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No.1045に関するツリー
.hack//R.D 第一話
- RM-78ガソダム -
2008/02/17(Sun) 06:39:49
[No.1045]
└
Re: .hack//R.D 第二十七話
- RM-78ガソダム -
2010/02/08(Mon) 23:40:30
[No.1322]
└
Re: .hack//R.D 第二十六話
- RM-78ガソダム -
2009/12/24(Thu) 18:10:05
[No.1315]
└
Re: .hack//R.D 第二十五話
- RM-78ガソダム -
2009/12/24(Thu) 16:28:30
[No.1314]
└
Re: .hack//R.D 第二十四話
- RM-78ガソダム -
2009/12/12(Sat) 02:33:02
[No.1313]
└
Re: .hack//R.D 第二十三話
- RM-78ガソダム -
2009/12/03(Thu) 02:19:36
[No.1312]
└
Re: .hack//R.D 第二十二話
- RM-78ガソダム -
2009/11/15(Sun) 02:35:08
[No.1311]
└
Re: .hack//R.D 第二十一話
- RM-78ガソダム -
2009/10/30(Fri) 20:45:29
[No.1306]
└
Re: .hack//R.D 第二十話
- RM-78ガソダム -
2009/10/19(Mon) 22:22:41
[No.1305]
└
Re: .hack//R.D 第十九話
- RM-78ガソダム -
2009/10/08(Thu) 13:53:38
[No.1304]
└
Re: .hack//R.D 第十八話
- RM-78ガソダム -
2009/09/28(Mon) 02:46:19
[No.1301]
└
Re: .hack//R.D 第十七話
- RM-78ガソダム -
2009/09/22(Tue) 15:36:52
[No.1300]
└
Re: .hack//R.D 第十六話
- RM-78ガソダム -
2009/09/20(Sun) 01:52:24
[No.1299]
└
Re: .hack//R.D 第一五話
- RM-78ガソダム -
2009/09/16(Wed) 23:24:09
[No.1298]
└
Re: .hack//R.D 第十四話
- RM-78ガソダム -
2009/09/04(Fri) 19:29:37
[No.1296]
└
Re: .hack//R.D 第十三話
- RM-78ガソダム -
2008/04/14(Mon) 16:45:42
[No.1212]
└
Re: .hack//R.D 第十二話
- RM-78ガソダム -
2008/04/03(Thu) 16:45:03
[No.1197]
└
Re: .hack//R.D 第十一話
- RM-78ガソダム -
2008/03/24(Mon) 19:46:31
[No.1176]
└
Re: .hack//R.D 第十話
- RM-78ガソダム -
2008/03/18(Tue) 21:06:03
[No.1161]
└
Re: .hack//R.D 第九話
- RM-78ガソダム -
2008/03/05(Wed) 13:08:27
[No.1119]
└
Re: .hack//R.D 第八話
- RM-78ガソダム -
2008/03/03(Mon) 22:30:55
[No.1116]
└
Re: .hack//R.D 第七話
- RM-78ガソダム -
2008/02/27(Wed) 20:52:39
[No.1104]
└
Re: .hack//R.D 第六話
- RM-78ガソダム -
2008/02/23(Sat) 20:12:17
[No.1057]
└
Re: .hack//R.D 第五話
- RM-78ガソダム -
2008/02/20(Wed) 21:07:06
[No.1051]
└
Re: .hack//R.D 第四話
- RM-78ガソダム -
2008/02/19(Tue) 20:55:25
[No.1050]
└
Re: .hack//R.D 第三話
- RM-78ガソダム -
2008/02/19(Tue) 04:13:46
[No.1049]
└
Re: .hack//R.D 第二話
- RM-78ガソダム -
2008/02/17(Sun) 22:39:50
[No.1047]
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.hack//R.D 第一話
(親記事) - RM-78ガソダム
モルガナの子等よ・・・。
新たなる.hackersの冒険の末、再び女神は降臨した。
未帰還者となった妹を救うため、すべてを欺き、そして敵に回しても
孤独な戦いを続けたオーヴァン。
リアルの全てを捧げ大切な人のために戦い続け、真実と少しの成長を
手に入れたハセヲ。
互いが自らのキー・オブ・ザ・トワイライトとしての使命を全うし、
一つの物語を織り成した。
しかし・・・その鍵は新たな物語の扉を開けるためのプロセスにす
ぎなかったのかもしれない。
=== .hack//R.D ===
・・・チチッ・・・チチッ・・・チチチチッ・・・チチチチッ・・・
「青空〜、いつまで寝てるの〜母さんもう出かけるわよ〜」。
家の玄関から毎朝お決まりの母の声が飛ぶ、朝の鳥の鳴き声を遮る
目覚まし時計のアラームを2分も3分も鳴らしつづける自分も悪いの
だが、毎朝同じ掛け声にうんざりしていた。
カーテンが閉まり薄暗い部屋を降りづらいベットを手探りで降り、目
覚まし時計を止める。
あくびをしながらカーテンを開け、視界を広げる。階段を降り、半ば
作業的にトイレニ入り用を足した。
台所に行くと、これまたお決まりの置手紙と無造作に置かれたパンが
目に入る。
青空(せいくう)の両親は朝早く、そして帰りは遅い、いわゆる仕事
人間だった。
小学生の中学年にもなる頃には、ほとんどいっしょに食事はしなくな
った。
だから青空は朝のこの時間がキライなのだ。
手際よくインスタントコーヒーを入れ、それを飲み干すと、カップを
流し台にも入れず流れるような動きで学校に行く仕度を整えた。
リビングに置いてある新聞をカバンに入れ、玄関の鍵をポケットに入
っている携帯端末を使ってかける。
家の門を出て空を見上げながら、
「また退屈な日常の始まりか…」
と一言つぶやいた。
登校中は青空にとってメールチェックの時間だ。携帯端末をポケット
から出し、個人認証チェックをする。
画面には2020.7.7 7:15と表示される。
この時代の認証チェックは首の後ろに取り付けられたチップを使って
行われる。ネットも全て無線へと変わり、端末もスイッチを入れるだけで個人認証チェックに入るようになっている。
そのすばらしい利便性、セキュリティー面、そして犯罪の抑止にも大
きく実績を認められたため、全世界の人間がチップを首に埋め込むこ
とを義務付けられていた。
認証チェックが終了するとアルティメットOSが起動し、メールチェックしようとしたその時、体に衝撃が走り、転倒してしまった。
四つ角にさしかかったところで右側から来た人とぶつかったらしく、そ
の相手も転倒していた。
「いって〜ぇ、あ、でもR2M付けて走ってたオレが悪いのかぁ〜」。
その相手は素早く立ち上がり、倒れている青空に手を差し伸べながら、
すまなさそうな顔で、
「あ〜、ゴメンゴメン、オレ越してきたばかりでこの辺りの地理分か
らんからR2M付けて地図見てて・・・すまんです」。
素直に謝ってきたので、その手を取り立ち上がって
「あ、大丈夫です」と言うと。
「そかあ〜、なら時間無いんでオレ行くわ〜」。
そう言うなり、その人はニカッと歯を見せて笑い、また小走りで走り
去ってしまった。
そのとっさの出来事に転倒してしまったときの痛みは忘れてしまった
青空だったが、ケガしていないかという確認もないのかと、後になっ
て腹が立って来ていた。
メールをほどほどに見つつ、学校に着き、後者の階段を登ると2−3
という自分の教室が見える。教室に入り、自分の机に向かうと、見慣
れない机が自分の席の隣にあることに気づいた。
しかし大して気にしなかった。青空は学校生活をそれほど重要視して
いないからだ。それは小学校の頃からクラスメイトと話をしていても
同じレベルの話をしている気がしなかったからである。
クラスメイトの行動、言動、全てが幼稚だな・・・そう思っていた。
テストにしたって、楽にかなり高い点をそれほど努力しなくても取れ
たのである。
だからといって青空はそれを口に出していったりはしないし、クラス
メイトともほどほどの付き合いをしていた。テストも高得点を取れる
があえて70点前後の点で留めて、不必要に目立つようなことはしな
かった。
まあ、休み時間にずっと新聞を読んでいる、といった程度のちょっと
変わったヤツ、くらいに周囲からは思われていた。
だから隣にいつもと違った机がちょっとあったくらいではほとんど気
にもせずに朝のホームルームの時間までは新聞を見て気になる情報を
チェックしていた。
青空は自分の名前がきれいな青空のような広い心を持つ子に育ってほ
しいという願いを込めて小さい頃よく遊んでくれた父方の祖母に付け
られた。両親が共に仕事に忙しく、よく預けられ、いつも遊んでくれ
たのだ。
そういう経緯もあって、青空は祖母に名付けられた自分の名前に誇り
を持っていたし、晴れた時の青い空が好きだった。
それゆえに21世紀に入って悪化の一途をたどる環境問題には特に興
味を持っていた。
新聞を読むのはその情報を入手する手段の一つだ。
「ん〜、今日の情報は・・・と」
そうつぶやきながら一面に目を通す。”3年前のネットワーククライ
シスにより宇宙開発大幅に立ち遅れ鉱物資源の危機””世界ネットワ
ーク法によりネットゲーム規制、消えたネットゲームユーザーは今”
”8カ国サミット、日本で明日開催”。
コレといった情報ないなぁ。そう思いながら2面を見ようとした時、
チャイムと共にクラス担任が教室に入ってきた。
「きりーつ、礼」
委員長の号令が響き、
「おはようございます」
クラス全員の声がハモる。”いつものギシキだ”そう思いながら席に
ついた。
しかし、いつもと違うことに青空は気づいた。担任が入ってくると
入口は閉めるのに閉まっていない。気付いて2秒もしないうちに担
任は話を切り出した。
「今日は、転校生をみんなに紹介します・・・入りなさい」。
入口に向かって手招きする担任、入口から入ってきたのは・・・
見覚えのある制服だった。
ざわつくクラスの女生徒たち、それもそのはず、そいつはあのぶつ
かったときにはR2Mを付けていて分からなかったが、素顔はなか
なかのイケメンだったのだ。
あの時にも分かってはいたがなかなかの長身。まさに男子生徒から
すれば”敵”、女生徒からすれば”王子様”だ。
そのざわつきを打ち消すかのように担任の一声が発せられた。
「静かに〜!」
そう言うと担任は小声で自分で名前と一言みんなに挨拶しなさい、
とでも言ったのだろう。
そいつは名を初めて名乗った。
「神崎タケトです。仮面ギュンダーのごとく爆裂パワーで、お前達
を成敗だ、変身!!」
そう言いつつヤツはポーズを決めたのだ。
担任と女生徒の目は点に・・・、そして男子生徒の爆笑でみんなが我
に返った。
いわゆるコイツhはイケメンにしながら”オタク系キャラ”だったのだ。
青空は心の中で、
(こいつ、残りの学園生活終わったな・・・)
そう思いつつも心の中でちょっとガッツポーズを取っていた。
そして確実に女生徒の大半は冷え切っていた。
担任は何も見なかったことにしよう・・・的な態度で発言した。
「あ〜神埼は鏡の隣の席だ〜着席しなさい〜」(棒読み)
(え”っよりによってオレの隣か――――)
心の中でそう思いつつもヤツが近寄ってくるので1時間目の教科書
を捜すフリをして目を合わせようとしたのだが・・・。
「あ〜、登校中の〜」
遅かった。 ;;
(あとがき)
タイトルの表記は本当はちょっと違います。R.D.R←Rの反転
文字が本当の表記となりますが・・・やり方わからんかった;;
R.Dが何の略かってのは各自考えてみてください。
そして多分なかなか.hackっぽいシーンになりません。(このあと
がき書いてる時点で4話分書きあがってますが・・・まだ.hackっぽ
いシーンが出てません)いつそうなるのやら・・・。
まあ、興味がある方のみ読んでいただければ幸いです。
[No.1045]
2008/02/17(Sun) 06:39:49
Re: .hack//R.D 第二話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
キーンコーンカーンコーン・・・。
1時間目が終わって、ヤツが話しかけてくる前に新聞を読んで自分の
世界に入ろう。青空はそう思い、素早い動作で神崎タケトの反対側
を向いて、先ほど読もうとしていた新聞の2面を開いた。
そして、食糧需給・・・と数文字読み進めたあたりで、逆さ向きの
神崎の顔が超接写で現れた。
「かーがみクンッ、さっきはごめんね〜」。
「お・・おわァっっっ」。
そのとっさの出来事に青空は声をあげると共に後ろにイスごと倒れ
込む。そして起き上がりつつも明らかに動揺した声で、
「な・・・なんだよッっ、いきなり」。
そう言うと、タケトは青空の様子を上目遣いで伺いながら
「遅刻しそうだったから〜名前も名乗らずに立ち去ってしまって
嫌われちゃったかな〜・・・なんて思って〜」。
そのスロー気味な口調と、ヤツの少し不気味な立ち居振舞いにカオ
をひきつらせながら
「も・・・もう気にしてないから、だから新聞読ませてくれ」。
正直、青空はこのタイプの人間が苦手だった。そして自分のペース
で話すことが出来ないむずかゆさは苦痛以外のなにものでもない。
そのひきつったカオから気持ちを察したのか、「つまんないの〜」。
そう言いながら他のクラスメイトの所へたちまち消えてしまった。
新聞でカオを隠しつつもチラッとタケトを見てみると、そのルックス
からか、オタクタイプと分かっていても、クラスの女生徒が集まって
いた。
昼休み、給食を食べ終わり、皆それぞれの時間が始まる。青空はタケ
トが他のクラスメイト達につかまっているのを確認し、こっそりと教
室から出て、人気のなさそうな場所、”屋上”へ向かった。
いつもなら昼休みはクラスメイトと過ごす青空なのだが、今日は授業
合い間の休み時間に読めなかった新聞を誰にも邪魔されず読みたかった
のだ。
屋上のドアを開けるとピュゥゥゥゥ――と耳を切り裂くような隙間風
特有の風切り音がする。
この日夏とはいえど少しばかり風のある日だった。滅多に屋上など来
ないので、これは予想してなかった・・・。
風を避けられるところを探そうと広い屋上を数歩進んだ時フイに来た
横風に持っていた新聞が数枚飛ばされてしまった。
バサバサバサっと音を立てながら、灰色の紙は風に踊らされるように
飛んでいった。
「うぁお、なんだこれぁ〜!」
大きく、そして野太い驚きの声が響き渡る。屋上に着いたときには気
が付かなかったが新聞が飛んでいったその先には”先客”がいたので
ある。
屋上に設置されてある、貯水槽の影からはM2Dをつけたままくわえ
タバコで明らかに特注のそのズボンからお世辞にもガラの良いと言え
る人ではなさそうだ。
そして一人だと思っていたらその後ろからズルズルと3人金魚のフン
のように現れ、あっというまに囲まれてしまっtた。
「やったの、オマエだよな?」
最初に出てきたリーダー格と思われるその男はうつむき加減の青空に
問い詰めた。
自分は冷静なヤツだ、普段はそう思っている青空だったが、上級生に
囲まれるという経験をしたことはなかった。頭の中は、ヤバイヤバイ
ヤバイドウシヨウドウシヨウと、そんな言葉ばかりが浮かび、明らか
にこの状況をどうにかできる方程式が出てくるわけがなかった。
体温が上昇したような感覚に襲われると共に自分でハッキリ分かるほ
どに動悸が早まる。
「オ・マ・エ・だ・よ・なぁ」
そう正面に立つリーダー格の男は言うと共に青空のカミをつかむ。そ
して青空が
「僕です、ご・・・」
とごめんなさいと言おうとする間にひざ蹴りが青空の腹部に刺さる。
「ゲホッッゲホホっッ・・・」
腹部を襲う激しい痛みに顔は苦痛の表情を浮かべ、反射的に痛む腹
を手でかばうように押える。
「なーにやってるの――――」。
その時またヤツが現れたのである。
(あとがき)
まだ半日しか経ってませんね、まったく.hackっぽくない青春ハード
ボイルドストーリーに成り果てている。
まさにオグ○ シュ○主演のクロー○・ゼ○みたいになって来そうな
予感を持っているアナタ!正解です!みのも○たみたいにクオカード
はありませんが。
まぁ、なんとかがんばります、そして何故か第4話は・・・サミット
編・・・2話までで4話を予想できた人がいたら拍手喝采、逆立ちし
たままの体勢でジャンプしてジョ○ョを襲いたいと思います。
それでは・・・。
[No.1047]
2008/02/17(Sun) 22:39:50
Re: .hack//R.D 第三話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
自らの耳を疑った。こんなヤバイ状況に助け人が来るなどドラマやマ
ンガじゃあるまいし、そう青空は思っていたからだ。
髪をつかむ手が弱まったかと思うと、青空は横に突き飛ばされ後ろか
からその辺に落ちている空き缶を蹴り飛ばすように尻に蹴りを入れら
れ倒れこんだ。
「なんなんだ、テメェはよォ」
悪い目つきが更に険しくなり、その怒号は響き渡る。それに動じる様
子もなく、ひょうひょうとした顔で、
「ん――、そいつオレのクラスメイトなんすよ――、許してもらっち
ゃえませんかねェ――」
と、言い放つ。その不気味さに人数で勝っているはずの上級生4人は
少したじろく。
その一部始終を見て、青空は
(こいつ、もしかしてムチャクチャ強いのか?)
そう思わずにはいられなかった。
そう思うつかの間にタケトは無情な攻撃を受けていた。しかしタケト
は暴行に合いながらも青空に”今なら逃げられるぞ”と言わんばかり
に首を軽く一つしかない出入り口に向かって振っtた。
完全に冷静さを取り戻したわけじゃなかったが、その合図を見逃さな
かった青空は今までに味わったことの無い経験、そして恐怖という手
に背中を押されるように振り返りもせず、その場を立ち去った。
その逃げ去る青空を見届けると暴行を受けながらもタケトはひどく冷
静に、
「行ったか・・・」
そう一言小さくつぶやいた。
一方、青空は、フーッふっフゥー。と少しだけ息を整え、ガクガクに
笑った膝を手で押えながらも階段を駆け降り、職員室へと向かった。
助けないと、助けないと、助けないと・・・まだ青空の頭は冷静とは
ほど遠く、同じ言葉ばかりが回っていた。
青空が1階の職員室を視認していた頃、屋上ではまだタケトを暴行す
る上級生達の姿はあった。
うう・・・。苦痛の声を漏らし声絶え絶えのタケトの様子に満足した
ズタボロで倒れているタケトを背にし、
「もうあんまりナメた口聞いてんじゃねぇゾ、ガキ」
そう余裕の一言をリーダー格の男は言いつつ屋上を去ろうと出入り口
に足をかけたその時であった・・・。
「な〜んちゃって、こっからが反撃だぞぅ〜セ・ン・パ・イ♪」。
そして・・・。
青空が先生数人を連れて屋上に着いた時、不思議な光景がそこには
あった。誰一人さっきまで殺伐としていたその場に居なかったのだ。
「まちがいなくここに居たんですよ、さっきまで」
あわてて先生たちに説明する、しかし、
「もういい、教室にもどりなさい」
と連れ添った先生の一人に言われ、完全に沈んだ気分で青空は屋上の
階段を降りる。
しかしなぜあの場に誰も居なかったのか、さっぱり頭の中で整理がで
きなかった。そして被害者も加害者もいないあの場のあまりの異様さ
に青空の頭の中には最悪のシナリオが浮かんでいた。
(暴力が度を越えてタケトが殺されてそれをあの人達が隠したのでは)
夏の暑さによって出た汗が引いていくような、そんな感じがした。
しかし教室に戻ってみると傷だらけではあったが無事なタケトが居た
・・・というよりクラスの女生徒に看護を受けてにへらと笑みさえ浮
かべていたのだ。
「よ〜ぅ、鏡クン〜大丈夫だった〜?」
さも怪我などしていないかのように軽やかな口調でタケトは青空に一
声かけた。
「っていうか、お前のほうこそあれだけやられて大丈夫なのかよ」
とつい助けてもらったお礼を言おうとしたのに強がった口調で言って
しまった。
「カッコよく助けに入ったまではよかったんだけど、結構やられちゃ
ったよ〜、でもあの後すぐ、うまいこと逃げたんだ〜」
左手で車が進むようなジェスチャーを入れつつタケトはにっかりと笑
った。そしてもう一言即座に付け加えた。
「この貸しは大きいゼ♪」
と軽くウインク付きで言う。
とりあえず体が大丈夫そうなタケトを見て青空は安心すると共に神埼
タケト侮りがたし・・・と思う青空だった。
午後の授業の合図とともに担当の先生が教室に入ってくる。そのチャ
イムにまぎれるように正面向きのまま、
「・・・まぁ・・・その、なんだ・・・ありがとうな」
青空は口ベタなりの感謝の言葉を口にした。
(あとがき)
ふぅぅぅぅ、クロー○・ゼ○編やっと終了、このままもしかして
魁!男○のような話を延々と書き綴ってしまうかも・・・と自分
でも思ってしまいました。
元原稿のほうは8話まで進みました。6話ではようやく.hackっぽい
かなぁ・・・。というシーンがやっと出てきます。(6話でやっと
カヨ)このシーンはG.Uを終わらせた時に自分が思ったことを元に
作っています。1話冒頭のシーンの答えがそこにありますので、
ぜひ1話と照らし合わせてもらえればと、そう思う次第です。
ではまた・・・。
あ、言い忘れてた・・・。まだ元原稿にも登場してないですけど、
IQサプリ見ながら考えた脳内で考えてることがあります。ぴろし
の登場のことです。R.Dでのぴろしはぴろしヨン様さんとして登場
の予定(これは開発中の画面です完成品では変更される可能性があ
ります)です。
[No.1049]
2008/02/19(Tue) 04:13:46
Re: .hack//R.D 第四話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
カタカタカタカタ・・・
「おーいデータバンク番号何番だっけ?」
「そこォ!油売ってないで現場見て来いよぉッ」
「スミマセーン後ろ通ります――」
半年後に日本で開催されるサミットの準備で、首相官邸や国会議事堂
内にあるサミット対策室はまさに戦国時代の合戦場かと言わんばかり
に激務に追われていた。
パソコンに向かいひたすらタイピングする者・・・
部下に指示を出しつつ自らも右往左往する者・・・
様々だが、その激しく人とデータが行き交う場の一角に他とは一線を
画す場があった。
デスクの上には湯気を纏う缶コーヒー、その他はノートパソコン一台
という素っ気のない、まるで個人オフィス・・・いやそれにすら満た
ないレベルの仕事道具そんな平平凡凡とする不思議な空間にその男は
エア・コントロールの椅子の上で足を組み、目を閉じて座っていた。
「そこから先に入るな・・・」
そのp男は戦場から逃げ出す落ち武者のように疲れきって、その混雑し
ていない場に入ろうとする一人の対策室スタッフに言う。
「ちょっとだけ、ダメッすか?神坂さん」
この檄飛び交う中、優雅に足を組んでいるこの神坂という男に拝みこ
むようなアクションを取りつつ、懇願するように頭を下げる。
だが、即座にこう神坂は言い返す。
「私の時間の流れを変えるな・・・」
そう言うと置いてある缶コーヒーを一口飲んだ。
「おーい、ここで何してる?」
がっくり来ている落ち武者君は追い討ちをかけるように後ろから別の
人物に声をかけられる。
そのまま落ち武者君はソ――っと後ろを向くと、落ち武者君の指揮官
とも言うべき人物がそこに立っていた。そしてもう一言
「はい、持ち場に戻って――」
神坂と同期の志村であった。
「あ”〜い」。
そう言いながら落ち武者君はもう一段肩を落として、猫背のまま持ち
場にすごすごと戻っていった。
それを見送った志村は神坂に声をかける。
「お前は相変わらず、マイペースで仕事するなぁ〜。まぁ、いつもの
ことだから心配はしてないけどな」
そう・・・、神坂は2年半前に起こった第三時ネットワーククライシス
の原因調査、そしてまた起こりかねないネットワーククライシスの防止
を進めるチームに所属し、そしてその実績を買われ、首相のブレーンに
抜擢されたのだ。
ネットワーククライシスはオンラインゲーム「The・World」に
原因があった。その結果、世界的にオンラインゲームの規制、そしてつ
いには廃止へと追い込まれるのである。
もともとオンラインゲームはその中毒性に社会人、学生の本業を妨げる
ものとしてメディア、行政ともに問題視していたという背景もあったの
で、それが廃止への加速を促進したのだろう。
一方、志村は神坂ほどの華々しい経歴でこの部署へ来たわけではなかっ
た。地道に政務をこなし、自他ともに誰よりも努力していると評価され
るほどの努力家だった。
それ故に同期で入ってきた神坂のマイペースぶりが始めは頭にもきてい
た。
しかし、このマイペースな男はいつも自分より結果を出していた。自分
が努力という”力”で仕事を行っているように、この男にとってはこの
マイペースというものを力として仕事をしているのだろう。そのように
思うようになったのだ。
それは将棋や囲碁の世界で言う長考派なのだろう・・・と。
「まあ、ある程度の準備は前もってしているからな」
すわり心地の良さそうなエア・コントロールの椅子に深くもたれかかり
ながらリラックスしている感じでそう言った。
神坂にしても志村のことを他のスタッフ達と比べて物事に対しての情熱
を感じていた。だから、志村からの言葉には必ず耳を傾け、対話するよ
うにしていた。
「今回ばかりはさすがの神坂でもそんな事も言ってられんぞ〜」
左腕に持っていた書類に目を通しながら神坂との会話を続ける。
「ここのところ日本は色々な分野で新興国に押されっぱなしだからな、
実のところ首相も危惧しているんだ、今後日本がサミットから外さ
れるんじゃないかと・・・な」
そう言うと神坂に持っている書類を手渡す。
「中国、インド・・・・・か」
実際のところ日本は苦しい位置に立たされていた。日本の国土は他の
国と比べ狭く、資源に乏しい。なおかつ食糧自給率は自国ではまかな
えない。
そして核も保有することが出来ず、軍事面でも不利な面があった。
唯一優位性があるのは、日本の生み出す技術であるが、それにしても
インド、中国、韓国といった国々がどんどん力を増してきているのだ。
資源問題、それはもはや日本だけの問題ではなかった。新興国が増え、
資源も、食糧も奪い合いになってきている現実があった。
それに加え温暖化問題、世界の都市化による水資源の枯渇など、これら
の問題を解決するための案を出さなければならない。そして、その案は
サミットに参加する他の七ヶ国よりも優れていなければならないのだ。
眉間にシワを寄せながら気を引き締めるように、
「今回は開催国だからな、しかも世界が資源の奪い合いで一触即発とき
てる、だから今回はどうしても他国に負けられん。だから、こうやっ
て地道にデータ取り、ほんと必死だ」
一通り目を通した書類を志村に返しながら話を聞いても、特に神坂の様
子は変わらない。
「私は君らとは違うスタンスで今回の件を考えている」
その一言に志村は
「違うスタンスって・・・」
その言葉をかき消すように神坂のノートパソコンからメール着信音が
鳴り響いた。
「来たか・・・」
神坂は仕事に入るからあっちに行けと言わんばかりの態度で椅子を机
に寄せ、ノートパソコンにかじりつきになった。
それを察して、志村も持ち場へ帰ろうとした。その時、一瞬だけ神坂
の開いたメールの内容がちらりと見えた。「Yes」と。
そのメールが届いてから神坂はちょくちょくアメリカに行くように
なった。その間も志村は、分刻みのスケジュールで動いていた。そ
んな忙しい中でも志村は神坂がアメリカで何をしているのかが、も
のすごく気がかりでしょうがなかった。
「まったく、アイツの才能がこれほど欲しいとおもったことはないな」
と仕事をこなしながらも激務に抵抗するように愚痴をつぶやく志村だっ
た。
・
・
・
・
・・・Test・・・Test・・・Project・・・Inis・・・
・
・
・
・
そしてサミットの朝が来た。
サミット当日、会場となる札幌は早朝から騒然としていた。
八ヶ国から来た各国の首脳が帰国するまでの安全を確保しなくてはな
らないのだ。そういう取り決めがサミットという行事にはある。
その関係からか、常に現場は警察や機動隊などが殺気立っていた。も
ちろん政府関係者とて人事ではない。やらなければならないこと、突
然に要求されることなどにも迅速に対応しなければならないのだ。
マスコミ関係者はそんな殺気立った場所で他社よりもいい”絵”を撮
ろうと、場所取りで白熱する。
「え――、A班は車が来たらぁ――」
「あ――、そこ邪魔――」
「マスコミ関係者の方はこちらでボディーチェックを・・・」
「おい、機材まだか―――」
「なにやってんだぁ―――、こっちだよこっちィ―――」
まるで大量にビー玉の入った箱を坂道でひっくり返したような・・・
そんな感じの人の動きだ。
準備も整ってくるとさっきとは対照的に、人が倒す前のドミノ倒しの
ようにキッチリと整列する。
「こんな中で果物ナイフ一本でも持って歩いたら即射殺されそうだな」
さっきボディーチェックを受けた記者が警察に皮肉を込めてつぶやく。
そんな中、続々と要人を乗せた車が、会場へ到着する。
車を出たばかりの首脳たちはマスコミのいる場面ではにこやかな笑顔を
見せる。しかし、会場の円卓に着く頃には数段険しい表情に変貌する。
まさに今から殴り合いのケンカをするかのような心構えをそこからにじ
ませる。
全ての関係者が会議室に着く、その中には志村の姿もあった。
そして会議は始まった。
サミットの会議室、ここには2015年以降、秘密裏に様々なハイテク
技術が導入されるようになった。会議室自体が日本の主要5都市に移動
することができたり、各マイクに人物認証機能が付けられ、どんな言語
で話しても、各人の前にあるディスプレイに約されたテキストとして表
示されるようになっていたり・・・。
