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No.1063に関するツリー
.hack//Side1話&2話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 19:48:34
[No.1063]
└
Re: .hack//Side3話&4話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 19:50:14
[No.1064]
└
Re: .hack//Side5話&6話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 19:50:58
[No.1065]
└
Re: .hack//Side7話&8話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 19:52:30
[No.1066]
└
Re: .hack//Side9話&10話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 19:54:09
[No.1067]
└
Re: .hack//Side11話&12話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 19:54:57
[No.1068]
└
Re: .hack//Side13話&14話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 19:55:44
[No.1069]
└
Re: .hack//Side15話&16話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 19:56:30
[No.1070]
└
Re: .hack//Side17話&18話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 19:57:22
[No.1071]
└
Re: .hack//Side19話&20話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 19:58:21
[No.1072]
└
Re: .hack//Side21話&22話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 19:59:08
[No.1073]
└
Re: .hack//Side23話&24話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 19:59:42
[No.1074]
└
Re: .hack//Side25話&26話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 20:00:35
[No.1075]
└
Re: .hack//Side27話&28話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 20:01:31
[No.1076]
└
Re: .hack//Side29話&30話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 20:02:33
[No.1077]
└
Re: .hack//Side31話&32話
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 20:03:26
[No.1078]
└
Re: .hack//Side最終章
- 黒忍冬 -
2008/02/26(Tue) 20:04:39
[No.1079]
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.hack//Side1話&2話
(親記事) - 黒忍冬
「光り輝く子・・・アウラ・・・」
静かな聖堂の中に男の声が響く。
「これが、噂の『聖堂の亡霊』か・・・」
噂というのはここ、『NAVEL OF LAKE』で逆様の男が居るという噂だ。なにやら未だにつぶやいている。
「モルガナに会うためには・・・」
こいつには俺が見えていないのだろうか・・・
ピンポ〜ン・・・
画面の左上に新着のメールが来ましたという文字が浮かぶ、それと共に男の姿が揺れていく・・・そして、消える・・・
「データのバクか?・・・それともイベント用の消し忘れか?」
ともかく、ここに居てもなにも起きそうに無い。落ちてメールを見ることにした。
第2章 再会
やっぱ来てないか・・・
心の中で舌打ちする。
ここ、水の都マク・アヌはΔサーバーの拠点とも言える街だ。
久しぶりの来てみたが・・・β版の時よりも画像処理などが向上しているように感じる・・・ただ久しぶりだからそう感じるだけだろうか・・・
「あそこに行ってみるか・・・」
あいつも来ない事だし・・・久しぶりに行ってみるのも良いだろう・・・
「えと・・・これは・・・」
雑誌に書いてあるとおりなら、ここにワードを入れるはずなんだが・・・
?版と違いアルファベットではなく日本語だ。
「おや、キミは初心者かい?」
後ろから声をかけられる。流石とも言うのだろうか・・・ボイスチャットは何の違和感も感じない。
「まあ、そうだな・・・」
後ろに振り向きかな答える。そこにいたのはの剣士だ。
「ケニー!!」
俺はそこに居た剣士を見て少し驚く。相手の剣士も驚いたようだ。
「おっ、リアンじゃないか!」
「久しぶりだな・・・」
彼、ケニーはβ版時代のパーティ仲間だ。
「なんだ?お前、ワードの入れ方がわからないのか?」
「まあな・・・どうもβ版の時とはかってが違うようだ」
俺の言葉を聞いてケニーは肩をすくめる。
「レベルだけ高くて、ゲームの仕方がわからないのか・・・傑作だな」
「そういうなよ、なんせ初めてなんだ」
これまた俺の言葉を聞いてクックックと笑う。
「まあ、立ち話もなんだ。おれのホームに来いよ」
「じゃあお言葉に甘えて・・・」
ケニーはこっちだと言うと俺を先導してホームに向かった。
[No.1063]
2008/02/26(Tue) 19:48:34
Re: .hack//Side3話&4話
(No.1063への返信 / 1階層) - 黒忍冬
「じゃあな・・・」
「おう、じゃあな・・・今度パーティを組もうな」
ケニーは少し残念そうにホームの前まで送ってくれた。
「そうだな、気が向けばな・・」
「つれないやつ・・・」
ケニーはクックックと笑う。
金髪と青い目、白い鎧の剣士・・・昔から変わっていない・・・
まあ、俺のデザインも変わっていないが・・・俺の職業は剣士だ。デザインは茶色の髪の毛に黒い瞳、茶色の革製の鎧だ。
「それじゃ」
一言、そう言うと俺はカオスゲートに向かって言った。
カオスゲートの前に立つとケニーに聞いたワードを選んでいく。
そう、β版の『NAVEL OF LAKE』の場所・・・『Δ 隠されし 禁断の 聖域』だ。
俺はそれらのワードを選ぶとそのエリアに転送された。
第4章 異変
そこはきれいな景色が見れた。橋が途中で切れ、その先には聖堂がある。
「β版とは特に変わったとこはなし・・・か」
ここは敵も出てこないしアイテムもイベントも無いらしい。ケニーはそう言っていた。
「とりあえず・・・中に入ってみるか・・・」
聖堂の入り口に向かう。右側のドアが半開きになっていた。
中からはオルガンで奏でられた曲が流れてくる。その右側のドアから体を入れ、中にはいる。
そこには、モンスターも居ないし、PCもさしたるイベントもないせいか、誰もいない・・・はずだった。
俺はケニーにそう聞かされていた。
だが、そこで見たのはモンスターだ。大きな杖をもっている。
いや・・杖ではなく十字架だろうか・・・
そんなことを思いながらもそのモンスターを見る。
モンスターの後ろでは鎖に縛られた少女の像がある。
モンスターはいきなりその十字架を聖堂のはじに向ける。そこにはPCが一人居ることがわかったが、デザインは暗すぎてわからない。そのPCの後ろにはいつの間にかモンスターの十字架がある。
「な、なに・・・この・・・モンスター・・・」
そのPCがなにやら驚いた様子で十字架に張り付けにされる。
そして、モンスターの腕からなにやら出てくる・・・
「腕輪・・・?」
なぜか直感的にそう感じる。実際それはモンスターの手首から出ている。
その腕輪からなにやら飛び出てくる。その線とも言えるグラフィックはPCに突き刺さる。そして、弾け・・・PCが消える。
「なっ・・・」
驚く・・・さしたるダメージも無しにPCが消える・・・
そのモンスターがこちらに気づく・・・
「やるか・・・・」
覚悟を決める。だが、勝てそうには無い。
モンスターがこちらに十字架を向ける。動こうとするが、動けない・・・
「くそ!!動けよ・・・」
コントローラーのボタンを必死に押すがPCが動く気配は無い・・・
いつの間にかPCの後ろに十字架がある。
モンスターが先ほどの腕輪のスキルを発動する。
くそ・・・ここで、俺もやられるのだろうか・・・
その時・・・俺の目の前を1人の少女が横切る。不思議にその少女は宙に浮いている。
モンスターはその少女に気づくと少女を追いかけるようにして消える。
そこで、俺は脱力する。コントローラーも汗でびっしょりだ。
「はぁはぁ・・・・」
しばらく、そこからは動けなかった。
[No.1064]
2008/02/26(Tue) 19:50:14
Re: .hack//Side5話&6話
(No.1064への返信 / 2階層) - 黒忍冬
『あなたが、先日見たモンスター。あれによりプレイヤーが意識不明者になったのはご存じか?
この、情報に興味があるのなら『主人を待つ犬』の前までご足労ねがいたし・・・』
これが、俺の元に来たメールだ。
確かに情報には興味がある。だが、送者名が気になる。
・・・・黒のビト・・・・ヘルバの副官だったはず・・・
ヘルバは黄昏の碑文に出てくる闇の女王だ。
黄昏の碑文の物語はおおまかに言うと光の王リョースと闇の女王ヘルバ手を組み禍々しい波に対抗する。
その中で伝説の夕暮れ竜探索のために半精霊の人間と人間が旅に出ると言う話だ。
黒のビトはヘルバの副官として碑文に登場する。
とりあえず、渋谷駅に向かうか・・・
駐車場に降り、車に乗ると渋谷駅に向かって走らせた。
第6章 情報
渋谷駅の前にはハチ公の像がある。ハチ公は主人を待ち、死んだことで有名だ。
ここだと、思うけどな・・・
たしかにここは待ち合わせには目立つし便利だ。俺のほかにも何人もの人が待ち合わせだろう。
だが、待って小1時間・・・だれも来ない・・・違うのか?
心配になる。
そこに、ある観光旅行客がやってくる。どうやら外人の観光旅行らしい。英語でなにやらハチ公のことを説明している。
まあ、英語だから詳しいところまではわからないが・・・
そこに、上野と言う言葉が耳に入る。
「上野?そこにもあるのか?」
説明が終わりバスに戻ろうとするガイドに話しかける。先ほどの上野の部分を聞いてみる。
「はい、ありますよ。上野の上野科学博物館に剥製があります。ハチ公のお墓は青山墓地にありますよ」
流暢な日本語でガイドは教えてくれると観光客と共にバスに乗った。
そうか・・・青山墓地か・・・
近くの駐車場に停めてあった車に乗ると青山墓地に向かって車を走らせた。
[No.1065]
2008/02/26(Tue) 19:50:58
Re: .hack//Side7話&8話
(No.1065への返信 / 3階層) - 黒忍冬
青山墓地につくと係りの人に上野英三郎の墓があるところを聞く。
「上野英三郎博士のお墓ですね?あちらです」
そう言うと係員は案内図を出して場所を指差して教えてくれる。
上野英三郎の墓の前には1人の男が立っている。身なりはきちんとはしている。
「あんたが黒のビトか?」
話しかける。男の手には団子の串が握られている。
「こんにちは、健司さん」
「本名まで知ってるか・・・さすがは凄腕のハッカーの副官だけあるな」
俺が皮肉を込めて言う。
「まあ、立ち話も何だし・・・どうです?食事しながらでも」
そう言うと彼は『ファーストフードの女王』というファーストフード店の紙袋を見せる。
第8章 佐藤一郎
「これ、本名か?」
俺の問いに佐藤一郎と名乗る黒のビトはどうでも良いように答える。
「名前なんてどうでも良いでしょう?どうせ記号を並べただけなんだから」
まあ、確かにどうでも良いことだが・・・
「じゃあ、その情報を聞かせてもらおうか・・・」
そう言うと食べ終わったチーズバーガーの紙を丸めて袋の中に押し込む。
「・・・1月前、<ザ・ワールド>内であるプレイヤーが意識不明になった」
「まさか・・・いまや<ザ・ワールド>は全国で約9千万人の人がプレイしてんだぞ?そのゲームで意識不明者は出ないだろう?」
「そう、約9千万人のプレイヤーがプレイしている中で数人のプレイヤーが意識不明なった。おそらくCC社はハッカーのせいにする・・・」
・・・意識不明者・・・聖堂の中で見たプレイヤーが関係しているのだろうか・・・?
「そのプレイヤーのPC名はカズ・・・場所は聖堂の中・・・」
案の定・・・やはり、聖堂の事だ。
「その事件が起きる前、異様なデータがそのエリアに流れ込んだ」
「それが、あのモンスターだと?」
俺の脳裏に大きな十字架が浮かぶ
「行く手を疾駆するはスケィス・・・碑文に出てくる8相のうちの1人・・・」
「8相ね・・・やつは倒すことが出来るのか?」
なぜか、倒したいと気持ちが沸く・・・内心怖いのではあるが・・・
「その必要は・・・無い・・・と言いますか・・・」
「どういうことだ?」
必要がない?どういうことだろう・・・
「先ほどあるプレイヤーがそのスケィスを倒した・・・」
「倒したプレイヤーを意識不明にするようなやつだぞ?」
プレイヤーを意識不明にするようなやつを倒したとは・・・いったいどんなプレイヤーだろうか・・・
「たしかに・・・ふつうの方法では奴を倒すことは出来ない・・・だが、意識不明にした能力を持っているとしたら?」
「毒をもって毒を制す・・・か」
たしかに、プレイヤーが意識不明にするスキルをもっているのは驚くことだが・・・
あれを作ったのがCC社なら対策としてそう言ったPCを派遣するのも考えられる。
「そのPCにCC社が目を付けた・・・」
「なぜだ?CC社が派遣したんじゃないのか?」
疑問に思う、CC社が派遣したのではないだろうか?
