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――Δ悠久の古都 マク・アヌ 中央広場―― 大きな噴水がある広場の端っこの、小さなギルドショップ。 そこは『The World』における大きな観光案内所の、小さな支部。 ほら、今日もお客さんがやってきた。 「あ、あの〜。レベル上げに効率の良いエリア、ありますか? 30レベルくらいの……」 「はい! そですねぇ……『Δ未だ見ぬ 対岸の 好奇心』とか、良いと思いますよ?」 無邪気な笑顔を浮かべて客に応対する少女。 この子こそが、ギルド《VIVID*Tourist》ショップ マク・アヌ支店《夕園(ユウゾノ)》の元気ハツラツ 看板娘『萌黄(モエギ)』 「あ、ありがとござます!」 「いってらっしゃ〜い^^」 素っ気ない会話のように聞こえるが、これが、このショップでの仕事なのだ。もちろん、アイテムも 販売している。武器やら防具、装備品。それらは全て、エリアのミッションクリアでしか手に入らないもの。 「ねぇ! レアな刀剣が手に入るエリア、なぁい?」 萌黄が息つく暇もなく、またお客がやってきた。今度はこれまた可愛い男の子。 「いらっしゃいませ〜。んぅ……レアな刀剣かぁ(- -;」 困惑していると、店の奥から声がした。 「……『Δ黄泉還る 荒海の セレナーデ』はどうかな? 少し長いダンジョンなんだけど」 そう言って姿を現したのは、鮮やかな水色の服に身を包んだ少女だった。名は『シアン』 彼女も、このショップの店員――つまり、ギルド《VIVID*Tourist》のメンバーなのだ。 「ところで、君が装備するの?」 「ううん。リラじゃなくって、クラレットが。クラレット、最近武器が合わないって」 言葉だけでなく、体をめいっぱい使って表現する男の子は、自らを『リラ』と名乗った。 どうやらクラレットという人物にプレゼントしたいようだ。 「そっかぁ……じゃ、気を付けてね^^」 「ねぇ、萌黄。あの子大丈夫かな?」 萌黄が笑顔でリラに手を振っていると、シアンが不安げな表情で萌黄に訊いた。 当然、訊かれた方は何なのか解らない。 「? 何が?」 「だってあのエリア、レベルが49だよ? でもあの子、そんなに強そうには見えないよ……」 すると萌黄は顔を真っ青にして、 「わ、ワタシ、行ってくる!!」 と、走り出した。 「あ…!」 教えちゃったのは私だから、私も一緒に…… シアンはそう言いたかったのだが、萌黄は猛ダッシュで行ってしまい、自分が離れるとショップに誰もいなくなってしまうのに気が付いた。 「!? ――なぁ、萌黄のヤツどうかしたのか? そうとう慌ててたケド」 萌黄と入れ違いにショップへ来た少年。薄いラベンダー色のような髪が特徴のPC。彼もまた、この ギルドのメンバーである。 「秘色くん。……えと、お客さんにレアな刀剣が手に入るエリアを教えて、けどそのお客さんには少々無理があって、それで萌黄が―――」 「まったく、無茶するなー……」 「どこ行くの?」 「萌黄救出へw」 『秘色(ヒソク)』と呼ばれたその少年は、シアンの申し訳なさそうな視線を受けながら頭の上で手を組んでカオスゲートのあるドームへと向かった。 一方の萌黄は―――― ――Δ黄泉還る 荒海の セレナーデ―― 「このダンジョンにいるなら、一直線だし必ず会えるよね……」 基本構造はほとんど変わらない回廊型のダンジョン。ここならば、探す手間もほとんど無いはず。 とはいえ、萌黄のレベルも40を超えたばかり…。助けられるのか不安でいっぱいの中、命がけで 第一階層を突破。ちなみに萌黄は妖扇士。 「うわぁーーー!!!」 「!? この階層にいるんだ!」 しばらく進んで第二階層、奥から悲鳴が聞こえた。間違いなくリラの声で。 それを聞くと、萌黄は妖扇を取り出しリラの許へと走った。 「居た――ッて。えぇ!? リプメイン! んでもって逃煙球〜!!」 ようやく見つけた。しかし、遅かった。機竜のようなモンスターに囲まれたリラのPCは、死亡を意味 する灰色に染まっていたのだ。 咄嗟に萌黄は蘇生スペルを唱え、アイテムを使って逃走。そのままダッシュし続け、第三階層の 獣神像に辿り着いた。 「癒しの水×3! は〜、ここのモンスター強すぎ〜」 つい皮肉めいた本音がでてしまうリラ。それに対し、萌黄は素直に謝った。 「ごめんなさい! ワタシ、キミのレベルも聞かないでこのエリアを……」 「ち、ちがうよ。リラの方がお姉さんたちのお話、よく聞かなかったから…」 はにかむリラ。萌黄もどうすればいいのか判らず、異様な沈黙が続く。 すると、声と同時に彼がやって来た。 「おーーい!! 無事かー?」 「ぅわ〜ん! 秘色〜、怖かったよぉ〜(ToT)」 「む…よ、よく頑張ったな……」 安心して、思わず泣きつく萌黄。秘色は当然拒否る。 ――ガチャ お遊びしている二人には目もくれず、リラは獣人像に捧げられている宝箱を開いた。 「これがレアな刀剣―――しかも、欲しかったやつだ!」 「よかったね♪」 「『壊疸刀・曼球沙華(マンジュシャゲ)』……か」 真っ赤な刀身を見つめ、秘色は呟く。 派手な色というものは鮮やかで美しくはあるが、時に毒々しさを併せ持つ。この刀剣はまさしくそうであった。 「……あ、ありがとう。 その、じゃ!」 リラはその刀剣を大事そうに抱え、ダンジョンを後にした。 「『想うはあなた一人』――好きな人、なのかな?」 リラが姿を消したプラットホームを見ながら、にこやかに萌黄は言った。 「何? それ」 「花言葉。曼球沙華って、彼岸花の別名なんだよ」 何故か自分が恥ずかしそうに言う萌黄を、秘色は不思議そうな眼差しで見る。 「ふーん。でもさ、どうでもよくね? こっちじゃ武器だし」 「あ〜もぅ! これだから男子ってのは!!」 今までの雰囲気を秘色の一言でぶち壊しにされ、萌黄はプンスカ言いながらタウンへと帰ってしまった。 「???」 ――Δ悠久の古都 マク・アヌ 中央広場 ショップ《夕園》―― 「ただいま〜」 「お帰り。…萌黄、どうしたの? 何かすんごく不機嫌そう……」 テキパキと店前の商品を整理するシアンが、手を止めて出迎えてくれた。 すると萌黄は待ってましたと言わんばかりに愚痴をこぼす。 「男子って、みんな夢ってのがないのかなぁ…って」 顎に手を当て考えるシアン。 「そうでもない、と思う… ほら、濡烏さんとかモーブさんとか、紳士的な人はいるよ?」 「まぁねぇー。……あ〜ぁ。どっかに王子様みたいな人、いないかなぁ〜」 ―あとがき― 改めまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。初めましての方ははじめまして。わん仔です。 初っ端からドタバタな展開です…これからどうなることやら(!? 一応、主人公は『萌黄』ですが、お話によっては異なる予定ですので、作者が混乱しなければいいのですが……(おい 今作も、一週間に一回のペースで更新できるように頑張りますので、どうか応援の程よろしくお願いします!! [No.976] 2007/11/10(Sat) 19:17:16 |