ネットの機能も盗聴される恐れがある為、ネットワーク管理局「NAB」
ですら管理できないサミット国のみで構築された独自のネットワーク
システムで運用されるといった、国家ならではの機能が使われている。
とりわけ日本は自国の技術力をアピールするため、この部屋の技術には
ものすごい国家予算をつぎ込んでいた。主要国のトップに直に”宣伝”
できるのだから安いものだ、そう考えているのだろう。
テロ回避のため、会議中に東京に移動することとなった。
これは毎回のサミット共通のことなのだが、各国ともどもお互いの妥協
点の探りあいが展開される。大人になるとどんな人間であっても無意味
にケンカなどしたくはないのだろう。
その為かサミットではそうそう革新的なアイデアが出て、しかもその案
が進展するということはあまりない。
しかし、今回に限ってはそうも言っていられない状況なのだ。
技術の進歩は残虐な物を見せた。
その進歩した調査機器の能力は世界の資源の枯渇の数値を具体的に示し
た。まさに死滅に向けての数字だ。
Dead or Alive
映画や小説などでもよく出てきそうなフレーズ、しかし、この先の各国
の未来というカタにガッチリはまりそうな言葉だろう・・・。
そして八ヶ国の中でもっともDeadに近い国が日本であり、他の各国
も口にこそ出しはしないが、このサミットでリーダーシップを取れない
ようなら日本をサミット国から外し、そして喰らおうといういい機会だ
った。
他の七ヶ国にとって、日本の技術力を取り込むことは次世代のリーダー
シップを担っていくためのキーと考えているのだろう。
しかし日本という国を取り込めたとしても、資源問題という壁にぶつか
りいずれは滅亡するだろう。それは、この場に居る者ならば誰にでも
分かることであった。
宇宙開発を進めればいずれは・・・などという考えもどこかにあるのだ
ろうが、それが成功に転ずるとは限らない。
やはり抜本的な案が必要なのだ。少なくとも大幅に「時間」を稼げるよ
うなアイデアが必要だ。
志村及び対策室のブレーン達は半年以上も前からこの大きな問題と闘っ
ていたが、誰一人として他の七ヶ国が納得しそうな案を打ち出すことは
できなかったのである。
志村達とて、あらゆる考えを張り巡らせはしたのだが、この日本という
国の国土の不利、そして世界レベルで考えてみたところでどこかの国か
らは文句が出てしまう。国内のみで解決できない問題ではないのは明ら
かだった。
サミット開催まで一ヶ月を切る頃には首相自らがプレッシャーをかけて
きていた。それは首相自らが追い詰められている事の証拠でもあった。
志村自身、会議中に首相に対する申し訳無さからか、ものすごく時間の
進みが遅く感じられる。
この時間をまさに資源枯渇までの時間に使いたい、そんなことまでが頭
をよぎるほどだ・・・。
そして、会議室は東京に到着した・・・。
国会議事堂の地下深くには、ひそかに裏政府が会議をするスペースがある。表層の大会議室とまったく同じつくりの大部屋すらあるほどに広大
な施設だ。
それどころか、この地下施設には表の施設よりも色々な機能が備わって
いる。
なにゆえにこんな施設が必要なのか、しかも一般市民には秘密裏にだ。
政府は突然の核攻撃、バイオテロ、クーデター、未知のウィルス等
ありとあらゆる天災、人災を見越して、数年間の間この施設のみで生活
出来るようにしていた。
そして政府はそういう事態が起こることを見越して各分野のスペシャリ
ストの人選をも国民の首に埋めたチップによる管理によりすることが可
能だった。
チップで人を管理しようとした裏にはこうした国民に伝えられていない
事情もあったのだ。
そのスペシャリスト達をこの施設で生活させ、そして新たな政府を構築
するというのがこの施設最大の目的なのだ。
その裏施設の1スペースにサミット会議室は着いたのである。
各国共に違う案は出てくる。しかしその内容はやはりどこかの国がデメ
リットをこうむることばかりだ。そして、その内容を議論しあった所で
話は平行線をたどるばかりだ・・・。
日本国首相「皆川」はなるだけ目立たないようにしていた。どこの国の
味方をすることもなく、ただただ、なんとか志村達の纏め上げた案を牽
制程度に出すだけしかできない。
皆川の顔は青ざめ、その心境は、ロシアン・ルーレットの獣をコメカミに当てがっているかのような感じである。
弱気になっている者をいつまでも放置しておくほどこの場は甘くない。
時間が経つにつれ、その殺気にも似たようなドス黒い気配が増してくる
のを、卓に座っていない志村にすら感じられていた。
しかしその中で、とりわけ不思議に見えるものがあった。同盟国である
アメリカ大統領シーヴルのみまったく涼やかな顔をしているのである。
皆川とは全く対称的でその対比が余計に志村の目には不思議に映った
のだ。
そして動かないアメリカという群れから離れたという子羊のような弱国
を狼のようにほかの国は言葉という牙で追い詰めていく。お前はこのサ
ミットの開催国の代表だろう?・・・と。
バンッッ
いきなり会議室のドアが今から捕食しようかという狼の雄叫びをかき消
すように大きな音を立てて開いた。
その音に一斉にドアに視線と銃口が集まる。
そこに現れたのは両手を上げた神坂だった。
「Welcome ・・・ Kamisaka:」
第一声を発したのはアメリカ大統領のシーヴルその人だった。
その声にハッと我に返った志村は神坂が関係者だということを慌てて
説明する。
銃口はその国々ごとにまるでロボットのような正確さで下ろされた。
神坂は志村にマイクをくれという合図を送りつつ、円卓へ進む。
マイクを受け取った神坂はマイクの認証を済ませて、ゆっくりと発言
する。
「・・・さあ、世界を変えよう・・・」
この後、数分でこの場は戦慄することとなる・・・。
・
・
・
・
・・・Test・・・Test・・・Project・・・Phidhell・・・
・
・
・
・
(あとがき)
予告通りサミット編です。長いですゴメンナサイ。そして.hack風味は
いったいどこに?ッて感じですゴメンナサイ。
まぁでも無い頭を振り絞ってがんばって書きました。脳細胞が40個
くらい死んだと思います。ブラッ○・ジャッ○先生に直してもらう予
定です。もしかしたら無理!もうア○ムに作り変えちゃおうって。
ジャッ○先生の粋な計らいでロボットになってしまうかもですが・・・
そのときは誰か骨を拾ってくださいね・・・;;
それでは・・・。
[No.1050]
2008/02/19(Tue) 20:55:25
Re: .hack//R.D 第五話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
日もだんだんと落ち始める頃、学校の各所は授業中とは様相を呈する。
落ち着いた雰囲気とはとても言いがたい。
余裕をかまして出てくる先輩よりも先に部活の準備に走らねばならない者、教室に残り、グループでしゃべり倒す者、分からない勉強を教えて
もらいに職員室を訪ねる者。
この時間には様々なキャラ、そして場面を目にすることができる。
吹奏楽部が奏でる金管楽器の音色を背に青空は校門を後にする。
「青空〜、まっちくり〜ィ」
少し遅れて後ろからタケトが走ってくる。
まあ今日は助けてもらったし、ここら辺りの地理でも教えてやろうかな
と青空は思い、下校がてら道案内でもしてやろうとタケトを誘ったので
あった。
「でも良かったの?部活なんかも見たかったんじゃない?」
ケガをしてるはずなのに軽やかに歩くタケトに向かってそう訪ねる。
「あ――、オレ部活はできないから、親の仕事の関係で引越しが多いん
だ――」
聞いてはいけない地雷をいきなり踏んでしまったか、そう思いタケトを
チラッと見ると、少し気持ちが沈んでるような顔をしている。
これはいかんなと、とっさに別の話を振る。
「あ・・・あ――あっちにさ、たまに帰りに寄る店あるから行こ〜ぜ」
進んでいた道の少し先にある曲がり角を指差しながら前を見た。
帰り道の途中にあるちょっとしたお菓子や文房具を売っている佐々木
商店、そこはこの校区の小中学生のいわゆる「たまり場」になってい
て子供独自の文化を垣間見ることができる。
店で売っているお菓子を賭けて流行りのトレーディングカードゲーム
で熱いバトルを繰り広げていたり、最新ゲームの情報をネタにお菓子
を報酬でせしめてみたり、とそれぞれが学業から開放されてなんとも
ほのぼのとする光景が広がる。
「おばちゃん、ラムネ2本ちょうだい」
そう青空がカウンター越しのちょっと割腹のよい体型のおばさんにお
金を払うと、カウンターの端にあるガラス張りの冷蔵庫から取り出す
とキュポンと栓を抜くいい音が鳴る。
ラムネを手渡された青空の両手には冷ややかな清涼感が伝わる。
「最近、来なかったじゃないか〜青ちゃん、もうちょっと
寄ってきなよ〜」
「あいあーい」
背を向けたまま青空はそう答える。相変わらずのおばちゃんの営業活動
だなぁ、そう思い、久しぶりにきても変わってないことに少しホッとし
ていた。
「ほい、今日のお礼」
右手に持った結露して少し汗をかいたラムネのビンをタケトに手渡す。
「お〜、ありがと〜」
明るい声でそう言いながらも周りにいる楽しそうに遊んでいる人達を
見てうらやましそうに、そして寂しそうにしていた。
「いいな〜青空は、なじみの店ってのがあって、オレそういうのにあ
こがれがあるっていうか、顔なじみの店なんてできたことないから
なぁ」
ここに連れてきたことが逆効果になったことを青空はその一言で感じ
取る。後ろからさっきのおばちゃんとのやりとりをタケトは見ていた
のだ。
元気付けてやろうと、
「神埼もそのうちあの店がなじみになるって〜」
普段は出しもしない明るいトーンの声を無理やり絞り出す。
「そっか〜、そうだよ・・・な、そうだよ」
そう言ってラムネをグイッと飲むタケト、少しだけ表情も明るくなる。
そしてもう一言付け加える。
「タケトでいいよ」
とニカっと歯を出して笑った。そして残っているラムネも一気に飲み
干した。
タケトスマイル、この歯を出して笑う仕草をこう名付けよう。青空は
そう心の中でつぶやいた。
佐々木商店から1キロほど東へ歩くと海岸へ着く。元気になったついで
に青空のお気に入りの場所であるその海岸線へ連れて行ってやろうと思
った。
しばらく歩くと少し道が坂になっている、そこを上っていくと少しずつ
太陽に照らされた海が見えてくる。
それを見てタケトは思わず走り出し、
「うぉあ〜〜〜〜スッゲ〜〜〜」
防波堤の上から、2メートルくらい下にある砂浜に思いっきりジャンプ
して降りる。
「うおぉぉぉぉぉぉ、砂があちぃぃぃぃぃぃぃぃ」
日中、日の光に照らされて焼けた砂の上で無邪気にはしゃぐタケトは
完全に元気な”アホタケト”に戻っていた。
その後、青空達は遠回りになるが、海辺を通って帰ることにした。
暑い気候の中、時折肌を癒すように潮風が吹く。
ゆっくり歩きながらいろいろな話をした・・・。
タケトの父が金融関係の仕事をしている事、ギュンダー基礎知識、
タケト転校の軌跡・・・そしてまだ話は続いた。
「・・・――でさ〜2,3ヶ月前かなぁ、メル友ができてさ〜」
「メル友〜?オレもいるぜ〜」
とバカ話をしていたらタケトの家への分かれ道まで来てしまった。
楽しい時間っていうのは時の流れがはやいな、ふとそう思う青空
だった。
「じゃ〜また明日な〜」
そうタケトに向かって手を振る。そんな青空をタケトは呼び止める。
「青空、オレ達・・・もうダチってことでいいんだよね?」
そう正面切って言われて、チョット気恥ずかしそうに、
「ああ、勝手に青空って呼ばれちゃってる事だしな」
そう言いながら、あえてタケトスマイルを真似してみる。それは
青空が口先のダチじゃないという表れだった。
タケトと別れ、自宅の前まで来る。一つたりとも電気の付いてない
その家を見て、また作業的に動く家に入らなきゃいけないのか・・・
と青空は少しブルーな気分になる。
両親のいない家、真っ暗な家の中を見て現実を突きつけられる。
夕ご飯は決まって店屋物。月初めに朝のパンと共に一枚のメモ書きが
置かれる。夕ご飯代を銀行口座に振り込んでおきました。
「文面まで毎月同じなんだよっッ」
そう顔前で怒鳴りつけたくなったことも一度や二度ではない。メール
じゃないだけ温かみがあるとでもおもっているのだろうか/・・・。
そう考えると余計にムカツイた。
唯一この家で作業的ではない行動、それはネットサーフィンでするチャ
ットだった。興味のある内容のページに行き、数あるスレッドを覗くう
ちに自分に似たような考え、思考レベルが自分より上であろうと思う人
物がいた。
その人ともっと話したい、そう思うようになり、コンタクトを図ってみ
たところ、相手もそう思っていたようで、チャットを交わすようになっ
たのだ。
その人物のハンドルネームは「ワカ」という。
そして今夜も青空はワカさんに会いにハンドルネーム「イスカ」になる
ためログインする・・・。
イスカ:
ワカさんは趣味とかってないんですか?ってなんかお見合いみたいです
けど・・・。
ワカ:
今は、最近やっとカノジョって呼べるようになった人がいるので、その
子とデートとかかなぁ、前は別のシュミがあったんだけどね。
イスカ:
カノジョかぁ〜いいっスね〜、ボクもそういう人ほしいかも、長い間
お付き合い続くといいですね〜^^
ワカ:
そうなることを願いたいね。でも、カノジョできると困ることがある
んだよ、端末覗かれたりとか TT ありえない・・・。
イスカ:
カノジョできたらできたで大変なことも多いんですね〜、ボクなんて
端末勝手に覗かれたりしたらキレそう ^^;
イスカ:
ところでワカさんの前のシュミって何だったんですか?
ワカ:
んと、今は規制がかかっちゃってできなくなったんだけどね、ネット
ゲーム「The・World:R2」ってあったでしょ?あれをやっ
てたんですよ。
イスカ:
あ〜数年前ボクもダチから進められました〜学校で、全然興味なかった
から聞き流してたんですよ〜、その頃ボク別のシュミで時間取られてた
から。
ワカ:
そうなんだ〜。もしかしたらやってたら会えてたかもしれないね〜、す
ごいハマると面白くて、あれのおかげでダチもたくさんできたしね。
イスカ:
そういう話を聞くと、無性にやりたくなります〜、あ〜、そんなに面白
いんだったら、あの時ダマされればよかった〜 TT
ワカ:
ダマされる?・・・ですか?
イスカ:
絶対面白いから、ダマされたと思ってやってみろよ〜、って進められ
たんですよ〜。ホント、やってみればよかったと今さら後悔です。
ワカ:
こう見えてもR2では名が通るほどだたんだよ〜、って見えてないかw
いつもはこういうくだけた話は少なく、環境に関する青空が思っている
ことを質問したり、逆にこちらが分かることは教えたりしている。
まあ話がそれて、息抜き程度の世間話はする。たまに親のことでグチッ
たりもするが、ワカさんはそれも嫌な顔一つせずに聞いてくれていた。
・・・って顔は見えてない。
しかしネットでも文面からいわゆる「雰囲気」は出たりするものだ。
いつも青空に目覚まし時計が聞かないのは、このチャットで夜更かし
するからである。
ネットで時間を忘れる、退屈な時間も忘れられたらいいのに・・・たまに
そう思う青空なのであった。
(あとがき)
青春爆発ボーイズ・ラヴ編終了〜・・・と思ったら大間違い!これは
6話以降も続いてるかもです・・・そして謎の人物ワカも出てきて、
やっと/.hackっぽく・・・なってないですね、ゴメンナサイ TT
またまた一つ飛ばした予告を・・・。第7話にはワカさんよりももっ
と謎の人物「マッチャン」が登場します。そして6話にはあの仮面も
(装着して血を付けたら吸血鬼にもれなくなれるような仮面ではあり
ません)登場。
あいかわらずユルユルスタイルで書きたいと思います。
それでは・・・。
2年3組たけと:「しつもーん」
はい!手を上げたタケトくん、なんですか?
たけと:「第一話に登場するR2Mってなんの機械ですか〜?」
「うん!素で間違えましたR2MじゃなくってM2Dですね、タケト
くん君は刀をにぎってアヌビス神にでもとりつかれたのかな?そん
なこと見破らなくていいですよ」
たけと:「その攻撃も覚えたゾ」
無邪気な小学生時代のたけと君からのご指摘でしたつまりは・・・・
間違えてましたゴメンナサイ・・・。
[No.1051]
2008/02/20(Wed) 21:07:06
Re: .hack//R.D 第六話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
「俺がThe・Worldに刻んできた想いの全てを
この一撃にィッッッッ」
この想いはどこに届き、そして願いはかなったのか・・・。
そして憑神は消滅した・・・。
それが本来の姿なのだ。
その者たちはその後、真にこの世界のすばらしさに触れる。
しかし、その代償に気がついていたのだろうか・・・?
その笑顔に・・・
その涙に・・・
その怒りに・・・
女神は慈愛のまなざしを向けた。
そして目を閉じた・・・。
「来たのですね」
一見何も見えない空間につぶやく。
「さすがは全能の女神、その能力までも使えますか」
その声と共に女神の周りには七つの聖櫃のようなオブジェクトが出現する。
聖櫃は一斉に開き、その中から七本の鎖がまばたきするほどの速さで
飛び出し、女神に絡みつく。
「一本足りません・・・これでは私を縛ることはできませんよ」
目を閉じたまま巻きついた鎖の事など気にする様子もなく言葉を発する。
「それが一人退席してまして・・・しかしあなたはもう見えているはず
ですよ、その能力がつかえるのだからね・・・」
「八本目の見えざる鎖、貴女は神だ、しかし・・・優しすぎる」
それがどういう意味なのか、女神には分かっていた・・・いや、もう
その結果を知っていたというべきだろうか。
「行きましょう・・・」
その声で聖櫃は青いエネルギーフィールドを作り出し女神を包み込む
と何処かへ消えた・・・。
始まりと終わりを象徴する青き魂と黒き魂は互いのキー・オブ・ザ・
トワイライトであると共に彼らのキー・オブ・ザ・トワイライトに
もなってしまった・・・それを本人達が気付くことは無くとも・・・。
ジジジジジ・・・ミーンミーン・・・
ピ〜ヒャラリラリラ・・・ドンドコドンドコタッタッ
「そこのお兄ちゃんイカヤキどぉ〜うまいよぅ〜」
「イカじゃねえだろ、タコだよ!」
「うるっせぇ、だまってろィ」
「おい、クジやろうぜ、クジ」
「おと〜さん、あのあかいおさかなとって〜ぇ」
虫、人、楽器の音、そして食べ物の焼ける香ばしい香り。
これだけフレーズを並べればわかるであろう。そう・・縁日である。
「お〜い、タケトぉ〜りんごアメ買ってきたぞ〜」
人ごみみまみれながら、そしてそれをかき分けるようにタケトの所
へ向かう青空。
ガツッ・・・右足のスネに誰かの足が引っかかった感覚を感じた時
には・・・もう転んでいた。
「あ〜あ、大丈夫かぁ〜青空」
急いで駆け寄るタケトだったが、そのタケトも・・・転倒した。
倒れている青空のちょうど隣に倒れる形になり、地面スレスレで
互いの顔を見合わせる。
そして青空は一つ発見した。タケトの頭にはギュンダーのお面が
装着されwていたのだ。
倒れたままで、
「お前、ホンッッッとに好きだなギュンダー」
二人とも笑いが込み上げてきた。笑いつつも立ち上がる二人、しかし
立ち上がった直後に青空が痛い、と言わんばかりの顔をする。
「どうしたっ青空、どっかケガしたか?」
心配そうにタケトは青空を見つめる。
「いや〜転んだ時じゃないんだけど・・・」
・・・と言いかけwたがそれを最後まで口に出さずに飲み込んだ。
実のところ青空は、朝から頭痛で苦しんでいた。朝目覚めた時ベット
の階段を降りる最中、突然頭に痛みが走り、ズキズキしていたのだが
今日はタケトとの約束があったし、この後にもクラスのみんなで催さ
れる、夏のきもだめし大会があるのだ。
青空は夏に一度しかない、このビッグイベントをタケトと共有したい、
そういう気持ちがあった。
タケトの性格上頭が痛いなどと言ったら必ず、無理はするなよ・・・、
そう言うだろう・・・。青空はそう予測していた。
「あ〜りんごアメ、だめになっちゃったなぁ」
青空はそう言うと、落として人に踏まれ割れてしまったアメに目をやり
ながら、ため息をつき肩を落とした。
「ま〜いいじゃないの〜〜」
その声が聞こえたその時、目の前が真っ暗になった。
タケトが自分の持っていたギュンダーのお面を後ろから青空にかぶせた
のだ。
「おぉおおおぉぉお〜、びっくりしたぁぁぁぁ」
あわててお面をはずす。そのやり取りに気付いた周囲にいる人達もクス
クスと笑う。
「それ、やるよ」
そう言ってタケトスマイルを見せた。りんごアメを落としてへこんでい
る青空へのタケトの小さなやさしさであると同時に、ムリをしている青
空への感謝の気持ちが込められていた。
なぜならタケトは青空と待ち合わせ場所で落ち合った時から、どこか
辛そうにしていた事がわかっていたからである。
そして、もしかしたらこの最高にやさしい友達ともいつまで一緒にいら
れるのか分からない・・・、そうも思っていた。
「そろそろ時間だな、学校行こ〜ぜ〜タケト」
左手首に付けた安物の時計を見ながらタケトに促す。
「お〜う」
タケトはそう言いながらも、ちゃっかりイカヤキを購入、露天のおじ
さんにお金を渡していた。
(あとがき)
シュト○・ハイムに手術してもらって執筆速度が30%減速してしま
ったガソダムです。こんばんは。
夏休みスペシャル縁日編終了でございます。予告していた6話をやっ
と投稿できました。すこしだけ.hackっぽいところが出たので(それ
でもちょっとしかない)すこしホッとしています。
まぁ、シュト○・ハイムは手術に失敗しましたが・・・。
ついに次回謎の男「マッチャン」の登場でこの世界に革命が起こる
・・・ことはないんですが、まぁ新キャラ登場にご期待してください。
そして9話と10話にはあの方々が登場・・・。
アカ○があんなことやこんなことになってしまいます。
そして謎の最強○○○○ーの○ッ○が火を噴きます。
乞うご期待。
それでは・・・。
[No.1057]
2008/02/23(Sat) 20:12:17
Re: .hack//R.D 第七話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
周りは虫の声くらいしか聞こえないのに、がやがやと騒ぐ一団がそこ
にはいた。
懐中電灯を顔の下から突然照らし、怖がりの女子生徒を脅かす男子生徒。
暗いのをいいことに後ろから指カンチョーして追っかけまわされるお調子者。
縁日で仕入れた爬虫類系のゴム製玩具を背中から入れられ、取ってくれ
ェwと叫びたいけど夜だから叫べない者。
とにかく終始落ち着きがない。
「お〜みんな来てる〜」
タケトは不用意に大きな声を出す。それを聞いた担任はギロリとタケト
を一睨みすると、タケトはすみましぇ〜んといった感じに頭を下げる。
「タケト〜来たかぁ〜これで盛りあがんなぁ〜」
クラスのみんなに歓迎されるタケトを見て、なんでこんなに人気者なの
に、ウチの学校に来るまで友達ができなかったんだろう・・・・・・。そんな
ことを思う青空だった。
しばらくするとクラス全員が揃うことになった。
近隣の住人に迷惑がかかるからか、やや押え気味の声で担任が
「よ〜し、揃ったんで、みんな体育館に入りなさ〜ぃ」
と号令をかけた。
担任が押すスイッチと共に体育館の高い天井の水銀灯がゆっくりと
明るさを増す。皆まぶしいのか、目を細め視野を狭くする。
「しつも〜ん」
クラスのお調子者の一人がフイに元気よく高く手を上げながら言った。
担任は左手に持っている懐中電灯でそいつを指しながら
「なんだ?言ってみなさい」
それを受けた途端、突き上げた手を一人の男に向け指差し、
「なんで体育教師のマッチャンがいるんですか〜?」
その指差す方向には、最凶の教師、歩く破壊兵器、黒い巨塔、ミスター
ニ中、エトセトラ・・・・・・と数々の呼び名を持つ体育教師の松本が俺の
出番か?と言わんばかりにマッチョポージングを決めて立っていた。
「ギャ〜〜」
女子生徒の黄色い悲鳴が轟く。
それは無理もなかった・・・・・・松本は上半身裸に下は短パン一枚だったの
である。そしてその手には怪しげなロウソクを持っていた。
「し・・・失敬な!先生何もしてないだろう!」
松本はその太い腕で、キャ〜キャ〜言っている女子生徒を指指しながら
そう言う。
さすがの最凶の教師も女子生徒には少し甘く、そしてたじろいてしまう
ようだ。
ボディービル県下一位の破壊兵器のそんなカワイイ一面を見て、男子生
徒達は茶化す。
そんなやり取りを見つつ青空はあきれ、そしてタケトはギャハギャハ笑
っていた。
「え〜それはさておき、とりあえず松本先生からお話があるので少し静かに。
あきれつつも担任は場を収める。
落ち着いた生徒達はある程度集合して、その場に体育座りで座る。
生徒達が全員見えるであろうという位置に松本は立ち、話を始めた。
「え〜、皆さんおなじみの松本です、コンバンワ」
そう言うと即座に生徒の一人が、
「ヨッ!マッチャン」
と合いの手のような茶化しを一つ入れる。松本はもともと型破りな教師
として上役の教師達からは睨まれ、生徒達には人気があった。
体育の授業でバーベルをやらせたり、雪が降ると必ず雪合戦、オリンピ
ックでハンマー投げが前日にあるといきなり予定を変更してハンマー投
げにしたりと、他に類を見ない教師であろう。
松本は話を続ける。
「え〜クラスきもだめし大会をやるという情報を聞きつけ勝手に参戦
表明な私ですが・・・・・・きもだめしの前にやることをみなさんは忘れ
ていませんか?」
と持っているロウソクを左手で指差しながら皆にアピールしつつ、
「きもだめしと言えば、もとい、夏と言えば怪談話でしょうが!それで
もっと怖くなってからじゃないときもだめしなんて私が許しません」
やはり型破りである。
「明かり消してくださ〜い」
そうマッチャンが指示すると、担任は明かりを消す。一斉に消えると
そこにはロウソクが作り出すオレンジ色の空間が作られた。
ロウソクの火に、その浅黒い顔を近づけるマッチャン。元々野太い声
をさらに必要以上に低くして
「誰かこわ〜い話持ってる人はいないかなぁ〜?」
その様子を見て「お前が怖いわ」と思ったのは青空だけではなかった
だろう。
その声を受けて「は〜い”」といかにも作ってるだろお前と言う声で
タケトが手を上げた。
マッチャンも負けずに
「よ”〜し、ぢゃあ”おまえ”が語り部にな”れ”〜」
タケトもノリ良すぎ、そう思う青空。
そしてタケトは話を始めた。
「ある小学校にとてもとてもやさし〜い子がおりました・・・・・・」
「その子はとても成績が優秀で、明るく、人柄も良いのでクラスの
みんなに慕われておりました」
「しか〜し、彼はその良すぎる頭脳ゆえに、もっともっと人に慕われ
よう、そして世界を自分が良くしてやろう、そう考えるようになっ
たのです」
「彼は学校以外にその活動を広げようと考えました。そして地域活動、 その他を経て、やがてより人の集まるインターネットの世界に活動
の拠点を移していきました」
「ネットの世界には年齢も性別もそして社会的な地位でさえも関係な
く、地域活動などでは子供だからとやらせてくれない仕事なども無
く、よりやりがいを感じるようになりました」
「困っている人達の相談を受け、そして何人もの人にアドバイスし、
あまたの人達を助けることができました」
「しかし同時に気付いてしまうのです。助けることができるということ
は、滅ぼすこともできるのでは?操ることもできるのでは?彼の高い
頭脳はその探求心を抑えきれず、負の可能性を探求し始めたのです」
「そしてついに悲劇が起こりました・・・・・・。とあるテレビ放送局が、
本当にあった怖い話的な番組で視聴者からの情報をもらい、それは
その子がいる小学校で誰もいないはずの校舎には夜中に変な明かり
が見えるというものでした」
「そして学校側の承認も得ずに学校に入り証言者から教わった場所へ
言ってみると・・・・・・証言通り、部屋からは明かりが漏れているので
す・・・・・・」
「取材班は警戒しながらも、その部屋に入っていきました。するとパ
ソコンのディスプレイが付いていました」
「な〜んだ、パソコンの消し忘れかぁ。と大したことではないと思い、
その付いたパソコンを消しに行ったそのときです」
タケトは言葉を溜めに溜めて、
「そこにはM12Dを付けたまま子供が立っていたのです」
「うわぁぁぁぁぁぁ」
タケトはいきなり声を大きくし人につかみかかるようなジェスチャーを
入れ皆を脅かす。
「取材班はそう声を上げました。しかし、よく考えてみるとただの子供
じゃないか、そうは思えどしかし何があるかわからないので、慎重に
その子に近づいてみました」
「近づこうとしたその時その子はドサッとその場に倒れてしまいまし
た。取材班は急いでその子に駆け寄りました、が、その子は小声で
なにか言うと意識を失ってしまいました」
「ただの子供のいたずらか、そう思い、倒れているその子を起こして
あげようとするその時に見てしまったのです」
クラスの皆はひるむような、でも続きを聞きたいような、そんな複雑
な顔でタケトに注目する。
「壁に血で書かれた文字を”――」
その時タケトとは別の声が轟いた。
「ぎぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ〜」
そう言いながらマッチャンはその体格に似合わぬ速さで体育館を後に
しようとしていた。
マッチャンは自分から怪談話をしようと言い出しておきながら、
人一倍怖がりだった・・・・・・。
その逃げ出すマッチャンの背中を見てクラスのみんなからは笑いが
起きていた。
そしてこの怪談話にあやかってタケトにちゃっかりしがみついている
女子生徒も見られた。
こうして緊急きもだめし前怪談話は笑いのラストを迎えた。
(あとがき)
ふぅぅ・・・・・・夏休みスペシャル怪談話編終了です。ちょっとだけG.Uの
話を入れてみました。(ゲーム本編じゃないけど)そしてマッチャンの
登場です。このマッチャン実は実際の人物をモデルにしてまして・・・。
ゲファゲファ・・・・・・本人が見たらやばいのでこの話はここまでにして。
また一話とばしの話を、第九話では○○ ○○の○ロが○○ ○に炸裂
しちゃいそうになったりと○○ ○○や○○○のその後がどうなったか
など(たぶん)見所満載です。
そして元原稿は・・・10話から進んでねぇぇぇぇってことで今後の展開
を練り中なのでありましたとさ・・・・・・。めでたしめでたし・・・。
じゃなくてがんばります。
それでは・・・。
[No.1104]
2008/02/27(Wed) 20:52:39