「彼、リョースはそのPCを削除するだろう・・・いや、しようとするだろう」
「削除出来ないのか?」
「彼のPCには管理者も破れないプロテクトが施されている」
ますます疑問が増える。CC社が作ったのに削除出来ないとは・・・
「そのPCについて教えてくれないか?」
「ヘルバ様の顧客情報は教えられなくて・・・」
ハッカーに顧客・・・か
「それじゃ・・・ここで」
黒のビトこと佐藤一郎は自分の袋をゴミ箱に捨てると立ち上がる。
「もう行くのか?もっと話を聞きたかったんだが・・・」
「これで副官というのも忙しくて・・・それじゃ・・・」
そう言うと佐藤一郎はその場を離れていく。
「あっ、忘れてた。ヘルバ様からの伝言・・・β版のアイテムを使うこと・・・」
「・・・」
そこまで、わかっているとは・・・さすがは凄腕のハッカーだけの事はある。
「それだけです・・・」
佐藤一郎はそれだけ言うとそのまま青山墓地を出ていった・・・
[No.1066]
2008/02/26(Tue) 19:52:30
Re: .hack//Side9話&10話
(No.1066への返信 / 4階層) - 黒忍冬
「なにを引き出しますか?」
NPCの商人は決まったセリフしか言わない。目の前にアイテム欄が開かれる。
その中の武器の欄には1つのアイテムしかない。
・・・『天剣デュランダル』・・・
β版のレア物だ・・・手に入れたのは異様な出来事だった・・・
β版が終了したあの日・・・逆様の男に会った時に手に入れた代物だ。
「ほんとに良いのか?こんなのもらって・・・」
ケニーはそんなこと言いながら手に入れた剣のもう1本を手に入れた。
俺が手に入れたのは『天剣デュランダル』、ケニーに渡したのは『魔剣カラドボルグ』どちらもレア物だ。
だが、ただのレア物ではない。手に入れた場所が場所だからだ。
『NAVEL OF LAKE』・・・謎の男からだ。
あの後、アイテム欄を確認すると2つのアイテムがあった・・・『天剣デュランダル』と『魔剣カラドボルグ』・・・・
そのアイテムを預けたままなのだ・・・つまり、実戦では使っていないのだ。
「おい、リアン・・・どうしたんだいきなり?」
俺の後ろには先ほど呼び出しておいたケニーが居る。その手には『魔剣カラドボルグ』が握られている。
「使ってんだな・・・それ・・・」
「おっ、これか?お前からの最初で最後のプレゼントだからな」
ケニーには手に入れたいきさつを話していない・・・
「で、なんのようだよ?」
「気が向いたんだよ・・・」
そう言うとケニーをつれてΩサーバーのルートタウン、リア・ファイルに転送した。
第10章 バグ
『Ω 異形なる 者達の 驚異』
これが、ケニーとの冒険に選んだワードだ。
俺は心の中で密かに願ってたのかもしれない・・・
あの、モンスター・・・スケィスの仲間に・・・いや、同類かな・・・・それに会いたいと・・・
「おい、早くダンジョンに行こうぜ!!」
ケニーが行きたくてたまらないらしい・・・
「わかったよ・・・」
そう言うと『快速のタリスマン』を使いダンジョンの方へ向かった。
ダンジョンの中にはいると景色が一変した。
たしかにダンジョンに入ればフィールドと違い、石造りの洞窟になる。
そこまでは、ふつうのダンジョンだが・・・なにやらおかしい・・・画面にノイズが走ったと思うと、
壁や地面、天井に至るまでなにやら数式が出てくる。
「これは・・・・」
「バグ・・・エリア・・・か?」
不意にケニーからバグエリアと言う言葉が出てくる。
「バグエリア?」
「そういう噂を聞いただけだ・・・実在するとは・・・」
ケニー自身驚いているようだ。
「どうする?引き返したくなったか?」
俺の質問にケニーは
「まさかな、こんなにおもしろい所があったんだ・・・神像部屋まで行こうぜ」
そう言うとケニーはダンジョンの中を進んでいった。
[No.1067]
2008/02/26(Tue) 19:54:09
Re: .hack//Side11話&12話
(No.1067への返信 / 5階層) - 黒忍冬
「なんなんだ・・・こいつ・・・」
ケニーは驚愕する・・・
そのモンスターは見た目はダライゴン、しかしモンスター名はグ*@ゴ&・・・バグとしか思えない・・・
「ダライゴン・・・だよなこいつ・・・」
そうだとしか思えないが・・・なにやら光っている・・・
「ケニー・・・聞いてるか・・・」
モンスターに目が釘付けのままケニーに話しかける。
「あ、ああ・・・聞いてるぜ・・・開いた口が塞がらないけどな・・・」
リアンはそこまで聞くとケニーに武器の事を話した。
「そんなやばいもんなのか・・・」
「悪かったな・・・黙ってて・・・」
「それとこれとなんの関係があるんだよ!!」
ケニーは結構イラだっている。
「とりあえずアイテム欄をみろ!!本だ!!」
俺はそこまで説明する。
ケニーの動きがとまる。どうやらアイテム欄を見ているのか、驚いているのかどちらかだ。
「なんだよ、このアイテム・・・文字化けしてわからないぞ・・・」
「いいから使ってみろ・・・」
「バグらない・・・よな?」
やはりケニーは心配そうだ。
いきなりモンスターが噛みつこうとしてくる。
それを剣で弾く、いくらバグっていても雑魚には変わらないが・・・・HPが無限とは・・・
「大丈夫だ・・・たぶん・・・」
「どっちなんだよ!!」
ケニーはもうすでに怒っている・・・
「じゃあ、俺がインストールするから、こいつを押さえてろ!!」
「・・・お、おう」
俺と入れ替わりにケニーがグ*@ゴ&に立ち向かう。
その間に本をインストールする。PCの剣に青白い光が宿る。
「これだけかよ・・・」
リアンは落胆する。
「とりあえず攻撃してみる・・・ケニー・・・どいてろ!!」
そう言うと前衛に出る。ケニーは後ろに下がる。
モンスターをその剣でジャンプして上から斬りつける。
ズパッ
・・・モンスターが正常な状態に戻る・・・
「すげぇじゃねえか・・・」
ケニーが喜びの声を上げる。
俺自身喜びたいけど・・・とてつもない脱力感が体をおそう・・・
キャラクターのHPとSPが一気に減る・・・それだけではない・・・現実の俺にも疲労感がおそう・・・
ざっと10分の1だろうか・・・
「ケニー!!敵はまだ生きている!!とどめを刺せ!!」
「お・・おう」
ケニーはまだ喜びに浸っていたらしい・・・
ケニーの剣がダライゴンを真っ二つにする。
ダライゴンの断末魔の叫びがダンジョン内にこだまする。
「それにしてもすごいなそれ・・・俺もインストールしようかな・・・」
「やめとけ・・・HPもSPも10分の1になるし、現実の本体にも吐き気と脱力感がくるぞ・・・それでもやるか?」
「・・・遠慮します・・・」
・・・やっと気分が落ち着いてくる・・・
「ケニー、『帝の気魂』と『完治の水』をくれないか・・・」
「あ、ああ・・・」
ケニーは『帝の気魂』と『完治の水』を俺に使う・・・それとともに現実の吐き気や脱力感も消える。
・・・PCのダメージと一緒に現実の吐き気や脱力感も無くなった・・・これは・・・やばい・・・
「ケニー・・・」
「ん、なんだ?もう大丈夫なのか?」
「さっきの本捨てろ・・・」
声にすごみをきかして言う。
「な・・・なんでだよ」
リアンはケニーに今起こった体の症状をさらに詳しく話す。ケニーは最初の疑問の表情からだんだんと驚きの表情になっていく。
「やばいな・・それ・・」
「だろ?やめとけよ・・・」
「今、捨てた・・・」
ケニーは話を聞いたとたんに捨てたらしい。
「それにしても・・・こいつ、なんだろうな・・・」
俺の問いにケニーは少し考え込んだ後・・・
「たぶん・・・噂のウイルスバグ・・・だろうな」
「ウイルスバグ?なんだよそれ・・・」
さらに聞き返すとケニーは少し考えた後
「それは、俺に聞くよりも・・・」
ケニーがそこまで言うと周りにノイズが走る。
「な・・・なんだ?」
「これは・・・」
ケニーは驚いた様子だ。
その間に周りのダンジョンが石壁からなにもない風景に変わる。
・・・いや、殺風景と言う表現の方が正しいか・・・
殺風景の景色に逆様の建物などが浮かんでくる。脳裏に逆様の男の姿が浮かぶ。
「おい、リアン聞いてるか!!」
ケニーの言葉に俺の思考は頭の中から現実に戻される。
「『精霊のオカリナ』を使え!!」
ケニーはあわてている。
「あ・・・ああ、わかった・・・」
俺はアイテム欄から『精霊のオカリナ』を取り出そうとする。すると突然画面にノイズが走る。
「なっ・・・」
アイテム欄が勝手に閉じられる。
「おい!!なにやって・・・」
ケニーの体が宙に浮かぶ、
「なっ、なんだよこれ・・・」
ケニーは驚いた様子でいる。突然ケニーの前にモンスターが出現する。
「魔法陣は無いはずだが・・・」
脳裏にスケィスの姿が浮かぶ。
「ま・・・まさか・・・」
ケニーの前にスケィスの腕輪と同じ物が浮かぶ。
「ケニー逃げろ!!」
俺はケニーに向かって叫ぶ。
「だめだ!!うごけねぇ・・・」
モンスターが完全な形で浮かぶ。その姿は異様だ。
「ケニーをはなせこの葉っぱやろう!!」
モンスターは確かに葉っぱのような形だが、どちらかというと枝だろう。
枝に葉がついているという印象だ。あきらかに8相の内の1人だろう。そのモンスターに斬りかかる。
ダメージは表示されたが、HPは文字化けしている。名前は・・・
「・・・メイガス・・・」
そう書かれている。
「リアン無駄だ!!こいつのHPは無限だ。さっきのモンスターと同じだ。はやく逃げ・・」
ケニーはそこまで言いかけてスケィスと同じスキルをうける。
「ケニー!!」
たまらず叫ぶ。だが、そこにはケニーの姿はない。
「きさまぁー!!」
一気にメイガスの前に躍り出る。そこでスキルを発動する。
「バクスラッシュ!!」
火属性のスキルがメイガスにダメージを負わせる。
と、言ってもHPが文字化けしているからどれだけのダメージを与えたかわからないが・・・
「こいつ・・・これももってけぇ!!」
バククラックを発動する。ジャンプして一気に切り落とす。それでもメイガスはダメージを受けた様子はない。
くそ・・・強い・・・
「リアン!!」
急に名前が呼ばれる。ケニーと俺しか居なかったはずだが・・・まさか、ケニーか?
だが、そこには少し色黒の重槍使いが1人だけだ。
「ア・・・アルビレオ・・・?」
「はやくこっちに来い!!『転送』スキルを使う!!」
アルビレオに向かって走る。後ろからメイガスが追いかけてくる様子がない。
「なんで・・・お前・・・」
アレビレオに問いかける。
「理由は後だ。『転送』するぞ・・・」
アルビレオはそう言うとスキルを発動する。俺とアルビレオは光の輪に包まれた。
第12章 旧知
「何でお前、あのエリアに居たんだ・・・?」
俺の問いにアルビレオは少し黙る。
「『異様なデータが流れ込んでいる』と言うバグ報告があった・・・」
「『異様なデータ』ねぇ・・・」
頭に真っ先に浮かんだのはスケィスとメイガスの姿だ。
「そう言えば・・・そっちはどうだよ・・・」
俺のそっちとはCC社の事だ。
「お前もCC社辞めた後なにやってる?」
「きままなフリータだよ・・・」
俺達が居るのはΔサーバーのルート・タウン、マク・アヌだ。
その街の特徴とも言える橋の上でアルビレオと橋から見える町並みを見ている。
「そっちはどうよ<碧衣の騎士団>の騎士長さん・・・」
「・・・」
アルビレオは黙る。
「・・・おい」
「あっ、ああ・・・悪いな」
なにを考えているのか・・・なにかまずいことでも聞いたのだろうか・・・
「それで、あのエリアに来たのはバグ報告だけじゃないんだろ?」
「・・・」
また黙る・・・
「たぶん・・・これだろうな・・・」
そう言うと『デュランダル』を軽く上に上げる。光に反射して『デュランダル』が光る。
「不正なアイテム、しかも今話題のウイルスバグを倒すことが出来るアイテムときたらCC社がほしがるからな・・・」
「あとで連絡する・・・」
アルビレオはそれだけ言うとログアウトした。
[No.1068]
2008/02/26(Tue) 19:54:57
Re: .hack//Side13話&14話
(No.1068への返信 / 6階層) - 黒忍冬
『マク・アヌに来てくれ・・・』
アルビレオから来たメールはこれだけだった。
「それにしても・・・来てくれと言われてもな・・・」
マク・アヌに来てもなかなか現れない。
「遅いな・・・」
結構時間がたっている。する事もないから街の中をブラブラする事にした。
歩いてるといつの間にか、マク・アヌの裏路地に来ていた。ここには、以前ケニーのホームがあったところだ。
「・・・ケニー・・・」
あれからずいぶんと時間がたっているのだが、昨日のことのように思い出す。
「嬢ちゃん、さっさと金目の物おいてきな」
「ん・・・?」
路地の奥の方に眼をやる。そこには3人の男に囲まれた少女がいた。
男達はそれぞれ強面のがっちりとした体格だ。おそらく金を奪うために重複登録されたPCだろう。
囲まれている少女はどうやら呪紋使いのようだ。長髪の金髪に白いビキニ姿の呪紋使いだ。
「そんなこと言われても私、お金もってないもん」
少女は以外に強気だ。そんなにレベルが高いのだろうか・・・
「おい、なめてんじゃねえぞ!!」
その中で剣をもっている男が怒鳴る。剣はレベルはそんなに高くない。
35ぐらいだったろうか。レベルと同じで高い武器を手に入れるには高いエリアに行く必要がある。
ほかの男達も見ると、似たり寄ったりの武器だ。違うのは武器の種類、斧と槍だ。
「だってないもんはないもん」
少女のこの一言で剣をもった男は本気でキレたようだ。一気に剣をあげると、そのまま振り下ろす。
・・・あそこまで強気なのだから受け止めるだろう・・・
だが、俺の予想とは違い、もろに剣が少女にヒットする。
「あ〜HPが赤くなった〜」
低レベルのようだ・・・
「わかったか?さっさと渡さないと次ので殺すぞ!!」
「え〜私まだセーブしてないんだよ・・・そんなのやだ!!」
いまだに強気だ・・・
「あっ!!そこの人助けて!!」
気づかれた・・・面倒なことになる予感・・・
「あぁ?お前、俺等とやる気か?」
3人の男がそれぞれ武器を構える。
「はぁ〜」
ため息が出る。何でこんな事に・・・まあ、やるからには徹底的にやるか・・・
「なんだぁ、お前・・・やるならかかってこいよ」
「・・・」
なめられている・・・それは確かだろう・・・
俺の武器を構える。『デュランダル』を鞘から引き抜く。『デュランダル』がレア物特有のわずかな光を出す。
能力さえ使わなければふつうのレア物の剣だ。
「それは・・・それをおいてけば見逃してやるぜ」
斧をもった男が提案してくる。だが、そんな事は論外だ。
「かかってこいよ・・・本当の戦い方を教えてやる」
軽く挑発する。
「んだと、てめぇ!!お前ら、行くぞ!!」
重斧使いと重槍使いが俺の前に躍り出る。2人の男の目の前から姿が消えたように写っただろう。
二人の攻撃を跳躍してかわし、そのまま剣士の前に躍り出る。
・・・横に一閃・・・
運がいいことに『クリティカル』が出る。
「なっ・・・」
剣士の体が黒くなると光の粒子になって消える。そのまま半透明になる。
この半透明になるのはPCが死んだときに起こる現象だ。これを<ザ・ワールド>では『おばけ』と言う。
「てめぇ・・・汚いぞ!!」
「なにが汚いか・・・2対1は汚くはないのか?」
「くっ・・・」
俺の返し言葉に男は黙る。
「じゃあ、続けようか・・・メバククルズ!!」
重斧使いに向けて火属性のスキルを発動する。複数の火球が男に向けて収束する。
「ぐはぁ・・・!!」
重斧使いは吹っ飛ぶと路地におかれていたタルにぶつかる。タルは粉々になる。
「お・・・おい、大丈夫か!!」
重槍使いが重斧使いの方に気を取られる。
「他人の心配か・・・無用だな・・・そう言うのは自らが強くなってからするもんだ・・・」
一気に重槍使いとの間合いを詰める。
・・・バクスラッシュ・・・
重槍使いは水属性だったのか火属性のスキルは大ダメージを与える。
これで、重槍使いも『おばけ』になる。
そこに重斧使いが起きあがる。
「火属性・・・その迅さ・・・お前・・・『炎の閃光』か・・・!?」
「知ってるならどれだけレベルが違うかわかるな?」
重斧使いを睨む・・・
「死にたくなかったらこの場から立ち去れ!!次、このようなところを見たら即殺すぞ!!」
重斧使いは返し言葉もなしにその場から立ち去る。その後を2人の『おばけ』が
追いかける。
「おい、あんた大丈夫か?」
後ろを振り向くと少女が安堵のため息をつく。
「ありがとう!!キミ、名前は?」
そう言うと手を差し出す。
「・・・リアンだ・・・」
・・・初対面でタメ口か・・・マナーがなっていないと言えばそうだが・・・こういったキャラを演じているのかもしれない・・・
俺も手を差し出して少女の手を握り返す。
「わたし、ほくと♪」
ほくとと名乗る少女はにっこりと笑う。
ネットの場合自分のPCの名前はチャットウィンドウに表示されるから初対面の相手でも
『はじめまして〜』とか『どうも初めまして』程度の挨拶ですむ。
名前まで言う必要は無い。だが、この<ザ・ワールド>はリアルに近いためか名前を紹介することが多々ある。
「ねぇ、さっきのおっさんが言ってた『炎の閃光』って?」
「通り名だよ。それなりにレベルが上がって何かしらの功績をたてると他の人からつけられるんだ」
「『炎の閃光』ってことは火系のスキルが使えてPCが迅いの?」
「まあ・・・そう言うことだ・・・」
実際、自分は通り名で呼ばれたいと思ったことはない。
ただ、レベルが上がればそれに比例して行くエリアのレベルも高くなる。
そういったエリアにはたまに無謀にも低レベルPCが挑戦していることがある。
そう言ったPCを助けていると小さな噂が立ち、通り名が付く。
このPCの場合は『炎の閃光』、あの『ザワンシン』イベントをクリアしたバルムンクとオルカは
『蒼天のバルムンク』『蒼海のオルカ』と呼ばれている。
『ザワンシン』イベントをクリアした2人に比べれば俺などつま先にも及ばない知名度だろう。
「ねぇ、レベルいくつ?その剣なに?結構レア物だよね?」
ほくとの質問は止まるところが無い。
「悪い・・・俺、人と待ち合わせしてるんだ」
「あっ、私もやらなくちゃいけないことがあったんだ・・・じゃね♪」
ほくとは言うことだけ言ってログアウトした。
「なんだかな・・・」
久しぶりに見た初心者だった。
第14章 2nd
結局5時間も待ったがアルビレオは現れなかった。することもなくマク・アヌの中を少し歩くことにした。
マク・アヌの橋の前につくとなにやら人だかりが出来ている。
・・・なんだ?
