ハセ「あぁ、は、はははは……。だ、大丈夫だって! はは…」 乾いた笑いでごまかしますが、自分が無意識のうち叫んでいたことに、今になって気が付きます。 今だに心臓バクバクな自分が恥ずかしくて、顔は見事にレッド&ホット。穴があったら入りてぇ!! あ、今いるの洞窟だっけ。 ハセ「と、とにかくお前だけでも見つかってよかった! 一人よりずっと心強いもんな!!!」 やっと孤独から開放されました。 仲間の大切さをわかっている彼は、仲間が見つかったことに心から安堵し喜びます。 が――― エン「ハセヲ…」 ハセ「ん、なんだ?」 エン「二人きり……だね」 ぞくり。 ハセヲさんの背中を冷たい汗が、目にも留まらぬスピードで駆け抜けます。 薔薇のよく似合うエン様は、意味ありげな熱い視線をハセヲに向けながら頬を朱に染めています。ハセヲさんはその場に硬直しました。 暗い中。このひとと。二人きり。 よく考えたら一人ぼっちのときより、今のほうがよっぽどピンチかもなハセヲさんなのでした。 ヅツク。 [No.912] 2007/08/31(Fri) 18:03:59 |