Re: .hack//R.D 第八話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
再び体育館全体が明るさを取り戻すと、きもだめしの組み合わせを決め
るくじ引きが始まる。
始まるやいなや、なんとなく空気が変わったなぁと青空は感じたので
周りを見渡すと、皆がそわそわしている。
特に女子生徒は気合が入っているように心なしか見えた。
くじ引きが進むたびにガッカリしたり、ヨッシャーとガッツポーズを
取ったり、まさに十人十色だ。
そしてタケトの番が回ってきた。
くじ引きの箱に手を入れるタケトの手に皆の目が集まる。
じらすように箱の中の紙を混ぜくるタケト、そのじらしにしびれを
切らせた短気な人から「早くしろよ〜」なんて声も上がる。
とりゃ、っとクジを一枚引き抜くと中を見る。
自分のクジをマジマジと見つめる女子生徒達。
「ん”〜?」
タケトは開けたクジを見て難しそうな顔をする。
「松本 三郎」
タケトファンからは、
「え”――――――っっっっっっっ」
という女性はめったに出さないような低い声を上げる。
「と・・・・・・いうかどうするんすか?・・・・・ね?」
とタケトは困ったような顔で担任を見ると、担任は黒目を上に上げ
少し考えて、
「ま、松本先生は逃げちゃっていないし、当たりってことで好きな人
を指名しなさい」
タケトは「お!」と何かひらめいたような表情で青空を見る。
「青空がいいです」
タケトは体調が悪いのに自分のために今日のイベントに参加してくれ
た青空への心ばかりの感謝の表れであった。
まあ、もれなく青空にはタケトファンから「あんた辞退しなさいよ」
的なひんやりしそうな眼差しをプレゼントされた。
その雰囲気にビクッっとした青空だったがタケトと組めることは素直
にうれしいようだ。
まあ、なんだかんだで楽しくイベントは進む。怖くて泣いて帰ってく
る子もいれば、気の強い女子生徒にしがみつくように帰ってくるヤツ
も居たりと各々の性格が出てほほえましい。
きもだめしのルールは体育館から出発し、野外の渡り廊下を通って第
一校舎に入り、その一階にある柔道場にあるお菓子を一袋取って二階
に上がり、二階の渡り廊下を通って、第二校舎へ。
そのまま二階にある電算室側の階段を上がって三階に上がり、その階
にある理科室に入ってリトマス試験紙の色を変えて、その後四階の音
楽室へ行きピアノの上に置いてある楽譜を一枚持って来て、一階に降
りて第二校舎からの渡り廊下を通り、体育館に帰るとジュースをもら
えるというものである。
とりあえず学校行事、その部屋にちなんだ事をするという趣旨で考え
たプログラムだ。
青空たちが次に向かうということで前のペアが帰ってくるのを待って
いたら、あまりの怖さにルール無視でとりあえずルートだけ通って
ダッシュで帰ってきた。ペアの人ももらい泣きもといもらい恐怖とで
も言おうか、持ち帰るはずのお菓子も持たずに追いかけるようにダッ
シュで帰ってきた。
「そ・・・・・・そんなに怖いのかな」
ちょっとだけそれを見て顔がひきつるタケトに、さっきまで怖い話し
てただろお前さんはと心の中でツッコミを入れる青空だった。
体育館を出て渡り廊下まではそうたいした怖さではない。第一校舎に
入るなり一段階暗くなり、恐怖感を増幅する。
「なぁ、青空ってこういうの平気なの?」
めずらしく弱気なタケト、少し猫背気味で怖がっているのが分かる。
そんな一言を受けて青空は、胸を張ってタケトの前を歩く。
「あったり前だろ〜、幽霊とか化け物なんてこの世にいるわけないし」
そう言ってみるものの、その実、青空は思いっきり強がっていた。ク
ラスメイトの前で情けないところを見せたくは無い。
特に前のペアみたいなのは最悪だ。今後どんなあだ名を付けられるか
分かったものではない、そんな割とくだらない事が青空を守る砦であ
った。
柔道場に着く。置いてあるお菓子を取りに行くと、学校の先生が考え
そうなサンドバッグに柔道着を取り付けた、陳腐な置物が立っている。
よく見ると人でいう顔の部分にマッチャンが書いたと思われる自画像
が貼ってあった。
「笑わすなぁッッッッッッッッ」
と二人で笑いつつタケトはそのオバケに向かってギュンダーキックを
炸裂させた。
柔道場を出てルート通りに二階へ向かう。目が少し暗さに慣れてきた
せいか、少しだけ視界は良好になった感じだ。
第二校舎に着いたところ辺りでタケトの様子が突然おかしくなる。
前を見たまま震えている感じが持っている懐中電灯がカタカタ音を立
てていることで伝わってきた。
落ち着けてあげようと青空はタケトの両肩をつかんで、
「どうかした?タケト?」
と勇気付けるように訪ねてみる。
「で・・・・・・電算室から・・・・・・明かりが漏れてる・・・」
震えが止まる様子はない。
「先生の演出だよ〜演出〜」
と電算室から漏れる光を確認しながらもさらにタケトを力づけようと
した。
青空はとっさにさっきタケトが話していたことが頭に蘇る。
その間にタケトは放し始めた。
「あのさっきした話な、何年か前にテレビでやってた本当にあったこと
をアレンジして作った話なんだよね」
青空の顔が瞬時に変わる。いやいやそうそうそんなことが起こることは
無い、と半ば無理やり自らを納得させようとしていた。
「そ・・・・・・そんなことあるわけ無いって〜じゃあこうしよう、俺が先に
行って電気つけて見てきてやるよ」
タケトの頭の中には数年前にテレビで見た番組「オンラインジャック」
の生々しい映像が残っている。それを目の当たりにしていない青空と
の恐怖感とは”桁”が違うのだ。
青空にしても逃げ出したい気持ちはあったが、もう口に出して強気発言
してしまったからにはどうしようもない。
背中にいやな汗が出ていることを自らで感じながらも一歩一歩進む。
電算室に近づくにつれ、その怪しい光源を強く感じることができる。
電電蚕室のドアが見えた時、半分開いていることがより恐怖感を膨ら
ませた。
電気を付けるスイッチは入口のそばにある。入室をためらうように手
だけを入れ、暗闇の空間を手探りしてスイッチに中指と人差し指をかけ
スイッチを入れる。
ゆっくりと中を見る・・・そしてホッと肩を落とす青空。そこには人など
いなかったし、ましてや壁に血で書かれた文字などどこにもなかった。
青空の体をとりまいていた緊張という錘が取れ、一気に体が軽やかに
なった。
青空は電算室から半身だけ出し、何事もないよとタケトに向かって両腕
を上げ輪を作る。
タケトもそれを見て電算室に駆け寄る。
「まぁ、ただのパソコンの消し忘れだろうなぁ〜、こんな時にビビらせ
んなって感じだよな」
まだすこし震えが残るタケトの恐怖心を取り去ってあげようと青空が
声をかける。
「あ〜あのパソコンだな、消しとこか」
そう言いながらディスプレイがついているパソコンに近づく。その
ディスプレイを見るなり、少しおかしいことに気付いた。テレビの
チャンネルを何度も連続で切り替えるように高速でディスプレイに
映る映像が切り替わる。
「ウィルスにでもやられてパソコン切れなくなってそのままにしてる
のかなぁコレ」
と青空は入力機器を操作してみる、しかしその動きは止まる様子がない。
「う〜ん、どうしようも無さそうだな、ほっといて行くか」
とタケトが言ったときに青空は一つの見落としがあったことに気付いて
ゾッと悪寒が走る。
タケトの怪談話の中に出てきた、立ち尽くす少年に自分達がなるの
では?そう思うとさっきまでの恐怖感がまたたく間に戻ってきた。
そんなことを考えていてディスプレイから目をそらした間にピタッと
画像が止まった。
「なんだこれ?」
思わずそれを見たタケトは声を漏らしていた。
それは真っ黒な画面の真中にホームページのURLらしき文字が赤く
表示されているだけというものだった。
まるでディスプレイ自体がここに入れ、と語りかけているようにも見
える。
確かに人間とコンピューターの関係はコンピューター言語を使った対
話と言われたりはするが、これはそれを超えた、機械的に語りかけて
くるのではなく、肉声に近い息遣いのようなものを漂わせている。
二人はそれをさも見ていないように横を向きお互いの顔を見合わせ、
「これは消せそうにないな、出ようか」
と青空が言い、その問いかけにタケトは声も出さずに首を二回ほど
コクコクと縦に振る7。
けっしてもう二度とその画面を見てはいけないと二人はそのままの
体勢で、二、三歩出口に向いて歩くと、
「うわぁあああぁあぁぁぁぁぁ」
と怖がりな人が幽霊を見たときのようにあわてふためきながら電算
室をダッシュで飛び出た。
その二人の背を見送るようにディスプレイは「ヴン」という機械音
を立てて消えた。
その後一応ルートに戻り、心臓バクバク状態のままゴールの体育館
へ戻る。
担任にジュースを手渡された時二人とも腰砕け状態になり、缶のプル
タブを開け、その渇いたのどを潤した。
帰ってきてもなお、二人の脳裏にはあの画面の印象だけは残っていた。
・
・
・
・
・・・Lost・・・Lost・・・Target L−1274−177−H701・・・
・
・
・
・
・・・Lost・・・Lost・・・Target L−1300−275−YX81・・・
・
・
・
・
(あとがき)
夏休みスペシャルきもだめし編終了です。
今回もマッチャンがオイシイところを取って行ってしまいましたが、
まぁそれは置いといて青空とタケトがペアになるというベタな設定
にあきれつつも筆を何とか進めたいと思います。
元原稿は11話をやっと書けたところです。
ハッキリ言って11話・・・・・・あんまり面白くない; ;
でもちょっと話が進むというお話です。
ダウン○○ンの笑ってはいけない病院24時くらいは面白くできる
ようがんばる所存です。
それでは・・・。
[No.1116]
2008/03/03(Mon) 22:30:55
Re: .hack//R.D 第九話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
「らからぁ〜言ってるらろ〜、俺だって俺なりにやってるんらよ〜」
そう言って料理の並んだテーブル越しに座る、ちびちびと控えめに
ビールを飲む男にグチをこぼすヨッパライがそこにはいた。
笑い、泣き、時には酒がもたらす体の熱気を抜くため服を脱ぎだす
輩も現れる場所・・・・・・そう、ここはリーズナブルなヨッパライの聖地
居酒屋である。
「分〜かったっての、お前さっきから同じ事七回は言ってるぞ」
この居酒屋よりほど近い大学に通う三崎 亮は先に出来上がって同じ
グチを連呼されて、押され気味かつ呆れ気味にそう言う。
「い〜やアカヲ、お前は分かっれらい、ぜ〜んぜんわかっれらいよ」
そんな正論このヨッパライには通用していない。
酒により思考回路というものは完全に狂わされている。このヨッパライ
は仮にもコンピュータのシステムを作る会社の人間だというのに。
酒というコンピュータウィルスに脳内コンピュータのプログラムにルー
プ文でも書き加えられたか?亮はゲーム内でのチャットで顔見知りと話
すような一文を頭の中でタイピングした。
「そりゃ俺だって・・・・・・」
言ってる途中に二人の座るテーブルの横を女性店員が通る。
「オネーちゃん冷酒もうイッポン追加れ〜ってオネーちゃん、かわいい
ねぇ」
少し困り気味の顔をしながらも店員はオーダーをメモる。
「あ、何いってたんらっけ?おれ」
またループしそうだ、そう思いながらも苦笑いの亮。
「おもいだしらよぉぉぉぉぉぉ、おれらって、分かっれはいるんらよ、
アイツが上司らって」
「れもな、そういういいかたはらいとおもふんらよ〜」
男は亮に顔を近づける。
もう延々と二時間この男、香住 智成の話を聞いている亮。
ちなみに智成が亮のことをアカヲと呼んでいるがこれは亮が東大一発
合格を決めた時にG.Uのメンツが集まり、祝いのちょっとしたパー
ティをした時に智成がモテヲの次に付けた亮のあだ名である。
東大のシンボルから来てるようだ。
俺の通う柏キャンパスには安田講堂も赤門も無いのにな・・・・・・当時亮
はそう思ったそうだが・・・・・・。
「まぁ、あのオバンの言うことなんてほっとけよ」
亮の言うオバンとはもちろんあのオバンである。そう佐伯 令子のこと
だ。
智成は令子の部下として働いていた。だからといってCC社の社員にバ
イトから昇格したという訳ではない。
CC社は第三時ネットワーククライシスを引き起こした主犯として社会
からの信用を失い、そして株価は急落。
アルティメット社に救済の手を差し伸べたが、アルティメット社は株主
総会の決定によりCC社との提携を切る決断を下す。
加えて好調を博していた「The・World R:2」はネットゲー
ム規正法により突如のサービス停止に追い込まれ、ついには倒産という
結末を迎えていた。
そんな折、八咫こと火野 拓海は下がったながらもCC社の株を売却し
た資金の一部を元にシステムエンジニアであった令子に会社を立ち上げ
てみないか?と話を持ちかけたのだ。
拓海は投資する条件として意外な二つの注文をつけた。
その会社の社長には令子が就くこと、もう一つの条件は、香住 智成を
システムエンジニアとして育て上げることであった。
拓海はG.Uのメンバーであった令子には自分からの卒業、智成にはさ
らなる成長をしてほしいと願っていた。
そして拓海自身もやらなくてはならないことがあったためにその会社の
代表になるわけにはいかなかった。
それは自らの告発によって職を失った、一連の事件に関わっていないC
C社の社員達のことである。
正義だと思い行った行動が時には残酷な結果を生むこともある。そうい
う自責の念が拓海にはあったのだろう。
そのため拓海は自らはその情報力という得意分野を生かし総合コンサル
タント会社を設立、そして、それらCC社倒産による失業者達を受け入
れたのであった。
そういう経緯もあり、智成は晴れて念願のシステムエンジニアになれた
はよかったものの、オバンこと令子にビシビシ鍛えられていたのだ。
そして仕事で令子に怒鳴られるたび、亮は決まってグチの聞き手となる
ことを要求されていた。
学生だからある程度時間あるだろう?な〜んて思ってるんだろうなぁ、
同じ事を何度も聞かされて話に飽きてきた時にこのヨッパライを見て
亮はいつもそう思う。
亮は実は結構大学の研究などで忙しいのだが、あの戦いをともにくぐり
抜けてきた、戦友はやはりほっておけない優しい一面を持っていた。
うう・・・グスッ・・・グスッ・・・
「オレらってわかっれるんだよぉ・・・令子が怒るのはオレのこと一人前
にしてくれようとしてるんだってことくらい・・・・・・」
と、いきなり泣き上戸にモードチェンジし始めた。
これにはちょっと亮も引く。困ったような微妙な笑みを浮かべつつ
「そ・・・・・・そうだよ、あのオバンだって悪気があって言ってるんじゃ
ないって・・・・・・たぶん、だから泣くなって、な?」
そう慰めようと言うが.
「ぐすっ・・・ひっく・・・社会人の辛さの何がわかるってんだよぉぉぉぉ
大学生ぇぇぇぇぇえぇぇ」
そう言いつつ亮にがぶり寄って服のエリを両手で掴む。
逆ギレモード発動・・・・・・たいした百面相っぷりである。
「ちょ、ちょっと・・・まて・・・」
そのいきなりの勢いに対応しきれない亮。
その直後「ヴっ」っと智成の顔は青ざめ、亮の顔もそれに呼応するか
のように「ヤバイ」という顔に変わる。
まるで、つぎの智成の行動を予測できているかのように智成の手を払
いのけ、横に回避する。
隣の席で焼き鳥を食べてる人がその焼き鳥を口に運ぶくらいの時間に、
亮たちが座ってる席の料理には智成の口から放出されるそのヘドロが
ぶちまけられていた。
「冷酒お待たせしました〜」
タイミングよく来たさっきの店員のお姉さんと亮はそのヘドロっぷり
を見て二人ともゲッソリした顔で立ち尽くしていた。
出した本人はスッキリとやりきった満足げな男の顔をしていながらも
口内のすっぱ味を感じていた・・・・・・。
(あとがき)
ヨッパライ智成ワッショイ○ロ祭り居酒屋編(ポロリもあるよ○ロが)
終了です。
すごく楽しく書けましたこの回は、予告でこの展開を予測できた人は
すごいと思います。
元原稿は12話まで進みました。
今後もジャッ○ー・○ェ○ばりにハッスルアクションしながらがんば
ります。
それでは・・・。
[No.1119]
2008/03/05(Wed) 13:08:27
Re: .hack//R.D 第十話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
・・・♪♪♪ ♪♪ ♪♪♪♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜〜・・・
端末から流れるやさしいピアノをメロティーとして使った音楽がそれ
を聞いている者にイヤホンを通じてリラックス感を与える。
夜もずいぶんふけているにも関わらず、その研究室からは研究棟の廊下
に薄明かりを漏らaす。
「ん〜、人に教えるのって難しいな・・・」
お世辞にも座り心地の良いとは言えないイスに座ったまま、肩に入っ
た力を抜くようにノビをする。
ジャジャジャジャ〜ン♪ ジャジャジャジャ〜ン♪
聞いていた音楽とは全く違ったテイストの音楽が着信音として流れる。
自分で設定しておきながら、そのギャップにいつもびっくりする。
「アトリちゃん?・・・じゃなかった千草ちゃん、令子です、今空いてる?」
通話ボタンでモードチェンジしたとたんに佐伯 令子からの声が日下
千草の耳に入ってきた。
「あ、今ちょっと学校で勉強中ですけど、ちょっと行き詰まっちゃた
んでいいですよ」
と明るめのトーンの声で返す。
「こんな夜まで勉強とは、将来いい先生になれそうね千草ちゃんは」
親類のお姉さん風に千草を激励するような一声をかけると、
「そ・・・そんなことないです社長さん」
と恥ずかしそうに謙遜しながらも、逆に令子が言われ慣れていない社
長という肩書きであえて呼んだ。
「その社長さんはやめてよね〜」
と電話の向こうで令子は少しむずかゆそうな顔になる。
デスクの上の端末で明日のスケジュールをチェックしながら、
「ちょっと、こっちも行き詰まったというか・・・ちょっとあってね・・・
ストレス解消に付き合ってくれないかな〜なんて思って」
令子は電話越しに千草の了承の声を待つ。
「いいですね〜、でどこにいきます?」
その返事をもらった令子は、何かたくらんでいるようににやりとしながら
「そうだなぁ〜今日はクラブでも言って大人の世界を千草ちゃんに味わ
ってもらおうか・し・ら」
千草はあぅぅぅぅぅ、とたじろくような複雑な表情になりながらも。
「クラブは雰囲気が苦手ですぅ」
と声が小さくなる。
そうなるだろうと予測していたかのようにクスクス少し笑いながら
「冗談よじょ・う・だ・ん。千草ちゃんをそんな所に連れて行ったら
死の恐怖に殺されちゃうわ」
と千草の彼氏である亮のことを冗談めいた「The・World R:2」時代の
呼び名を使い言う。
千草は顔を赤らめながら
「令子さんっっっ」
とすこしだけ右頬をふくらませる。
「そだなぁ〜、スカッとカッ飛ばしますか〜バッティングセンター行こう」
「はいっ」
にこやかにそう答えた千草だが、夜ということをすっかり話している間
に忘れ、ちょっと大きい声だったなとうっかり顔で口を右手で塞いだ。
火の元を確認しつつ研究室の明かりを消し部屋を出る。
キャンパスの中に生える国有樹を帰りに歩きながら眺めるのが千草は好
きでもはやそれは日課のようになっていた。
千草は家に帰る時間がまばらなので、この風景を見飽きるということが
無い。
「夜も綺麗だ」
そう自分だけの満足感に浸る。そうしながらも自分が朝置いた自転車
置き場に着き、自分の愛用自転車「カナリア丸」のロックを外し、鞄
を前に付いているカゴに乗せ、ペダルに足をかける。
サドルを高めにしているのか、交差点で止まると超つま先立ちとでも
言おうか、なんとも安定感が無い。
このサドルを高くしているのは少しでも背が高く見えるようにという
千草の心ばかりの維持らしいが、亮からは危ないからやめろとさんざん
言われている。
旧式の足こぎ自転車、こんな物は2020年において珍しい。電動式で
体に負担もかからない自転車がほとんどだが、骨董雑貨屋で購入した2
0世紀ならではのレトロっぽさが千草にとって最高に「オキニ」なのだ。
そしてこの不必要に力を入れなければ前に進まない自転車を合えて使う
理由には教師になったときのためにすぐ風邪をひきがちな体を丈夫にし
たいという願いが込められていた。
「先生は休むわけには行かないですからっ」
とは千草の弁である。
東大工学科でエネルギーの研究をしている亮にしてみれば
「無駄なエネルギーをつかうな」
とのことだ。
その「カナリア丸」のエネルギー論で喧嘩になったエピソードすらある
ほどだ。
〜ふっふふっふ〜ん♪〜
端末で音楽を聞きながら鼻歌混じりにペダルを漕ぐ。そしてカナリア丸
の駆動力が生み出す夜風にいっそうの幸福を得る。
そして令子との待ち合わせ場所の「ケツばっと」という名のバッティン
グセンターに到着した。
なかなか夜も遅い時間だというのにこのバッティングセンターは賑わい
を見せる。夏の厚さで寝苦しくなった人が体に余っているエネルギーで
も抜きに来ているのだろうか・・・。
そんな中やけにギャラリーを集めているブースがあることに千草は気付
いた。
気になったので行ってみると、かっこいいスーツ姿で美しいスタイルの
女性がボールをカッ飛ばしまくっていた・・・。
「行くわよッッッ、大学時代ソフトでエースかつ最強バッターだった私
をなめないでね」
130キロで飛んでくるボールを・・・
「これが私のきなこ打法よッッ」
クァキィィィィィィン、すごい金属バット音と共に打球は弧を描きなが
ら三塁側へ飛んでいく。
おおおおおお・・・とギャラリーから歓声が沸き起こる。
飛んでいく打球を見ながら令子は満面の笑顔で、
「長打コース確定ッッ」
とすごいスラッガーっぷりを発揮する。
すごい・・・そうは思いながらも、ちょっと声掛けづらいな・・・令子さんの
意外な一面を目の当たりにしてしまった・・・と千草は目が点なっていた。
しばらくすると入れた金額分ボールが飛んできたらしく、ピッチングマ
シンから令子に向かってボールは飛んでこなくなった。
「フゥ・・・一汗かいたぁ〜」
言いながらも令子はバットを置きながらハンカチを取り出し額の汗を拭う。
そして後ろを振り向くと初めて集まったギャラリーに気付く、同時にそ
の傍らにいる千草にも気付いた。
「あら〜千草ちゃん来てたの〜、来てるなら声掛けてよ〜」
とヒッティングしまくったからか機嫌良さそうに千草に声を掛ける。
(この後打ちにくいなぁ)
心の中でそうつぶやく千草。何で急にバッティングセンターに誘って
くれたのか気になって一言聞いてみた。
「令子さん何かあったんですか?スッゴイ打ってましたけど」
あれ?という表情をして令子は一言、
「なんだったっけ?打ってたら忘れちゃった」
またもや目が点になる千草だった。
「さあ、千草ちゃんももやもやしてること打って発散しよう」
令子は有無を言わさずお金を投入する。
「ちょ、令子さん私130キロなんて無理ですぅ〜」
千草は少し涙目になる。
そしてギャラリーの目は千草に集中、余計なプレッシャーを与える。
(逃げ帰りたい、もしくは穴があったらなんとか・・・)
そんな言葉が頭をよぎっている間にボールは飛んでくる。
ぶんっ、ぶんっ、ぶんっ・・・
なんともふんにゃりとした素振り音を立てて空振り連発、一回もボール
にかすることも叶わず、逆にストレスを溜める千草。
空振る回数に比例してギャラリーも立ち去っていった。
「だから言ったんですよぉ〜令子さん130キロなんて私無理ですぅ」
バットの振りと同じく130キロのスピードにゲンナリしたのか、出て
くる言葉もふんにゃり感が漂う。
それを見てニヤリと何かをたくらむような顔で令子は千草を見る。
「それじゃあ、お姉さんが教えてあげるね」
ちょっと怖いものを見るような目で令子を見て
「いやですぅ〜」
と言いながらもブースを出ようとする千草、しかしそんなノロい動きは
エースでスラッガーな令子に通用するはずも無かった。
「いやですぅ〜」
子供のようにダダをこねる千草を「いいから、いいから」と襟首を掴み
ズルズルと引きずりながらブースに戻す。
またしても有無を言わさずお金を投入する令子、そして渋々バッターボ
ックスに立つ千草。
さっきまでと違ったのは令子が千草の背中にピタッと密着し、一緒にバ
ットを握ったことだ。
暖かい令子の体温とそのロングヘヤーのいい香りが千草に安心感を与え
る。このいい香りは香水だろうか、そして令子さんの胸大きいな・・・、
なんて思っているうちに令子の力で自分の腰が回る。
カキーン
少しのバットの振動と共にいい音が鳴り響く。
(うっそ〜打てた〜)
と心の中ではしゃぐ千草。
「千草ちゃん腕でバットを振るんじゃないの、腰で振るのよ」
もう一度令子の力でバットを振るも、感じはつかめてきた。
そして一人でやってみる・・・。
カキーン
言われたとおり腰の回転力で振るとあまり飛ばないもののバットは球を
捕らえた。
「ヤッタ〜嘘みたい〜」
今度はうれしくて思わず声が出る。
まぁその後は当たったり、スカッたりの繰り返し、しかし楽しくバット
ィングできてさっきのストレスが飛んでいった。
ガタンゴトンッ
いびつな音を立てながら自販機から缶に入ったスポーツドリンクが出て
くる。令子は冷たく冷えた缶を千草に渡す。プシュッといい音を立てな
がらフタを開け、水分を体に取り込む。
「〜は〜おいしい〜」
その潤いに体全体が喜ぶ。
「ね、発散できるでしょ?」
とうれしそうな千草の姿を見て満足げに微笑む。
「はいっコーチ」
元気にあえて令子さんと言わず、敬礼を付け加えてコーチと言った。
まぁ、この子ったら、という感じで令子はうふふと少し笑った。
その後、またカッ飛ばしに来ようね〜と言いつつ令子は拾ったタクシー
に乗り込んだ。千草はカナリア丸と共にタクシーが見えなくなるまで見
送り、それから家に帰ろうとペダルを漕ぎ始めた。
(バッティングセンターって久しぶりに行ったなぁ〜打てるとこんなに
楽しいんだ、今度は令子さんには内緒で亮さんにコーチしてもらお)
そう思いつつ、最近会えていなかったので、ちょっと遅い時間だけど
連絡してみようとカナリア丸を止め端末を取り出した。
・・・ ・・・ ・・・
「はい、三崎です」
亮の声を聞いて千草はさらにゴキゲンになる。
「千種です、最近会えないから電話しちゃった」
電話越しに通りかかった車の音を聞いて亮は、
「あ、外から・・・だな? 今どこにいる?」
千草の明るい声を聞いたら今ゴキゲンだなと亮も会いたくなったらしく。
「あ、うちの大学の近くの河川敷だけど・・・今からって大丈夫? 夜
遅いけど」
と千草は気を使う。
「じゃあ今から行くわ、橋の近くのコンビにででも待ってろ」
もう手馴れたように手際よく待ち合わせ場所を決める。
「うん、待ってる」
明るい声で端末を切る。そしてカナリア丸に乗ってゆっくりそのコンビ
ニへ向かった。
コンビニで気になる雑誌などをチェックしていたら到着した亮がチラッ
と見えた。千草はコンビニの中から笑顔で亮に手を振る、それに答える
ように少しテレながら手を振り返す亮。
「悪ぃ今日、智成とのんでたからさ、走ってきて遅くなっちゃったな」
コンビニに設置されている掛け時計を見ると3時を回っていた。
「すっごい寂しかった・・・」
千草はそう言ってうつむく、と思いきや・・・にこっと笑い
「嘘だよっ」
少し大人になった千草は恋愛の「かけひき」ってやつを覚えてきていた。
それは亮との関係がより深くなっているからこそできる芸当だ。
亮はそんな千草を見て少し顔を紅潮させながら背を向けて、
「の、飲み物見てくるわ・・・」
とテレを隠そうと飲み物売り場へ避難した、千草はそれを追うように
ニコニコしながら後ろをついていく。
飲み物を遅くなった罰とでも言おうか千草の欲しがった雑誌を買わされ
また河川敷へと戻る。
まださっきの千草の「かけひき」にやられてしまっている亮。
ティーンエイジ最後の19歳という年齢はすごく多様性のある年齢
だからかもしれない。小悪魔を演じるのにもっとも適しているんじゃ
ないだろうか・・・前を歩きながら亮はそう思いつつまだ千草の顔を見れ
なかった。
顔を見れないまでも、後ろを歩いている千草にぎこちなく話し掛ける。
「最近どうだ?教員の勉強」
そういえば、それに行き詰まって令子とバッティングセンターへ行った
ことを亮に言われて思い出す。
「ちょっとムズカシイ・・・かな・・・人に教えるのって、なんだか大変」
さっきまでとはうって変わって力のない声色に少し心配になる亮。
(そういえば、さっき智成もオバンにシステム構築ならってるってグチ
ってたな。苦労してるのは智成だけじゃなく令子もかもな・・・)
そう思い、そのことを言って千種を元気付けようとした。
「さっき飲んでるときにさ、智成も令子に教わっているって言ってたよ
智成も令子もがんばってるみたいだし、俺たちもがんばらないとな」
振り返り千種の目を見てそう言ってみる。
「そうなの・・・令子さんは人に教えるのすごく上手なの、さっきバッテ
ィングセンターに令子さんと行ってて、打ち方教わったの・・・そした
らあっという間に当たるようになって〜」
ちょっと元気になったかと思ったら・・・
「あれだけ教える才能あったらなって、ちょっと嫉妬しちゃった」
すごく切ない顔をしたので、
「そ、そんなことねぇ〜って、てか智成のヤツがよ〜」
と、今日の居酒屋の話で千草を笑わせて、話が盛り上がり千種もバッテ
ィングセンターでの出来事で二人して笑いあった。
そういう、いろいろな話をしていると歩いている少し前方にかわいい
野良ネコを千草が見つけ、捕まえてそのネコをなで始めた。
「か〜わい〜い」
そう言うと亮にほらかわいいでしょ?とその小さな白いネコを亮に見せる。
それを見て亮もニコッと笑った。
そのままネコを腕で抱えて亮の前を歩く。亮に背を向けたまま千草は
話し始める。
「亮、あのね・・・一年前ここで私に言ったこと覚えてる?」
この河川敷で一年前に亮は千草に告白、そして付き合うようになった。
そのときのことを言ってるんだな・・・亮はそう話を受け取る。
「ああ・・・覚えてる」
超が付くほど、人に知られたら恥ずかしい思い出、しかし、それは二人
にとっては、切り離せない二人だけの大事な思い出だ。
最近会えてなかった不安が千草のどこかにあったのもしれない。
「弱気になった時、亮を頼りにしたいの・・・だから・・・」
そこまで言った時「ガチャン」というカナリア丸が転倒する音が千草の
耳に入ってきた。
びっくりしてとっさにネコを放り出し、後ろを見る。
(えっ・・・?)