人だかりに向かってPCを動かす。人だかりをかき分けて中心に向かって行くとちょうど橋の真ん中で開けている。
・・・ん?
橋の中央には3人の重槍使いと1人のPCが居る。
重槍使いは騎士の格好、1人の方は・・・職業はわからない・・・
通常では設定不可能なキャラだ。わかるのは少女と言うことだけだ。
髪の毛は腰あたりまで来るだろう長髪に黒髪、耳の後ろあたりにブラウンのメッシュが入っている。
年は17、8才ぐらいだろうか・・・服装は冒険者には見えない。
町民のような格好で鎧もなにも装備していない。丈長の白いワンピースに茶色のケープだ。足は革の靴を履いている。
「あれってなんだよ・・・?」
「<碧衣の騎士団>だよ・・・<碧衣の騎士団>ってのは・・・不正なキャラを削除したりバグを削除したりするんだってよ」
「それとこれと何か関係があるのかよ?」
「・・・さぁ?」
画面下のチャットウィンドウはトークモードになっているPCの会話が表示される。
あいつ等が<碧衣の騎士団>だとしたら・・・少女が標的だろう・・・
CC社の決まりで<碧衣の騎士団>の者はふつうにプレイする場合は騎士団とわからないように最善を尽くすのが決まりだ。
それが<碧衣の騎士団>と思いっきりわかるような格好で居るからには仕事だろう。
その仕事の対象が目の前の少女であるということはすぐにわかる。
「私がなにをしたというの?」
少女が声をあげる。
「斬審さん・・・どうします?」
右側の騎士が斬審という先頭の騎士に尋ねる。
「我々は<碧衣の騎士団>だ。むろん削除する」
これを聞くと部下らしき2人は橋の両側に向かう。
「ここから先は<碧衣の騎士団>の仕事です。場合によっては削除スキルを発動する事があります。
その場合このNPCがスキルを交わすことがあり、あやまってPCが削除されることがあります。
その場合、当社が責任を負うことはありません」
部下の騎士は橋から下がるようにPCにうながす。
PC達が橋からさがっていく。橋の上には俺と騎士団、NPCだけだ。
「そこのキミもさがっていなさい。削除された場合、当社は・・・」
騎士が言い終わる前に騎士の横を通る。
「キミ!!私の話を聞いていないのか?あやまって削除された場合は当社が責任を負うことは・・・」
「してみろよ・・・」
なんだか騎士団を見ているとイライラしてくる。
「キミ・・・今なんと・・・?」
「削除するならやってみろって言ってるんだよ・・・」
斬審と名乗る騎士もNPCも俺のことを見ている。
「おい、そこの騎士!!」
斬審という騎士に言葉をかける。
「なんだ・・・?」
「こんなマク・アヌのしかも沢山のPCが居るまえで削除を試みるのは得策ではないと思う。
それに、目の前でNPCが削除されるところを見ていて気持ちの良い物ではないしな・・・そう言うことで邪魔させてもらうぞ」
私は敵ですと意思表示する。
「ど、どうします?」
部下の騎士が斬審に問いかける。
「・・・場合によっては連行してもかまわない。本人の希望だ削除してもかまわない」
「ですが、そんな事したら上層部が黙って・・・」
「上には放浪AIだと報告してかまわん・・・」
CC社も落ちるところまでも落ちたかな・・・
「話は終わったか?」
またイライラしてくる・・・
「<碧衣の騎士団>の仕事を行使させてもらう!!キミを連行する!!」
「おい、あいつ『炎の閃光』じゃないのか?」
野次馬のPCから俺の通り名が出てくる。
「なに?『炎の閃光』かよ・・・俺等じゃ勝てないんじゃ・・・」
騎士の1人が声をあげる。
「斬審さん何とかしてください。斬審さんじゃなきゃ勝てませんよ」
「どうした?かかってこないのか?」
挑発する。
「お前等は見習いだ。レベルもあまり高くないな・・・そこの放浪AIを見張っていろ・・・」
「は、はい!!」
斬審と名乗る騎士は前に出てくる。姿は銀色の鎧に銀の仮面<碧衣の騎士団>は
にたりよったりの格好だが仮面に角があるところからそれなりの位ではあるらしい。
「<碧衣の騎士団>の名にかけてお前を排除させてもらう!!」
「どうでもいいから・・・さっさとこいよ!!」
俺が構える前に斬審が俺の前に躍り出る。そのまま槍の一閃が俺を襲う。
この急襲に後ろ飛びに避ける。だが、槍の一閃は俺の体に傷を付ける。
・・・ちっ、かすった・・・
「上等じゃないか!!行くぞ!!」
地面に着地するとそのまま一気に間合いを詰める。一閃を加える。
斬審は横飛びに交わすと橋の縁に捕まりそのまま手の力を使ってジャンプする。
そのまま俺に上から槍を突きで繰り出してくる。それを剣で弾き返す。
そのまま後ろに飛ぶと呪紋スキルを発動する。メバククルズが発動すると火球が斬審に向かって収束する。
・・・よし!!決まった!!
確かに火球が当たったはずだ。だが、煙がはれるとそこには斬審の姿はない。
・・・どこに・・・
あたりを見回すと斬審の影らしき物が見られる。
・・・上か!!
上を見ると斬審が跳躍しているのがわかる。
・・・そこだな!!
だが、太陽が逆光になり眩しくて斬審の姿がよく見れない。
「くそ・・・」
後ろに飛ぶ、これなら武器の攻撃でダメージを負うことはない。だが、これが失敗だった。
「あまいな・・・」
斬審のこの言葉がチャットウィンドウに表示される。
「なに・・・?」
斬審は武器で攻撃してくる気は最初から無かった。ジャンプ中、武器をかまえてはいなくスキルの準備をしていた。
「メロー・クー!!」
火属性で固めた俺には痛いダメージだ。
その場をすぐに動こうとするが、体が思うように動かない。今のダメージで倒れてしまった。
「おわりだ・・・<碧衣の騎士団>の仕事を邪魔するんじゃなかったな・・・最後に言い残すことは?」
「あるな・・・負け惜しみだと思うなら思ってくれてかまわんが・・・このキャラクターは・・・2ndキャラクターだ・・・」
俺が言い訳をすると
「そうか・・・」
それだけ言うと斬審は俺の2ndキャラクター、リアンにとどめをさした。
[No.1069]
2008/02/26(Tue) 19:55:44
Re: .hack//Side15話&16話
(No.1069への返信 / 7階層) - 黒忍冬
すぐに1stキャラクターを選ぶとログインする。
マク・アヌのカオスゲートに出ると俺の1stキャラクター、リオンを走らせる。まだ人混みがある。
人混みの前まで行くと高く跳躍する。橋の中央にはまだ騎士が3人と少女が1人、倒れたPCが1人。
倒れたPCはリアンだ。
「斬審さん、削除しないんですか?」
「いや・・・削除する前にこいつを餌にしてさきに1stキャラを連行したい・・・」
「そうですか・・・」
このキャラは跳躍と言っても短時間の飛行が可能だ。デザインはさほど変わらない。
変わると言えば黒い金属製の鎧に機械じみた突起物、それと1番変わるのが属性が雷で職業が機械騎士と言うだけだ。
この機械騎士というのはβ版の隠し職業と言えばそうだが、β版の時に出たCC社の提案した職業だ。
なぜ、俺がこのPCにこの職業がついているかというと理由は簡単だ。
CC社の日本語版の移植作業に参加していたときに俺が提案した職業だからだ。
つまり、短期間しかなれるチャンスが無かったのだ。
短期間なのは設置したのが2時間と49分だけだったからだ。この期間が終了した時間がβ版が終了した時間だ。
「おい、お前・・・」
空中から声をかける。
「おい、あいつとんでねぇか?」
野次馬の中から声があがる。
「機械騎士?・・・まさか、健司さんか?」
1人の騎士が俺の名前を呼ぶ。
「ここは、あくまでネットゲームの中だ。本名はやめてほしいな・・・」
「ずいぶんと派手な登場ですね・・・健司さん・・・」
「本名で呼ぶなって言ってるんだろう・・・」
ゆっくりと少女の前に降りる。
「まぁ、俺が健司だというのがわかってるんならレベルの差がわかるな?さっきのリアンとはレベルが違うぞ・・・」
そう言うと青色に輝く剣を斬審に向ける。
「さて・・・どうする?」
俺の問いかけに斬審が小さく舌打ちする。
「これは、CC社への反乱ですよ・・・」
「反乱ねぇ・・・」
反乱という言葉を口の中で確かめる。
ネット犯罪にはならんだろう・・・
「ど、どうします?斬審さん・・・」
騎士の1人が斬審に聞く。
「お前等・・・3対1ならこちらが有利だ・・・いくぞ!!」
左側の騎士が俺に左側から攻撃を仕掛ける。それを右手にもっている剣で受け止める。
そして、機械騎士の戦闘モードに入れる。この戦闘モードはおまけみたな物だ。
背中の突起物から機械装甲が出てくる両手に回り体、足に行くと顔に兜のようになる。
眼の部分は開いている。右手の剣は手の甲の部分に設置される。左手は開いている。全身黒の装甲板で覆われている。
「それが、機械騎士ですか・・・」
斬審の顔に少し汗が吹き出ている。
「・・・この姿で戦って負けたことはない・・・覚悟しろよ!!」
右側の騎士も俺に剣を突きの状態で攻撃してくる。その剣が脇の下をかすめる。
左の騎士の顔を左手でクロスさせて顔をつかむ。
「あ、あがが・・・」
顔を捕まれた騎士が苦しそうにもがく。剣はすでに落として、両手で俺の腕を握る。
俺の剣と刃を交えている騎士に顔をつかんでいる騎士を投げつける。剣を持った騎士の剣が仲間の騎士に刺さる。
「て、てめぇ・・・」
顔を捕まれていた騎士はすでに仲間の剣によって『おばけ』になっている。
「自分で刺したんだろう?別に俺が刺したわけじゃない・・・恨むんだったら自分を恨むんだな・・・」
騎士が逆上すると俺に斬りかかる。それを刃が触る前に左手で顔をつかむ。そのまま投げ飛ばす。
「げっ、ぐふ・・・」
騎士は斬審の足下に倒れている。
「大丈夫か・・・?」
斬審は仲間の騎士に肩を貸す。
「す、すいません」
騎士は斬審に謝る。
「今日のところは引き下がります・・・ですが、この事はCC社に報告させてもらいますよ」
そう言うと斬審と2人の騎士はログアウトした。
第16章 AI
「あの、助けていただいて・・・ありがとうございます・・・」
少女が俺におじきする。
「いいよ、気にするな。俺はあいつ等がむかついただけだから・・・」
そういうと俺はそう言うと少女の顔が明るくなる。
今の俺は機械の鉄版が無い状態の鎧を装備した状態だ。
「とりあえずキミに聞きたいことがあるんだけど・・・」
そう言うと少女の顔は少し暗くなる。
「キミ・・・放浪AIだよね?」
そう言うと少女は完全に下を向く。
「あっ、だからどうとかじゃないから気にしなくていいよ」
そう言って笑いかけると少女は俺の顔をじっと見る。
「な、なんだよ・・・」
見つめられると少し照れる。改めて周りを見るとさっきまでの野次馬はすでに数人に減っていた。
「とりあえず・・・放浪AIで良いよね?」
「人は私のことをそう呼ぶわ・・・」
ここでは話づらい・・・
「俺のホームに来れるよね?こっちだ」
そう言うと少女を先導してホームに向かった。
ホームの前に来ると少女を俺のホームに入れる。ケニーのホームはあの後、俺が使っている。
「とりあえずここに居れば安全だから・・・」
「・・・うん」
少女はホームにある革製のソファーに座る。
「それじゃ、詳しい話は今度ね・・・俺、今日は寝るから・・・」
「・・・うん」
そう言うとホームから出る。
「・・・ん?」
なにやら画面にノイズが走る。続け様に何回も・・・
「なんで・・・ノイズが・・・これじゃ、まるで・・・」
・・・8相が出てくるようじゃないか・・・
そう思っていると画面が落ちる。
「あっ!!」
画面は<ザ・ワールド>の画面どころか画面自体が起動していない。
・・・なんなんだ・・・
そう思うと窓を開け、外を見る。そこからは夜景がキレイな横浜が見えるはずだが・・・建物からは光がない
「停電?」
それだけじゃない・・・至る所で火災も発生している。
・・・とりあえず外に出るか・・・
俺はマンションの部屋から出るとそのまま下の階に降りていった。
[No.1070]
2008/02/26(Tue) 19:56:30
Re: .hack//Side17話&18話
(No.1070への返信 / 8階層) - 黒忍冬
あたりは真っ暗だ・・・なにも見えない・・・
「健司さん・・・ですか?」
「はい?そうですが・・・」
そう言うと声のする方を見る。そこは暗くてなにも見えない。
「すいません、ちょっと暗くて見えません・・・」
「それにしても、びっくりしましたね・・・まさか、停電が起きるなんて・・・・」
相手は俺の言葉に返答はしないで話を進める。
停電か・・・考えるとおかしい・・・今日は嵐も無ければ特に事件もない。停電する理由がない・・・
「ま、これが停電とは限りませんけど・・・」
「ん?どういうことですか?」
そう問いかけると痺れたような痛みが体に走る。
