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   .hack//Legend of Twilight moon プロローグ - 黒忍冬 - 2008/02/26(Tue) 20:21:18 [No.1095]
Re: .hack//Legend of Twilight moon 序章 - 黒忍冬 - 2008/02/26(Tue) 20:22:09 [No.1096]



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.hack//Legend of Twilight moon プロローグ (親記事) - 黒忍冬

キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン・・・・授業終了のベルが鳴る。
それと同時にキャンパスのあらゆる場所からざわめきが聞こえ始めた。
テストが終わったという事もあるだろう。いつもよりざわめきが大きく感じる。
俺は筆記用具をバッグにしまい、テスト時間確認の為に置いていた腕時計を付ける。
携帯をポケットから取り出しマナーモードを解除する。
・・・・メール着信件数1・・・・という内容がディスプレイに表示されている。
着信時間は11時36分と表示されていた。
「・・・テスト中にメールしたのか。終わってからでもいいものを。」
そんな事を思いながら慣れた手付きでメール受信BOXを開き、着信のある
“グループフォルダ名:大学”を開きチェックする。
**テスト終了次第噴水前に集合!!**
という短くかつ端的な内容が書かれたメールを確認する。
「ふぅ・・・前に書いていた無駄に長い文章よりよっぽどマシになったな。」
俺は心の中でそんな事を思いながら返信ボタンを押し、テキパキと文章を書く。
**了解**
・・・我ながら見事な文才だとつくづく思う。
送信したことを確認するとバッグを持ち、先程テストのあったPCルームを出ようとした。
「御陵(みささぎ)君!!」
俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
名前を呼ばれた方向を見ると、俺と同じ学科を専攻している女性が俺の方に駆け寄ってくる。
「あの・・・これ忘れてましたよ。」
寄ってきた女性は手を差し出す。
彼女の手に握られているものには・・・
“情報システム科:学籍番号###### 御陵 葉月(みささぎ はづき)”
と書かれた学生証があった。
「悪い、ありがとう。」
と彼女に言い、学生証を受け取るとそのままPCルームを出ようとした。
すると、さっきと同じ声色でさらに呼び止められた。
「あの・・今日のプログラムのテストどうでした?あたし分からなかったところがあったんですけど、
この後お時間あれば昼食一緒に食べながら教えてもらえませんか?」
「・・・なんで俺なの?」
俺は言葉を返す。
「いえ、御陵君って成績トップクラスだから、それに・・・。」
その後の言葉は聞き取れないくらい小さかった。
顔色が多少赤みがかって見えるのは気のせいだろう。
「悪い、先約あるから、学生証ありがとう。」
そう言いPCルームを後にする。
 建物の外に出ると、夏の日差しが体に降り注ぐ。
ムっとした空気が冷房で冷やされた体を急速に温めていくのを感じる。
「さてと、噴水前だったな。・・・行くか。」
そんな事を思いながらカラカラとした空気に包まれたキャンパスを歩き出した。
自販機で缶ジュースを買い飲んでいる人、教科書を団扇代わりにしている人、日陰から日陰に移動している人、
それらの人込みの中を歩きながら約束していた噴水が見えてきた。
「葉月!! こっちこっち!!」
この暑い中、テンションが明らかに周りの人間より高い声が俺の名前を呼ぶのが聞こえた。
「待たしたな。」
俺は名前を呼んだテンションの高い人物の前に行った。
名前は遠藤 亮太(えんどう りょうた)。俺と同じ情報システム専攻の2年生。
情報系統は人気が強く、学科で募集している人数も多いため、授業を2クラスに分けている。
その為、さっき受けていたテストも亮太とは別の教室で受けていた。
「待った待った!!ってのは嘘だけどな。俺もさっき来たばかりだし。」
そう言いながら向こうから近づいてくる影が2つ・・・2つ?