さっきまでたしかにそこにいた亮の姿が消えていた。
この後に
「私を助けてね・・・ずっと私を見ててね」
千草はそう言葉を続けようとしていたのに、それが叶うことは無かった。
真夜中の闇がその密度を増し、千草の心を包み込む。
その悲しみは千草の目から出力され立ち尽くす千草の頬を伝い、儚く
消えた。
・
・
・
ドガッタァァァァンッッ、家のドアを蹴破ってその黒衣の集団は月の光
と共に侵入してきた。
「おいッ!こいつ、どうなってるんだ」
「どうなってるって言いたいんはコッチや!」
「な・・・なにすんねん、放せ、放せぇぇぇぇ!!」
・
・
・
・
(あとがき)
超汎用決戦スラッガーヒッティング編終了です。この回も楽しく
書かせていただきました。
この回の最初の音符はある曲のリズムだったりします、となんか編な
クイズみたいになってますな。最後の方急展開を予想させる終わり方
で今後どうなっていくのか・・・(もうどうなるのか設定はしてあるん
ですがそこまで長くかかりそうで辛い; ;そしてとても言えない)
まぁくじけずにがんばります。
それでは・・・。
[No.1161]
2008/03/18(Tue) 21:06:03
Re: .hack//R.D 第十一話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
蒼き炎猛り、白き彗星は旅立った。
その白き彗星は、光の海原を言いようも無い速度で流れる。
にげる。
ニゲル。
逃げる。
・・・そしてまた逃げる・・・。
七色の光が白き彗星に続く。
枷付けられし白き彗星追いつかれし時
白き彗星一つの星にぶつかり、光の粒となり
そして舞い散った。
・
・
・
ゆらりゆらり、窓の外をふと見ていると雪が舞い降りてくるのが見えた。
解き終わったテスト用紙の上に覆い被さるように頬杖をつきながら青空
は退屈しのぎに窓からどんより重そうな灰色の雲を眺めていた時のこと
である。
隣の席のタケトは豪快に爆睡していた。テスト開始から30分過ぎには
もう持っていたシャープペンを机に置く音が聞こえた。
(本当に解いてんのかな?大丈夫か?タケトよ・・・)
そうゆっくり振っている雪を見ながら竹とを心配しつつ降雪のスローな
リズムに眠気を誘われる青空。
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン・・・・・・。
そうしているうちに終了のチャイムが鳴った。
チャイムが目覚ましにならなかったようでタケトはまだ寝ている。
答案を集めて最後列のクラスメイトが困っているので青空はタケトに
デコピンをお見舞いし、それは見事にヒットした。
にぶい音を立て、
「いってぇぇぇぇぇぇぇぇ」
と声を上げながら飛び起きるタケト。答案を待っているクラスメイトを
見て今の状況を確認できたようで、言葉には出さないがゴメンね〜とい
う苦笑をしながら答案を渡していtた。
デコピンされたその一部だけ赤くなった額をさすりながら
「デコピン効いたわ〜、まさに一撃必殺で起こされた感じ」
「爆睡してっからだ」
自分でもあんなにキレイに入るとは思わず、その音に満足げな青空は
笑いながら言う。
タケトは教室を見渡しながら
「最近休み時間にM2D付けてる人多いよなぁ、みんな何やってんだろ?」
そう言われて青空も周りを見渡す。たしかにM2Dをつけてる人が多い
という印象を受ける。
いつも休み時間に新聞を読みつつタケトと話をしていた青空は言われて
みるまでクラスの変化に気付いていなかった。
「付けてる誰かに聞いてみたら?」
それでもさして気にしていない様子の青空は新聞を広げながらそう呟く。
「あ〜戦闘中に外すな〜」
そう声が聞こえた方向を見るとクラスメイトの一人からM2Dを外し、
それを着けようとするタケトの姿が見える。
「戦闘中?何のゲームかなん?」
そう言いつつM2Dを装着したタケトだったが、何か納得いかないよう
に首をかしげている。
「何これ?何も写ってないよ」
M2Dを取られたクラスメイトはウソ?まじか、と慌ててタケトからM
2Dを取り戻して装着すると、ホッとしたような感じで、
「は〜壊れたかと思った〜ビックリさせんなタケトぉ」
どうやら彼には画面が見えているようだ。
「俺には何も見えなかったけどなぁ」
さっぱり意味が分からない感じのタケトはまだ納得できないな的な顔を
している。
「なぁ〜、何やってるのか教えてよぉ〜」
納得いかないタケトは、なおも、そのクラスメイトに言い寄るとM2D
を目から額の位置にずらし、ちょっとこっちに来いとタケトを連れて教
室から出て行ってしまった。
青空はその光景を見ながらも、ま、いいか・・・と新聞を読み始めた。
給食の当番が準備を始め、少しざわついている中、戻ってきたタケトが
新聞に没頭している青空の肩を軽く叩いて、声を潜めながら放し始めた。
「分かったぞ青空、みんなが何をやってるのか」
さして興味は無かったがタケトの話に耳を傾ける。
「結局なんだったの?」
「なんか噂が流れてるらしいんだよ、ネット上で」
「噂?」
「うん、それがな・・・なんとも怪しい噂なんだ、でも聞いてあながち
他人事でもないなぁと思ったんだ」
「なんで?何か心当たりでもあるの?」
「うん・・・、たぶん青空も覚えてる」
え?俺も?聞いた途端に少し目が見開く、そして興味をそそられた。
「結論を言うと、いきなりアルティメットOSがキャンセルされて画面
にURLが表示されるらしい」
青空の脳裏には夏の夜のあの光景が思い出されていた。
そして更に目が見開いた。
「そ、それって」
「ああ、俺たちがあの時見たアレだよな・・・たぶん」
表情から察するにタケトもあの光景が頭に蘇ってきているようだ。
さらに話を続ける。
「あのURLな、アクセスしてみるとネットゲームの登録画面が表示
されて、登録するとゲームにログインできるって話なんだ」
「ネッ・・・ネットゲーム!今規制されてるんだろ?」
「ああ、だからさっき教室の外で放したらしいんだ、で、これがその
URLp」
「もらってきたのかよっ」
そう言いながらも前にワカさんに聞いたネットゲームの話を思い出し、
ものすごく心は高揚していた。
「ああ、バッチリもらってきた。女神の声をな」
「女神の声?」
「ネットではこのURLは様々な呼び名で呼ばれてるみたいで、禁断の
鍵から、楽園への扉、女神の声といろいろらしいよ、ま、その中で俺
が気に入ったのが女神の声ってわけだ」
「テスト期間中で午後からの授業もないし、俺たちもやってみない?」
見つかったらヤバそう・・・そうも思った青空だったが、それ以上に自分
の好奇心が勝っている、やってみたいと体が要求している、そう思い
一言、
「ああ、面白そうだ」
そう小さく呟くように答えた。
青空はとりあえずもワクワクしながら帰宅し、足早に階段を駆け上り
自分の部屋に潜り込む。鞄をベットに放りつつも端末を使って机の上
にあるパソコンに電源を入れる。
(登録とかやったこと無いから分からなかったらタケトに聞くか)
そう思いながらもブラウザを立ち上げ軽やかな指さばきでキーボード
を弾きURLを入力する。
すると「Welcome」という簡素な挨拶文が流れ、その後に登録
画面が現れた。
月額を搾り取られるんじゃないかと少し疑心暗鬼になったが利用規約を
読むと完全無料制と分かり、登録を始めてみた。どうやらチップの生体
データ入力らしく特にキーボードを動かす必要は無いようだ。
(しっかしコレ個人で作ってるのかな・・・、無料なら大抵は広告とか
はいってそうなものだけどな)
そう思っていたら登録完了の通知がディスプレイに表示される。この画
面もひどく簡素な作りで、やはり個人の誰かが作った簡単なモノなんだ
ろうなと思わせるに十分であった。
ネットゲームのネの字も知らない青空は、端末でタケトの状況を聞いて
見ることにした。
「タケト、俺、もう始めてる?」
「今、家に着いた〜、何?もうやってみたの?」
どうやらまだ家に着いたところらしく、端末越しに階段を上がる足音が
かすかに聞こえる。
「登録は終わったんだけど何も分からないから聞こうかと思ってさ、
タケト前にThe・World少しやったことあるとか言ってた
だろ?」
「うん、じゃあちょっと待ってて、こっちも登録終わらせるから」
「おぅ、早くしろよ〜」
そう言いタケトを待ちつつ、Enterキーを押し一画面だけ進めてみ
る。
Another World
それがこのゲームの名前らしい。
まぁ、さっきの登録画面よりはしっかりした作りのタイトル画面、いや
おうなく期待は高まる。
「しゅ〜りょ〜」
と端末越しに竹との声が耳から入ってきた。そしてゲームスタートにカ
ーソルを合わせもう一画面進めるとまったくもって訳の分からない画面
が出現する。
そして分からないまでも先ほどのタイトル画面よりもさらに凝った作り
に作成側のうまい演出が読み取れ、感心した。
「スタートしてみたんだけど、これどうすればいいの?タケト」
あまりの分からなさに口は操作してみるより先に動いた。
「これThe・Worldによく似てるなぁ〜よく出来てるや。
んとね、これはキャラ作成画面、自分の分身となるゲーム内の自分
を作るんだよ〜」
そう簡単な説明をくれた後、テキパキと要領を説明してくれ、とりあえ
ずはキャラを作成してみることにした。
「なんかプラモ作りみたいでこれだけでも楽しいな」
「慣れないからって変なキャラ作るなよ〜、後で後悔するぞ」
と和気藹々とした時間が流れる。
そして苦労しながらも青空は自らのキャラを作り終えたが・・・・・・。
果てしなく・・・ダサかった。
何でこんなにプロモーション悪いことに作りながら気が付かなかったん
だろう・・・と自分の美的感覚にゲンナリしつつも作り直しを検討した青
空であった。
(ちゃんとしたコンセプト打ち出してから作ろ)
思いつつも出来上がったキャラを修正し始める。
「どした〜?無口になって」
ゲンナリ少しブルーになり自分の世界に入り込んでいた青空にタケトは
ふいに声を掛ける。
「ななななななななんでもないってばよほほほ」
思いっきりタケトの期待通りにヘンテコキャラを作ってしまった青空は
明らに動揺し、声がうわずり、コントローラーの操作もミスりまくって
いた。
「できたぁ〜」
端末から達成感あふれるタケトの声が耳に届く。
こっちはまだ軽く二時間くらいかかりそうだなと肩が少し重くなる感じ
に襲われる青空だった。
(あとがき)
ショッ○ーヘンテコ怪人作成編終了です。今ひとつ自分でも面白くない
出来で反省しなくては思う今日この頃みなさんいかがお過ごしでしょう
か、という感じです。
果たして青空とタケトは一体どんなキャラを作成しどんな展開になるの
か・・・やっと青空達は世界に入っていきます。
(ここまでが長かったなぁ・・・)←作者、魂のつぶやき
ということでエロちょいワルっぽくがんばろうと思います。
それでは・・・。
[No.1176]
2008/03/24(Mon) 19:46:31
Re: .hack//R.D 第十二話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
思うよりも悪戦苦闘、しかし自分のコンセプトをふんだんに盛り込んだ
キャラが産みだせた。
作り終えた達成感、だが、三時間以上の作業に少しの疲労も感じる。
ディスプレイの見すぎだなとまばたきを繰り返しながらも青空は満足げ
に端末に向かって声を発する。
「できたぁ〜、いい・・・これはいいぞ!」
二時間以上も待たされていたタケトは少し眠たそうな声で
「ん〜?じゃあ始めようぜ〜」
端末から届くタケトの眠たそうな声を聞いて、青空はすまなさそうな
a顔をしながらも
「おう」
と相槌をうつ。
そして青空はEnterキーを押し、未知の世界へと飛び込んだ。
浅いまどろみの中で起こる夢のような、魔法使いに魔法をかけられいき
なり異界にテレポートさせられたような、それほど目に見える世界は
瞬時に様変わりした。
その流れる空気すらも変わったかのようなリアリティー、
(これ・・・本当にゲームなの・・・か?)
そう思いながらも、まず、自らの両手を見つめる。紋章入りのリストバ
ンド、その下にちらりと見える下半身は下腹部から膝上くらいまで白く
長い布をボクサーのバンテージのように巻きつけ、その上からトラ皮
の腰巻、それを赤い帯でしっかりと固定、長い帯は後ろに尻尾のよう
に膝関節よりも少し下くらいまで伸びている。
少し視野が狭いと感じるがそれは自らがデザインした上まぶたにかかる
くらいの赤いバンダナで天を突き上げるかのような薄めの青い髪をまと
めているからだった。
左耳には銀色の三連ピアス、その下の耳たぶには青い彩色が施された
虎の牙のイヤリング。
青空のキャラ「イスカ」がAnother Worldへ降り立った。
「野性味あふれるキャラだな、青空」
イヤリングを装着したほうの耳からタケトの声が聞こえたので振り向く
とそこにはメカニカルというか何と言うか、胸部はしっかりとメタリッ
クブルーに輝く近未来的な装甲で覆いつつもみぞおちから腰にかけては
黒のラバースーツ、そして下半身も同様に守るべき部分はメタル系の装
甲で覆い、間接部は動きやすいようにラバー素材であった。黒のセミロ
ングヘヤーでその瞳は紫に輝く。
「タケト・・・か?」
「そだよ〜俺以外誰が青空のこと知ってるんだよ〜。あ、でもゲーム中
はギュンディアって呼んでね・・・ってイスカって・・・」
イスカというキャラネームを見たタケト、いやギュンディアは突然考え
込むような素振りを見せる。
(いまいちだったかなぁこのキャラデザイン)
と思いつつもタケトのデザインしたギュンディアを見つつもなんでギュ
ンダーにしなかったんだろうとも考えが広がっていた。
「イスカって・・・もしかして誰かとチャットとかしてた?」
「なんで知ってるの?タケ・・・いやギュンディア」
(ワカさんの話は誰にも話してなかったはずなんだけど・・・)
「そっか〜、青空がイスカさんだったんだ〜、道理で気が合うはずだ」
とまるで自分がチャットしてた本人のように言い放つ。
(ん?もしかして??)
「お前、ワカさんか?」
タケトスマイルを出しながら
「です」
「お前だったんかいッ」
あまりの驚きに二人してお互いの顔を指差しながら大音響で声を出して
しまった。
パタン
本を閉じる渇いた音が聞こえ、
「ちょっと静かにしてくれないかなぁ〜」
そこには白いローブを纏った少年風のPCが壁を背もたれにして座って
いた。
「あ、ごめん、初めてインしてちょっと舞い上がっちゃって、ホント
ゴメン」
とギュンディアはその少年に謝罪の一声を掛ける。
「まぁ、素直に謝るんならいいけどさ、あんたらもう狙われてるよ」
少年は立ち上がり、軽く横を指差し話を続ける。
「このゲーム初心者を狙うヤツ結構いるんだよね。初期装備を加工した
ら、まぁまぁいい素材が手に入るからさ」
指を指す方向には強そうな大ぶりの剣を持つPCとこれまたでかい槍を
背中に背負うPC二人がゆっくりと獲物を追い詰めるかのように近づい
て来ていた。
「おいおいおいおい、どうすんだよタケト、オレ戦闘なんてしたことな
いぞ」
こっちはまだレベル1、明らかにあちらさん達はこっちよりは強そうに
見える。
そしてその威圧感にジリジリと後ずさりをさせられた。
その様子を相手も察したか、心なしか顔がニヤついているように見える。
「初心者君達ィ〜、そこに武器置いて行きな、そしたら命だけは助け
なくもないぜw」
大剣持ちの男が、あからさまな上から口調で言葉を発する。虫でも見る
かのような、さも一撃でつぶしてやろうかという態度だ。
後ずさるイスカに対し、ギュンディアは物怖じせず、そのあまりに非モ
ラル的な態度に怒りを露にしているように堂々と悪意と対峙していた。
レベル差は明らかに開いている。だが相手が近づいてきても、なお、そ
の場を動かない。いつかの屋上で助けてくれた時のことが頭をよぎる。
大剣の男はそのギュンディアの態度がカンにさわったらしく、
「オレにやらせろ、この雑魚凹ましてやる」
そう言ってる最中に剣を抜き、ギュンディアに突っ込んできた。大剣を
振りかざす音だけでも、その威力が窺い知れた。
振り上げた右腕から斜めに一閃、剣が大理石を思わせる床と接触する音
が響く。思わず目を背けてしまった。
ギュンディアがやられた・・・はずなのにまだ剣を振る風切り音は続いて
いた。ひらりひらりと触れれば一撃で致命傷であろうその刃をかわしつ
つ、手に装着されたナックルで一撃を入れる。目に見えるほどのダメー
ジを相手に与えられない。
「かゆいなぁw」
と必殺の一撃を繰り出しながらもギュンディアを追い込む、だが、ギュ
ンディアは完全に太刀筋を読みきっているかのように全てかわし続ける。
「いい加減くたばれよぉぉぉォ」
大剣の男の苛立ち加減が、その言動からも伝わってくる。その様子を見
て興味を持ったのか横で座っていた白ローブの少年は立ち上がってギュ
ンディアを観察していた。
「なんで当たんねぇんなょおッ」
かわしつつもギュンディアはその毛ほども効かないであろう攻撃を続け
る。それは明らかにプレイヤーとしての腕はお前より遥かに上だぞと行
動で示しているようだった。
どうやらその微弱な攻撃でもほんの少しはダメージを食らっているらし
く、大剣の男にあせりの色が出てきた。
「おい!お前も手を貸せッ」
その暴言にやれやれという顔で槍の男が加勢しにギュンディアに向かって一直線に走りこむ。そして、突きを入れた。
ドスッ
鈍い音が場に変化を与える。
それは明らかにヒット音だった。砕けた鎧の破片が地面を打ち付ける。
しかしその槍による一撃でとどめを刺されたのは大剣の男であった。
「最初から狙ってたのか・・・」
白ローブの少年も戦っていないのに、そのギュンディアの戦いぶりに驚
愕の顔を露にし、つぶやいた。
「ひ・・・ひぃぃぃぃぃぃぃィ」
槍の男はレベル1のギュンディアに対し、いや、レベル1だからこそ恐
れの声を上げたのだろう。
ギュンディアはそんな槍の男に向かって静かに歩き出す。
「くるな、くるなぁぁぁぁぁ」
さっきまでとはまったく逆の立場で物事が進む。
お帰りはあちらと言わんばかりにナックルをつけた拳を出口へと向ける。
槍の男は二、三歩後ずさりした後、走って出口へと消えた。
そのギュンディアの背中を見ながら背筋に寒気が走る。
その寒気が、感動から来るものなのか、それとも、恐ろしさからなのか
自分でも判断できなかったイスカだった。
(あとがき)
ワカさんの正体見たり!外道焼身霊波光線編終了です。
ワカさん・・・タケトだったんですね〜、(実はこのあたりの話が後々
出てくるんですけどね・・・別の意味で)
まぁ、なにはともあれ世界へと足を踏み入れたイスカとギュンディア。
相変わらずの青空のヘタレっぷりとタケトの活躍。
これじゃどっちが主人公なんだか・・・、と少し心配になってきます。
ちょっとしたキャラのラフ画を書きながらやってるので原稿が進まない
進まない、ホント最近全然進んでません: :
(まぁ絵を書くのは楽しいからやってるんですが・・・)
分かりにくい文章を元に読んでくれた方々の頭の中でイスカとギュンデ
ィアを作ってみてください。
まぁそんなこんなで今後もしんなりとがんばります。
それでは・・・。
[No.1197]
2008/04/03(Thu) 16:45:03
Re: .hack//R.D 第十三話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
勝ち誇るでもなくギュンディアはくるりと振り返り、
「なんとかなったなぁ〜、ふぅ〜」
と、イスカに声をかける、イスカも白ローブの少年もとんでもない事を
やってのけたギュンディアに声も出ない。
しばらくして白ローブの少年はギュンディアに向かって訪ねる
「君は本当に、今この世界に入ったばかりなのか?」
「ああ、そうだけど」
と一言だけ言い放ち、イスカの元へと歩を進める。
イスカはイスカで
「すっげーなタケト、んで、またしても助けられちまったな、それにし
ても本当、なんで始めたばっかなのにそんなにうまいの?」
と未だに目の前で展開された攻防を理解できなかったふうに聞いた。
「さっきちょこちょこ操作してみて思ったんだよ、このゲームThe・
Worldにすごく似ててさ、The・Worldならお手の物だか
らね」
さも今やったことなど当たり前のように軽く言う。
その様子に白ローブの少年はギュンディアが本当に初心者だったことを
知り、興味を持ったのか、また声をかけてきた。
「君、俺たちのギルドに来ないか?そこそこ有名ででかいギルドだぜ」
どうやら何かにこちらを勧誘しているようだ、だが、ギュンディアは、
「まだこの世界にも全然慣れてないし、コイツとまったり遊びたいしね」
とイスカに向かって親指を指す。
「まぁ、気が向いたらショートメールででも連絡してくれ、俺の名は
滴(しずく)、またな」
「ま、気が向いたら・・・ね」
<ギュンディアは滴のメンバーアドレスを入手した>
そう言うなり滴は、この建物を後にした。
事態が収拾し、あらためて周りを見渡してみる。
そこは少し古びた教会のようで、どうやら天井に穴が開いているらしく
ところどころから砂がパラパラと降っており、その床には砂が積もって
いる所もあるようだ。
「イスカ〜、外出てみよ〜ぜ〜」
建物の中でキョロキョロしているうちにギュンディアのほうはもう建物
の出入口まで移動しており、イスカに向かって手招きをしている。
ギュンディアの立っているところまで行ってみると建物の出口からは外
の景色が広がる。
広い草原になっていてまばらに他の人も何かしているのが見える、空を
見上げると雲一つ無い空なんだが少しだけ霞んで青い空が見える。
その霞の正体はどうやら風が運んでくる砂が待っているかららしい。
風という自然現象までも表現しているとはリアルなゲームだなと少し感
動してしまうイスカだった。
そうこうしているうちにギュンディアは、広い草原を走り回っている。
「お〜い、イスカも来いよ〜」
イスカに向かって声を発しながらも走りまわっていた。ギュンディアの
所まで走り、RPGgなのだから少し戦闘もしてみたいなと思ったイ
スカは戦闘の要領をギュンディアに教わることにした。
「ギュンディア〜ちょっと敵と闘ってみようぜ」
「お!やる気満々だね〜、いっちょやってみますか」
近場にいる敵を探してみる・・・。少し建物から離れた所にいかにも弱そ
うに見えるモンスターを発見した。
大き目の蜂にしか見えないモンスターに向かってエディット時に作った剣を構えて走りこむ。
ブンッ、記念すべき第一回目の攻撃は見事に空を切る。敵対行動をとら
れたその蜂はすっかり戦闘モードに入り容赦なく向かってくる・・・かと
思ったら何らかのスキルを発動した・・・、一匹しかいなかった蜂はいき
なり5匹になり、イスカを包囲した。
見かねてギュンディアが加勢に入る。
「きったね〜よな〜いきなり増えやがって」
イスカの背中を守るように背中合わせの陣形を取る。そしてナックルを
装着し戦闘モードに入るギュンディア。
「そう言えば、こっちには何かスキルとかないの?」
蜂の攻撃を避けつつ、ギュンディアに訪ねる。
その短い会話を口にしている間にギュンディアは華麗に蜂にパンチを
叩き込む。
瞬く間に三匹の蜂は地に横たわってeいた。
「そうなんだよなぁ〜メニュー画面にはスキルとかセットする項目ある
のになぁ、どうなってんだろ?」
会話を交わしている間にも敵は待ってはくれない。
二匹同時に蜂がイスカを襲う。剣でガードしてもう一匹に切りつける。
ドシュッ、どうやらヒットしたようだ。しかし倒せていない。斬りつけ
た蜂はまたしてもスキルを使用しようとしている。
「させるかよっと」
蜂の後ろからギュンディアの拳が数発ヒットする。
「単発じゃなくて攻撃ボタンを数回押すとコンビネーション攻撃になる
から、やってみ」
そう言われ、試しに最後の一匹に斬りつける1,2,3とボタンを3回
押すと×印に斬りつけ最後に横薙ぎで締めるという連続攻撃になり蜂に
とどめをさした。
幾分かの経験値とアイテムをゲット、だが、RPGにお約束のお金は落
とさなかった。
メニュー画面を確認してみるとお金を表示するような欄が見当たらない、
どうもこの世界にはお金という概念自体が無いようだ。
「なぁギュンディア、このゲームお金ってないみたいだよな、どうやっ
て装備とか揃えるんだろう?」
「そう言えばそうだよなぁ、The・Worldにはお金があったけど
このゲームには無さそうだねぇ・・・さっぱりわかんないや」
両腕をだらりを上げいわゆるお手上げポーズをとるギュンディア。
どうにも分からないことだらけなので、よく周りを見渡してみた。
そうすると敵同士が闘っていたり、他のPCを見てもただ本を座って
読んでいるだけだったり、木を切り倒したり、今ひとつ要領を得ない。
「わっかんないことだらけだからなぁ、とりあえず情報集めに町にでも
行ってみよっか、イスカ」
そう言い近場に居たpcに聞きに行くギュンディア。
(そう言えば何でギュンディアって名前にしたのか聞きそびれてるな)
などとくだらないことを考えてる間に戻ってきた。
「この先に山があってそのふもとの滝がある湖に人がたくさんいるんだ
ってさ」
その場所に向かいつつモンスターを倒しレベルを上げることになった。
レベルが3になる頃、遠くに滝が見えてきた。
「お!どうやらあそこだな」
とギュンディアが走る。すると、いきなりギュンディアの頭部に「!」
マークのエフェクトが出ると共にスキル「早駆け」を習得した。とログ
に表示される。
「お〜、何か覚えたぁぁ〜」
と、ギュンディアは飛び跳ねて喜ぶ。
「どうやって覚えたんだよ、ギュンディア」
ギュンディアは首をかしげながら、
「分っかんないなぁ、どうやって覚えたんだろね?コレ」
と自分でも全くわかっていない様子だ。
「スキルをセットして・・・と」
SPを消費してスキルを発動させてみたギュンディアはまた頭をかしげ
る。
「な〜んにもならないけど・・・」
と言った矢先に一歩足を踏み出してみると、すごい速さで走り出した。
「うおぉ〜なんじゃこりゃ〜、気っ持ちいい〜早く走れる〜」
確かにあれだけ早く走れたら気持ちいいだろうなと、少しうらやましく
なった。
なおも走り回るギュンディア、だが、その爽快な走りはふとした事で
終わりを迎えた。
ガィ〜ンッ
にぶい音と共に木という障害物にぶつかり転倒するギュンディア
「い・・・いたひ」
どうやらダメージも受けたようだ。本当にリアルに作られたゲームだと
感心する。
倒れたまま
「危ないねこのスキル、まさかダメージを受けるとは」
後ろからようやく追いついたイスカは倒れたギュンディアに手を差し伸
べながら
「調子に乗るからだw」
「今後、気ィ付けます」
と、トホホ顔で手を借りながらギュンディアは起き上がった。
まぁ、とにもかくにも町、いや村らしき集落に二人はたどり着くことが
できたのであった。
(あとがき)
サイバー戦士ギュンディアマッハGoGoGo改造計画編終了です。
初戦闘のイスカ初心者らしくやはりヘッポコぶりを発揮、そして戦闘
シーンは書くのが難しいなと思う作者なのでありました。
今回はなんとなくこの世界がどんな世界なのかという説明編みたいに
なり全然話が進まないというテイタラクですがまぁ、ギュンディアが
言ってたようにまったりとがんばろうと思います。
それでは・・・。
[No.1212]
2008/04/14(Mon) 16:45:42
Re: .hack//R.D 第十四話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
遠くから見ていた滝は近づくとなんとも雄大、落ちる水が作り出す
しぶきは付近に霧を作り、見ているだけで体が癒されるような感じ
がする。
滝はその場に湖を作り、その湖を囲むようにさまざまな様式の家が
建ち並ぶ。
木造、レンガ造り、石造り、多種多様でなんとも一貫性が無い。
しかしながら集落はなかなかの活気に満ち溢れていた。
「すっげぇな!イスカ」
その活気にギュンディアの口から思わず歓喜の声が上がる。
「お!あっちすげー賑わってるな、行ってみようぜイスカ」
たしかにこの賑わいの中心とでもいうようにその方向には人だかり
が出来ている。
その人の波を掻き分けて進むと、なぜこんなに人が集まっているの
か、その理由が分かった。
その艶やかな衣装もさることながら、各人が別々の妙技を披露する。
アクロバティックな動きをコンビで決めたり、それを装飾するか
のように楽器隊はけたましい音色を奏でる。
その調和の取れた完成されたショーは人々を驚かせ、笑わせ、そし
て感動を呼び起こす。
その人々の熱気に思わず高揚、そして隣にいるギュンディアはその
動きをマネようとしていた。
そんな折、
「どうだい?すげぇっしょ、ゲールニー一座の芸は」
その一団の傍らにいた司会風の黒いタキシードを着た少年が声を
かけてきた。
(なんでウチらに声かけてきたんだろ?)
と普段なら警戒しそうなところだが、今の楽しい気分を作る一座
の人だからと安心し、会話を返sす。
「すごい芸の数々ですね、どうやったらあんなことができるのか
教えてほしいくらいです。ウチの連れなんて、ほら、マネしちゃ
ったりして」
と初対面の相手に丁寧な物言いで応対しながらもギュンディアを
指差す。
「ここらで見ない顔だけど、別の集落から来たの?」
とタキシードの少年は馴れ馴れしい言葉づかいで会話してきた。
「あ、オレ達まだ今日始めたばっかりなんです」
そう聞くと少年はこっちのことを頭からつま先まで見直すと
「たしかに初心者みたいだね、わかんないことばっかでしょ?