「つ・・・」
バチバチという音が耳障りになっている。
・・・スタンガン・・・
「おい、なにすんだよ!!」
後ろ向き際に俺を襲った奴を見る。だが、暗くて人相も性別もわからない。
「さっさと寝てろ!!」
そう言うとさらにスタンガンを背中に押しつけられる。
「くぅ・・・」
効く・・・パソコンのやりすぎで痛めた腰には効く・・・きもちい・・・ような気がする。が、それも一時の幸せですぐに痛みに変わる。
「さっさと寝てろ!!」
次は鈍器のような物で後頭部が殴られる。眼の前がチカチカする。
「ほれ、運ぶぞ」
そう言うと俺を駐車場の方に運んでいく。チカチカする目で俺が運ばれてくだろう車を見る。
セダンタイプの黒い車だ。それしか確認できない。俺はナンバープレートを見る暇もなく意識が飛んだ。
第18章 CC社
目が覚めると真っ暗でなにも見えない。
・・・たしか、この車はセダンだよな・・・
誰に問いかけることもなく頭の中で記憶をたどる。するとセダンと言うことが頭の中で思い出す。
「あってろよ・・・俺の記憶・・・」
やっぱり心細い・・・誰もいないはずなのに問いかけてしまう。
・・・たしか、ここら辺に・・・
自分の体を少し動かすと手探りでコードを探す。
・・・大半のセダンには・・・あった!!
コードを見つける。それを思いっきり引っ張る。
・・・ガチャ
鍵の開く音が聞こえる。
うまくやったじゃん・・・俺・・・
鼻歌が出てきそうだ。
ゆっくりとトランクを開ける。そこは暗くどこかの地下駐車場だろう。
「はぁ〜」
見覚えがある・・・
「ようこそいらっしゃいました!!健司さん!!我がCC社にようこそお越しいただき・・・がふ!!」
車のトランクを開けるとやたら元気な社員を殴り飛ばす。
「なにをするですか!!健司さん!!」
「元気そうじゃないか、寛司さんよぉ」
鼻面を押さえている社員、寛司はイベント企画部の人間だ。
ちなみに俺はプログラマーだった。
「でも、退屈せずに来れたでしょ?このCC社に・・・」
俺の後ろを振り向く。そこには男が2人居る。2人とも『ども』と言う感じに頭を下げている。
「あれも、そうか?お前のアイディアか?」
「すっごいアイディアでしょ?健司さんには楽しんでCC社に来てもらおうと・・・イタ!!」
額にデコピンを喰らわす。寛司は赤くなった額をなでながら
「暴力的なところは変わってませんね・・・」
と言う
「お前にだけだ・・・」
そう言うと「用件はなんだ?」とうながす。
「今回、健司さんに来てもらったのは・・・」
「暇つぶしだと言ったら蹴るぞ・・・」
寛司は少し黙る。どうやらそう言おうとしていたらしい。
「わかりました・・・今回、健司さんに来てもらったのは話があったからです」
「誰からだよ・・・」
俺がぶっきらぼうに聞くと
「・・・度会さんですよ」
寛司は少し迷ったようにして答えた。
度会・・・<碧衣の騎士団>のアルビレオのプレイヤーだ。
寛司はドアをあけると俺を誘導しながら会社に入っていった。
・・・はぁ〜
ため息をつくと寛司の後についていった。
[No.1071]
2008/02/26(Tue) 19:57:22
Re: .hack//Side19話&20話
(No.1071への返信 / 9階層) - 黒忍冬
「よく来たな・・・寛司が変な事しなかったか?」
「連れてくるところですぐにやなめにあったよ・・・」
・・・はぁ〜
2人同時にため息が出る。
寛司は応接間に通すとそのままどこかに行ってしまった。
応接間はきれいな机とソファーが机を挟んで2つ、壁にはランプがさがっている。
「で、用件はなんだよ?この間のメールの事か?」
「まあ、な・・・」
度会はまたも意味ありげに言葉をにごす。
「もうそろそろ教えてくれないか?俺も暇じゃないんだ・・・」
「わかった、俺が知る限りの事を教えるよ・・・」
そう言うと度会はノートパソコンを机の上に出した。
度会はノートパソコンを操作しながら
「こないだは、俺の部下がすまなかった・・・」
と俺にわびる
「別に良いよ・・・」
俺がどうでも良いようにすると
「最近の奴は裏方の仕事を表には出さないと言うのが気に入らないと言ってな・・・」
「わかる気もするが・・・」
パソコンの操作が終わったんだろう・・・パソコンを反転させて俺にパソコンのディスプレイを見せる。
「<ザ・ワールド・・・>?」
「そう、<ザ・ワールド>だ・・・」
そう言うとまた、パソコンを反転させる。
そして、少し時間がたってからパソコンを反転させる。
「これを見てほしいんだが・・・」
「ん・・・?これは、<ザ・ワールド>の中にあるフォルダじゃないか」
画面にぽつんと1つのフォルダがある。
「そう、<ザ・ワールド>のフォルダだ・・・しかも」
度会はパソコンのディスプレイの上から手を出してマウスを操作する。フォルダを開けようとしても開けられない。
「ハロルド・ヒューイックの置きみやげだ」
「ハロルドのブラックボックス・・・」
いろいろ言われている・・・最初の移植作業の時から気になっているフォルダだ。
「これ、開けられないんだよね・・・」
俺が残念そうに言う。
「鍵を持ってた人物は行方不明か・・・」
「鍵・・・ねぇ・・・」
そこまで言うと頭の中にある噂が浮かぶ。
「<キー・オブ・ザ・トワイライト>・・・<黄昏の鍵>か」
「そんな噂もあったな・・・たしか、<紅衣の騎士団>にそれを探していた奴が居たな・・・」
度会が気になることを言う。
「探した奴が居たのか?結局見つけた人は居なかったんだよな・・・?居たらBBSに載っているだろうが・・・」
「たしか・・・クリム・・・だったかな・・・<紅衣の騎士団>で探したって奴・・・」
・・・あの騎士団は解散したのか・・・
「ほかにも居たような気もするが・・・」
「そりゃあ・・・かなりの数の人が探しただろう・・・」
そこで会話が止まる。
「俺をここに呼んだのは昔話のためじゃないんだろう?」
俺が唐突に聞くと度会は黙る。
「フォルダを開けることも出来ないしな・・・」
部屋の中に重い空気が流れる。
コンコン・・・
ドアからノックの音がする。
「どうぞ」
度会が入っても良いと了解する。
「失礼します」
1人の若い男性が入ってくる。特徴は金髪に染めた髪と黒い瞳、今時の若者と言った感じだ。
手にはお盆を持っており、お茶が2つ乗っている。
「お茶です・・・」
ぶっきらぼうに男性がお茶を俺の前に置く。
「どうも」
そう言うと男性は俺を横目で見る。男性は度会を見るとお茶を置く、お茶を置き終えると
『どうぞ、ごゆっくり・・・』と言うと部屋を出ていった。
「なんだ・・・あいつ?」
俺が度会に聞くと
「あいつは・・・剛志だ。<碧衣の騎士団>で、この間お前と戦った奴だよ」
「斬審というPCだっけな・・・」
俺がすでに閉じたドアを横目で見る。
「そのことなんだが・・・」
度会がパソコンをさらに操作する。するとパソコンにホームが浮かんでくる。そこには1人のPCと少女が立っている。
俺のホームだ。おそらく、事件直後の撮ったんだろう。
「この画像はついさっきの物だ・・・俺が聞きたいのは・・・」
「放浪AIの事だな?」
俺はわざと少女の事を放浪AIと呼んだ。
「<碧衣の騎士団>として削除に乗り込むか?」
「いや・・・やめておく」
度会は俺のさぐりには乗らなかった。
「上からの命令は無いしな・・・」
度会はこう付け加えた。
少し互いに黙った後、俺はお茶を口に運ぶ。静かな部屋にお茶のズズズと言う音が響く。
「すまないな・・・さっきのは少し私情を挟んでしまった・・・」
度会がなにやら意味ありげなことを言って謝る。
「私情・・・?」
俺が問いつめようとすると度会は「なんでもない・・・」とそれ以上はこの事について教える気はなさそうだ。
少しの間の沈黙の後、度会が口を開く。
「お前のPCの職業・・・」
「俺のPC?」
俺がオウム返しに聞き返す。
「β版の職業キャラはCC社の許可が下りるまでは使用禁止のはずだが・・・」
「う・・・」
確かに使用禁止が出ていたが・・・今回だけの使用である。
「そ、それは・・・」
「斬審に勝つためか?」
度会が問いつめてくる。
たしかに・・・勝つために使った。
「2ndキャラクターは斬審によって削除されたし・・・そうだな、1stキャラクターの職業を剣士に戻すが良いか?」
「う・・・」
たしかに仕方がないことなのだが・・・
「その代わりと言ってはなんだが・・・」
そう言うと度会は1つの紙の束を机の上に出した。
「・・・契約書?」
そう、その紙は契約書だった。
紙の文字列に目を走らせる。その紙は仕事の契約書だった。目を通し終えると度会をみる。
「どうだ?受ける気はないか?」
「う〜ん・・・」
結構悩む、仕事内容は<ザ・ワールド>の新システムの考案だ。
「こういうのは、俺じゃなくても出来るだろう?」
度会に聞く。
「・・・日本語版移植作業に関わった奴で頼めるのはお前ぐらいなんだが・・・頼まれてくれないか?」
「・・・わかったよ、職業のシステムを作れば良いんだろう?」
「引き受けてくれるか!?」
度会の顔がすこし明るくなる。
「わかった、引き受けるよ・・・」
そう言うと俺はお茶を飲み干す。お茶を飲み干すと書類にサインをする。
「・・・わかった。では、システムの方を頼むぞ」
そう言うと度会は立ち上がるとドアを開ける。
「わかったよ・・・じゃあ、こんど<ザ・ワールド>で・・・」
そう言うと俺も立ち上がる。
「残念だが、これから24時間メンテだ・・・」
そう言うと度会は苦笑いを浮かべた。
第20章 客人
「・・・なにやってるんだ?」
ホームに戻ってきた俺が見たのはリフォームされた部屋と服のデザインが変わっている少女だった。
「あっ・・・おかえりなさい・・・」
少女は俺の声を聞くと顔を明るくしてこちらを見る。
木のいすと木の机、目立つ物はそれしかなかったホームが今は木のいすには赤と黄色のチェックのカバーがかけられている。
机にも同じようなカバーがかけられている。少女のデザインは白と青が目立つローブを着ている。PCでいうなら呪紋使いだろう。
「あの、部屋・・・」
少女はそこまで言うと俺の顔を伺う。
「え、あ〜良いよ。別に・・・」
俺が部屋の模様替えを許可すると少女はどこから持ってきたのか箒で床を掃き始めた。
少女が掃除をしている間、チェックのカバーが掛けられた真新しい椅子に腰を下ろす。
「そう言えば・・・名前はなんて呼んだらいいんだ?」
「あっ、わたしの名前はソフィアです。一応・・・放浪AIです。よろしく」
そう言うとソフィアは俺の向かい側の席に座った。
「なんだか・・・最初に会ったときとふいんきが変わったな・・・」
「あの時は・・・<碧衣の騎士団>に削除されるのかと思って・・・」
たしかに、削除されると言うことは殺されると同じ意味だから放浪AIには恐怖を感じたんだろう・・・
ここまで考えてフッと疑問が浮かぶ。この放浪AIは対話をしている。
話をしている感じ、人間と同じだけの知能を持ち合わせているようだ。そもそも放浪AIに感情という物があるのだろうか・・・
「あの・・・」
ソフィアが気まずそうに俺の顔をのぞき込んできた。
「えっ、ああ・・・すまん」
どうやら放浪AIの事を考えて顔が険しくなっていたようだ。
「私も聞いて良いですか?」
ソフィアは明るい声で質問してくる。
「ああ、いいよ。俺の答えられる範囲ならな・・・」
「あの、こないだの鉄製の突起物がないんですけど・・・どうしたんですか?」
「あ〜、これか・・・」
俺は話して良い物かどうか悩んだが、取り合えずかいつまんで剣士に戻ったいきさつを話した。
「はぁ〜、CC社も落ちましたね・・・」
ソフィアは俺の話に満足したのか満足気にため息をついた。
「落ちた?」
落ちたという言葉を聞いて少し疑問に思ったが放浪AIなら知っていてもおかしくはないだろうと思い、追求はしないことにした。
「あの、リオンさんに来てもらいたい所があるんですが・・・」
「来てもらいたい所?」
俺が聞き返すと
「えと・・・」
少し困ったようにドアの方に目をやる。
「ん?」
俺もドアの方に目をやる。少し立ってから
トントン・・・
ドアをノックする音が聞こえる。
俺はドアの前まで行くと
「誰ですか?」
と聞く。
「・・・私ですよ」
・・・だから、だれだよ・・・
そう思いながらチャットウィンドウに目を通す。チャットウィンドウには『・・・私ですよ』と言う文字の前にシンという文字が浮かんでいる。
シン・・・俺の知り合いと言えば知り合いだ・・・
「待ってろ今、開けるから・・・」
そう言うと俺はドアの鍵をあける。
ガチャ・・・
鍵の重い音が部屋に響く。ドアが開く。
「きゃ!!」
「おわ!!」
ドアを開けると少女がいきなり倒れかけてくる。
・・・な、なんだ?