「やっほ〜♪♪ やっと着たわね。」
「穂波・・・なんでお前が居るんだ??」
亮太に続いて来たのは、高校が一緒でクラスも一緒だった、真坂 穂波(まさか ほなみ)
俺と亮太とは違い、経済学を専攻している。
「・・・居ちゃいけないの??」
「いや、誰も拒否はしてないだろ。その先走り的考え直した方がいいと思うが・・・。」
「ぶ〜〜・・・亮太〜〜葉月が苛める〜。」
「はいはい。そこまでにしとけって。さてとっと・・・そろそろ本題に入るか。」
亮太は穂波に「よしよし」と慰める仕草をしながらそう言った。
「本題?その為に俺を呼んだって事だな。で、内容は?」
俺は溜め息混じりに亮太と穂波を見ながら答えた。
「ふふん♪君達分かってると思うけど、今日から夏休みだ〜!!という訳で、これから遊びに行くぞ〜!!」
「・・・どういう訳なんだか。」
と俺の心の声と穂波の声が見事にハモった。
「ツッコミ禁止!!とにかく遊びに行くことは決定事項だから、拒否権を発動させることは、裁判官亮太が許さん!!」
「・・・で、具体的な計画プランは?」
俺は溜め息混じりに聞いた。
「・・・・・ははははは・・・考えとらん!!行き当たりばったりが人生ってもんだよ。」
そう言いながら遠い目をしている。
「ふ〜〜・・・そんな事だと思ったわ。で、遊ぶのはOKだけど、ほんとに何する??」
と呆れた苦笑をしながら穂波が俺と亮太の顔を交互に見る。
「そういえば、葉月はバイト大丈夫か??今日は夜までフルコースだけど・・・たぶんな。」
「バイトって確か・・・ホストだったよね?・・・まだやってたんだ。」
そう言いながら穂波は少し暗い顔をして俺を覗き込むような仕草をした。
「バイトやめたよ。時々ヘルプ頼まれるけど、あんまりやってない。一応現状では金には困ってないしな。」
「やめたんだ〜♪♪そうそう!!あんなバイトしない方がいいって♪♪」
パっと明るくなった顔をしながら穂波はウンウンと頷いている。
「学費、生活費は親の遺産が結構残ってるし、バイトしてた金も使い道無くて貯蓄したのがかなりあるからな。」
俺の両親は、俺が小さい頃に交通事故で死んでしまった。
それからは、1人で住んでいても仕方の無かった家を引き払い、叔父と叔母が快く俺を引き取ってくれた。
高校に入って俺は叔父と叔母に迷惑が掛からないよう1人暮らしを始めた。
生活費と学費は親の残してくれた遺産がそのままの状態であったので十分に間に合った。
高校でのバイトで貯めたお金と、大学に入って貯めた貯金は使い道も無くかなりの額になっている。
亮太と穂波はその事を知っているので、俺がホストのスカウトを受け、それをやり始めた事に異を唱えなかった。
最近貯金残高を確認して余裕が持てたって事が分かり俺はバイトをやめることにした。
「で、どうする〜??此処で時間潰すの勿体ないよ。」
「う〜ん・・・何も考えてなかった事がここで裏目にでるとは。」
「何も無いなら、俺は帰る。」
俺はそう言うと歩き始める仕草をした。
「そうだ!!亮太の家に行かない??あたし教えて欲しいことあるんだよね〜♪♪」
穂波はそう言いながら亮太に顔を向ける。
「教えて欲しいこと??」
「じゃあ俺は関係無いか。帰るな。」
「もう!!葉月も一緒に来るの!!」
そう言うと穂波は帰ろうとした俺の手首を握り思いっきりひっぱる。
「お前は亮太に用事あるんだろ。俺は無関係、だから帰る。」
「そうやって、すぐに引き篭もる!!葉月の悪い癖だよ。」
「悪かったな、悪い癖で。」
「はいはい♪そこまでにしとこうぜ。で、聞きたいことって、The Worldの事??」
亮太は俺と穂波の間に入り込み穂波に言った。
「うん♪♪欲しいアイテムあるんだけど、どこのエリアにあるのか検討が付かないんだよ〜。」
「・・・ゲームか。なおさら俺には無関係だな。」
俺は生まれてTVゲーム等の類はやったことがない。精々コンピュータ相手のチェスくらいだ。
「だ〜か〜ら〜葉月もThe Worldしようよ♪♪全国で何千万人もやってるんだよ〜♪♪」
「・・・で??俺がやる理由にはなってないと思うが。」
「まあまあ。OKだよ。葉月も来いって。付き合いだと割り切ってさ。」
亮太はそう言うと笑いながら俺の肩をポンポンっと叩いた。