このゲーム」
ムッ!初心者と言われ多少イラつく、しかし分からないことが多す
ぎるこのゲームのことを教えてもらえるかもしれない、感情を抑え
つつ会話を続けた。
「そうなんですよ〜、行き交う人もモンスターの事もシステムに
ついてもまったくと言っていいほど分からないんです、自由すぎる
ほど自由だし、木に衝突するとダメージを受けるし、リアルに作ら
れてますよね、このゲームは」
それを聞きウンウンとうなづきながら少年は
「オイラも最初は分からないことだらけ、ログインした直後にPK
されるしで、そこでやめようと思った、でもそんな時にこのゲール
ニー一座の人達と出会ったんだよね、それで色々なこと教わったん
だ」
と感慨にふけるような顔で芸を披露している一座に目を運ぶ。
それを見て
(やっぱPKに出くわしたのか、でも良い出会いがあったんだな)
そう思いながらも少年の横顔を見つめた。
我に返ったかのように、こちらに顔を戻し、
「そうだ、君達がよければこの公演が終わったらオイラに分かる
ことなら教えるけどどう?」
その屈託の無い笑顔と親切心を拒否する必要はない。
「ぜひお願いします!」
大盛況の中、公演は終了し、観客の人々はそれぞれの生活に、いや
、冒険に戻った。
タキシードの少年は一座の公演料とでも言おうか、客が置いて行っ
たアイテムを集めその整理に追われている。
「すごい芸だったな〜イスカ」
そう声を掛けられ声がする方向に目を向けると、未だに芸のマネら
しき妖しい動きを続けるギュンディアの姿があった。
「ムリだって、マネなんて」
その明らかにマネできていない妖しい動きを見て笑みをこぼす。
「だよな〜」
とその動きを止め、変なポーズのままギュンディアは笑みを返す。
「ところで・・・、あのなギュンディア、あの人がこのゲームの
こと色々と教えてくれるって言ってくれてるんだけど時間大丈夫
かな?」
と忙しそうに働いているタキシードの少年を指差しながら.
(そういえば名前聞きそびれてるな)
と自分の中で少し反省。
「いつの間に人脈作ったの〜イスカ、やるねぇ〜、時間の方はだい
じょぶだよ〜」
「じ、人脈ってほどのもんじゃないって、たまたま声を掛けてくれ
てさ」
と今まで助けられっぱなしだったが少しはギュンディアの役に立て
たかと思うと照れくさそうに言いながら、ふとしたMMOでの出会
いに心躍らせつつ少年を待った。
(あとがき)
第一村人発見編終了です。すごーく久々の更新でした。
リアルMMOが忙しかったために・・・書いてなかったんだよぅ
と、いうことでまた気が向いたころにマッタリ更新しようと思い
ます。
ではまた・・・。
[No.1296]
2009/09/04(Fri) 19:29:37
Re: .hack//R.D 第一五話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
「親方〜整理おわりやした〜」
仕事の終わりを感じさせる少年の一声が奥の方から聞こえた、そし
て少年の声に続き、野太い声がこちらへ届いた。
「おぅ!ご苦労、ん?お前どこか行くのか?」
「はい、さっき知り合った人とちょっと遊んできます」
「あ〜?女かぁ?ほどほどにしとけよ〜、ガッハハッハ」
「ち、違いますって、んじゃ行ってきます」
ものすごく馴れ合った会話、そこからは何か年月のようなものを
感じる。
(メモで会話するウチの親とは大違いだな)
そんなつまらないことを考えるうちに、少年はもう目の前まで来て
いた。
「ゴメンゴメン、待たせちゃったね、一座の仕事ちょっと長引いち
ゃって」
公演中はタキシードだったその姿は一変している、膝上まで伸びる
ロングのTシャツの上に幾何学模様の青いベスト、膝下くらいまで
の黒いズボン、そして両腕、両足には赤いプロテクターと総じて動
きやすそうな格好をしている。
「見違えましたね〜」
そのあまりの変わり様に思わず口が開いてしまう
その一言に少年はどう?決まってるでしょ?とアピールするかのよ
うに両手でベストの襟をつかみ、小洒落たポーズを決めた。
そんな茶目っ気たっぷりの仕草ににっこり笑いながらも
「あ、そうそう、お互い名前を名乗って無かったですよね、オレの
名前はイスカ、で、これが連れのギュンディアです」
と左手の親指で指し示しながらも、しれっとギュンディアのことを
少年に紹介した。
「イスカとギュンディア・・・と、ん!メモ完了」
メモを持たない手でメモを書いたようなjジェスチャー、それはリア
ルでメモを取ったのか、それとも只おちゃらけているだけなのかは
分からなかったが、その動き一つ一つがこのゲームを楽しんでいる
んだなと思わせる。
「で、早速だけど何が知りたい?この集落の事?それともゲーム自
体のことかな?」
!、何かひらめいたように少年は目を見開いた。
「まずオイラの名前からだったねぇ〜、うっかりしてたぁぁぁぁ、
オイラの名前はパムって言います、パムやんとかパムちんとか好き
な呼び方で呼んでくりくり」
敬礼のポーズを取りながら少年は慌しく自己紹介。
(それにしても本当に人懐っこい人で好感を持てる人だな)
顔をほころばせながらも頭の中でそうつぶやき、
「じゃあパムちんて呼ぶね、よろしく」
「うおぉ〜う、明るい人でよかったぁ〜」
その人当たりの良さにギュンディアはもう手を取って意気投合して
いる。
なんか不思議な感覚を覚えた、顔も見たことも無い人を友達のよう
に感じるのはワカさん・・・ってそれはタケトか・・・以来の事、メール
とまた違うのはPCと対面していて仮とはいえ、その姿を目で認識
できる。
なんか本当このゲームにハマっちゃいそうだ、ギュンディアとわい
のわいの楽しそうにしているパムちんを見てなんとなくそう思う。
「んと、じゃあパムっち、このゲームのこと簡単でいいから一通り
教えてくれるかな?さっぱり成長要素とか分かんなくってさぁ」
なごやかなムードの中ギュンディアは話を切り出す。
「そうだろ、そうだろ?最初何したらいいか分っかんないだろ、こ
のゲーム」
うなづきながら、ギュンディアの右肩をポンポンと叩きながらも会
話を続ける
「あそこ見てみてよ、ああいう光景ここに来るまに見なかった?」
と町中で座り本を読んでいるPCを指差す。
「うん、見た見た、何でこんなところで本なんて読んでるんだろう
って不思議に思ってたんだよ」
そう言いもって
(そう言えばあの滴って人も本を読んでたなぁ)
と自分の記憶を辿る。
「もっと周りを見渡してみちくり、リアルでも見るような普通の事
してるPC多いと思わないかに?」
そう言われギュンディア共々、自分達の周りを見渡すと、現代社会
ではそう見られないが、壊れた家を直していたり、川から水を汲み
出したり、木を削りだし何やら工作らしき事をしていたりと、ただ
ただ「生活」をしているように見える。
「みんな何やってんのかな?もしかしてあれが成長要素?なの?」
ビンゴーー、と言わんばかりにパムちんはこちらを指差し、
「そう!あれ全てに意味がある行動なんだよん」
「ええぇぇぇ!あれが!?」
ギュンディアと共に全く同じセリフとリアクションを取ってしまった。
「このゲームはね、行動の全てに意味があるみたいだにん」
「全てに?」
「そう、ここに来るときに何かスキルを覚えなかった?」
「お〜、そう言えば覚えたよ〜、早駆けってやつ」
とギュンディアはパムちんを指差し返す。
「まあ、どのプレイヤーもどういう条件でスキルを覚えるのかは分
かってはいないんだけど早駆けの習得条件は”一定の距離を走る”
と言われてる」
パムちんの説明を聞きながら、少し前の事を思い返す。
(そう言われると、オレに比べてギュンディアはいっぱい走ってたかも)
「そんなこんなで、スキル習得条件がまだまだ未知の部分が多いか
ら、みんな色々な事をして、何かスキル覚えないかって試してるん
だよね」
何となく今までの疑問が解けてきた、つまり戦闘でレベルを上げる
だけでは成長しきれない、あらゆる経験がスキルを生みそれを両立
させなければ本当の意味で成長しきれないということだ。
「スキル習得条件はBBSなんかをチェックすると出てるのもある
からチェックしてみそみそ」
軽やかな口調で有益な情報をパムちんはくれる。
「ガッツリ覚えていっぱいスキル付けて強くなろうぜィ、イスカ」
マッチョポーズでギュンディアはやる気をアピールする。
素であの強さなのにこれにスキルがついたらどうなるんだと、自分
のことでもないのに末恐ろしさを感じた。
(あとがき)
パム的地球の歩き方講座編(前編)終了です。
実は15話はもっと長かったんですが、長くなりすぎたと思って
前編後編に分けてしまったというわけです。次回ついにギュンディ
アの名前誕生秘話が明かされます。
そして今後の予定としては新女性キャラが一人、あんな粗暴乱暴
真っ赤な新キャラや謎満ちる怪しげな新キャラにイケメン兄貴的
射撃が今日も冴えるかもしれないあんな新キャラまでと4新キャラ
を登場させる予定であります、ケロロ軍曹!
そしてある事件が勃発・・・その事件とは!?
まだ言えないのでありました、新型インフルエンザにかからないよ
うにアフリカのジャングルの奥地に住むと言われる伝説の部族が
作り上げた、とても妖しい秘薬を飲んでまったりがんばろうと思い
ます。
それではまた・・・
[No.1298]
2009/09/16(Wed) 23:24:09
Re: .hack//R.D 第十六話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
マッチョポーズでやる気あふれるギュンディアに注意を促すように
パムちんは説明を続ける
「あ・・・でも」
すまなさそうな顔になるパムちん
「ヤル気に水を差すようであれなんだけど、スキルを保持できる数
は決まってるみたいだよん」
ギュンディアは眉間にシワを寄せ腕を組みながら
「う〜ん、そかぁ、早くもあらゆるスキルが使える超絶スーパーパ
ーフェクトイケメンソルジャーギュンダーへの道が途絶えちまった
ぁぁぁぁぁ・・・のね、まぁ、げぇむばらんすっちゅ〜やつだね」
「ん?ギュンダー?ギュンディアじゃないのか?」
すかさず突っ込みPC名の由来を聞いてみることにする。
「ギュンダーはなぁ・・・、ギュンダーはなぁぁぁぁぁ・・・」
言葉を溜めに溜める
「もう別のヤツに付けられちまってたんだYooooooou!?」
==数十秒経過==
ギュンディアいや、タケト魂の叫びがそこにはあった、そしてさら
っと元の会話に戻る、立ち直りが早い。
「で、覚えられるスキルの数が上限に達するとどうなるの?」
「上限に達して、さらに覚えるのは無理だから、メニューからスキ
ルの項目を選んで、そこからさらにスキルをセットするセットって
項目の下にスキルデリートっていう項目があるだろ?そこから消し
たいスキルを消去することができる」
パムちんのせつめイを聞きながら、さながら学校の授業でここテス
トに出るぞ〜といわれた時のように、いや、それよりもはるかに必
死にメモを取った、その行動に自分がもう完全にハマってしまって
いることを確認。
「でも、デリートするときは気を付けてねん、一度消したスキルカ
ムバァァァックって言っても、一度消したスキルはすぐには返って
来ないからねん」
スキルの説明が終わるや否や、どんどん溢れる質問をぶつける
「お金とかはこのゲームには無いの?RPGにはお約束でしょ?お
金って」
待ってましたと言わんばかりにパムちんはそんな質問をしたオレを
指差しながら
ひっじょーうに良いところに目を付けましたねん!そう、このゲー
ムにはお金どころか、お店も、それどころかNPCすら居ないので
すん」
そう言われてみて、改めて周りを見渡す、そして、この集落に来た
時のことも思い出してみるが・・・NPCというのを見た記憶が無い
・・・なんて考えているうちにギュンディアがパムちんに質問。
「じゃあどうやって武器やら防具やらを集めるの?NPC居なきゃ
消費アイテムだって買えないよなぁ・・・」
と少し考え困惑の表情を見せる、既存のRPGしかやったことの無
いオレも激しく同意。
そんなオレ達の困惑を感じ取ってかパムちんはにんまり笑みを浮か
べつつヒントらしきことを一言
「この集落に来たとき何か違和感を感じなかった?」
と言われ、またしても少し前の記憶をたどる、印象に残っているの
は、滝、きれいな湖・・・とそうだ!家だ!
変に統一感の無い家、滝と湖はすごく自然だったのに家だけはやた
ら不自然だった・・・けどそれがお金やNPCが居ない理由とどうつ
ながるのか、それはまだ理解できない。
「家・・・だよね?ちょっと変だなとは思ってた、この町並み」
その一言を受け、ズビシズビシと言葉も無く、惜しいもう少しと
言わんばかりにパムちんはオレを指差す。
「でも町並みとどういう関係があるんだ?」
とオレと同じ結論のギュンディア、オレもギュンディアもう〜ん
う〜んと唸りながらPCをぐるぐる歩かせたりしながらも答えに
辿りつかないまま数分が過ぎ、
「タイムあ〜っぷ」
痺れをきらせたパムちんの一声でシンキングタイム終了
「では正解を」
というなりパムちんは何かを取り出した
「ここに取り出したる一つのリンゴとナイフ、これをシャシャッと」
鮮やかな手さばきでリンゴは6つの切り身へと変貌、その手さばき
に見とれるうちに
<パムからアイテムのトレードの依頼がありました>
とディスプレイに表示される。
「え?何、何?トレードってこれどうするの?」
パムちんとギュンディアはにへら〜とオレの初心者っぷりに顔をほ
ころばせながら
「慌てなくていいから、メニュー開いてトレードを選択してみてちょ」
パムちんに教えられたとおりにしてみると、アイテムの受け渡し画
面となり、パムちん側の欄に何やらアイテムが提示される
「一片のキュアアップル・・・リンゴの皮をむいて切り分けた?・・・っ
てことでいいのかな?」
(ハッ・・・そうか、これは取っ掛りだ、素材からアイテムを加工す
るのか、つまり・・・)
「あの家はプレイヤー達が作った・・・」
「正解ィィ、しかし家だけじゃないよん、あそこのイスも、そこの
机、あそこに見える風車もぜ〜んぶプレイヤーが作ったんだ・・・そ
うだ」
とズバズバと色々なオブジェクトを騒々しく指差す。
「そうだ?」
語尾に疑問を持ち、聞き返す。
「聞いた話だからねん、オイラがログインした時にはもうこの集落
はあった、君らと同じく、分かんないことをゲールニー一座の人に
聞いたというワケ」
始めは誰でも初心者なんだよ、と遠まわしに言っているような気が
した。
初心者のオレはそんなパムちんの気遣いがうれしかった。
そしてパムちんは話を続ける
「かつて、ここには滝と湖しかなかったそうな、そこで先駆者プレ
イヤー達はアイテムの使い方を覚え、加工できることを発見し、つ
いには集落をも作り、そしてこう名づけたのじゃ・・・風唸る地ルゥ
ド・サン・トゥーナと・・・めでたしめでたし」
どこからともなく取り出した木の棒を杖に見立て、語り部爺さん風
に集落の名前をご教授、それを追随するように
「終わりかいッ」
とギュンディアの古典的なツッコミが入る。
「爺にその突っ込みは強いのぅ」
パタリと倒れたフリをしてパムちんもこれにノる。
その状態からムクリとあぐらをかいた体勢で起き上がり、なおも話
は続いた。
「村までをも作り上げてしまったプレイヤー達が次に考えたのは、
第二、第三の拠点を作ることじゃった・・・しか〜しこのルゥド・サ
ン・トゥーナから遠くへ足を伸ばすとその距離に応じて敵の強さが
増して行ったのじゃ」
つい熱の入った力説に聞き入ってしまう、それはまるで小さな頃に
絵本を読み聞かせられ話の続きが気になるような懐かしい感覚
「そこでプレイヤー達が考えたのは装備の充実だったのじゃ・・・一
人で素材を集めをしていては莫大な時間を使ってしまうことに気が
付くと自然とプレイヤー同士は交流を始めたのじゃ、どうやらこの
ゲームを作った人は、あえてお金というものを作らずプレイヤー同
士に交流させるような作りにしてあるように思えるのぅ」
「つまり、物々交換によって世界の物流が成り立っているという事
だね?」
不意打ちのようにギュンディアの発した言葉にハッと我に返る。
「その通りじゃ!そして装備を整えたプレイヤー達は遠方の地へ散
り散りに旅立って行ったとの事じゃ・・・ってオイラもあんまり遠方
へ行ったこと無いけどねん」
何事も無かったかのように素に戻る爺、もといpパムちん
「今まで見てきたプレイヤー達がやってたのは、より遠くへ冒険す
るためにしていたことだったんだね」
そう自分にも言い聞かせるように発言しつつも遠くへ旅立つという
イメージが沸き立ち、気分は高揚
「まぁ、RPGをやるからにはやっぱ色んな所へ行ってみたくなる
よな、オレ達もがんばろうじぇい、イスカ」
こちらを向いて熱く拳をにぎるギュンディアを見て、そうだ、タケ
トと一緒にやっていくんだ、いや、パムちんとだってこれから知り
合う人達とだって楽しめるんだな、MMOってホントおもしれぇ、
心からそう思えさらにワクワク感は増幅した。
「まぁ、大体こんなところかなん、あと何か質問あるかに?・・・っ
てもうこんな時間か〜い、オイラの時間が無かったぁぁぁぁっっ」
大きなリアクションで一人ボケ一人ツッコミ
「落ちなきゃいけないから、とりあえずアドレス送るねん」
<イスカはパムのメンバーアドレスを入手した>
<ギュンディアはパムのメンバーアドレスを入手した>
「んじゃまたに〜ん、残りの説明がてら今度パーティ組んで遊ぼね
〜ん、バッハハ〜イ」
そう言い残しパムちんは何らかのスキルを発動、その次の瞬間に辺りは煙に包まれた
「う・・・おおおおおお、な・・・なんじゃ〜コリャ」
思いがけない光景が眼下に広がりギュンディア共々うろたえてしま
った。
煙が晴れた時にはすでにパムちんの姿は無かった、まさに煙に巻か
れて、キツネにつままれた?トンビにアブラゲ?といったところか
「いや〜、最後まで騒々しい面白いヤツだなぁ、パムっちは、けっ
こうな時間になっちゃったし、オレ達もそろそろ落ちよーゼ」
そんなギュンディアの言葉を受けたのはもう日付が変わろうかとい
う時間、パムちんが急いでログアウトしたのもうなづける。
パムちんの名演説を聞き終え、今すぐにでも遊んでみたい衝動に後
ろ髪を引かれる思いに駆られながらも本日の営業は終了、高ぶる気持ちを持ちつつも床についた。
(あとがき)
パム的東京特許許可局ウォーカー解説編(後編)終了です。
いや〜、前編後編に分けたのに長いですねぇ〜、編集能力の低さ
にインド人もびっくりです。(まぁなんでインド人もビックリって
表現の意味が今ひとつ分かっていないわけですが、ホントなんで
インド人なのだろう・・・とかそんなことばっかり考えてるから編集
が下手なわけでして・・・)
さ〜て、次回のサザ○さんは〜?
「イスカ初めての○○」
「ギュンディア猛烈○○ー○・○○ー○ー」
「パム、イスカの○ッ○○にズッキンドッキン」
の3本で〜す、
それではまた・・・ンガックック
[No.1299]
2009/09/20(Sun) 01:52:24
Re: .hack//R.D 第十七話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
・・・ゴリッゴリッ・・・ガツッ・・・
「あぅ・・・いてぇ、ダメ受けんのカヨ」
一人先にログインしたオレは昨夜からプレイしたい気持ちを抑え
切れず、パムちんに教えてもらったアイテムの加工、いわゆる生産
活動をしてみる事にした。
(いつまでもギュンディアに迷惑かけるわけにもいかないしな)
そう心中で自分自身と会話しながらもタウン:ルゥド・サン・トゥ
ーナからほんの少し離れた林から切り出して来た木を削る、削る、
力の限り削る。
「う・・・おぉぉぉぉ・・・い、止めてくれ〜い」
遠くから聞こえたその声は次第に近くなり
ガイ〜ンッ!
「ま、またやったな、ギュンディア」
早駆けからのオブジェクトに激突の自滅コンボにてお決まりのダメ
ージがギュンディアを襲ったようだ
「よほ・・・イスカ、ただいまログインしたぜ」
ズッこけたスタイルのままセリフだけはカッコよくしようとするの
はギュンディアらしいと言えばギュンディアらしい。
ギュンディアはこちらの手元を見て、
「ん〜、早速生産してんのかぁイスカぁぁぁ」
とササッと起き上がり軽く抜け駆けしおってぇ〜的にチョーク・ス
イーパーっぽく首を絞めてきた。
「で、何作っちょるの?」
「へへ〜、実はオレすごい発明してしまったかもしれない」
ゴリゴリ木を削りながらも、自らの考えを出し惜しみしてみると、
「な・ん・だ・よ・うぅぅぅ〜教えてくれよ〜イスカぁ〜」
出し惜しみする言葉をはきださせようとしているのか首を極めてい
るギュンディアの手に力が入っているように見える。
「わ〜かった、分かった言うよ、言うからそのスイーパーやめれ」
ギブアップを相手に告げる、いわゆるタップをしたらギュンディア
はスイーパーを解いて、作業しているオレの正面に回り、作業を見
つめる。
「ほれほれ、教えれ教えれ」
「おぅ、オレはついに新武器を手にしようと思ったのだ、しかも誰
も持っていないような、スッゲーやつをだ」
思わずしたり顔をしながら発言に意外な返答が返って来たのだ
「うぉぉぉぉぉ、スゲーじゃないかイスカ、で、どんな武器なの?」
ここまでは予想していた反応だったんだが、
「そうこれはオレだけの武器、大剣とブーメランをかけ合わせた大
ブーメラン刀なのだ」
そう言った直後、ギュンディアは少し言葉を失っていたかのように
間を取り、軽くオレの右肩に手を添えると
「イスカ、そんな武器は本当にこのゲームに存在するのか?もしや
只の大剣にしかならんのでは・・・/」
(か・・・考えてなかったぁぁぁぁぁぁぁ)
そのギュンディアの衝撃の一言に頭は真っ白、オレのしたり顔完敗
、その様子がギュンディアに伝わったのか、気を使うように、そし
て慰めるように声を掛けてくる
「ま、まぁ〜作ってみようぜィ、イスカが考えてることも、もしか
したら出来るかもしれないしィ・・・いやははは、きっと出来る、うん、できる」
削る手に力が入らなくなるというか、何となく場が重〜くなってし
まったような、少し涙目
「なんか手伝うよ〜っってむしろこういう時はパムっちだ、パムっ
ちも呼んで3人で作ろうぜィ」
思い空気を払拭するようにギュンディアはパムちんと連絡を取って
いるようだ、しかし、オレの心はなおも重い
5分ほどした頃だろうか、ギュンディアが現れた時と同じように遠
くから声が近づいてくる、かと思えば昨夜パムちんが去り際に見た
光景が広がる
辺りに広がる煙が晴れたそこにはパムちんが腕を組んで立っていた
「アナタの町のお助けマン、トリッカー・パム見参ッ」
そんな華麗な登場にギュンディアはやはりツッコむ
「ト・・・トリッカー?おまいさんはどっちかって〜と忍者じゃない
んか〜い!」
「ち・が・うっ、あくまでオイラはトリッカーな・の、トリッカー
、誰が何と言おうとトリッカーなのさん♪」
かなりのこだわりぶり、しかし、そのやり取りを見ていてギュンデ
ィアのいうことも、言い得て妙、そして、ギュンディアは本題を切
り出す。
「パムっち〜、あのな、イスカがブーメランと大剣を合わせたよう
な新しい武器を作ろうとしているんだけど、こういうのできるのか
なぁ」
左手でアゴをさすりなaがらもパムちんから迅速な返答は無い
「ん、ん〜っん、どうなのかなん、ブーメランタイプの武器は使っ
ている人を見たことは・・・ある、だから、もしかしたらもしかする
かもねん」
その一言に少しだけ希望を持てた、その後これじゃ足りん!と足り
ない素材をパムちんはゲールニー一座へ戻り、取って来てくれた。
「まだまだぁ、がんば〜イスカどん」
と現場監督するパムちん、それに対してギュンディアはというと
・・・パムちんほど知識があるはずも無く早駆けを使ってオレの周り
を周回しながら、もっぱら応援要員なのであった、まぁらしいと
言えばらしいし、重い空気はその明るさで飛ばされてしまった・・・
そして
「完成!ヘヴィ・エッジ」
三者それぞれ新しい武器の完成に歓喜する、オレの武器、オレが自
分の手で作った武器、思っていた以上に愛着を感じる。
それはこの世界全体でみればチャチな武器なのかもしれないが、ギ
ュンディアとパムちんが手伝ってくれたという思い出になるんだろ
うと、感慨にふける
「せっかくだから使ってみようぜィ、パムっちともパーティーして
みたいしね」
「ついにオイラの隠された実力を見せるときが来たのだにん」
オレとギュンディアはその一言に即ツッコむ
「あんたが実力見せちゃったら、新しい武器のテストにならんやろ
っっっ」
ドゴッッ!?
つい武器を抜刀したままツッコみを入れてしまった、そして、なぜ
そんな時にかぎってクリティカルヒットが出るのかと自分に疑問。
(レベル3でよかったぁぁ)
とっさに詫びを入れる
「ゴメ〜ン、パムちん、わ、わざとじゃないよ、ゴメ〜ン」
レベル3の一撃とはいえ、クリティカルヒットによるヒットバック
効果でダウンするパムちん、そして起き上がり
「PKイクナイッッ、イジメ、イクナイッッ( :凵F)」
と半分冗談まじりに復活、ギュンディアはギュンディアで
「イスカ、おいしすぎるっっっ」
こちらも必要以上に盛り上がる、そんなコントを演じながらもわき
あいあいとパーティーを組み、ルゥド・サン・トゥーナを後にした。
(あとがき)
死神博士イスカアルティメットウェポン作成日誌編終了です
前回のサザ○さん的穴埋めクイズに正解した人に賞品はないです
が穴埋めはできたでしょうか、私自身イスカのツッコミは激しか
ったと思います。
次回・・・ギュンディアとイスカがツッコんだ○○の○○れ○○○が
本当に明かされる
そしてイスカ、○イ○・○○○ンの事実にゲンナリ!
さらにイスカとうとう○○という○○○を○○!?
こんな衝撃ニュースを仕入れた記者は赤いアイツ○○○・○レ○○
○←まだ未登場の重要キャラ に○○○・○○○○されて行方不明
になったという・・・。
こんなこと書いてて赤いアイツに○○○・○○○○されちゃいけな
いのでまた次回お会いしましょう。
それではまた・・・
[No.1300]
2009/09/22(Tue) 15:36:52
Re: .hack//R.D 第十八話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
パムちんと初めてパーティーを組んで分かった事は、パムちんのL
vは10、そして武器は・・・短剣と、ん?扇子?不思議に思ったオ
レは質問をぶつける
「パムちんは何で両手に別々の武器を持てるの?ギュンディアみた
いにナックルなら両手に持ってても不思議じゃないんだけど」
「あ〜、それはオレも不思議に思ってたんだよ〜、ナイス質問っ
イスカ!」
「それはね〜、オイラがトリッカーだからだよん」
(いや〜、見事に答えになってない)
「The・Worldでマルチウェポンって職業はあったんだけど
、あれにしても別々の武器を同時に使えたわけじゃないからなぁ」
そんな何気ないギュンディアの言葉にパムちんは思った以上に食い
ついた。
「おぉ!The・Worldやってたのんギュンディア?オイラも
あれやりたかったんだよR:2からの人?それとも前のやつから?」
そこまで食いついて来ないと予想していたのか、あまりのパムちん
の食いつき具合にギュンディアはたじろく。
「R:2の最後の頃だねぇ、やってたのは、ほんのちょっとさわっ
ただけという感じかなぁ・・・って話それてるって!何でパムっちが
両手に別の武器を持ってるかってことだろ〜」
(ん?たしかギュンディア前にチャットでR:2でそこそこ名が通
ってたって言ってなかったっけ・・・謙遜してんのかなlぁ)
「しょうがない答えよう!このトリッカー・パムがどうして別々の
武器を装備できるのか・・・、それはスキル”ツイン・ウェポン”を
有しているからなのだ」
両の手を腰へこしへやり、いわゆるエッヘンポーズでの堂々の回答
「うっひゃ〜、そんないいスキルあるのかぁ!オレにくれぃ」
エッヘンポーズのパムちんにすがりつくようにギュンディアは冗談
を言う
「くれぃってあんさんナックル使いやろっ!元から攻撃回数多いやん」
ペシッっと両手に持つ扇子らしき武器でいつもツッコミを入れられ
ているギュンディアにツッコミを入れる
「そのツイン・ウェポンっていうスキルがあると武器を二つ持てる
ようになるの?ならオレもほしいなぁ、あ、でももう一つ武器作ら
なきゃか」
そんなまだスキルも持っていないオレにパムちんは鬼の一言を放つ
「イスカどん!残念な知らせだ、ツインウェポンは大剣のような、
いわゆる重武器は二つ持てんのだよん」
(ガ〜〜ンッ重武器を二刀流できたら宮本武蔵みたいでカッコいい
と思ったのに)
そんなショックを受けているオレを見てか二人は同時にオレになぐ
さめの声をかける。
「君には君に合ったスキルがきっとあるさ」×2(ハモり)
その一言に自分の中の悲しみメーターが少し上がった気がした。
「さてっと・・・レベル3ならこの辺りでいいか」
悲しみを感じている間にも、どうやらオレ達のレベルに合った場所
へと到着したらしい。
「オイラはテキトーに見守りつつ戦うから、イスカどん、ギュンッ
ペ、ファイトじゃ」
じゃ??少し後方にいるパムちんの居る方をちらりと見てみると、
杖をついた爺さん風に仮想したパムちんが光臨していた。
(まぁ、ともかくオレの新武器の初陣、考えていたことができるの
か試してみよう)
敵は前にも戦ったことのある鳥系のモンスター、前に戦った時はオ
レがショートソード系武器、ギュンディアがナックル系の武器とい
う射程の短い武器だったので戦いにくかった敵ではある。
「しかし、今回は違うぜ、このヘヴィ・エッジでヅガ〜ンと・・・」
「いいぞイスカ、ブーメランで叩き落としてやれ」
ってあれ??投げれ・・・ない!?