心の中でそう思いながら少女を立たせる。
髪は肩に少しがかかるような感じだ。色は黒、姿は忍者のような格好。というか忍者だ。
忍服は赤、肩のあたりが出ている。瞳は黒、日本人という感じだ。
職業は双剣士、腰の後ろに剣が二本、交差している。年は15、6才に見える。
「あっ、すいません」
少女は顔を上げる。かわいらしい顔だ。
「どうもすいません」
後ろには1人の重剣士が立っている。装束は白、服装は白で固めている。腰には日本刀を下げている。
目は細く、瞳は見えるか見えないか微妙。現実なら見えないと言うぐらいの薄目だがゲームにはそんなことは関係ない。
髪は黒で耳を隠すぐらいの長さだ。オールバックのような髪型で2、3本、固まって髪が前に垂れている。
「う〜見つかった・・・」
少女は残念そうに顔を垂れている。
「ドアに耳を当てていたら見つかるでしょう」
シンが少女に苦笑いを浮かべながら言う。
「その娘・・・だれ?」
俺がシンに少女は誰かと聞く。
「あ、私の娘ですよ」
「娘!!」
シンに娘がいたとは・・・
「私も聞きたいですね。その娘は誰ですか?」
シンがいつの間にか俺の後ろにいるソフィアを指さす。
「あっ・・・」
ソフィアはそうつぶやくと俺の後ろに隠れた。
「なんか、人見知りが激しいみたいですね」
そう言うとシンはニコッと笑う。
「えと、あの・・・」
忍者服の少女は気まずそうにシンを見る。
「あ、そうですね。それじゃ・・・私の娘から」
「あっ、やまな・・・ユキです。よろしく♪」
そう言うとユキは手を差し出してきた。『やまな・・・』の部分はおそらく本名を言いそうになったんだろう。こいつも初心者だ。
「あ〜、よろしく」
そう言うと俺はユキの手を握り返した。
「ねぇ、君・・・だれ?」
そう言うとユキは俺の後ろで隠れているソフィアに手を差し出した。
「あ、こいつは・・・」
「あっ・・・ソフィアです・・・」
俺が紹介しようとするとソフィアは自分から挨拶した。
「よろしく、ユキです。仲良くしようね♪」
そう言うとユキはソフィアに手を差し出した。
「あ・・・よろしく」
そう言うとソフィアはユキの手を握り返した。
「あらら・・・すぐに仲良くなっちゃいましたね」
そう言うとシンは楽しそうに笑みを浮かべた。
[No.1072]
2008/02/26(Tue) 19:58:21
Re: .hack//Side21話&22話
(No.1072への返信 / 10階層) - 黒忍冬
「あっ!!あぶない。ユキ!!」
そう言うとソフィアはラリウゾットを発動する。オーガの一撃は氷の柱に阻まれ巨剣が弾かれる。
「サンキュウ。ソフィア♪」
そう言うとユキは舞武を発動する。が、オーガには効いた様子はない。
シュパ・・・
ひとつの短音と共にオーガが真っ二つになる。
真っ二つになったオーガの後ろにはシンが立っている。その腰にはすでに刀が収まっている。
「さっすがお父さん♪動き早いねぇ」
ユキが喜びの声をあげる。
「重剣士なのにな・・・」
俺がつぶやく。
「ほんと・・・はやいね」
隣ではソフィアが珍しそうにシンを見ている。
「それにしても・・・こんなレベルのエリアで良いのか?」
隣のソフィアに聞く。
「ここで会ってますよ・・・というより、どこでもできます」
「ここまで来た意味ないじゃん・・・」
ユキがなんだぁ〜と言う感じでソフィアの肩に手を置く。
「ごめんね」
ソフィアはすぐに謝る。
「それにしても・・・仲がすぐに良くなりましたねぇ・・・」
いつのまに俺の隣にいるシンは2人をみて口元には笑みが浮かんでいる。
ソフィアとユキは楽しそうに話している。
「お〜い、そろそろいいんじゃないか?だれも居ないみたいだし」
俺がそう言うとソフィアは
「そうですね・・・それじゃ、みなさん。一カ所に集まってください」
そう言うと俺達を一カ所に集めた。
ここで、俺達がなぜこんなところに居るかと言うことにふれておこう。
俺達はあの後、ソフィアの提案で放浪AIが集まる場所、放浪AIによって作られたルートタウンに行くことになった。
だが、ルートタウンでやればCC社に見つかるかもしれない。
そこで、ダンジョン内で行うと言うことになったのだ。だが、ユキはダンジョンの最深部でやると思っていたらしい。
「それじゃ、みなさん・・・いきますよ」
そう言うとソフィアは目をつぶると何語とかつぶやく。すると俺達を光の輪が包む。カオスゲートなどで移動するときと同じ輪だ。
少しの間、目の前が白くなると目の前に近代的な街が浮かんできた。
第22章 老人
「あっ、ここ♪」
そう言うとソフィアは一軒の家を指さす。その家は入り口近くの近代的な家と全く違い、レンガで出来ており、所々レンガがかけている。
「ただいま♪」
そう言うとソフィアは家の中に入る。俺達もその後に続く。
家の中は暖炉がひとつ、木の机と椅子が並べられている。奥にはまだ部屋がありそうだ。
暖炉の前には1人の老人が暖炉で沸かしたお湯が入っているだろうポットを持って、立っている。
目立つのは真っ白な白髪とつり上がった目、腰が少し曲がっている。
「・・・」
老人は俺達を見るとポットからお茶をカップに注ぎ始めた。
「え、と・・・この人が私の面倒を見てくれた人・・」
ソフィアが老人を紹介する。
「クロカスじゃ」
老人はそれだけ言うと棚からカップを5つ取り出すとそれぞれのカップにお茶を注ぐ。
「わしらにとってはあまり意味のない事じゃがな・・・」
そう言うと俺達に席を座れとうながす。
俺達はそれぞれ席に着く。家の中には重い空気が流れている。
「わしらは寝ることも・・・食べることも必要ない・・・」
そう言うと老人はカップに口を付ける。
「ま、気分だけだがな・・・」
老人はそれだけ言うと空になったカップを机の上に置いた。
「まぁ、今夜はゆっくりしていくと良い・・・ベットは奥にあるからな」
そう言うと老人は奥に消えていった。
[No.1073]
2008/02/26(Tue) 19:59:08
Re: .hack//Side23話&24話
(No.1073への返信 / 11階層) - 黒忍冬
夜になった。ここは、試作段階で放棄されたルート・タウンが集まった場所だ。
なんだか、落ちる気もせず外で夜空を眺めている。ほかの奴等もそうらしい。
落ちずPCをベットに横にさせるとAFKの状態にしている。ソフィアとユキはまだしゃべり込んでいるようだが・・・
「ふむ、今夜は冷えますな・・・」
いきなり後ろから声をかけられる。
「ん?」
後ろを振り向くと先ほどの老人、クロカスがカップを2つ持っている。
「そうだな・・・こんな日は冷えそうだ・・・」
夜空が怖いほどキレイに見える。
「ソフィアから話は聞いたよ・・・<碧衣の騎士団>から救ってくれたそうだじゃな・・・」
「ん、まあな・・・」
俺がそう言うとクロカスは俺に向かって一礼する。
「ど、どうしたんだ?」
いきなりクロカスが礼をするとは・・・先ほどの印象とは全然違う。
「ありがとう、と・・・そう言う事じゃ・・・」
顔を上げるとまじめな顔になるとソフィアのことについて話し始めた。
「あの子、ソフィアはな・・・元々PCじゃ・・・」
「PC?本人は放浪AIだって・・・」
俺が聞き返す。
「まず、なぜそうなったかを話そう。彼女の話からすると彼女はある呪紋使いにあったと言っていた・・・」
「呪紋使い?」
呪紋使いとこの事がなにが関係するのだろうか・・・
「その呪紋使いの名は・・・司と言ったかな・・・一時期BBSで話題になったから興味本位で近づいたら、データドレインされたそうじゃ・・・」
「データ・・・ドレイン・・・?」
データドレイン・・・初めて聞く単語だ。
「主な能力はモンスターデータの改竄・・・それがデータドレインじゃ・・・」
「それとPCとAIとなにか関係が?」
データが改竄されるのならキャラのデザインが変わるなどの事だろう・・・が、その考えが甘いと言うことが次の言葉で思い知らされる。
「それぞれ、データドレインされた人には共通点があってな・・・おぬし達の世界、つまりPCの本体が意識不明になるそうじゃ」
なるほど・・・あれからケニーと連絡が取れないのもうなずける。と、いうことはケニーの本体は意識不明と言うことか・・・
「そうじゃな・・・彼女はデータドレインされる前の記憶があやふやじゃそうだ・・・さらに、データドレインされた人物の中に放浪AIとなる人がいるそうじゃ。その中の1人が・・・」
「ソフィアか・・・」
なんとなく頭の中で納得した。
「そうじゃな・・・お主の剣、それじゃな・・・」
「ん?」
俺は鞘に収まっている剣を抜くとクロカスに見せる。
「それにもデータドレインと同じ能力がある。ちと見せてくれるかな?」
クロカスに『デュランダル』を手渡す。
「ふむ・・・ゲートハッキングは無いようじゃな・・・」
「ゲートハッキング?」
「プロテクトされたエリアに入れるスキルのことじゃ・・・CC社のプロテクトはもちろん。
管理者さえも入れぬエリアにも入れる優れ物のスキルじゃ」
そんなスキルを移植作業の時に入れた覚えが無い・・・と言うことは
ハロルドボックス・・・だったか・・・CC社内ではそのような呼び方がされていた。その中に入っていたものだろうか・・・
「どうした?ほれ、お主の武器じゃ重宝せいよ」
「あ、ああ・・・」
そう言うと『デュランダル』を受け取る。
「それにしても・・・あんたよく知ってんな・・・」
俺がそこまで言うと街のどこかで爆発音がなる。
「な、なんだ?」
奥の時計台があるところで爆煙が昇っている。
「お主は先に行っておれ!!わしは他の奴らを起こしてくる!!」
クロカスはそう言うと家の中に入っていった。
家の中を覗く。ユキがジャンプしている。パソコンの前からプレイヤーが離れたときにPCがする動作だ。ユキはジャンプしながら
「ちょっとお父さん!!起きてよ!!起きろー!!」
その後にPCを通してのゴスと言う鈍い音。
それだけ見ると俺は時計台の方に向かって走っていった。
第24章 騎士団
レンガで出来た家々が見える。時間があればゆっくりと見ていたいが、それらを無視して時計台に向かっていく。
レンガの道を抜けるとちょっとした広場にでる。おそらく、ここはマク・アヌに使う予定だったのだろう。
広場の中心には円形の紋章がある。ないのはカオスゲートだけだ。
その中心から放浪AIが飛ばされてくる。俺の目の前で体が黒くなると消えていく。
「こ、こいつら!!」
目の前には数人の騎士、間違い無く<碧衣の騎士団>だ。
「ん?お前・・・なぜ、ここにいる!?ここにはPCがいないはずだぞ!!」
「お前らこそなぜ、ここにいる?」
「それは私が連れてきたからですよ」
数人の騎士に囲まれた1人の騎士が前に出てくる。
「お、おまえは・・・斬審」
俺の目の前に現れたのは紛れも無くマク・アヌで戦った斬審だ。
「名前を覚えてくれて光栄ですよ・・・健司さん・・・いや剣士のリオンさん」
剣士のところを強調して言う。
「お前らの目的は・・・放浪AIを一挙に削除することか?」
「私の仕事はそうですからね・・・」
案の定・・・やはり削除を前提にした作戦だ
「それにしても・・・やっと見つけた放浪AIの巣に居たのがあなたとは・・・削除しないわけには行きませんねぇ・・・」
口元にニヤリと笑みを浮かべる。
「悪趣味な・・・」
時計台の上から声がする。
「ん?」
斬審が時計台の上を見る。
「放浪AIですか?」
「せっかくの夜だ・・・少しは静かにしてもらいたいがな・・・」
月の光が逆光になってどうゆうデザインなのかわからない。
「おい、お前・・・」
斬審が1人の騎士を呼ぶ。
「は、はい。分隊長殿なんですか?」
「時計台の放浪AIを削除しなさい」
斬審は部下に命令する。
「はっ!!」
そう言うと部下らしき騎士は敬礼をすると時計台の上にジャンプしていった。
「おい!!まて・・・」
俺が騎士のあとを追いかけようとすると斬審が俺の前に踊り出る。
「あなたの相手は私ですよ」
そう言うと斬審は武器を構えた。
[No.1074]
2008/02/26(Tue) 19:59:42
Re: .hack//Side25話&26話
(No.1074への返信 / 12階層) - 黒忍冬
右から繰り出した一閃はジャンプされてかわされる。そのまま斬審は上から剣を繰り出してくる。それを横っ飛びにかわす。そのまま体を転がすと斬審に向かってメライクルズを放つ。複数の雷球は斬審に向かって収束する。雷球が斬審にあたると煙が巻く。
「・・・」
煙が巻いている。少しずつ煙が晴れていく。
そこには斬審の姿は無い。
「まったく・・・あなたは芸の無い人ですね・・・」
上から垂直に斬審が降りてくる。その手には剣が垂直に下ろされている。
「芸が無いのはどっちだが・・・」
そう言うとメライロームを発動する。
「ぐ・・・」
空中に浮いている斬審はそのまま雷の竜巻に巻き込まれて上に吹っ飛ばされる。
「これで終わると思うな!!」
そう言うとギライドーンを発動する。
斬審は追い討ちをかけるように上から雷が落ちてくる。
そのまま落ちてくる斬新に向かって突進する。
「とどめだ!!バクスラッシュ」
走った状態で発動する。 袈裟斬りした後、逆袈裟に斬る。
俺の後ろで斬審が倒れる。
「レベル自体がちがったな・・・」
そう言うと剣を鞘に収める。
「俺は・・・俺は・・・まだ・・」
「ん?」
後ろを振り返る。
「俺は・・・」
斬審が瓦礫の中から立ちあがる。
「俺は・・・負けるわけにはいかないのだ・・・」
「負けるわけにはいかない?」
斬審はうなだれた顔をグッと正面に向ける。その顔は死人のようだ。
「俺は・・・グッ!!」
斬審は目を見開くとそのまま倒れる。
「なっ・・・どうしたんだ?」
斬審に近づく。斬審はピクリとも動かない。そのまま体の周りに黄色い帯びのようなものが回転するとそのままはじけて消えていく。
「ど、どうして・・・これは・・・」
「データドレイン・・・主な能力は平たく言えばデータの改竄・・・」
いつのまにか斬審が居たところを挟んだ所にフードを被った男が立っている。
「あんたは?」
「どうもはじめまして・・・と、ゆっくり挨拶をしたいところだが・・・」
と言うとフードを被った男は時計台の方を見る。
俺もその方向に目をやる。
そこには金色のような鉄アレイ型のモンスター・・・
「な、なんだ?こんなモンスターは見たことが無いが・・・」
「気をつけろ・・・あいつの触手にはデータドレインと同じ効果がある・・・」
モンスターがこちらにゆっくりと向きをかえる。
触手がゆっくりと伸びてくる。
「なんだ・・・おとな・・・」
と、思った瞬間一気にすばやく触手が伸びてくる。
・・・やばい!!