「ヅガ〜ンと、ヅガ〜ンとぉぉぉぉ」
武器を使ってみてもブンブンと地上で振り回すばかり、これはやは
り・・・
「大剣扱いのようじゃのぉ、フォフォフォフォ」
(パム爺見事正解・・・)
などと脳内で会話しているうちにも敵は容赦なく攻撃してくる。
大剣扱いのその武器はその重さから威力はデカイが隙もまた大きい
それを体感した。
「扱いにくぃんだよっと」
自分の作った武器の扱いにくさにイラつきの声を出しつつ攻撃を放
つも、鳥系モンスターの素早さに空を切るばかり、それを見かねて
か、ギュンディアは冷静にオレに指示を出す。
「イスカあせるな、タイミングをよく見て攻撃すれば当たるはずだ」
(・・・ギュンディアに迷惑をかけ続けられないと作成した武器のは
ずが逆に迷惑かけちゃってる)
そう思うあまり、自分自身でも分かるくらいに自分が今平静保てて
いないことを認識。
それゆえに適正レベルの敵なのにダメージを与えられない。どんど
ん削られていく自分のライフゲージがより冷静さを奪っていく。
さすがにヤバイと思ったのか、ギュンディアはオレに襲い掛かる敵
を軽く料理してしまった。
「・・・こんなはずじゃ・・・こんなハズじゃなかったんだ」
あまりのくやしさ、自分の不甲斐無さに思わず皆で作った愛着のあ
る武器を二度、三度、力の限り地べたへ叩きつけた。
そんな時、オレの頭の上に「!」マークが現れた。
イスカはスキル「力動」を習得した
「おぉぉぉぉぉっ、スキル覚えたじゃんか〜、イスカ〜」
自分の事のように喜ぶギュンディアにイラ立つ感情を出してしまっ
た事を反省。
「大剣は扱いが難しい武器だし、ましてやそれを初めて使ったんだ
から仕方ないよ、まぁ、楽しんで行こうゼ、イスカ」
そんな一言がオレのイラ立ちを消し、冷静さを取り戻させてくれる
「ホッホッホッ、自分に合わなさそうならその武器を使うのをやめ
るかの?」
さながら老師風のパムちんも心配してか声を掛けてくれた。
「二人ともゴメン、みんなで作った武器なのに扱えないからとイラ
イラして」
そんな反省したオレを見つめて二人とも微笑む。
「オレ、この武器をしばらく使ってみることにするよ、みんなで作
ったんだもんな」
微笑む二人にガンバリ宣言をするようにオレは微笑み返した。
(あとがき)
イスカヘタレ道中記ヅガーンと一発リポビ○ンD編終了です。
いや〜、予想通りのベタな展開そしてやはりヘタレなイスカ、
「すべらんなぁ〜」(すべらない話風)でしたねぇ・・・。
原稿は・・・なんとめずらしく進んでおります、進んでおりますとも
以前に予告しておいた事件のところまでようやく書き進みました。
(まぁ・・・ここからがやっと始まりなワケですが・・・)
二四話にしてやっと序章が終わり二五話以降からやっと始まりだ
なんて・・・本当編集下手に申し訳なく思っております。
さ〜て次回は・・・
「イスカ、○○の使い勝手にウットリ」
「ギュンディア○○○の○○ス○○に追われボルトバリの激走!?」
「○ム、うっかり度忘れ○属○○○」
「連続○○ル○○に一同驚愕ガクブルガクブル」
の4本でお送りいたしま〜す
それではまた・・・
[No.1301]
2009/09/28(Mon) 02:46:19
Re: .hack//R.D 第十九話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
「ヨッシャ!心機一転、気持ち入れ替えていくじぇ」
軽快なシャドウボクシング風な動作をしながらのギュンディアの激励の一言が飛ぶ
「そうだ、イスカどんや、さっき覚えたスキルをセットして使ってみてはどうじゃ?」
未だ老師風のパムちんからの一言で、すっかり忘れていたスキルの
事を思い出す。
スキルのメニューからセットして・・・と、初めて覚えたスキルだけあってか、どんな変化が自分のキャラに起こるのか、ガキンチョの頃の遠足前のような心境に胸が高鳴る。
力動・・・って、マッチョにでもなるのか?マッチャンの姿が頭に浮
かび、一人思い出し笑い。
「なにニヤニヤしてんだよイスカ、ははぁ、さては初めてのスキル
取得に浮かれてんなコンニャロウ」
そんな半分正解なギュンディアの指摘を何となく聞きつつ、発動
させてみる・・・って発動できない。
「あ、ありゃ?パムちん発動できない・・・なんで??」
もしかして、それ、常在型のスキルなんじゃないかのぅ?ワシのツ
イン・ウェポンも常在型能力なんじゃよ」
「常在型ってことはとりあえずセットしとけば効果が出てるってこ
とでいいのかな?」
「その通りじゃよ見た目は変わっておらんが何かがかわっておるは
ずじゃ、とりあえず考えるな感じるのじゃ、そう偉大などっかの武
道家も言っておったから戦ってみてはどうじゃ?」
的確なアドバイスにふざけてやっているパムちんの老師スタイルが
ハマり役に見えてきた。
「そうそう、そのスキルでさっきのリベンジと行こうゼっと」
そう言うなりギュンディアは早駆けを発動、あっという間に走り去
ってしまった・・・と思ったら。
「た〜〜」
「すぅぅ〜〜」
「けぇぇ〜〜〜」
「てぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜」
「ちょっ・・・おま・・・え、何やっとんじゃ〜!!」
その信じられない光景に考える前に声が出てしまった。
大量の敵を背にしたギュンディアは救援の雄叫びを上げながら、
猛ダッシュで戻ってきたのだ。
「あぁ〜教えんの忘れたわぁ、同種族の敵は仲間意識持ってるやつ
もいて一匹と戦ってたら近くにいるやつも加勢するんじゃ、これを
同族リンクというのじゃ」
パムちんはにこやかに逃げ惑うギュンディアを尻目にもう起こって
しまった事態の解説
「ごらぁ〜パムっち、のんきに解説してないで何とかしちくりぃ」
「冒険にはこれくらいの緊張感がなくてはのぅ、どれ、ギュンディ
アや、イスカと一緒にこの窮地を脱してみぃ、ホッホッホッ」
「しょうがねぇ、イスカ〜、やるぞぉ」
って全然しょうがなくないんすけど、オマエが持ってきた窮地だろ
ぉぉ、とも思いながらもリベンジマッチがスタートする。
敵は大まかに見積もって十数匹それだけの数の敵を相手にしながら
もギュンディアはその華麗な動きでダメージを最小限に抑えている
「オレが囮になるから、少しずつ敵を倒して数を減らしてくれイス
カ」
無数の羽音と襲い掛かるくちばし、そんな混戦の戦中にもギュンデ
ィアは冷静な指示をオレにぶつける
(こりゃシャレならんな、さっきみたいな事してちゃギュンディア
がやられちまうな)
さっきの二の舞はごめんだ、オレは力まないよう、まず、深呼吸。
より、イケる!自分で心理状態をチェックし、武器を構えギュンデ
ィアを狙い下降してくる鳥へ走り込み一閃
「キャィィィイィ」
敵の断末魔が響く、初期装備のショートソードとは威力が比べ物に
ならない、しかも、先ほどよりも心なしか武器を振るスピードが上
がっているように感じる、これが力動の力・・・?
自問自答している時間を敵は与えてくれない、とにかく数を減らさ
なければ、と次の敵との戦闘に入る頃、ギュンディアのライフゲー
ジは2/3ほどまで削られていた。
さすがにあの数を相手にしては捌ききれない、もっと早く、もっと
強く、自己暗示をかけるように自らのモチベーションを高める。
二匹、三匹・・・倒す数が六匹に達する頃、敵の数が減ってきたから
か、ギュンディアにも多少の余裕が出来てきたのか、くちばしで
ついばまれすぎて頭にきたからなのかは分からないが、次の指示の
ような、そうでないような言葉が放たれた。
「づぁぁぁぁぁ、チクチクもううんざりだぁぁぁまとめてブッつぶ
ぅぅっす!イスカ後はオレにやらせてくれィ」
ブッ飛んだ発言をしながらギュンディアは早駆けで敵と距離を取る
と、敵を威嚇するような構えを取り、さらに早駆けを発動。
弓から放たれた矢のごとく一匹の敵に向かって突進したかと思えば
その敵に加撃せず、するどいフットワークでほぼ真横に弾かれるよ
うに移動、迎え撃つような敵の攻撃は空を切る。
その間ギュンディアはほかの敵に、美しいリズムで攻撃を全段ヒッ
ト、さらにそこからかわした敵へ、流れるような動きでコンボをた
たき込む。
要所要所に早駆けを駆使し、戦う、その静と動が入り混じる姿を一
言で言い表すなら華麗。
まさに最初から敵の動きまで自分で作っているような完璧なファイ
トプラン、オレとは一味も二味も違っていた。
「ふぅぅぅぅ、成敗完了ッ!ヒーローは負けないのだ」
全ての敵を倒しきったギュンディアはフィニッシュポーズらしき動
作を取り勝利宣言、するとまたあの「!」マークが出現した。
ギュンディアはスキル「旋」を習得した
「キタ〜〜、スキィィィ〜ル!これで明日もマンプクだぁ」
ま、満腹?スキル取得の嬉しさからか激しい戦いのあとだからかギ
ュンディアの言動、意味不明。
そしてヒーローの変身ポーズのようなポーズを取っていると「!」
とまたマークが現れた。
「おおおおおおおおおおっ!連続でスキル取得なんて始めて見たス
ッゲ」
爺さん化しているのも忘れたパムちんがあっけに取られ声を上げる
ギュンディアはスキル「蹴撃」を取得した
「ダブルでキタァ〜、校歌斉唱〜、お父さんアリガト〜ゥ」
さらにハイテンション、しかし、うれしい気持ちは分かる。
パムちんの驚きから察するに一度に二つもスキルを覚えるのはめ
ったにないらしい、でもあれだけの動きなんだからそういう事も
あっておかしくはないかも・・・とも思う。
「相変わらず、お前はスゲーなぁ、ギュンディア」
「早くセットして使ってみたいぜィ」
右拳を天に突き上げガッツポーズのままにこりと笑みを見せる。
「まぁこれもイスカのおかげだじぇい、オレ一人だったらあの鳥ど
もについばまれて骨になってたぜィ」
そう言われてみて思い返すとコイツが敵をいっぱい持って来たのが
始まりだったな・・・そう思うとふと笑いがこみ上げてきた。
「ハハハッそうだったな、マジ、死ぬかと思ったよ」
ハプニングも結果オーライで楽しめる、分かち合える、それもMM
Oならではなんだと思う。
「イヤイヤイヤこの師のおかげじゃ」
「パムちん何もしとらんかったじゃないか〜〜い」
「しかもリンクのこと教えてなかったやないか〜〜い」
と連ツッコミ。
戦闘に何の手もわずらわせていないパムちんも話に乗っかってきて
三人に笑いの渦が巻き起こった。
その後もレベル上げに勤しみ、オレもギュンディアもレベルが8と
なり、タウンへ帰る事にした。
タウンへの帰路でオレはふと気付く、ゲーム内の時間があることは
知っていたが、しっかりと現実のように時間が来ると陽が落ちて夜
になる・・・、この作り込みには脱帽させられるばかりだ。
今日は週末の金曜、この後も遊ぶか?などと話す中パムちんがある
提案を切り出した。
「そだ、ち〜っと時間的にきびしいかもしれないんだけど、今度の
日曜の夜って二人ともログインできるかの?」
「日曜の夜かぁ〜、次の日学校あるしなぁ〜」
(あ・・・しまった、オレ何リアルの事べらべら喋ってんだ)
「オレのほうは昼寝てるからいいよ〜」
(ん?おいコラッ!タケト月曜寝てるってどういうことだよ、学校
は?授業どうすんだよ・・・って、そうか、コイツ午後の授業いっつも寝てるわ・・・嘘をつくことなく自分の素性を明かさない・・・さすが
MMO経験者かわしかたがうまいわ)
「ってタケ・・・いやギュンディアそんな簡単に返事しちゃっていい
の??」
日曜夜だよ、次の日月曜だよ?あの名作アニメ、サザ○さんのある
日ダヨ?相撲の千秋楽の日ダヨ?」
何か自分がリアルの事バレちゃってシッチャカメッチャカな言動、
ホント何言ってんだオレは。
「イスカも行こ〜よぉ〜、せっかくのパムっちのお誘いなんだから
さぁ〜・・・ってまだ何のお誘いか聞いてないってかぁ」
言いもってすりよってくるギュンディア、しかし、何の誘いか分か
らないから即答はできない。
「ねぇパムちん、いったい何があるのかな?詳しく教えてくれない
?」
詳細をたずねてみることにした。
「簡単に説明すると、ゲールニー一座とスペシャルゲストによるラ
イヴがあるんだよん、聞き応えありますよん、ダンナ」
ギュンディアに引き続きパムちんもすり寄ってくる。
「なぁ、パムっち、ゲールニー一座は見たから凄いの知っているけ
どスペシャルゲストって誰なの?」
ギュンディアはスペシャルゲストってところに食いついたらしい。
「ムッフッフッ・・・それはヒ・ミ・ツ・じゃ、当日のお楽しみって
ことでヨロリ」
不適な笑みを浮かべながらもスペシャルゲストのことを明かさず、
pパムちんはこちらの好奇心を刺激する。
そうもったいつけられると、やたら行きたい気持ちになってきた。
BBSなどでいうところの、オレ完全に釣られてるってヤツなの
だろうか。
しかし、それが分かっていてもどうも興味をそそられて仕方がない
って〜かパムちんのリアルは営業マンだったりするんだろうか、そ
う思わせるくらい話術に長けている。
「よっし、決めた!行く、オレも行く!誰が何と言おうと行くこと
に決めたわ、ギュンディア逃げんなよ」
言いつつ今度はこっちがギュンディアにすすり寄る。
つい勢いで行くことを決めてしまった・・・でも、まぁ楽しみが一つ
増えたと思うと悪くはない。
ルゥド・サン・トゥーナに着いたところで、オレ達は一旦休憩を取
るため、ログアウトすることにした。
別れ際にもパムちんは日曜忘れないでねんと、釘をさすように言っ
てた・・・が、忘れるもんか、スペシャルゲストとやらをとくと拝ん
でやる・・・自分の中で自分の楽しみを膨らませながらのログアウト
となった。
[No.1304]
2009/10/08(Thu) 13:53:38
Re: .hack//R.D 第二十話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
グァァァ・・・オォォォォォ・・・
いつにも増して今日は風が強いのか、村の奥に位置する谷に吸い込
まれる風によって作り出される唸り声がいつもにも増して激しい。
楽しみに待っている時間は意外と早くやって来るもの、あの後オレ
とギュンディアは、パムっちの誘いが楽しそうだから1クール置こ
うゼ、というギュンディアの提案から土曜はログインせず、リアル
の生活を個々で過ごすことになった。
どうやらタケトのやつ、何か用事があったらしい。
その間オレは読みたまっている新聞を漁るように読み、情報を取り
入れる。
あいも変わらず、世界では争い事が絶えないらしい。
オレのもっとも興味のある記事である環境問題、それを悪化させる
原因の一つに我が国も関係している。
自分なりに分析して出た結論、そしてたまっていた新聞からもそん
な記事ばかりが目に入る。発展途上国への支援・・・世界に向けての
いい子ちゃんですよアピールにしかオレには見えなくて仕方がない
発展途上国が発展する・・・つまりはどんどん資源が必要になってく
るわけだ。今ですらエネルギー、食料、鉱物資源、水、世界は物を
奪い合っているのだ。
これを加速に導くことはオレには世界情勢を悪くしているとしか
思えなかったし、これ以上の世界の発展はさらなる環境悪化に繋が
る、それだけはカンベンしてくれという思いでいっぱいになる。
そんな感じで、たまっていた新聞を読んでいただけで一日はあっけ
なく過ぎてしまった。見ていてため息をついてしまうような記事ば
かりで息抜きになったかというのば別としてもだ。
むしろゲームの中でのほうが息抜きになりそうな気もする、ログイ
ンしてそんな事をルゥド・サン・トゥーナの湖を見ていて思う。
約束まではまだ時間があったので、そのまま湖のほとりを歩いてみ
ることにする、メンバーアドレスを見てギュンディアもログインし
ていることを確認していたが、昨日どうも息抜きできなかったせい
か、一人でゆっくりと歩き気分を落ち着けたかった。
しかし、この湖は美しい、水面がゆらゆらゆっくりと揺れて、映る
月もそれに揺らされて、それをみていると心和む。
夜で見えづらかったが、よーく見ると魚が群れで戯れているように
もみえ、なんとも楽しげ、ゆったりまったり滝を目指して歩く。
一人でこうしてみるのも、みんなでワイワイ楽しんでいるのとはま
た違う良さがあるなと、ゆっくり流れる時間を楽しんだ。
滝にほど近づいた時に風の唸り声とも滝の落水の音とも違う、人が
作り出す声が耳に入ってくる。
・・・♪・♪♪・・・
今まで聴いたことのない歌、類まれなる美しい声、瞬時にオレの脳
はその声に魅了され、あまりの感動に背筋がゾクッとし鳥肌が立つ
声に吸い寄せられるように耳をたよりにその声の源へ近づいて行く
眼下に飛び込んで来たのは滝つぼに程近い所で歌う女性PCの姿。
そのPCは天に光る満ちた月を目掛けて全身を使って声を天空に舞
い上げる。滝を昇り天から降ってくるようなその声は低音、高音を
自在に織り交ぜながら絶妙なバランス。
月に照らされる栗毛のロングヘアが声を出すたびに美しく優雅に揺
れ、その流れる髪の美しさに今度は目を奪われてしまった。
その姿に魅了されてしまったオレは湖に足を取られ、その水音が美
しいリズムを狂わせてしまった。
「誰?」
その雑音を聞き、そのPChはこちらへと振り向く。
「す、すみまそんっ、オレです、邪魔しちゃってすまません」
あまりの動揺にすみませんが言えてない、振り向いたその姿はその
声に負けず劣らず美しく、薄いブルーのワンピース風ドレス、その
細い腰を強調するような大ぶりの飾りの付いたベルト、そして端正
な顔を彩る澄んだエメラルドグリーンの瞳がこちらを注視した。
「親衛隊のみなさ〜ん、お願いしま〜す」
(ん?親衛隊??何・・・それ?)
「・・・そいやっ・・・そいやっ・・・そいやっそいやっそいやっそいやっ
ふっとどっき者ぉ〜があっらわっれた、オ〜レたっちアレグロ親衛
隊っ、成敗成敗大成敗」
妖しい祭りの掛け声風の歌が遠くから聞こえてきたかと思えば、ス
ゲェ勢いでラグビーのスクラムを組んだ男達が猛突進してきて囲ま
れてしまい・・・
「オイオイオイオイ、ちょっまてっお前らどっから・・・」
ぴ〜しぴしぴしぴしぴしぴしぴしぴしぴしぴしぴしぴしぴしぴし!
ドゴォッぴしぴしぴしぴしゲシッぴしぴしぴしぴしぴしぴしぴし!
ガスッぴしぴしドカッ!ぴしぴしぴしぴしぴしぴしぴしぴしぴし!
言おうとしているセリフを最後まで言う間もなく、何故かショボイ
ダメージのハリセン攻撃の連打がオレを襲って来る。
あまりの連打に瀕死状態、その上で何だか変な御輿が登場し、無理
やり載せられ、村の入り口まで強制移動させられそして御輿から振
り落とされた。
そして持っているハリセンを一斉に突きつけられ、
「アレグロちゃんの意向でPKはしねぇが次変なことしたらこんな
もんじゃ済まね〜からなぁ!成敗完了ッ成敗完了ッ・・・」
そして親衛隊という名の嵐は去って行った、綺麗に1ドットだけラ
イフゲージを残しやがる、ある意味職人芸だがハリセンで、しかも
ショボイダメージの連打でそれを実行されたことにメチャメチャ腹
が立つ。
そんな姿を少しだけ遠間で見学しているヤツの姿が視界に入ってき
た。
「うお〜い、大丈夫か?イスカ〜」
一部始終をギュンディアに見られていたらしい、とっさに立ち上が
り、
「うお〜いって呑気にいってんじゃねぇ〜、見てるなら助けんか〜
い!」
もう去ってしまった親衛隊に対するぶつけようのない怒りをギュン
ディアにすこしばかりぶつける。
「いや〜あいつらのタダ者じゃないオーラに押されたっつ〜か、異
様な御輿にびっくりしたっつ〜か、まぁなんとなく関わりたくない
ような感じがオレの危険察知レーダーにビンビン反応したんだよ」
(危険察知レーダーって、パーフェクトソルジャーギュンディアの
特殊能力の一つカヨゥ)
「まぁ、そろそろ時間だし、パムっちんとこ行こうぜィ」
綺麗にまとめるギュンディア、どうにも納得いかなかったが、ギュ
ンディアが居てくれたおかげで体に蓄積されたストレスが発散でき
たから良しとしよう・・・
ってストレス発散に湖に来たのに溜めてどうすんだオレ・・・と自分
がイヤになる。
約束の場所に行こうとするが、人、人、ヒトでなかなか先に進めな
い。それだけこのイベントに期待している人が多いんだと思うとパ
ムちん達ってすごい、身内びいきじゃなくともそう思えた。
かきわけ、かきわけ、人の波をクロールのような平泳ぎのような、
まあ泳ぐような動作で前に進む、ゲームだから体力なんぞ使うかい
・・・そう思っていたのは大間違い。
ほかのPCにオレのキャラがつっかえると、コントローラーの指に
力が入る入る、待ち合わせ場所に着くまでにかなりの精神力、そし
て、腕の筋力を使ってしまった。
「おそ〜い!もう始まっちゃってんぞぉ〜、さてはこのイベントを
甘く見ておったな?」
バシコ〜ン!セリフと一緒にハリセンの一撃、遅れて少し怒らせち
ゃったかなと少し反省。
「甘くは見てなかったんだけどさぁ・・・アレグロ親衛隊とかいう変
なヤツラにからまれちゃって、ね、ね、ギュンディア」
遅刻する気は無かったんだよと、とりあえずアピール
「遅刻は遅刻なのじゃ」
パム爺ばりの物言いと共にバシコ〜ン!とまたハリセンでの一撃
・・・ん?ハリセン???
「パムちん、ちょっとばかり聞きたいことがあるんだが・・・」
右手に持つハリセンを左手にバシバシ打ち付けながら、
「なんじゃ?」
「パムちんてもしかしてアレグロ親衛隊に入ってたりしない?」
手に持つハリセンをオレの前に突き出し、堂々と
「バカにするなぁ〜!ワシはアレグロ親衛隊会員ナンバー1にして
アレグロ親衛隊の創設者じゃ〜」
(・・・・・)
「も・・・もうひとつおうかがいしたひのですが、すこしまえなにを
されていましたか?」
いや、そんなワケない、頭が真っ白になりながらも何故か丁寧語
で核心に迫ってみた。
「アレグロ親衛隊としての仕事を見事にこなしておったワィ、アレ
グロちゃんの発声練習をジャマした輩がおったからのぉ」
(・・・・・)
「お前かぁぁぁぁぁ、あの中にいたのかぁああああああっっ!?」
「いやぁ〜、これも麗しのアレグロちゃんの為じゃからのぉ、ホッ
ホッホッ」
呑気にホッホッホッなどと言っている怒りを発散させるべき本来の
人物を見つけた衝動から口よりも先にヘヴィ・エッジによる全力の
ツッコミが炸裂した。
「ホッホッホッじゃねぇぇぇ〜」
「ち・・・違うんじゃ・・・イスカどん、これにはワケがワケがぁぁ、ア
レグロちゃんはアレグロちゃんは今日の主役・・・そう、言ってたす
ぺしゃるげすとなのじゃ〜」
「かんけえねぇぇぇぇ〜オレが味わった痛み、とくと味わえぇぇぇ
いっっ」
死なない程度ににこやかにそして速やかに復讐完了、
「イ・・・イスカどん・・・いけず・・・ガフゥッ」
そんな復讐を受けたパムちんが虫の息になっている時、観客の歓声
が爆発的に膨れ上がった、それがイベントの始まりであることが分
かるように。
(あとがき)
過激派親衛隊ワッショイリンチ祭り編終了です。
予告していた女性新キャラのアレグロをやっと出せました
(ほんのちょこっとだけど)
アレグロのイメージは簡単に言っちゃうとYUIちゃんに文章に
書いた服装をさせたものだと思っていただければ・・・より鮮明にど
んな人なのか分かります。
いや〜俺は、または私はそのイメージは嫌という人は↑の一節は
見なかったことにしてください、あくまで私の中のイメージなの
です。
せっかくだからパムの名前の由来もこの際ここで触れておこうと
思います、まぁなんてテキトー!な私のネーミングに全仏から抗議
の手紙が届いたという・・・ことはありませんけれども、まぁテキト
ーです。
ルパン → ルパム → パム
・・・
どうですこのテキトーさ!?私がルパン三世が好きということだけ
で頂いてしまったこのキャラネーム、しかしパムは自分でも結構気
にいってるキャラです。
次回の最初のセリフからもそれが分かるでしょう。
(でも意外とコイツは・・・)
↑と作者だけが知ってる裏事情を本文以外のここで含みを持たせて
みます。
あ・・・ちなみに今回ハリセン乱舞の中の3,4発違う攻撃を加えて
いる悪ノリをしているのはもちろんパムの仕業です
さ〜て次回は・・・
エキサイティング○○○○ラ○○にパム絶叫
まさかこんな所で!?ギュンディア・○○○ー○○ー?
イスカ、まさかの○○○○急接近でカッチカチやぞ!
でお送りします。
それではまた・・・
(番外編:2ねん3くみ、たけとくん)
「せんせ〜いしちゅも〜ん」
「ん?なにかな?たけとくん」
「なんでじゅうきゅうわにあとがきがないの〜?」
「たけとくん・・・、世の中にはつっこんじゃいけない事もたくさん
あるんだ・・・」
「なんでなんで〜?せんせいほんとはしらないんでしょ〜?
「知ってる!知ってるけど言えないんだよたけと君」
(何でかって・・・書いてたらあとがき書く時間無い事に気がついた
かたったそれだけの理由かい!とかツッコマレルじゃないか)
「ご利用は計画的に」←タケトの声
「聞こえた!?先生の心の声聞こえたんか?っていうか急にデカく
なったろタケト君ッ」
「ギュンディアキーック」
ゲシッ!!
ギュンディアキックが見事に炸裂したところで・・・
そんだけの理由でした、本当正直スマンカッタです。
[No.1305]
2009/10/19(Mon) 22:22:41
Re: .hack//R.D 第二十一話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
「アァァァァァァッッレグロちゅわぁぁぁぁぁん!!」
メインイベントが始まった途端、ついさっきまで虫の息だったはず
のパムちんが、舞台袖から身を乗り出さんばかりに舞台中央の主役
である女性PCに向かって熱のこもった叫び声を上げる。
(いいのか?舞台袖からこんな大声で・・・)
隣でパムちんの熱狂ぶりを冷静に見てそう思っていたが、何ら問題
ないことにすぐ気付かaされた。
舞台上の主役がファンサービスか舞台中央から右端へ駆け寄り手を
軽く降るだけで、パムちん一人が出す叫び声など問題にならない程
に大量の音波が舞台をビリビリと震わせる。
そこから左端へと小走りに移動、それだけで観客達はウェーブを作
る、その様を舞台袖から見ているとその壮観さからあっけに取られ
てしまった。
なんとなくノリでギュンディアが舞台に出て行っちまうんじゃない
かとそれだけがしんぱいになったのでギュンディアのほうをチラり
と見てみると・・・、行こうとしてるギュンディアを必死で止めるパ
ムちんの姿が・・・
「あぁ・・・応援できんんん、イスカどぉぉぉん!あんさんの連れ止
めてくりぃ」
あぁぁ!呑気に見てる場合じゃなかったぁ〜、止めないと、止めな
いと!?
「離せぇ〜パムっち〜、こんなに人いるんだからギュンディア・ヒ
ーローショーやらないと末代まで祟られるゼィ」
今にもパムちんの静止を振りほどきそうな勢いのギュンディアをと
りあえずは止めるために掴みかかり、何とかならないかを頭では思
考する。
「は〜な〜せぇぇぇ〜」
「殿ッ、殿中でゴザル殿中でゴザルヨ」
とかもはやコントさながらのギュンディアとパムちんのせめぎあい
の声を聞きながら、パムちんのハリセンがふと目に入る・・そうだ!
意外な場面でヤツラが役に立とうとは・・・と脳内会話をしながら、
「ギュンディア、おちつけ、おちつけっ、お前もあの親衛隊の事を
見ただろッ、今出て行ったらあれ以上にヤバイぞっっ」
ピタッッ
その直後ギュンディアの時間が静止したかのように動きが止まる。
「あ・・・あれはいやだな・・・っていうかアレくらいじゃ済まないよな
・・・」
さすがに頭の回転が速い、しかしながら、こんなチャンスに・・・と
思っているのか、ちょっとシュンとして残念さを隠せないようだ。
問題が解決したので舞台に目を戻す、右に左に、人の波がうねる。
パムちんをはじめとする親衛隊ってのはやりすぎだと思うが、この
人気ぶりはスゴイと言わざるをえない。
リアルでテレビごしに見ているアイドルなんかもこんな光景を目に
してるんだろうなと、アイドルなんかに興味は無いけれど、そう思
うとアイドルと呼ばれてる人達のことを少し見直してしまいそうだ
しかし、見事な眺め、これを見れただけでも来たかいはあったよう
に思う。でも、これが盛り上がりのピークだろう・・・そう俺は”油
断”して少し舞台から目を離しているうちに主役は舞台の中央に戻
っていた。
「なぁ、パムちん、こんな中あの人歌えるの?うるさくてどうにも
こうにもならないんじゃ・・・」
その観客達が発する集団音響にオレなら無理だなと半信半疑になり
ついそんな事をパムちんにもらしてしまう。
「まぁ見てなさいって」
こんなのは日常茶飯事って具合にパムちんはその集団音響の輪の中
に戻る。
半信半疑のまま、ゆっくりと舞台に目を戻そうとしたその時、この
すごい熱気を切り裂く・・・いやこの熱気そのものが声に変化したよ
うな綺麗な、それでいてパワフルな音色が耳に届くというより体と
脳に染み込みように空気から伝達される。
(ウソだろ????ありえない、こんなのありえないよ)
それが嘘偽りなくオレの思ったことだった。それは人生で出くわし
たことのない現象と遭遇した感動、自分で出した覚えの無い涙が一
粒、頬を伝うのを感じた。
そのありえない音色に呼応するかのように場の熱気はさらに膨らん
でいく。どんどん、どんどん、膨らんでいく、その無限に膨らんで
いくんじゃないかと思うほどの盛り上がりは突然、ピタリと止んで
しまった。
「パムちん、なんで止まっちゃったの???」
興奮の渦の中に巻き込まれたオレはもはや冷静に周りが見えてない
パムちんはオレの声を静めるように人差し指を自分の口の前に立て
る。いわゆる”し〜静かに”を表すジェスチャー。
パムちんのほうを見ている間に次の曲が始まる。
・・・・W・ i・ b・ ・・ un・・・・
観客の熱をそっと癒すようなバラード曲、彼女の声にオレの中にあ
る熱が奪い取られて行くかのごとく、体が安らぐ。
これだけいる観客も、この歌に触れることすらためらうかのように
物音一つ立てない。そして、静かなその歌が終わりを迎える。谷風
が作り出す唸り声が刹那の瞬間聞こえた後、降り注ぐような拍手が
舞台に向かって飛んでくる。
オレはこんな膨大な拍手をもらえるような経験をしたことが無かっ
ただけに、自分のことのようにうれしく思えた。
その後も彼女のライヴは終わらない、ノリのいい曲で沸かせ、バラ
ード調の曲で聴かせるその姿は、会場全体の静と動を自在に操るオ
ーケストラの識者にすら見える。
その一挙一動からオレは目を離すことができないでいた。
そしてむせ返るほどの熱気と拍手の渦の中、彼女のライヴは終焉を
むかえ、観客に手を振りながら舞台裏・・・そうこっちへ向かって来
る・・・。
「アレグロちゅわぁぁぁん!?今夜もサイコーだったぁぁぁぁっ!
グレイトォォォォ」
そう絶叫しながら、パムちんはその手を取って彼女を激励、それに
まぎれてギュンディアも手を取り
「あんたスゴすぎィ!・・・サインしてっ、サインして〜っ」
となぜかサインをねだっていた。
オレもどさくさにまぎれて、手を取って激励したい・・・そう心の中
で思ってはいてもものすごく照れくさくて、できずにいた。
そんなもどかしく何もできないでいるうちにパムちんは彼女にオレ
達の紹介を始める。
(パムちん・・・君の友達でよかった・・・リアルで会うことがあったら
何かおごらせてもらうよ・・・)
オレはそんな聞こえもしないテレパシーをパムちんに送りながらも
心臓がバクバクってのは言いすぎだけど、心拍数が上がっているよ
うな感じはした。
「アレグロちゃん紹介しとくね、これが最近オイラの弟子になった
ギュンディアことギュンっぺとあそこにいるのがイスカことイスカ
どん、仲良くしてあげてね〜ん」
と紹介されてこちらを見るなり、こっちへ向かって小走りで向かっ
てくる。
「あ〜!あなたたしか、滝のところで・・・パム君の知り合いだった
んだね、あの時大丈夫だった?」
と、オレの心配をするように恥ずかしくてうつむいているオレの顔
をその綺麗なエメラルドグリーンの瞳で覗き込むようにして見つめ
る。
「あ・・・ハイ、ダイジョブデス」
自分で分かるッ、緊張しまくってガチガチ、そしてカタコト、そん
なオレにアレグロは顔の前で手を合わせて
「やっぱひどい目にあったんだ・・・ゴメンね」
そのアレグロのふとした女性らしい気遣いとかわいいハスキーヴォ
イスに顔は紅潮、そのためよけいに顔を上げられず、うつむいたま
ま
「あ・・・モウキニシナイデクダサイ」
カタコト第二弾っ、そんなオレにギュンディアは気付いてか茶々を
入れてくる
「イスカ〜何照れてるんだよ〜、そんなガッチガチでうつむいてた
らアレグロちゃんだって困ってるぞ」
固まってるオレの緊張をほぐそうとヒジでウリウリとつついてくる
「な・・・なんだよ〜」
と照れを隠すようにギュンディア首にインディアン・デスロックを
極めてみる。
「それでこそいつものイスカだな」
極められながらもタケトスマイルを見せる、そんなオレたちのじゃ
れ合いを見て微笑むアレグロを横目でチラリとオレは見ていた。
(あとがき)
爆裂アレグロスーパーライヴ2009秋の夜長編終了です。
ギュンディア・ヒーローショーが見たかった人には残念な結果でし
たが、なんとか新キャラの活躍を書けました。
そして見事にガッチガチなイスカをお届けできました。
さ・・・て・・・熱狂ライヴで盛り上がった今回ですが、22、23話と
別の意味で盛り上がって行きます。いつもの穴埋めクイズはありま
せん、それは・・・茶化すような回ではないからです。
パム「まぁ見てなさいって」
パムもこう申しております、ということでいつになく厳かに締めよ
うと思います。
それではまた・・・。
パム「そんな締め方で終わらせな〜い、次回オイラの名○○○○○
風○○で○○○ー○○○ースタート!?こりゃ見逃す手はないです
ぜダンナ」
ギュンディア「ギュンディア・ス〜パ〜タックルゥゥゥゥ」
ドゴォ!!
パム「ギョヘェェェイッ」
ギュンディア「ギュンディア・ヒーローショー差し置いて締めよう
とする悪は許せんッッ!成敗完了!というわけでまた次回お会いし
ましょうぞ〜」
[No.1306]
2009/10/30(Fri) 20:45:29
Re: .hack//R.D 第二十二話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
「アンコールッ、アンコールッ・・・」
会場からアレグロへのアンコール催促の音頭が投げかけられ始め、
それはどんどん膨らんでいった。
舞台袖から観客席のほうをチラッと覗いてみると、観客達はこの
まま放っておくと暴徒と化しそうな勢いで盛り上がっており、今
にも舞台上に登って来そうだと感じ取ったからか、ゲールニー一
座の人達は、舞台の下でそれをなんとか防いでいるのが見える。
そのゲールニー一座の中に不自然に目立つクマがベースかと思う
ような獣人タイプのPCのあまりに大きな体躯に視線を取られて
しまう。
(あんな人いたっけなぁ・・・まさかゲールニー一座って猛獣ショー
もやっててその猛獣か?)
などとこんな事態の最中そんなたあいもないことを考え、頭の中
でその猛獣ショーをイメージしてしまい、思わず吹いてしまいそ
うになる。
「何ニヤっとしてんだよんイスカどん、こんな時にぃぃ・・・ど〜
すんだ、この事態」
パムちんは想定外の事態にオロオロあわてふためく、観客の様子
からして考えている時間もなさそうだ・・・と考えていると、ヌオッ
と大きな影が入ってくる。
ついに観客がゲールニー一座の人達を突破してきたか?と気を張る
、すると野太い声が耳に入ってきた。
「おぅい、アレグロちゃんまだいるかぁ、これはどうにもならん
アンコール1,2曲やってくれんかあ」
大きな影の正体はさっき見たあのクマ風のPCだった。
「団長、大丈夫ですかん」
というまさかの一言が、オレの耳を疑わせる。
(だ・・・団長!猛獣ショーの猛獣かと思ってたこの人が団長!?)
「大丈夫ですかんじゃねぇ!パム、お前何こんなところで油うっ
てるんだあ」
セリフと共に繰り出される大きな手からのゲンコツがパムちんの頭
部を襲う。
「私ここにいます、時間がないから少ししかできないけれど、やり
ます、やらせてください」
団長の泣きの一言にアレグロは快諾
「その一言もらえてよかったよアレグロちゃん。おい!パム、現場
バタバタしてっから、お前司会やれえ」
「ハイィ団長、その役目務めさせていただきますっ」
背筋を伸ばし、敬礼しながらパムちんは大声での返答、それに合わ
せて団長の気合を入れる為の張り手がパムちんの背中に入り、舞台
へと送り出された。
ボゥン!
パムちんお得意の煙幕が舞台を包み込む。その煙も引かないうちに
煙にたじろく観客達に向けてパムちんのアナウンスが始まる。
「レッディ〜スアンドジェントルメ〜ン!ワタクシ、トリッカー・
パムのマジックショー、いやいや、アレグロちゃんのアンコールシ
ョーを始めたいとおっもいま〜す」
「おおおおおおおおおおお」
強烈に現場は盛り上がる中、パムちんは追加の一言を加える。
「た・だ・しっ、時間の都合の為2曲が限界なんだが、それでもい
いかな〜?」
と観客に対し耳を向け返答を待つ、
「おぉおおおぉ」
了承したという歓声が上がった途端パムちんはササッと両手に花を
マジックさながらに出し、
「では歌っていただきましょう、アレグロちゃん!どうぞ〜」
と持っている花をアレグロに手渡し、アンコールショーはスタート
した。
(しかし最後のアナウンス、パムちんチミはどっかの演歌ショーの
司会者ですか?)
そう思わずにはいられなかった。そしてギュンディアはパムちんあ
んなに目立っていいな〜と言わないばかりにうらやましそうに舞台
のほうを見ている。
ビートの効いたノリのいい曲をアレグロは熱唱する。2曲と言って
いたからシメはバラード曲で静かに締めるんだ、さすがだなとオレ
的に勝手に予想してみる。
ノリのいい曲で活気ある場の雰囲気を味わいながら2曲目はどうだ
?予想は当たったか?と待つ。
そして、2曲目は・・・やはりバラード曲、オレ冴えてる、そう思い
ながらもなだらかに流れるハスキーヴォイスに酔いしれながら、
オレはふと空に浮かぶ満月を見上げてみた。
アレグロの曲とマッチしたその綺麗な夜空・・・かと思った矢先にそ
れは起こる。
それは目の錯覚かと思うほどのインパクト、
ゴウゥッ!
月が真っ赤に燃えるように見えたかと思った直後、その炎から真紅
の雷が落雷、それは闇夜の空間に亀裂が入った一枚の絵画のように
美しくも、そして妖しく恐ろしい物にも見えた。
ドォゥゥゥゥゥゥゥ・・・ン!
ものすごい落雷音が耳をつんざく、そして客席は炎に包まれた。
直撃を受けたPCは即座に死亡表示、その周りにいたPC達は炎
に焼かれ、その焼かれるPCを見たPCも何が起こったのか分から
ないパニック状態。
その光景は以前新聞に載っていたどこかの美術館に展示される地獄
絵図、その現場かと見まごうほど死屍累々としている。
その地獄絵図の中心、落雷したまさにその場所にソイツは立ちつく
していた。
満月がもたらす月光に上から、そして、下からは燃えさかる炎の光
に全身真紅の鎧は照らし出され、ただでさえ不気味なその姿はより
いっそう迫力を増しており、遠くから見ているオレにすらその迫力
は伝わってくる。
ソイツは燃えさかる大地を苦もなく踏み締め舞台へ向かって歩を進
め始めた。
その姿に気付いた観客からさらなる悲鳴が響き渡る。
「ス・・・スキル・・・コレクター、スキル・コレクターだぁぁぁ!!」
その超常現象にも似た出来事を起こしたソイツの名前はスキル・コ
レクターというらしい。
その名前を聞いて逃げ惑うPCもちらほらと見て取れる、そこから
察するに相当ヤバイ奴だと容易に推測できる。
「なんでヤツがここに・・・!?」
口を開いたのは団長さんだった。そして、次に口を開いたのはギュ
ンディアであった。ギュンディアはこのありえない事態を察してか
、まるで情報を集めるように団長に尋ねた、口調が鋭い。
「アイツどんなヤツなんですか?スゲェヤバイ感じがするんスけど」
そうギュンディアに質問されると団長さんは後ろを向いて背中を見
せてくれた。
「かなり前の話になるが、ワシはアイツにPKされ・・・そしてスキ
ルを奪われたのだ・・・あの時のことは忘れようにも忘れられん」
団長さんの背中には不思議な傷があった。鋭い刃物でえぐられたよ
うな、焼け焦げたような、昨日できた傷のように生々しい。
「スキルを奪うスキルなんて・・・」
そんなスキルがあるなんて傷を見せられても、にわかに信じがたく
、思わず驚きが口に出てしまった。
(そんなヤツが舞台に向かっている・・・舞台・・・まさか!?)
頭の中で考えを張り巡らせ、答えが出た時にヤツは初めて口を開い
た。
「歌うたいのスキル・・・興味深い・・・欲しイ・・・ホシイゾ」
その不気味な姿にマッチする人あらざる声、奇妙なマシンヴォイス
はオレの考えを確信に変えた。
オレは何も考えず舞台上のアレグロに向かってあらんばかりの大声
を飛ばした。
「アレグロォォ!逃げろ、アイツの狙いは君だぁぁぁぁ!!」
その一言で恐れおののく一面にいる観客達もスキル・コレクターの
狙いがアレグロである事を認識したのか、逃げ惑う動きが変わって
いった。そして、怒号が響き渡る。
「アレグロちゃんを守れぇぇぇぇ!!」
その声でなおも逃げる者、スキル・コレクターに向かって立ちはだ
かる者にハッキリと分かれる。
たちはだかるPC達に向かってマシンヴォイスが飛ぶ。
「おもしろいオモシロイゾ、散らせてやるよ・・・この満月の下にな
ァ」
その一言と共にスキル・コレクターは日本刀のような刀を抜刀、瞬
時に戦闘は開始する。
無人の荒野を進むがごとく、人の波を切り裂き、屍を積み上げなが
ら進軍して行く。
一人一人が始めたばかりのオレたちなどよりもレベルも上のハズ
・・・なのに進み行くヤツのスピードは何ら変わらない、一体どんな
戦いをしているのか全く想像できない。
それほどに圧倒的な力なのが遠目にも分かる。懸命に向かって行く
彼らはヤツの足枷にすらならないようだ。宣言通りに月に捧げ物を
するように何十人ものプレイヤーを薙ぎ倒し、ついにヤツは舞台の
下まで到達してしまった。
恐れおののいているからかアレグロは動けずにいるようだ。
そんなアレグロをかばうように団長さんは舞台上でヤツに対峙する
「やった、団長!やっちまってくだせぇ」
sその後方からパムちんから団長への激励の声援が飛ぶ。
「バカ野郎ォ!パムゥ聞けェ!ワシがほんの少しだけ時間稼ぎをす
るからお前はアレグロちゃん連れて逃げろォ!!」
いつもおちゃらけ気味のパムちんの真剣な顔が、その一言でさらに
引き締まる。パムちんはアレグロの手を取り、こちらへ駆け寄る。
「イスカ、ギュンディア、ここは団長にまかせて行くぞ!」
パムちんの口調にいつもの余裕は無い。オレは逃げつつ遠近法で小
さくなっていく団長さんの姿を見た。その時すでに団長さんは舞台
上で横たわっていた。
にげた、オレ達は村の奥に向かって全力で逃げた。
滝のさらに奥、唸りの谷へ後方から迫り来る赤い悪意を感じながら
も行ったことの無い地へと足を踏み入れた。
(あとがき)
人型汎用決戦兵器速度三倍真紅ロボット編終了です。
ようやくずっと前に予告で書いた赤いヤツを出せました。
(出るまで長かったなぁ・・・)
次回も赤いヤツ編なのでお楽しみに。まぁ前回茶化すような締めは
しないと言ってあるのでもう締めてしまいます。
それではまた・・・。
(番外編:2ねん3くみ、たけとくん)
「え〜と、たけとくん先生のお話・・・」
「たけとかった〜!」
ジョリッ!
「いてぇ!こらこらたけとくん、先生重大なお話があるから聞き
な・・・」
「たけとぱ〜んち!」
ドスゥッ!(みぞおちにヒットした音)
「ハゥゥッ!・・・たけとクン、いいかげん先生のお話聞きなさいッ
!!」
「え〜、じゅうだいなはなしってな〜に〜?」
「このたび先生は近々リアルで発売される本家.hackシリーズであ
る.hack//Linkが発売になるに当たって、ほんのちょっとでもこの
話と話がかかぶって、あ!この人話パクッたな!・・・ってことに
なってもいけないので今のうちに全貌を予告で書くことにしたん
だ」
(最近書き込む時間もなかなか取れないことだし、ここから多分
長いしなぁ・・・)
「たけとてきにはきょ〜みな〜い、たけとさま〜そるとき〜っく!!」
ドゴォ!
「う・・・ゥゥ・・・アゴに決められて脳を揺らされ、このままでは気絶
してしまう・・・気絶する前に予告です・・・ガクッ」
これは語られなかったはずの物語・・・
・
・
・
これは罪人達の物語・・・
原初の七人
アーティファクト
モジュレイター
プロジェクト・○○○○○○○○○
クビア・スパイダー
AIDAサーバーの真実
データクラッシュ
○○され○○○
神々の黄昏
ALTIMITを巡る悪意
○l○○○○i○○を○こし○
欺かれた勇者
空白の時間
○○○○○な○の真○○○○
・・・そして○○達○○○が始まる・・・
「このまま全面戦争に突入します?私は平和に問題を解決しようと
しているだけですよ」
「はたして君達にこの壁を越えられるかな・・・」
「やはりあの時消えてなかったんですね、なら回収しなくちゃね」
「あぁ・・・○○○○○遊んでる時は楽しかったなぁ・・・」
「ここは時失いし都、マク・アヌ」
「これが・・・○○の遺産」
「火野拓海クン、君には存分に働いてもらうよ、選ばれたわけだか
らね」
「何でボクじゃなきゃいけないんだよっ!できない!ボクにはそん
な事できるわけない!イカれてるよアンタ!?」
「君でなくてはならないんだ・・・それができなければ○○○○○○
○○い○す○はできない」
「・・・また私がこれを使う事になるとは思わなかった・・・」
「始まるゼ・・・神々の黄昏が・・・」
これは人が紡ぐ物語
そして
真なる罪とは・・・
[No.1311]
2009/11/15(Sun) 02:35:08
Re: .hack//R.D 第二十三話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
「ヤバイ、アイツやばいよ」
今一緒に逃げている誰もがわかっていることをパムちんは口にする
恩義のある団長さんを背に逃げているからなのか、少し涙目になっ
ているようにも見える。
そしてさらに話を続けた
「団長のレベルは45、ここいらでは最強クラスの強さで、そんな
団長達がいたからルゥド・サン・トゥーナの中でPK行為が行われ
ることはなかった、そんな団長がほんの少し、ほんの少しの時間を
稼ぐって言ったんだ。そんな奴から逃げてるなんて生きた心地がし
ないよ」
「パム君ごめんなさい、私のせいでこんな思いさせて」
いつも元気なパムちんのこんな弱々しく、そして、辛そうな所を見
て、アレグロは狙われている自分のせいだとパムちんに謝り、心苦
しそうな表情になってしまった。
「アレグロちゃんのせいじゃないよ、全部アイツが悪いんだから気
にしないでねん」
アレグロを気遣うようにパムちんはいつもの口調でねぎらう。
しかし、そんな0パムちんの表情はまたも一変する。
「しまった!この先のモンスターって強くてオイラ達の手に負えな
いから進めないぞ!」
そんな一言を放つパムちんに、向かって一斉に3人の視線が集中し
た。
しかし、そんなやばい状況の中でもギュンディアは冷静に
「でも追っかけて来ないし、まいたんじゃないの〜?」
割と呑気な一言を放つが、オレは内心これはやばいパターンだろう
と、気が気ではなく、しかし、そわそわするくらいしかできない自
分が腹立たしい。
こういう時こそ考えろ考えろ、そうは思っていてもいい案は出てこ
ない。ホラー映画の化け物に追われてる人はこんな心境なんだろう
か、などと関係のないことばかりが頭に浮かぶ。
・・・ガシャッ・・・ガシャッガシャッガシャッ・・・
独特の鉄鎧の擬音が近づき・・・そして止まった。
「そんなにうまく行くと思うノカ?」
マシンヴォイスが響くなり、暗闇の中から紅の鎧が浮かび上がる。
「さて・・・頂こうカ、そのスキル」
アレグロに向けての処刑宣告のような一言、それに対応するように
ギュンディアはスキル・コレクターに向かって言い放つ。
「そんなにうまく行かせると思うのかい?」
「あ?さっきの惨劇を見て、なお無駄な抵抗をするのか?・・・そう
か・・・ならお前達も月下に散らせてヤルヨ」
ギュンディアの一言が癇にさわったのか、スキル・コレクターは
武器を抜刀する。
「レベル8、レベル8、レベル10・・・よくそんなレベルで挑んで
来る気になるもノダ」
!スキル・コレクターはこちらのレベルを的確に言い当てる。こ
れもヤツのスキルなのか、その言動からもコイツは強さに加えスキ
ルの使いこなしもしているということをこちらに感じさせた。
「こうなったらしょうがねぇ、やるぞ!イスカ、ギュンディア!」
パムちんのやぶれかぶれな一言、そして、即座にギュンディアは
何かをパムちんに伝え、スキル・コレクターへと走り出した。
迎え撃つスキル・コレクターの刃が一閃、しかし、当たらない。
「Sonic・・・」
絶妙のタイミングでの早駆け、一撃で倒すシナリオを描いていたの
か、スキル・コレクターがイラついてか、チッっと舌打ちをする。
なおもパワー重視であろう大振りの凶刃がギュンディアを襲う、
その戦いは初めてログインした時にPKを仕掛けてきたPC達との
戦いをフラッシュバックさせる。
しかし、あのときは同士討ちを狙って撃退できたが、今度の相手は
一人、あの手は使えない。どう戦えばこんなやつを倒せるのか、オ
レにはさっぱり理解できない。
そんな時、ついにスキル・コレクターの刃がギュンディアを捕らえ
たかに見えたが・・・。
「Sonic・・・Spin・・・Kick・・・スピンバッシャー」
早駆けで間一髪で攻撃を避け、そのまま旋のスキルを発動し体を旋
回、その回転力を利用し、回し蹴りをスキル・コレクターの右腕に
決め、武器を弾き飛ばしてしまった。
ギュンディアはまるで自分の手足のようにスキルを使いこなしてい
た。たった3つのスキルであんなことができるのか、しかも、こん
な相手に・・・。
ギュンディアならコイツに勝てるかもしれない。そう思わせるよう
にスキル・コレクター翻弄する。
武器を弾き飛ばしたスキル・コレクターに対し、ギュンディアはナ
ックルを突き付け、
「まだやるかい?」
と降伏するよう求める。
「しょうがねぇナ・・・」
降伏したのか?そんな一言を発したかと思った・・・しかし、その直
後オレ達はヤツの底の無さを見せ付けられた。
スキル・コレクターの体が発光、直後ヤツの両手には新しい武器が
握られている。そして、ギュンディアへその武器は向けられた。
「さぁ、遊ぼうゼ・・・行こうカ第2ラウンド」
両手に武器・・・ツイン・ウェポンを有している、それは分かる・・・が
何かがおかしい・・・!?よく見るとヤツは両手に重武器と思われる
大振りの黒い鎌を握っている。
「そんなことありえないッ!!」
パムちんもこれには驚きを隠せない。ヤツにとってはレベル8の虫
ケラのようなギュンディアの小さな抵抗を楽しんでいるように、そ
の言動から感じられた。
「ホラッ、ホラッどうしタ、さっきまでの威勢が消えたナァ」
漆黒の二刃の鎌による猛攻がギュンディアに襲い来る、しかし、
当たらない、これまた当たらない、しかしそれでもスキル・コレク
ターに焦りは感じられない。
さも、それすら想定内のことであるかのようで、まだこれはコイツ
の底ではないのかとギュンディアの身を案ずる。
「ならアクセルを上げヨウ・・・乱武」
乱武というスキルか?またしても新たな力を見せてくる。端から見
ても分かるくらい鎌の攻撃回数が上がって行く。
「いつまで持つかナァ」
あくまでも自分の力を誇示するかのごとく戦闘を楽しんでいるよう
に見える。触れただけで何もかも破壊してしまいそうな悪魔の爪に
もようにも目に映るその鎌が信じ難い速度でギュンディアを追い詰
めていく。
スキル・コレクターの凶刃がかすりそうになるたび、見ているだけ
のオレの命も縮むような気分。
「そろそろ散るカ?」
「それはどうかな、Sonic・・・Spin・・・ウィンドステップ」
ギュンディアはこれに対し、早駆けでスピードを増し、旋で回るよ
うなステップを地面に刻む。
先ほどの猛攻が嘘のように回転の上がった二刃の鎌をスイスイと避
けきる、ギュンディアのスキルを使う発想には本当に舌を巻かされ
る。
「本当に面白いヤツだ、まさかここまでやるとはナァ、歌なんてど
うでもよくなっちまっタ、オマエ欲しイゾ・・・連呪」
またもスキル・コレクターは新たなスキルを発動、それと共にギュ
ンディアへまた鎌を振るい始める。
「バグドドドドドドーン」
ヘンテコなマシンヴォイスが響くと、ヤツの周囲に炎球が六つ現れ
ギュンディアへ飛びかかる。
今度は魔法、しかも連発のおまけ付きらしい。これにはたまらず
ギュンディアは距離を取り、全てかわす、しかしスキル・コレクタ
ーの追撃は止まらない。
「バグドドドドドドーン」
連珠から炎球を出し、さらに何らかのスキルを発動し、大きく距離
を取ったため体勢を崩したギュンディアへ必殺とも思える一撃は繰
り出された。
二刃の鎌を回転させながら炎球と共に突進、炎球は回転した鎌に吸
い込まれ、大きな火輪を作り出す。
ものすごい轟音と共に火輪は大地を削り取り、土埃が舞い上がる。
勝負ありと思われたその時、ギュンディアの声が飛んだ。
「パムちん、頼んだッ!」
その声の後、辺りは白煙に包まれた。
「Sonic・・・Spin・・・Kick・・・スピンバッシャー」
ッドガァッッッ
煙に視界を奪われる中、攻撃のヒット音が耳に届く。
「グゥゥ」
煙が晴れるも、ギュンディアの攻撃はなおも続く、スキル・コレク
ターはその時後ろからの攻撃、つまり不意打ちを食らい、そのクリ
ティカルヒットによってヒットバックにより、前のめりに倒れ、手
をついている。
「Sonic・・・Spin・・・」
倒れているスキル・コレクターの背中に強烈なスキル攻撃は繰り出
された。
「トルネードクラッシュ」
早駆けからのダッシュから旋による旋回力を利用し、凄まじい威力
の回転タックルが決まる。
「グァァァァァァァァァァァァ!!!」
更なるクリティカルヒットをもらいスキル・コレクターはさらに転
倒、そこへギュンディアは改めて、首元にナックルを突きつける。
終わりか・・・そう思っているオレだったが・・・またしてもスキル・コ
レクターの体が発光を始めた。
ガゥン
銃と思われる発砲音、しかし、その直後に別の擬音が聞こえる。
「連装士の武器は3種類まで・・・だったよな?」
擬音の正体は攻撃を読んだギュンディアが、スキル・コレクターの
取り出した銃剣を弾き飛ばし、地面に落ちる音であり、その銃弾は
ギュンディアに当たってはいないようだ。
「ゲームオーバーだろ?」
再度スキル・コレクターへの降伏を促す一言。
ガゥンガゥゥン
突如オレの目に映る映像はスイッチを切り替えたようにゆっくりと
横に崩れ落ちるギュンディアの姿を捕えた。
「ギュンディアァァァァァァァァ!!!」
(あとがき)
パーフェクトソルジャーギュンディア超ハッスル覚醒編終了です。
すばらしいスキルの使いよう・・・やっぱギュンディアはへたれイス
カとは違いますね・・・。
テレビのバラエティー番組のいい所でCMです、的にいい所で今回
切ってます。
さて、ギュンディアは次回どうなってしまうのでしょうか。
そして、ここでスキル・コレクターの補足をちょっとしておこうと
思います。
スキル・コレクターっていう名前はたまに出現してはPKを繰りか
えす姿を見たPC達や、被害を受けたPCがBBSなどでこんな事
があったよっていう噂が広まり、勝手にPC達が名づけた名前です
ので本当の名前は別にあります。
(名乗るかどうかは分からないですけれども・・・普通適役って
ご丁寧に名乗らないですから・・・)
もうちょっと話が進むとやっとこさ「イスカの物語」が始まります
ヘタレなイスカはどのように主人公らしくなっていくのか、私自身
楽しみであります。
さしあたって近々出てくるキーワードは・・・原初の七人、アーティ
ファクトこの辺りでしょうか。
どのような話になるかはお楽しみに、ということで締めます。
それではまた・・・。
[No.1312]
2009/12/03(Thu) 02:19:36
Re: .hack//R.D 第二十四話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
「ギュンディァァァァァァァ」
パムちんの叫び声が響き、今起こっている事がドラマの悲劇のシー
ンを見ているように、聞いているように、作り物のように思え・・・
いや、思いたかった。
声を上げることすらできない、しかし、それは今ここで起こってい
る現実、その結果を受け止められずに呆けているオレを現実へと引
き戻したのは非現実的なマシンヴォイスだった。
「ヒィィィィィット、ヒットヒットヒットォォォォォ」
死んでしまうほど溜めていたストレスを吐き出すような歓喜の声、
その左手にはハンドガン風の銃が握られている。
「ギァァァァァァハッハハハハハハ」
狂ったように高らかに笑い声を上げながら、その左手に持つ銃口が
パムちんの方角へと向く。
「逃げろォォォォイスカァァァァ」 ガゥンガゥンガゥン
叫び声と銃声がほぼ同時に聞こえ、パムちんが放ったアイテムによ
り辺りは煙に包まれる。
傍にいるアレグロにだけ聞こえるように、
「逃げよう、アレグロッ急いで!」
逃げるように促したが、アレグロはこの状況からか動けない。
「逃げンのカ?ギャハハハハッ」
晴れつつある煙の中、スキル・コレクターのこちらをコケにするよ
うな罵声が飛んでくる。その一言が0オレの足を止めた。
ガッガッッ
その一言の後、異様な音が耳へと入ってくる。
ガッッガッッッ
「手こずらせやガッテェェェェ」
怒り狂うような声がかき消したように煙は晴れる。
ガッッガッッツ
「オレのほうが強ィンダ、強インダ!!」
ギュンディアの死体をそこいらに落ちている空き缶でも蹴るかの
ように、スキル・コレクターはギュンディアを蹴りつけた。何度
も何度も蹴りつけた。
やめろやめろやめろやめろやめろ・・・心で思っていても恐ろしさか
らか声が出ない。しかし、オレの体が熱くなるのを感じる、その
怒りという感情によって。
「あァ、ドタマに来て忘れてたなァ・・・、オレァ強ェが、コイツを
頂けばもっと・・・クァッハハハッ」
スキル・コレクターの左腕が妖しく赤い光を放ち始める。そして、
赤い光の爪のようなものが3本出現し、光はその3本の爪の中心に
収束。
ヤメロやめろヤメロヤメロやめろ
「イただクゼェ」「ヤメロォオオオオオオッッ」
オレの叫びを無視するかのように収束した光は赤い稲妻と化し、ギ
ュンディアの死体を貫く。
オレは叫ぶと同時にスキル・コレクターへと斬りかかっていた、勝
てるはずもないのに・・・今ギュンディアが受けている陵辱を自分も
受けるかもしれないのに理性よりも先に体が動いていた。
ギュンディアに、いや、タケトに守られてばかりじゃいけない。
もう、あの屋上の「ボク」には戻りたくなかったのかもしれない。
頭の中はどんな攻撃をするか考えるでもなく、そんなことばかり
浮かんでいる。
そして、それすら超えて、視界は真っ白になっていく、その体の
熱気が上がって行くと共に・・・。
「ヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロォォォォォォォォ!!」
「吸収したアンちゃんよりもずいぶん単調な攻めダなァ・・・」
「オォオオォアァァアアァァァァァ!」
ガゥン
「ッッッアァァアッアッ!!」
「ナゼ、死なネェェェェ!、ライフは0だろうガァ!!」
ガゥンガゥンガゥンガゥンガゥンガゥンガゥン
「どんどんパワーがアァァァ!」
「アァァァァァァガァァァァアァァァァ!!!」
「アレを使っているオレが負けるわけない、何ダ、何なんダァァ
こっ・・・このパワー!?」
穏やかな白い世界・・・まるで時間の流れの無いような、何も無い白
い世界。なぜかオレはそこを走っていた、前方に見える何かに向か
って、ただひたすらにひたすらに・・・。