後ろに下がろうとするが瓦礫が足に引っかかって転んでしまう。
しまった!!
触手がすばやく俺を狙って飛んでくる。
だめか・・・まぁ、放浪AIのような生活も悪くないかもしれないな・・・
ズパ・・・
触手が切れた音・・・
「お〜い、大丈夫?」
後ろから声がする。
後ろを振り向くとユキとソフィアが走ってきている。
前を見るとシンが襲ってくる触手を次々と切り払っている。
「大丈夫ですか?」
シンはまだ口元に笑みを浮かべている。
いつのまにかフードの男はいなくなっている。
「はっ!!」
シンは気合とともに鉄アレイの棒の部分を真っ二つにする。
「やった〜お父さん。すっご〜い♪」
そう言うとユキは俺を飛び越えてシンの元に向かった。
「大丈夫?」
そう言うとソフィアは俺の隣に来た。
「ああ、大丈夫だ・・・」
そう言うと俺は立ちあがる。
ソフィアは心配そうな顔をしている。だが、俺が見たのはソフィアの後ろだった。そこには鉄アレイがいる。
「あぶないソフィア!!」
そう言うと彼女を抱きしめると体を回転させる。俺の背中を盾にした形になった。
「ちょ、ちょっと・・・どうしたの?」
ソフィアは気づいてないようだ・・・
「どうしたの?」
ユキが近づいてくる。
・・・ん、なんだ・・・目が・・・かすむ・・・
リオンの背中には鉄アレイの触手が突き刺さっている。
目の前が真っ白になる。
俺が認識できたのはそこまでだった。
第26章 認識
「ここは・・・どこだ・・・目の前が真っ白だ・・・何も感じない・・・」
「感じない?それは本当かな?」
別の声がする。
「あんた・・・だれだ・・・?」
「感じるとは思わないか・・・」
感じる・・・?
ポン
・・・音?
波紋が広がるイメージが頭に入る。
「波紋・・・?」
「そのイメージを大切にするんだな・・・」
「おい!!あんたは・・・」
だが、返事は返ってこない
「・・・俺は・・・結局・・・なんなんだ・・・だれだ・・・俺は・・・わからない・・・」
頭を抱えて悩みたくなる。
「・・・おれは・・・」
「・・・あなた自身・・・それ以外の何者でもない・・・」
また、別の声がする。今度は少女の声だ。
「誰だ・・・!!」
すると暗闇の中から光が現れたと思うと1人の少女が現れた。
[No.1075]
2008/02/26(Tue) 20:00:35
Re: .hack//Side27話&28話
(No.1075への返信 / 13階層) - 黒忍冬
「ねぇ・・・どう言うこと?」
ユキがソフィアに聞く
「そんな事言われても・・・」
ソフィアの目の前で透明になっていき・・・そして、鉄アレイに吸収されたかと思うと
鉄アレイごとリオンは消えていた。
「とりあえず・・・クロカスの家に行きましょう・・・そこで悩めばいい・・・」
そう言うとシンは先頭に立って歩いていった。
いたるところが焼け焦げていたりバラバラになった木箱や家がある。
「お主達・・・無事だったか!!」
そう言うとクロカスは家の前で出迎えてくれた。
「リオンはどうした?」
クロカスがそう言うとソフィアは意味ありげに少し唾を飲むと
「データドレインされた・・・私と同じ・・・」
「ふむ・・・先客がいる・・・とりあえずわしの家に入ると良い・・・」
「先客?」
ユキは顔にハテナと言う文字を浮かべている。
家の中に入ると1人、フードを被った男が椅子に座ってお茶を飲んでいる。
「どうも・・・はじめまして・・・」
男はシン達を見ずに挨拶をする。
「どうも・・・と言いたいところですが・・・こちらを見て挨拶していただけますか?」
シンは口の微笑を浮かべた。
「ふむ、たしかにそうだな・・・」
そう言うとフードの男は椅子から立つとシン達のほうを見る。
「はじめまして・・・シルフィスです・・・一部の人間は預言者と言いますよ」
そう言うとシルフィスは頭のフードを取ると口元に笑みを浮かべた。
第28章 連星
「つまり・・・あなたは鉄アレイはもともとソフィアとリオンを狙ってたというのですか?」
「そうだ・・・では鉄アレイの目標はわかったが・・・この2人を選んだ理由は?」
シルフィスは更に質問を投げかける。いや、質問と言うか試すと言う感じだ。
シルフィスの特徴は黒い鎧、所々に紋章が刻まれている。
髪の色は金髪、髪型は適当に切られた髪のような印象があるが後ろに髪が跳ねていると言う感じの印象も受ける。
目の瞳は青に近い、腰に剣を下げている。本人が言うには職業は魔法剣士、β版の職業だそうだ。
「それはなぜか・・・?その答えは2人に関係するもの・・・」
「データドレインだぁ!!」
ユキが声をあげる。
「そのとおり・・・冴えているな・・・お嬢ちゃん」
「へへへ♪」
ユキはうれしそうに髪をポリポリとかく。
データドレインのことは先ほどクロカスからシン達は聞いていた。
「では、なぜ黒幕・・・イヤ、鉄アレイを差し向けた奴の意図は?」
「ん〜・・・」
ユキは腕を組んで悩んでいる。
「データドレインがほしかった・・・と言うところだな・・・」
家の玄関から男の声がする。
「・・・どうも、こんにちは。アルビレオさん・・・」
シルフィスが声の方を見ずに男の名前を当てる。
「<碧衣の騎士団>・・・!!」
クロカスが声を上げる。
「まぁ、落ち着けよ。クロカスさん」
そう言うとシルフィスは手に持っているお茶を口に含む。
「今の彼はいちユーザーでしかないんだから・・・」
「・・・なに!?」
クロカスがシルフィスの言葉に驚き声を上げる。
「今はプライベートにきている・・・それと、あるものを渡しにきた・・・と、言うところだろう・・・」
そう言うとシルフィスはアルビレオの方に向き直る。
「よくわかったな・・・そのとおり、俺は頼まれた物を届に来ただけだ」
「頼まれた?」
ユキが頼まれたと言う部分に疑問をもつ。
「・・・ここに居るシルフィスという奴に渡してこいと社長直々の頼みだ」
「でも、あなたが来る必要はないのではないんじゃないんですか?
元来<碧衣の騎士団>は放浪AIを消去する事は活動内容のはず・・・
<碧衣の騎士団>の騎士長のあなたが来るところとは場違いと思いますが・・・
それに届物ならリョースや部下がやれば良いことじゃないんですか?」
シンはアルビレオを見ながら少し警戒している様子だ。
「これは、公式発表ではないが・・・<ザ・ワールド>を正常化するために
リョースはカイトというPCとその仲間たちとなにやら作戦を実行中らしい・・・先ほど、リョースの部下が数名意識不明になった・・・」
アルビレオは少し顔を伏せながら話した。
「でもさ、社長直々なんて・・・すごいんだね。シルフィスさんって!!」
ユキがシルフィスを見ながら目を輝かしている。
「それは、俺も興味がある・・・あんた、何者だ?」
アルビレオも不思議そうにしている。
「そうだな・・・俺の自己紹介を触れておくか・・・リアルのことも含めてな・・・」
そう言うとシルフィスは自分のことを話し始めた。
「そうだな。本名は伏せておくとして・・・俺の職場はWNC(世界ネットワーク・カウンシル)の調査団。
そして、CC社の社長の幼馴染・・・これでたいていのことはわかったと思うが?」
「では、あんたは今回の<ザ・ワールド>での事件を調査しに来たのか!?」
アルビレオは声を荒げる。
「世界中の人がプレイしてるんだ。WNCの職員がプレイしていてもおかしくはないだろう?
それと、今回のことは社長から頼まれたことだ。これで納得してもらえると思うが?」
「たしかに・・・それは、おかしくはないですね」
シンは口元に微笑を浮かべている。
「さて、自己紹介もすんだことだし・・・社長からのプレゼントを渡してもらおうか?」
そう言うとシルフィスはアルビレオからアイテムを受け取った。
「・・・さて、俺も仕事に戻るか・・・」
「仕事?」
シンは聞き返しながら刀の鍔を切る。
「勘違いしてもらいたくないな・・・無意味な24時間メンテだよ」
アルビレオはそう言うと転送消滅した。
[No.1076]
2008/02/26(Tue) 20:01:31
Re: .hack//Side29話&30話
(No.1076への返信 / 14階層) - 黒忍冬
「つまり・・・データー量が急激に上がった場所があるから・・・そこに行くと、そう言うこと?」
そう言うとユキはシルフィスの方に顔を向ける。
「そうだが・・・少々問題がある」
「問題?」
ユキはシルフィスに更に聞き返す。
「プロテクトされているんだよ・・・」
「プロテクト・・・」
今度はソフィアが意味ありげにつぶやく。
「これを突破するためには・・・」
「ゲートハッキングですね・・・」
今度はシンが答える。
「そう、それで・・・ゲートハッキングするために必要なのが・・・」
「腕輪じゃな・・・」
後ろから斧を担いだクロカスが答える。
「だけど我々には腕輪がない・・・そこで、これが登場・・・」
そう言うとシルフィスは手に持っている『魔剣カラドボルグ』を掲げる。
「Ω 異形なる 者達の 驚異 でケニーがデータドレインされたときに落とした物・・・
この、武器にはリオンと同じく武器に能力が付加されている・・・ケニーはすでに本をインストールしていたみたいだな・・・」
シルフィスは『魔剣カラドボルグ』を見ながら口元に笑みを浮かべる。
「その能力は・・・ゲートハッキング・・・」
この『魔剣カラドボルグ』は先ほど、アルビレオから受け取ったものだ。
「それでは・・・頼めるか・・・ソフィア?」
シルフィスは後ろを振り向きソフィアを見る。
「えっ、私?」
ソフィアは顔に驚きの表情を浮かべている。
「プロテクトされたところに入るには絶対に必要になるウイルスコア・・・だが、我々にはそれがない・・・
そこで、パーティごと移動できるゲートハッキングを持つ『魔剣カラドボルグ』と
どんなエリアでも移動できる放浪AIとの能力を合わせた方法だ・・・理解できたか?」
「はい、わかりました・・・」
そう言うとソフィアは『魔剣カラドボルグ』を受け取ると目つぶった。
すると5人は転送消滅した。
第30章 決意
転送されたところは石で出来た遺跡だ。そこは大きな部屋で奥の方に祭壇がある。
「ここは・・・どこ?」
ユキが声を潜めてシンに聞く。
「どこでしょう・・・ダンジョンということは確かですが・・・」
シンもあたりを見回す。
「さて・・・いまさらだが・・・覚悟は良いか?」
シルフィスは全員の顔を見渡しながら言う。
「覚悟・・・?」
ユキは顔にハテナを浮かべている。
「俺の覚悟はここで起きていることを知ること・・・そして、今回の事件について知りたいという欲望だ」
シルフィスはそう言うとユキの方をみる。
「ここから先は下手したら意識不明者になる。その覚悟と理由を聞いてるんだ。ここからは生半可の気持ちでは進めないからな」
「ん〜・・・私は、最後まで付き合う!!お父さんも居るし、ソフィアも居る!!怖くない!!」
ユキはそう言うと腕組みしてウンウンと満足そうに2度うなづく。
「私は、リオンの手助けをしたい・・・と、思っています。β版でPKされそうになったところを助けられたのですよ。
理由を挙げるとしたらその恩返しですよ」
そう言うとシンは祭壇の方に目をやる。
ソフィアが1歩前に出る。
「私は・・・命を助けられた・・・そのおかげで私は今、ここに居る!!