「こンなところでやらレるわけにわァァァァァ、チクショォォ、
チクショォォォォアッ!!!!!」
ヴォン・・・
「ガァァァアッアァァァ・・・」
ドサッッ
「あのパワー、そして、あの光・・・まさか・・・いや、ありうるな報告
する為連れて行くか」
ピュン・・・ジュヴァァ・・・
「何ぃ!?チィッ」
ドルゥン・・・ドッドッドッドッ・・・
「・・・他の者はルゥド・サン・トゥーナに送ってやってくれ・・・」
「アンタの頼みじゃしょうがねぇな」
「何だぁ?これ?頭ァ、コイツ動かせませんぜ」
「ナル、どうする?」
「・・・・・・これは・・・」
「動かせないなら仕方が無い、この者はこのままでいい」
「では、頼んだぞ」
「・・・・・・」
「・・・またしても、悲劇から物語は始まるのか・・・」
(あとがき)
怒りゲージMAXパワー全開無敵イスカ暴走祭り編終了です。
ついにイスカに内蔵させていたニトロのパワーが忘れられたように
爆発しましたね・・・。
実はこのパワーを得た時の伏線はもうすでに作中に書かれているの
です・・・。
(大声では言えませんが・・・)
どこがそうなのか、探してみるのも面白いかもしれません。
今回の話ラスト付近は情景描写がありません。イスカの意識が無い
状態で戦っていた為でして・・・。
実はこの部分は無印のあるシーンのオマージュ的な作りになって
います。
スケィスを倒しクビアが発生、カイトがピンチになりヘルバが助け
るという、あの有名なシーンっぽくしているんで、情景描写がほし
いという人はあのシーンを思い浮かべてくれればと・・・まぁキャラ
は違いますが・・・。
ちらほら新キャラの影もありますしね・・・。
と・・・いうことで次回はその方々が登場します、お楽しみにという
ことで締めます。
それではまた・・・。
[No.1313]
2009/12/12(Sat) 02:33:02
Re: .hack//R.D 第二十五話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
青い、ひたすらに青い一面の青。
塵一つ無いような澄み切ったその広大な空間を遊泳。その推進力は
体に風の衣を纏わせる。
宙返り、きりもみ飛行と調子に乗り、自在に飛びまくる。
前方に白い鳥の群れが見える。楽しそうに飛ぶ鳥たちのワルツを乱
さないように、その輪に加わってみる。
しばらく飛ぶうちにこちらを歓迎するように左右に並んだかと思う
と、上下左右めまぐるしく動き回り、その陣形を変えながらどんど
ん加速していく。
これがオレの求めている理想の空なのか、それとも小さな頃に見た
遠くから見たあの空なのかと風の中を鳥たちと遊びながら、ふと物
思いにふける。
そうしているうちに、前方から白く大きな塊が見えてきた。進んで
いくうちに、どんどん巨大化していくその塊は近づくにつれて、大
きな風貌に圧倒されるよりも、その美しい白さと柔らかそうな意匠
に、このまま突っ込んで中に入りたくなる衝動に駆られ、鳥達と共
にその気分のままに飛び込む。
真っ白な世界。ここを抜けたら次はどんな所に出るんだろう・・・。
あ!これがもしかしてゴール地点なのかも。
失敗した〜、それならもうちょい楽しめばよかったぁ〜と、白い
空間を進みながら、まるで、この楽しい時間が終わってしまうと
勝手に決め込みネガティブ思考。
ボッフゥゥゥ・・・
白い世界の終わりを告げる柔らかな貫通音。
そこに待っていたのは・・・灰色の世界。
いっしょに飛んでいた鳥達は時間が静止したように力強く羽ばたい
ている姿のまま、凍りついたように固まっている。
その鳥達がものすごいスピードで真上に昇って行き、視界から消え
た。それは鳥が昇っていくのではなく、浮揚感の無くなったオレが
下へ落下していることに自らにかかる重力が伝える。
ものすごい高さから落ちて行く恐怖感と絶望感がオレの意識を遮断
した。
・・・パチッ・・・ゴォォォォォ・・・
聞き慣れない音が目覚まし時計代わりになり、夢の世界から現実へ
と意識を呼び戻す。
瞳を開けると、ゆらゆらと揺れるようなオレンジ色の光が照らす
見覚えのない丸太製の天井が目に入る。
ああ、まだ夢を見ている途中なんだとゆっくり上半身を起こし、こ
こはどこなんだろうと首を右に回したところでそこが夢の中ではな
いことに気付かされた。
「・・・目覚めたか・・・」
そこには目が見えないくらいに深く薄紫色のターバンを被り、同じ
色のドーガを身に纏った、紫と青を基調とするPCがオレを見下ろ
している。
その穏やかな感じから、今のところ敵対心を感じられない。
そもそも攻撃を加えてくるのなら、寝そべっている間にいくらでも
しているだろう。そういう状況を察すると・・・オレ達はスキル・コ
レクターにPKされて、その後ここに連れてきてくれた・・・。
それくらいしかオレの頭では推測できなかった。
他の3人は無事なんだろうか、目線だけでこの部屋を探ってみたが
3人の姿は確認できない。
「あの・・・助けてもらったみたいで、ありがとうございました」
お礼の言葉を送ったその人は、部屋に灯をもたらしている暖炉の傍
にある椅子にかけながら、
「気にするな、しかし、君達あんな所で何をしていたんだ?見たと
ころ初心者に見えるが・・・このあたりは敵のレベルも高いから気を
付けなさい」
学校の先生に諭されるようなやんわり口調。正直ガキ扱いされてい
るようでいい気はしない。しかし助けてもらったということもある
し、なにより、この人からはまだ聞かなきゃならないことがある。
「あ・・・その事なんですけど、オレ以外にあそこにいた人はどうな
りました?連れが3人ほどいたんですけど・・・」
ほんの少しの静寂の後
「ん・・・助けられる者はルゥド・サン・トゥーナへ送らせたよ」
その言葉にとりあえずは安心する。しかし、そうなるとなんで
オレだけがここにいるのかという疑問も同時に浮かんだわけだが、
とりあえずギュンディア達の分もとお礼の言葉をかける。
「心配してた心のつっかえが取れました。あ、オレ名前も名乗って
無かったですね。イスカといいます、仲間のことありがとうござい
ました」
「仲間か・・・君達は仲がいいんだな、一つ聞いていいかな、イスカ
君?」
「あ、はい、なんですか?」
とっさに予期していなかった質問に、つい、はいと答えてしまった
「君はその仲のいい友人が何らかの困難や危機にさらされた時、ど
んなことがあっても守り、そして助けることができるかな?」
助けるどころか何の役にも立てなかった。オレ達4人全員PKされ
たところを見て、その上でこの人はオレをからかっているのだろう
か。
そういえばこの人はこちらが名乗っているのに自分の名さえも名乗
ろうとはしない。口調はからかっていないようだが、ターバンに隠
れた顔は笑っているのかもしれない。そう思うとかなりムカツキ感
情が高ぶ7り、
「た・・・助けるさっ、絶対に守ります!」
できもしない事を勢いで言い放ち、感情どおり怒りをあらわにして
しまった。
「そうか・・・分かった」
笑うでも怒るでもなく、ただゆっくりと目の前にいる名も知らない
男は一言返事をし、こちらから目線を外し暖炉の方へ顔を向ける。
・・・ドルゥゥン・・・ドッドッドッ・・・
そんなやり取りをしているうちに、体に響くような大型のバイクら
しき重低音が近くまで来て止まると、時間差でこの小屋のドアが開
く。
「ナル、今戻ったゼ、もう一人いるんだったよな?」
いそいそと部屋に乱入してきた長身の男性PCの口から、この部屋
の主であろうPCの名を知ることになった。
「ああ・・・送ってやってくれ」
椅子に腰を降ろしたまま、顔をこちらに向けもせず、ほぼ無駄の無
い見送りの一言、しかし、その一言は不思議とそっけなくは聞こえ
なかった。
「ほれほれっ、小僧さっさと行くぞ!時間も時間だからな」
すらっと細マッチョ系の右腕で首根っこを掴まれ、強引に小屋の外
へ連れ出されてしまった。
大型でフロントホークの長い、搭乗者の性格そっくりな豪快にも程
があるだろうと、そういう風格漂うバイクの後部座席に乗せられ、
シートの衝撃を感じている間に、この無骨なバイクの主はすでに宙
を舞い、運転席へと搭乗するなり追われるように素早くエンジンを
かけた。
起動されたエンジンは止まっていても体に振動を伝えてきて、発進
していなくともエグい馬力を持ち合わせているであろうことを感じ
させる。
「ちゃちゃっと行くゼェ、落ちんなよ小僧」
「ちょっ・・・小僧小僧・・・」
小僧小僧と言われるのがシャクだな、そう思い、こちらから名乗ろ
うとしたのにバイクは猛発進、いや、そんな生ぬるいものじゃなく
これは爆発進とでも表現したらいいのだろうか、それほどに推進し
始めた初速からハンパじゃない速度で爆走を始めた。
「お世話になっといてなんだけど、オレにはちゃんとイスカって名
前あるからそう呼んでもらえると助かるかなぁ・・・と」
無礼にも、そして、控え目にも前の座席に座るアッシュカラーの髪
の男に自らの名を名乗った。
「おぅ、そっかそっかぁ、そう言やぁオレも名乗ってなかったな、
オレァなデュオニスっつーんだ、しかと覚えとけよ小僧」
(・・・名乗ってるのに結局小僧かい)
相手に聞こえぬツッコミをとりあえず入れる。するとデュオニスは
話を始めた。
「ナルはなかなかに寡黙なヤツだったろ?」
「ええ、寡黙でそして不思議な人でしたね。静かな迫力があって間
がもたなかったす」
疾走するバイクの横を流れる木々を眺めながら、結局自分からは名
乗らなかった男についての感想をぶちまけた。
「ぶわっハハハッ、持たねぇだろうな、初めてだとあの沈黙はなぁ」
予想していた回答が返ってきたからなのか、爆笑まじりに気さくに
会話のリレー、あのナルって人とは違い、話しやすいという感じを
うける。
「でもなぁ小僧、ああ見えてナルっつ〜人はいいヤツなんだぜ。お
前さん達を助けたのも、送り届けてくれって言ったのもあの人だし
な」
よくよく考えると悪い人ならわざわざ4人もいたオレ達を助けてく
れるようなことはしないな、そう思い、声を荒げた自分が恥ずかし
くなる。
「あの人とはどういうつながりなんですか?付き合い長そうな感じ
ですけど」
「オレァあの人にだけは頭が上がらね〜んだわ、なんせよォ、今オ
レ達が乗ってるコイツ、オレの相棒シルバーファングはナルに作っ
てもらったかんな」
(マジかよ・・・このバイクを作るって・・・木をゴリゴリ削ってブーメ
ラン作って喜んでるオレ達とはケタが違いすぎる)
「す・・・すごすぎますね」
「スゲェだろ、でもな、オレだってオレにやれることでナルに恩を
返してる。こうやって小僧をルゥド・サン・トゥーナに送ってるの
だってその一環だ」
デュオニスは前を見ながらも左手の親指を誇らしげに突き立てる。
人には人の自分には自分のやれることをやる・・・か、ギュンディア
に守られてばかりのオレ、そんなオレにもオレなりのやり方でいつ
かギュンディアやパムちん、アレグロの役に立てるのか・・・ね。
そんな、この先いつのことになるかも分からないようなことをふと
考える。
キキィィッ・・・ドッドッドッドッ・・・
「小僧、着いたゼ」
世間話をしているうちに街にある滝のそばに到着、ルゥド・サン・
トゥーナにはもう朝日が昇り始めていた。
「ふぁ〜あ、ねみぃ、結局貫徹になっちまったかぁ、ログアウトす
っかぁ、じゃあまたな、小僧」
眠気まなこに大きなあくびを一つ置き土産にしてデュオニスは去ろ
うとした。
去り際にオレは一つ、お礼とささやかな抵抗をしてみる。
「送ってくれてありがとうな〜、オッサン」
「オレはオッサンじゃねぇぇぇぇ!!」
あのバイクの爆音の中で・・・とりあえずデュオニスは地獄耳・・・と
そんな覚えておく必要のないムダ知識を取り込みながら、遠ざかっ
ていくバイクに背を向けた。
(あとがき)
くりすますすぺしある:その一
新キャラ登場謎に満ちた男アンド爆走アニキ地獄耳編終了です。
やっとこさ予告してた4人の新キャラ全てを登場させることが
できました。
この2キャラはラフ画を見せられないのがくやしいくらい私的
にカッコイイキャラなのであります。
寡黙な隠者ナルと幻影の双牙デュオニス彼らはいかなる活躍を
するのでしょうか・・・な〜んとなくかなり先になるデュオニスの
戦闘シーンはもう考えてありまして、戦う相手はもう既に決ま
っているのであとはどういう戦闘の流れになるのかというのを
決めなくてはならず・・・なるべくカッコイイシーンにしてやりた
いなと、今からそう思っております。
ちなみに・・・
設定の中のデュオニスのジョブはシュートライダーと言いまし
て、バイクと片手持ちの銃で攻撃するなんとも変なジョブとな
ってます。
と・・・いうことでそろそろ締めます。
それではまた・・・
[No.1314]
2009/12/24(Thu) 16:28:30
Re: .hack//R.D 第二十六話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
・・・たすけ・・・たすけて・・・たすけてください・・・
両肩と顔を下に落とし、力なくふらふらとこちらに向かって歩いて
くる影が一つ。
そんな不気味な場面なのに自らの体は動かない。
ふらふらふらふらとゆっくり近づき、ついにその影は寄りかかって
こちらの肩を掴む。
そして上がったその顔は・・・
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「おいっパム大丈夫かあ」
「よるな、寄るなぁ!」
「パム君、落ち着いて!ねぇ私よ、アレグロよっ!」
「アァァレッグロちゅわ〜ぁぁぁん!?」
ゴッッ
アレグロの一言で我に返ったのか、飛びかかるように抱きつこうと
するパム。しかし団長の超高速のゲンコツがパムへとヒットし、パ
ムは地べたへ這いつくばる。
「うむぅ、これだけ元気なら心配することはねぇなあ、アレグロ
ちゃん、もうログアウトしてくれえ」
「は〜いっ、それじゃパム君、またね」
「そんなぁ〜なんとご無体な、団長ひでぇっすよ〜」
パムは団長の足にすがりつくように悲しみをアピールする。
「しっかしお前達、どうしてあんな有名なヤツと知り合いなんだあ
?」
団長は足にすがりつくパムを見ながらも首をかしげる。
「へ?有名なヤツ?誰ですかんそれ?」
パムは立ち上がり団長と同じように首をかしげる。
「なんだ、知り合いってわけじゃないのかあ」
「気になるっすねん、誰なんすか有名なヤツって」
「聞いたことないかあ?大型ギルド”ワイルドウルフ”って名前」
パムは目を見開き、
「あ、そのギルドなら聞いたことあるっす。どんな活動してるの
かってのは知らないっすけど」
「来たんだよお、そのリーダーである幻影の双牙デュオニスがなあ
、お前とアレグロちゃんを連れてきてくれたんだぞお」
パムは目を輝かせ
「だ〜んちょ〜、なんで起こしてくれなかったんですかぁ〜、見た
かったっすよ〜、見たかった〜」
有名なプレイヤーと聞いて見られなかったのが悔しいのか、団長の
肩を両手でガックンガックンとパムはダダッ子のように揺らす。
ガツッッ
そんなダダッ子パムにやはり団長のゲンコツが飛ぶ。
「そんなのんびりしてていいのかあ?さっさとログアウトしちまい
な」
「そんなノンビリって・・・ってもう朝ぁ!?へぃぃ、直ちにログア
ウトしまっっす」
パムはいそいそとログアウト作業に入り、そして、キラリと星のよ
うに消えた。
「落ちたら登校時間ってなんだよぉ、朝メシ食う時間もない」
ログアウトしてから時間を確認すると、もはや時間の猶予はないと
いう事態に自らが置かれているということにオレは気付いた。
メシを食う時間が無いと言いながら、食卓に置かれている5枚切り
の食パンを袋ごと手に取り、ダッシュで家から出る。
初めてタケトと会った十字路あたりで、ポストから新聞を取り忘れ
たことに気付くが、もう取りに帰る時間は無いのであきらめる。
(ちっきしょ〜、いつも通りのスケジュールで動けないと調子狂う
なぁ)
何も付けず口に入れた食パンを頬張りながら、いつも通りの登校ル
ートをいつもの2倍くらいの速度で走る。ゼェゼェ言いながら遅刻
ギリセーフな時間で教室に着いた。
席に着き、タケトに挨拶しようとタケトの席に顔を向けるが、そこ
にはタケトの姿が無い。
いつも朝は挨拶するんだけど本当に今日は立て続けに調子の狂う日
だな、厄日か?と脳内会話をしながら、クラス全員で担任に挨拶。
そしてホームルーム中、担任の口からタケトの欠席が告げられた。
それから、午前中の授業、昼食、昼休み、午後の授業、何一つ集中
できないし、楽しくもない。
「昨日の件で凹んじまったのか・・・何やってんだよ、お前が居ない
と学校つまんね〜よ」
下校中、ぽつりとそんな独り言をつぶやく、前は毎日こんなだった
なと、1日タケトが来なかっただけで以前の灰色の毎日が蘇り、そ
して少し怖くなり、冬の刺さるような寒風がよりきつく感じた。
「寒ぃ・・・」
不安を、寂しさを、そして冬の肌寒さをこらえるように気を引き締
め、小走りで家路をかけぬけた。
自室に帰るなり、もはや日課のようにAnother・Worldへログインす
る。
ログイン作業中、もしかしてタケト昨日やられたから特訓してたり
して・・・って学校休んでまではさすがにしないか、な〜んて思いつ
つログイン、即座にメンバーアドレスを見てみる。
「ってギュンディアログインしてんのかよっ」
と見えもしないギュンディアにツッコミを入れる。
(よ〜し、ショートメールだ、何してたかショートメールで聞き出
してやる)
「うぉいタケト!学校休んで何インしてんだよ〜、さては特訓して
んな、合流して一緒にやろ〜ぜ」
で、送信っと・・・/送信し終わり、ボーっと街行く人達を見て過ごす。
昨日の騒ぎの後始末なのか、ゲールニー一座のイベントの後片付け
なのかは分からないが、人の往来が激しい。
10分ほどヒューマンウォッチングをしてもギュンディアからの返
信はない。もう一度同じ内容で送信、しかし、待てども待てども返
信は無く、1時間に及ぶ頃には、何度も何度もメールを飛ばしまく
る。
送信を決定するボタンを押すたびになぜか昨日のスキル・コレクタ
ーの赤い光の映像がチラつき、不安が押し寄せてくる。
いやな手汗が両手を支配する頃、オレの操るPCイスカは、昨日の
現場、唸り谷へと歩を進め始め、その歩を進める速度は増していく。
現実の世界で表現するとすれば、それを全力疾走というべく速度で
自分達の走ったルートをトレース、速やかに目的地に到着した。
「・・・なん・・・」
「・・・なんで・・・」
「どうして昨日のままここにいるんだよぉぉぉ、立て、立てよ!」
「なんで触れねぇんだ!触れられねぇんだよっっ!!」
「ちくしょ・・・ギュンディア、起き上がっていつもみたいにカッコ
イイ所見せてくれよ!!」
タケトは何らかの理由で端末の電源を落としていないだけかもし
れない。しかし、その目に生気を感じられず、力なく倒れている
タケトのPCを見ていると、なぜだろうか命の儚さのようなもの
を感じ、勝手にあふれ出てくる激情を制御できない。
「お願いだよ・・・タケト・・・立って笑ってくれよ・・・得意のタケトス
マイルを見せろよォォォォォ!!」
「タケトォォォ・・・タケトォォォォォォォォォォォォ!!!」
激情が涙を溢れさせ、とめどなく流れ落ちるその液体は顔を被い
つくした。
「・・・らしき存在を見つけました」
「本当か?」
「はい、あの輝き、飲み込まれそうになるほどの迫力、間違いない
かと」
「やはりあの時消えてなかったんですね、なら回収しなくちゃね」
「行けるのは・・・3人か・・・行け・・・」
「はいほ〜い♪」「了解しました」「ま、好きに暴れさせてもらうわ」
「行かせてよかったのか?あんなヤツに、オレは心配だな」
「うまくいけばそれでよし、ヘマをしたなら・・・」
「したなら?」
「ヤツは未来に存在できなくなる・・・それだけだ」
(あとがき)
くりすますすぺしある:その2
デュオニス解説高速ゲンコツ謎の陰謀はぐれイスカ激情編終了です
青空にとっては悲しいくりすますになってしまったようです。
そして現れる謎の集団、そしてその陰謀、徐々にですが物語の片鱗
が出てくるようになってきました。
(え?全然見えてこないって・・・?気のせいです、気のせいです
とも)
イスカの旅立ちが迫ってきているようです。次なる街は・・・水の都
で○○大○の予定が決定している模様です。
なにわともあれくりすます2本立てすぺしあるをお楽しみください
メリクリ〜♪
ということで締めます。
それではまた・・・
[No.1315]
2009/12/24(Thu) 18:10:05
Re: .hack//R.D 第二十七話
(No.1045への返信 / 1階層) - RM-78ガソダム
両の頬を伝う涙を拭うも、一気に悲しみと疲労がドッと押し寄せて来
たのか体が重い。その心情が自らの操るPCにも反映されているよう
に見えてより悲しくなる。
何を考えるでもなく、ふらふらと力無くルゥド・サン・トゥーナへと
戻り、ログアウト作業に入った。
「あ、いい所にイスカどん発見!お〜い、イスカどん〜」
「え?イスカ君?どこにいるの?」
「ほらっアレグロちゃん、あそこあそこ、イスカど〜ん!聞こえてる
かん?」
「イスカく〜ん・・・」
ログアウトし、疲れきった体を自室のベットへ委ねる。ひやりと冷た
いシーツの上でうつぶせのまま少し考える。
(・・・そうだな、たしかめることはできるよな)
飛ぶようにベットから降り、デスクの上にある携帯端末でタケトに電
話をかけてみた。
送信コールが1回、2回・・・と増えていく。かかってくれ、頼むから
つながってくれと落ちつき無く、しかし強く願う。
コールの数が20回にさしかかった時、
「はい、神崎です」
通信はつながった、しかし、オレはその声に絶句。タケトの声とはあ
まりにかけ離れた女性の声だったからだ。
「もしもし?」
絶句しているオレに対して、電話ごしにその女性が発するこちらを確
認する声が続き、それによって少量の時間呆けていたオレの意識を電
話へと戻した。
「あ〜すみません、この端末って神崎タケト君のですよ・・・ね?」
「はい、そうですけど、タケトに何か御用でしょうか?」
とても丁寧に、だが弱々しい声が、間違い電話をしたのではないこと
を知らせてくれる。
「少しタケト君と話がしたくて・・・申し遅れました、クラスメイトの
鏡青空といいます」
名を名乗り、タケトに話がしたいと告げると、今度は女性の声が止ま
った。
「・・・そう・・・君がタケトが良く話してた青空君なのね・・・」
再び会話に戻った女性の声量は弱く小さく、そして重苦しい感じが漂
う。
「そうです、どうしてもタケト君と話がしたいんです。代わってもら
えませんか?」
「タケトはしばらく話ができそうもないの・・・ごめんなさいね」
話ができない?女性のそんな一言になんとなく思い描いていた悪い方
の予感が当たっているのではないかと悪寒が走り、肩がすくみ上がる。
何かあったんですか?・・・たったこれだけのことが恐れからか口に出せ
ない。重苦しい時間が数秒流れ、話を切り出せずにいるオレの耳に女
性の声が入ってきた。
「君には話しておかなければ・・・いえ、見てもらわなければいけないの
かもしれないわ・・・今から出て来れるかしら?」
見る?どういうことだろうか、そう思いながらも返答
「はい、大丈夫です、どこに向かえばいいですか?」
「君の通っている学校の近くの阿川総合病院って分かるかしら?そこ
のロビーで待っています」
「はい、なるべく急いで行きます」
オレの返事を聞くなり通話が切れる。病院・・・もはや悪い予感は当たっ
ていると思っていいのだろう。そんな自分の思考がまた涙をあふれそ
うにさせた。
寒空の街を自転車で走り抜ける。早く行きたいと気持ちだけ焦るけど
涙をこらえるのに必死で足に力が入らない。
「動け・・・よ、オレの足・・・ちき・・・しょぉ・・・」
思うようにコントロールできない自分の体、そして感情に腹を立てな
がらも気を抜くとポロリと涙がこぼれ視界を遮る。左腕で拭い、でき
る限りの力で病院を目指す。
病院に着くなり、乗り捨てるように自転車を降り、ロビーへ駆け込む
それなりに遅い時間からなのか、ロビーには人が少なめで左右に目を
凝らすと、どこかタケトの面影のある小柄な女性が目に入って来たの
で、声を掛ける。
「あの・・・」
女性の方もオレのことがすぐに分かったらしく、オレの顔を見るなり
「君が青空君ね・・・ついて来て」
そう言いゆっくりと歩き始めた。歩きながらも女性はオレに会話を投
げかけてくる。
「顔を見て分かった、タケトのこと本当に心配してくれているのね」
「何が・・・タケトに何があったんですか、教えてください」
オレは病院という場所柄、感情を最大限抑えて、小声で問い掛けた。
女性はくるりと振り返り、
「いい?これは現実・・・私・・・だって受け止めたく・・・ない・・・けど現実
なの・・・あなたの目で見て、そして・・・タケトを励ましてあげて」
女性は歯をくいしばり涙をこらえながら、強い目でオレに意味深な言
葉を言う。
それを見て聞いて、オレは相当な覚悟で病室へ行かなければならない
んだろうと自分に言い聞かせ、覚悟を固めた。
そして、開けたくない扉の前に着いてしまう。覚悟は固めた、大丈夫
、大丈夫、何があってもオレは大丈夫だ、冷静になろうとしても逆に
鼓動は高鳴る。
これは仕方のないことだ、第三者のように自分を見つめられるだけで
も、少しは感情をコントロールできているのだろう。
今まで握ってきた、どんなドアノブよりも重いドアノブをオレは握り
そして扉を開いた。
「なんだ・・・よ・・・これ・・・」
重苦しく固まっていた体の力がスッと抜け、オレの体はストンと崩れ
落ちた。
幾重にも折り重なるチューブが生気の感じられないタケトへと伸びて
いた。医療機器に囲まれ、その機会音だけが静かになり続け、それが
余計にこの状況をリアルに感じさせる。
オレの覚悟を上回る現実はとても残酷で、辛い、悲しい、怖い、そん
なことを感じさせてくれさえもしなかった。
ただただ呆けるだけ・・・。
しばらくして、そっと暖かい手がオレの左肩に添えられ
「M2Dを着けたまま倒れてたの・・・お医者様は、状況を考えるとドー
ル症候群だろうって・・・うぅぅ・・・」
オレのことを待っていてくれたからだろうか、女性は今までこらえて
いた涙をこぼしながらベットに横たわるタケトを見つめていた。
我に返ったオレは、涙し立ちつくす女性を病室にある丸椅子に腰掛け
させ、
「タケトのこと教えてもらいありがとうございました・・・オレ、帰り
ます・・・」
ぼそっと力無い声で一言お礼だけを言い、オレは足を引きずるように
病室を後にした。
掛ける声が見つからないし、生気の無いタケトに触れるのも怖かった
・・・。
なんでこんなことになったんだよ・・・、ドール症候群?意味分かんねぇ
、頭の中でブツブツ独り言を続けながら肩を落とし歩く。まだ夢の中
にいるようにボ〜っとしていた。
ふと冷たい物が頬をかすめる、冷え切った右手で頬をなぞると、それ
はじわりと溶け消えた。
「雪・・・」
そう思いふと空を見上げると、それはゆっくりと降り注いでくる。
「灰色の・・・雪・・・」
その異様な光景がオレにもう一つの現実を運んできた。
タケトの居ない退屈で渇いた日常にまた戻ってしまうのだと。
突きつけられる現実を忘れたい一心でオレは考えるな、何も考えるな
、忘れろ、思い出すなと、考えないようにすることを考えながら灰色
の雪の中を走った。
走って走って、簡単なはずの家までの道を何度も間違え、そして、イ
ラつきながら家へ駆け込み、自室の布団に潜った。
追いかけてくるような灰色の世界を暗闇で遮断するように・・・。
(あとがき)
鏡青空傷心編終了です。
ついにタケトが未帰還者になってしまいました。
次に彼に会えるのはいつになるのでしょうか・・・ってのはもう決めて
いますけど、まだ言えません。
そして青空は親友を失い、そしてまた灰色の世界に戻ってしまいまし
た。少しかわいそうな気もしますが・・・しょうがない、しょうがない
んですよ・・・これも物語を進めるためでございます。
と・・・いうわけでしんみりと締めたいと思います。
それではまた・・・。
(番外編:2年3組たけとくん)
「・・・ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・アイツが・・・アイツが追ってくる、
これを持って逃げ切らなくては・・・」
「ゴラァ〜逃がすかぁ〜!たけとき〜っく!」
ドガシャァァァァ!
「げふぁぁ〜、お願いだ、助けてくれ、これだけは・・・このなれそめ
の秘文だけはぁぁぁ」
「それをよこすのだ、たけとだけが楽しむのだぁ〜」
「うぅ・・・命にはかえられネェ、しょうがない、はい!どうぞ」
(持っているクッキー缶を差し出す)
「うわははは〜、やった〜、最初から素直にだしとけばいいんでしゅ
よ、ではさらばですわようわははは〜」
「・・・」
「・・・やっと去ったか・・・まんまと騙されおったわ、たけとくんめ・・・
なれそめの秘文は・・・なれそめの秘文は・・・」
「物語の中さ・・・」
「ごるぁぁぁぁ〜、これ、ただのクッキーじゃないかぁぁぁぁ、騙し
たなぁぁ、たけとへヴぃ〜ぷれす!」
グシャァ!
「うぅぅ・・・たけとくんにだけは見せたくない・・・が、果たして何人が
扉を開けられるかな・・・」
[No.1322]
2010/02/08(Mon) 23:40:30
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