彼のおかげで私は居る!!私も彼を助けたい!!・・・そして・・・」
そこまで言うとソフィアはうつむく。
「わしのばんじゃな・・・」
そう言うとクロカスは顔を上げる。
「わしは・・・こちらの世界に閉じ込められたソフィアをあつかましいかもしれんが孫の用に感じていた・・・
それを助けてくれたんじゃ・・・それに、わしはあやつを気に入った・・・
そんな奴をここでみすみす死なせるわけにはいきたくないんじゃ・・・」
クロカスの目には光が輝いているようだ。
「ん・・・それじゃ行きますか!!リオンを助けに!!」
そう言うとシルフィス達は祭壇の方に歩いていった。
[No.1077]
2008/02/26(Tue) 20:02:33
Re: .hack//Side31話&32話
(No.1077への返信 / 15階層) - 黒忍冬
「・・・そう。そのイメージ・・・」
少女はそう言うと俺の腕に触った。『天剣デュランダル』から放たれている光が俺の右手に吸い込まれるように入っていく。
「・・・これで、完成なのか?」
「・・・わからない・・・ここは、いわばイメージの世界。私はここにしか存在できないから・・・実際に使うとどうなるかは・・・」
『天剣デュランダル』は今や光を放つただのレアな武器になっている。
「まぁ、ありがな・・・」
そう言うと少女の方を見る。
少女は髪はボブヘアであごにそろえたプラチナブロンドの髪には赤いメッシュが入っている。
丈長のゆったりしたワンピースに縁飾りのある胸もとまでのケープも真っ赤だ。年は12、13歳ごろに見える。
「ついでにここから出れるとうれしんだけどな・・・」
「それは・・・私じゃ無理・・・やっぱり向こう側から刺激がないと抜け出せないと思う」
そう言うと少女は少しうつむく。
「そうか・・・まぁ、気長にまつさ・・・ありがとな」
「・・・そんなに長くはないのかもしれないわ・・・」
「えっ、どう言うことだ?」
リオンが聞き返すと少女は転送し始めていた。そして、消滅する。転送したとたんにあたりは真っ暗になる。
「・・・結局・・・名前を聞かなかったな・・・」
リオンの声が闇の中でこだました。
第32章 紫島
「よく来たな・・・」
シルフィス達が祭壇に近づくとどこからともなく声がする。
「えっ!?なになに?」
ユキが辺りを見渡す
祭壇の前に1人の男が出現する。
体には鎧をつけている。色は赤、目は青く髪は金、髪は肩に数本かかっているような感じだ。背中には槍が背負われている。
「・・・さて、君達は何の用で来ているのかな?」
「とぼけてもらってはこまりますね・・・リオンを返してもらいましょうか・・・紫島・・・」
シンが刀の鍔を切りながら前に出る。
「リオン・・・あの男か・・・あいつを取り戻しに来たと言うことか・・・」
「そうなるな・・・」
シルフィスも前に出る。
「それにしても・・・すごいメンバーじゃないか!!初心者が1人に放浪AIが2人、
預言者が1人に<聖獣騎士団>の四聖獣が1人・・・アンバランスなパーティじゃないか!!」
シンに紫島と呼ばれた男は不適な笑みを浮かべている。
「<聖獣騎士団>・・・?」
ユキがシンの方に向いて質問する。
「昔・・・<紅衣の騎士団>というグループがあった・・・奴らは厳しい取締りをし、多くのPCを削除していった・・・当然PCの中から不満がもれる。そんな中で<紅衣の騎士団>に対抗しようと作られたのが<聖獣騎士団>です」
「・・・それで?」
ユキが先をうながす。
だが、答えたのはシンではなく紫島だった。
「その目的は理不尽な理由で削除されたPCの復元。そのために優秀なエンジニアが必要だ。それはリーダーと同じだった・・・そこに、1人の男が現れた。」
紫島がそこまで言うと次はシルフィスが話を続けた。
「元、CC社の社員で移植作業にもたづさわった男・・・リオンだ・・・」
「リオンさんってそんなにすごい人だったの!?」
ユキが驚きの声を上げる。
「そうですね・・・結局は数人のPCを復元しただけで終わりましたから・・・」
シンが昔を思い出したように言った。
「当時、俺とシン、ケニーにリーダーのリオンを長とし約20名で構成されていた。
しかし彼は実際に<ザ・ワールド>をアクセスせずにPCの復元をしていた・・・
だが、結成してまもなく・・・<紅衣の騎士団>は長の昴の宣言によって解体した」
「ふ〜ん・・・お父さんにもそんな時期があったんだ・・・」
ユキが感心する。
「さて・・・おしゃべりはここまでで良いだろう・・・」
そう言うと紫島は背中の槍を引き抜く、そして構える。
「だが、俺1人ではいささか不利か・・・援軍を呼ぶか・・・」
そう言うと紫島指を鳴らす。
それと共に祭壇に鉄アレイ型のモンスターが出てくる。
鉄アレイ型のモンスターの膨らんだ両端の部分にリオンとケニーが閉じ込められている。
2人とも膝を折り、膝を抱え込むようにしている。
「リオンさん!!」
「ケニー・・・!!」
ソフィアとシンが同時に声を上げる。
「ふふふ・・・実際にリオンでもソフィアでもつれてくるのは良かったのだよ・・・」 紫島は口元に笑みを浮かべる。
「腕輪がほしいのか・・・?無理だな・・・腕輪は渡すことが出来ない・・・」
シルフィスが確信をついたように言う。
「そんなことは知っている・・・俺がほしかったのは腕輪と接触があった者のログ・・・」
紫島は口元に笑みを浮かべている。
「自分で作るつもりか!!」
シルフィスは顔に驚きの表情を浮かべている。
「ログがあったんだ・・・あとは基礎をもらうだけだ・・・」
「基礎をもらう・・・?」
シルフィスは額に手をやると考え始める。
「8相じゃな・・・」
後ろからクロカスの声がする。
「あたりだ!!放浪AIのじじい・・・今までカイトに倒された8相の残留データから腕輪を復元・・・
実に大変だったよ・・・後ろの奴は先日捕らえてデータを書き換えて俺の僕にした・・・そして、完成したのがこれだ!!」
そう言うと紫島は右手を挙げる。そこにはわずかに光を放つ腕輪がある。
「じゃべりすぎたな・・・俺の悪い癖だ・・・」
そう言うと紫島は右手をソフィアに向ける。
「無論・・・威力もかわらんさ・・・」
そう言うと腕輪が変形する。
「あ・・・」
ソフィアはあとずさる。
「試してみるのも悪くない・・・」
紫島は口元に笑みを浮かべる。
腕輪が発動する。ソフィアをターゲットにデータドレインが発動する。
バシュ
データドレインが目標に命中した音がする。
ソフィアは目をゆっくりと目を開ける。
「・・・なんともない?」
ソフィアの前には大きな影がある。
「・・・クロカスさん・・・!!」
ソフィアはクロカスに歩みよる。
「ぬぅ・・・」
クロカスはうずくまると胸をおさえる。そしてゆっくりとクロカスは斧を掲げると鉄アレイに投げつける。
バシュ
鉄アレイに斧が直撃する。そこまでするとクロカスは力尽き、ソフィアの腕に倒れかける。
「クロカスさん・・・」
「・・・ソフィア・・・」
クロカスは震える手でソフィアの頬に手を伸ばす。
「お主がわし達と共に暮らした時間・・・楽しかったぞ・・・せめて・・・お前だけでも・・・」
そう言うとクロカスは光の粒子に包まれて消えた。
「おじいちゃん!!」
そう言うとソフィアはうずくまると泣き始めた。
「放浪AIが放浪AIをかばうか・・・なんとも惨めだな・・・」
紫島はいまだに口元に笑みを浮かべている。
祭壇で宙に浮いている鉄アレイは消滅していく。その後にドサッと言う音ともに2人が地面に倒れる。
「効果は・・・少し薄いな・・・効果が現れるまでに時間がかかるか・・・」
紫島は口元に笑みを浮かべる。
「さて・・・放浪AIの後始末でもするか・・・」
そう言うと紫島はゆっくりとソフィアに向かって歩いてく。
その前にシンが紫島の前に進み出る。
「これ以上はやらせませんよ・・・」
そう言うとシンは刀を引き抜く。
「じゃまだよ・・・あんたは・・・いつもいつも・・・」
そう言うと紫島は横なぎに槍を振るう。だが、そこにはシンの姿はない。
「これまでの時間・・・強くなったのはあなただけではないですよ!!」
シンは上から真っ二つにしようと上から切りかかる。紫島は右手を上に掲げる。
「よけろ!!」
シルフィスが声を上げる。
だが、普通なら間に合わない。
「くっ・・・!!」
苦し紛れにシンはデータドレインを刀で受け止める。それと、共に弾き飛ばされる。
「さすがに、良い反射神経してるな・・・だが、その刀は使い物にならんな」
「・・・お父さん!!」
ユキが心配そうにシンの元に駆け寄る。
シンの手に握られているのは刀ではなく今やグニャリンだ。刀だった物は今やピョピョンとうごめいている。
「だから、じゃまだと言ったんだよ・・・」
そう言うと紫島は右手をシンに向ける。
「これで終わりだ!!」
そう言うと腕輪を発動する。
「させるか!!」
そう叫ぶとシルフィスが右手から紫島に切りかかる。
ギン
だが、短く持った槍に阻まれてダメージは与えられない。
「あんたも邪魔だな・・・」
そう言うと発動中の右腕をシルフィスに向ける。
「くっ!!」
シルフィスは左手を紫島に向ける。すると、呪文が発動する。
多くの雷球が紫島に収束する。
紫島は剣を槍ではじき、距離を取る。雷球は誰も居ない空間で収束し、消える。
「メライクルズ・・・モーションが無かったところから魔法剣士か・・・」
「ご明察!!」
そう言うとシルフィスは一気に間合いを詰める。
「不用意に近づき過ぎだ!!」
そう言うと紫島は腕輪を発動する。
「くっ!!」
急激にブレーキを掛けるシルフィス。
バスッ
だが、見事に武器がヒットした音が聞こえる。
シルフィスの胸に槍が刺さっている。
「データドレインに気を使いすぎだ・・・」
そう言うと槍を一気に引き抜く。
バシュ・・・
シルフィスは膝を折る。
「おわりだな・・・」
そう言うと紫島は腕輪を発動する。
「ぐ・・・」
シルフィスは傷口を押さえる。アイテムを使おうとするが間に合わない。腕輪のグラフィックはシルフィスに伸びていく。
ガン
だが、次に聞こえたのはシルフィスの断末魔の叫びではなくデータドレインがはじかれた音だ。
「なに!?」
紫島は後ろを振り向く。そこには頭を垂れたまま立ちあがろうとして中腰になっているリオン達の姿があった。
「夢を見ていた気がする・・・暗闇でリオンと話した」
「・・・ああ」
立ちあがりながらケニーの言葉にリオンは答える。
「その中で少女と話した・・・」
「そのとおりだ」
2人ともすでにまっすぐ立っている。
「その少女からスキルの使い方を教えてもらった・・・」
「奇遇だな・・・俺も同じ夢を見た!!」
2人同時に頭を上げた。
[No.1078]
2008/02/26(Tue) 20:03:26
Re: .hack//Side最終章
(No.1078への返信 / 16階層) - 黒忍冬
最終章 決戦
右手から繰り出した剣は槍で止められる。紫島は右手の腕輪を発動する。だが、はじかれる。
「くっ・・・どういうことだ・・・?」
紫島は驚いた様子だ。
「いそげ、ケニー!!」
「わかってる!!」
そう言うとケニーはシルフィスの元に向かう。
「『カラドボルグ』を!!」
「あ・・・ああ」
ケニーは何やら急いでるようだ。シルフィスが差し出した『カラドボルグ』をひったくるように取ると剣を額に当てて目をつぶる。
「よし、いける。シン!!嬢ちゃん!!えと・・シルフィス!!俺の周りに集まってくれ!!」
ケニーは急いで名前を呼ぶ。シルフィスの名前は『カラドボルグ』を受け取ったときに確認したようだ。
ケニーの周りに3人が集まる。だが、ソフィアは入ろうとしない。
「あんたは入れない理由はわかるよな?」
そう言うとケニーはまっすぐソフィアを見る。
少しの間黙っていた・・・ソフィアはコクンとうなづく。
「なんでよ!!ソフィアも行こう!!一緒に行こう!!」
「わがまま言ってはいけませんよ・・・」
シンがユキの頭の上に手を乗せる。
「だって・・・!!」
ユキが更に何かを言おうとする。
「あなたがそこまで急ぐとは・・・なにか、あるんですね?」
シンはケニーのほうを見る。
「・・・ああ」
それだけ言うとケニーは剣を引き抜く。
「いいか!!ルート・タウンについたらすぐにログアウトしろ!!」
そう言うと剣を地面に突き刺す。
そこに、あるはずのないカオスゲートが現れると3人は転送消滅する。
ドガッ
紫島は弾き飛ばされて壁に大きな穴を開ける。
「リオン・・・」
ソフィアがリオンに駆け寄る。
「心配かけたな・・・」
そう言うとリオンはソフィアに向き直る。
「うん。とっても心配した・・・」
「ははは・・・」
リオンは苦笑いを浮かべる。
「くっ・・・俺の前で立ち話とは・・・余裕だな!!」
そう言うと紫島は腕輪を発動する。グラフィックがリオンに向かって伸びてくる。
ガン
リオンは紫島を見ずに剣のみでデータドレインをはじく。それと入れ替わりにケニーが紫島に向かって走って行く。
「ちっ、またか!!」
そう言うと紫島は槍を持ってケニーに突進を始めた。
「こっちは任せろ!!さっさと話を済ませろ!!」
「ああ・・・悪いな・・」
リオンがそう答えると
「謝る時間があるなら一言でも多く彼女としゃべる!!」
そう言うとケニーは紫島の剣を受け止める。
「あの・・・私!!」
ソフィアがそこまで言うと体が光の粒子に包まれていく。
「あ・・・」
いつのまにかケニーも光に包まれつつある。
「そうだな・・・大体気持ちはわかるよ・・・この戦いがさ・・・全部終わったらみんなでクリスマスパーティ、やろうな!!」
リオンはそう言うとソフィアの肩に左手を置く。
「うん・・・」
ソフィアはリオンの手に頬を当てて目をつぶる。
「さて・・・時間だ・・・アウラが俺等を呼んでいる・・・」
「ああ・・・」
そう言うとリオンは紫島の方を向く。
ケニーは紫島の剣をとめながら光の粒子に包まれいく。
「がんばれよ・・・」
そう言うと紫島とケニーの戦いに割り込む。そのとたんケニーの体が粒子になって消えていく。
「お前もがんばれよ・・・」
消える瞬間・・・ケニーは手を握ると親指を立てる。そして粒子となって消えた。
「約束だよ!!クリスマスパーティ!!」
ソフィアはそう言うと消えていった。
「ああ・・・約束だ・・・」
リオンが寂しそうに呟く。
「まったく・・・わからんな・・・データドレインがはじかれたと思ったらいきなり青春ドラマみたいなことを演じ・・・
そして、唐突に消えるとはな・・・」
リオンよりも少し離れたところに紫島は目の前のことが信じられないようだ。額に手を当てている。
「お前には関係ない・・・」
「そんなこと言わずに教えてほしいですね・・・」
そう言うと紫島は槍を背中に背負う。
「・・・いいだろう。俺とケニーのはプロトタイプの腕輪、お前の腕輪は8相のクズデータの集まり、
どれもアウラ自身が作った完璧な腕輪ではない・・・俺の腕輪は主な能力がデータドレインに関係する物の無効化、
ケニーのはゲートハッキグと小型のカオスゲートお前のはデータドレインのクズデータの集まり・・・
能力はデータドレインの大雑把な物・・・」
「クズデータの集まりとはひどいな・・・」
紫島は片方の眉毛を上げて腕を組む。
「本当のことだ・・・そして、腕輪が使えなくなった理由は・・・」
「・・・理由は?」
紫島が先をせかす。
「表裏一体のクビアが倒されたこと・・・いや、今やあいつのHPは無限だ。カイトが腕輪を破壊した。
それと連動して俺等の腕輪が能力を失っていく。
無論、本体であるクビアとカイトには激痛が走っただろうが・・・ゆえに俺等の腕輪はすでに能力は失われている・・・よかったな。
模造品だから激痛が走らなくて・・・」
紫島にここまで話すと紫島は槍を取り出す。
「・・・なるほど、良く知っていたな。それも、夢の中の少女から教えてもらったことか?」
「・・・そうだ」
リオンは紫島の質問に答える。
「・・・まったく、あなたはお人よしだと言うか・・・昔からそうだ・・・何のためにここまで話すのか・・・」
「・・・お人よしついでにもうひとつ教えてやるさ・・・」
そこまで言うとリオンは口元に笑みを浮かべる。
「・・・時間稼ぎさ!!」
そう言うとダンジョンのいたる所にデータドレインのグラフィックが飛び出てくる。
「な、なんだ!!」
紫島は驚いた様子で辺りを見まわす。
「・・・ここで、終わりにしよう・・・この<ザ・ワールド>は元に戻る!!お前が望むことは実現しない!!」
「私が望むこと・・・?くっくっくっく・・・たしかに俺の腕輪の力による<聖獣騎士団>の再結成と
<ザ・ワールド>の占領は無理だな・・・」
紫島は大きく1歩に出ると間合いをつめようと一気にリオンに向かって突進する。
「だが!!ここで、お前を倒せば俺の名声を上げる事が出来る!!
そうすれば<聖獣騎士団>の再結成は時間をかければ可能!!あとは新たな事件が起きるまで待てば良いこと!!」
紫島は叫ぶ。
「ここで、すべての因果の鎖は断ち切る!!もう、<聖獣騎士団>は必要ない!!」
そう言うとリオンも一気に駆け出す。
互いにい一気に間合いをつめる。互いに武器の射程距離に入ったところ、2人とも後ろに飛びずさる。
それと同時にそのまま行けば2人が刃を交えただろう場所にデータドレインのグラフィックが数本、地面に突き刺さる。
「この、ドレインハートは!!」
「俺達も標的にしている!?」
互いに叫ぶ。
そのまま円を書くように互いに横に走る。彼等を追ってドレインハート追ってくる。
一気に両者はジャンプすると空中で半回転すると刃を振るう。刃がぶつかり合い、火花が散る。
空中で刃を数回交えた後、互いに刃をはじき幅を取る。彼等を追ってきたドレインハートが空中でクロスする。
リオンは空中で回転して着地するとそのまま横に飛ぶ。すぐにリオンがいた場所にドレインハートが突き刺さる。
紫島は着地すると一気にリオンに向かって間合いを詰める。紫島がいた場所にも数本ドレインハートが突き刺さる。
紫島はジグザグに走りながらリオンに向かって間合いを詰める。曲がったいたる場所にドレインハートが突き刺さっている。
「もらった!!」
紫島はジャンプすると一気に上からリオンに切りかかる。
「あまい!!」
リオンは刃を剣で受け止めるとそのまま巴投げのように紫島を投げ飛ばす。そのままリオンは横に転がる。
その後にリオンが居た場所に数本のドレインハートが突き刺さる。
リオンは立ちあがると、そのまま空中で姿勢を整えようとしている紫島との間合いを詰める。
「くらえ!!」
そのままリオンは横なぎに剣を放つ。それを空中で紫島は受け止める。だが、空中ではふんばれなくそのまま吹っ飛ぶ。
「くっ!!」
そのまま紫島は祭壇の奥の壁にめり込む。
リオンは紫島に向かって間合いをつめようとするが、ダンジョンの中をドレインハートが突き刺さるのでジグザグに走る。
走り抜けると周りでドレインハートが数本地面に突き刺せる。そのまま一気に紫島に向かって走る。
だが、5歩前ぐらい前にドレインハートが下降してこちらに向かってくる。
「ちっ!!」
リオンは舌打ちするとジャンプする。足の下でドレインハートが通過していく。
「これで終わりだ!!」
そう叫ぶとリオンは空中で半回転し紫島に剣を突き刺す。
ブシュ
剣が紫島にヒットする。
「ぐは!!」
紫島は口から血を吐こうとする。だが、血は出てこない。
それを好機と見たか数本のドレインハートが紫島に突き刺さる。
「ぐはぁぁぁ!!・・・まさか、俺がこんなところで俺が・・・」
そう言うと紫島は消滅する。
「・・・終わったな・・・」
リオンは剣を一振りすると鞘に収める。
空中でドレインハートが数本収束したと思うとリオンに突進してくる。
「・・・終わったんだ・・・後はカイト達に任せても大丈夫だな・・・」
そう呟くとリオンは目をつぶると体を楽にしたようにドレインハートを受け入れようとする。
パシュウ・・・
だが、リオンの気持ちとは裏腹にドレインハートはリオンの額、数センチの所で消滅する。
「・・・ん?」
リオンはゆっくりと目を開ける。ダンジョンは正常な<ザ・ワールド>に戻っている。
「・・・」
リオンはそこまで確認した後、頭をポリポリとかくと転送消滅した。
エピローグ
「お〜、遅かったな!!」
そう言うとケニーはドアを開けてリオンを向かい入れる。
「まあ・・・な。CC社に頼まれた仕事をメールで送ってたら時間がかかって・・・」
「あっ!!リオンさん!!」
中からユキの声がする。
「きましたか?」
シンの声もする。
「まぁ、中に入れよ・・・話はそれからすれば・・・」
ドガッ
何かがぶつかる音がする。ケニーの首の上に何かが乗っている。
「ねぇ、ケニー。ジュースないの?ジュース!!・・・私は未成年者なんだから『尊酒シーマ』は飲めないんだよ!!」
ケニーの上にはユキがのっかて、頭を叩いている。
「ゲームなんだから飲んでも大丈夫だろうが!!」
そう言うとケニーはユキを部屋の中に押し入れる。
「さっさと入ったほうが良いぞ・・・乱闘がはじま・・・」
ゴスッ
ケニーが大きく仰け反る。後ろではユキがドロップキックをいれた後だろう、後ろで倒れている。
「お・ま・え・なぁ〜・・・」
ケニーが剣を抜く。
「あ〜、ケニーが剣を抜いたよ!!逃げろ〜」
ユキが部屋の中を走って行く。
「・・・とりあえず、中に入れよ・・・何か、起こる前に・・・」
「あ、ああ・・・」
リオンは口元に微笑を浮かべている。もちろんケニーには見られないようにだ。
「どうも、クリスマスおめでとうございます・・・」
そう言うとシンはリオンに『尊酒シーマ』を渡す。
「お、どうも・・・」
そう言うとリオンは『尊酒シーマ』を受け取る。
そのまま、近くのソファーに腰掛ける。
「そういえば・・・ソフィアとシルフィスは?あと、アルビレオは?」
リオンが辺りを見まわしながら言うと
「ソフィアさんからは連絡がありませんね。シルフィスさんはCC社にメスを入れるそうでその準備に忙しいそうです。
アルビレオはメンテや記者会見に出るそうです」
シンがそう答えるとリオンは『尊酒シーマ』を口元に運ぶ。
「ねぇ、リオンさん〜なんかジュース持ってない?」
ユキが標的をリオンに選んできた。
「あ、ああ・・・ジュースか・・・これしかないが・・・ほい」
そう言うとリオンはユキにアイテムを渡した。
「あ!!なになに♪」
ユキは楽しそうにアイテム欄をみる。
「これって『気付けソーダ』じゃん!!それと、これ何?『危険な缶コーヒー』って、飲むの怖いじゃん!!」
「まぁ、確かに一理あるな」
「・・・あるな」
シンとケニー納得したよう賛同の声を上げる。
「まぁ、な・・・予想してたけどな・・」
そう言うとリオンは立ちあがる。
「ん、どこか行くのか?来たばかりなのに・・・」
ケニーがどうしたんだ?と言う感じでリオンの顔をケニーが見る。
「ん、まあな・・・少し外に出て、風にあたってくるよ・・」
「あ、ああ。プレイヤーキラーに出くわすなよ。クリスマスにPKされたら洒落にならないからな・・・」
ケニーはそう言うと口に『尊酒シーマ』を含む。
「すぐに戻ってくるからな・・・」
そう言うとリオンはホームから出て行った。
ドアを閉める瞬間、中から声が聞こえる。
「あっ、そうだ!!アイテム屋で・・・ぐむ」
中からユキの声が聞こえるが途中で途切れる。どうやら、シンかケニーが気を利かしてくれたようだ。
外に出ると冷たい風が心地よく頬にあたる。
目の前にはソフィアが立っている。
「ははは・・・やぁ」
ソフィアは少し照れたように片手を挙げて挨拶した。
「・・・よぉ」
そう言うとリオンはソフィアの前まで歩を進める。
「・・・橋まで歩くか?」
「うん♪」
ソフィアはうれしそうにうなづくと橋のほうの歩いていく。
「ん、どうしたの?はやく行こう♪」
そう言うとソフィアはリオンの手を握ると引っ張って行く。
「いてて・・・わ〜たって引っ張るなよ」
リオンは手を引っ張られながらソフィアと橋の方に向かって行く。
橋の上につくとそこには数10人のPCが居るだけだった。
リオンとソフィアは橋の中央の手すりに腕を乗せるとクリスマス限定アイテムの
『クリスマスおめでとう』のジュースが入ったコップを口に運んだ。
「わたしね・・・今日、牧野病院から退院しましたぁ〜♪」
そう言うとソフィアは横に居るリオンに笑いかけた。
「・・・牧野病院・・・?じゃあそんなに離れてるってわけじゃないんだな」
リオンは少し考えた後、思い出したように言う。
「とにかく、退院おめでとう」
そう言うとリオンはソフィアのコップに自分のコップをカンと当てる。
「うん、ありがとう♪」
ソフィアはまたにっこり笑う。
そよ風がソフィアの髪を揺らす。
いきなり、PCの中から声が上がる。
「わぁ〜、見て見て♪きれいだよ〜」
ソフィアが声を上げる。
「ん?」
そう言うと橋から河を眺めて行き、夜空を見る。
そこには黄色の光が上がると花形の花火が上がる。
「きれいだね〜♪」
ソフィアは感動したように花火に見入っている。
「あ〜、こんなとこに居た!!」
後ろからユキの声がする。
「あ、ユキ!!」
ソフィアはユキに歩み寄ると2人で話し込み始めた。
「え〜ソフィアって20歳いってるの!!」
「そう、意識が戻ったらびっくりしちゃったぁ。意識不明中に誕生日迎えてるんだもん♪」
ソフィアとユキは2人で談笑しあっている。
リオンはソフィア達から花火に目を戻す。そこにはゲームならではの整った形の花火が打ち上げられている。
ここには、正常な<ザ・ワールド>がある。放浪AIになるPCも居ない。
ここでみんなで楽しく<ザ・ワールド>がプレイできる日々が再びやってくる。
・・・これからも・・・ずっと・・・
完
[No.1079]
2008/02/26(Tue) 20:04:39
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