「ふぅ・・・分かった。付き合うよ。お前には負ける。」
「きっまり〜♪♪じゃあ、とりあえずどこかで昼食食べて亮太の家にレッツゴー♪♪」
そう言うと穂波は歩き出した。亮太は俺に微笑し穂波の後に続いた。
「ふぅ・・・行くか。」
俺は煙草をポケットから取り出し、火を付け紫煙を肺から吐き出し歩き出した。


[No.1095] 2008/02/26(Tue) 20:21:18
Re: .hack//Legend of Twilight moon 序章 (No.1095への返信 / 1階層) - 黒忍冬

「お邪魔しま〜す♪♪」
穂波の声が1DKの亮太のマンションの玄関に響き渡る。
亮太は大学に通う為1人暮らしをしている。この1DKが亮太の自慢の王国だと言える。
俺達はあの後適当な店を見つけ、これからの夏休みについて語りながら昼食を取った。
「おうよ!!気兼ねせずに入ってくれ!」
俺と穂波は靴を脱ぎ、亮太の後ろに付きながらダイニングを過ぎ部屋に入った。
「おお〜!!意外に綺麗に整頓されてるね♪ちょっとビックリ♪♪」
確かに、本は本棚に綺麗に整頓され、壁掛けCDラックに様々なアーティストのアルバムが納められている。
「ちょっと待ってな。今飲み物用意するから。葉月、悪いけど俺のPC起動しといてくれ。」
そう言うと亮太はダイニングに姿を消した。
俺はPCの前に立ち、Powerと書かれている文字の下にあるボタンを押した。
プチっとディスプレイが起動する音が聞こえ、続いてHDDの処理の音とファンが回る音がごく静かに聞こえてきた。
HDDがPCを立ち上げる為小さくガリガリっと音を立て始めた。
「これは?」
俺はPCの横に置いてあったゴーグルを手に取り自問自答した。それを聞いた穂波は俺に近づいてきた。
「・・・葉月、これが何か本当に知らないの??」
「ああ。・・・知らないと悪い物か?」
俺がそう聞くと穂波はおもむろに俺の手からそのゴーグルを取り、自分の顔の横にそれを持っていって答えた。
「これはね、FMD(フェイスマウントディスプレイ)って言って、これを装着してThe
Worldってゲームをするの♪」
そう言うと穂波はこれはあれはと説明し始めた。
「2人揃ってそんな所でなにやってるんだ??」
お盆にアイスティーの入ったグラスを乗せた亮太がテーブルにそれを置き俺と穂波の所に駆け寄ってきた。
「今、葉月にFMDの説明してたの♪気になったらしいから♪」
「そっか!!葉月もついにThe Worldに目覚めたか。良かった良かった♪」
「ふぅ・・・どういう経路を辿ればその答えに行き着くのか。」
「キッカケってのは、ほんの些細なことから始まることが多いんだぜ。葉月がFMDに興味を持ったのもその事に当てはまる!!」
「・・・無理やりだな。まあ、間違っていると断定出来る要素が無いから否定は出来ないがな。」
こういう所で俺は亮太に負ける。負けるというより押し切られる感じが多いが。
「実際にやってるところ見せてみたら〜♪♪考え変わるかもよ♪♪」
「そうだな。穂波の疑問にも答えないといけないし。じゃあ、やるか!!」
「そのゴーグル着けないと説明出来ないんじゃないのか?」
俺はゴーグルを着けている亮太に聞いた。
「これは、より臨場感を出す為の物だよ。ディスプレイにも一応表示されるから、穂波にはそっちを見てもらうって訳。」
そう言うと亮太は慣れた手つきでゲームを起動し、コントローラを手に持った。
「それじゃあ、行ってみるか!!」
ディスプレイに画面が現れた。亮太は慣れた手つきで作業を行っている。そして・・・・・・
次に画面に表示された映像に、俺は正直驚いた。
**η(イータ)サーバ 貿易の都エル・メキア**
ディスプレイに表示された画像には、港があり、海に通じる川があり、その川を中心に左右に建物が建っている。
川沿いには緑を育んだ木々が並木のごとく植えられている。
そして、その町並みには多くのキャラが存在していることに気が付いた。
会話をしているPC(プレイヤーキャラクタ)、ベンチに座っているPC、買い物をしているPCなど行っている行為は実に様々だった。
その画面の中心に刀を片手に持つ、黒髪のショートカットで鎧は深い青色、肌は日本人と酷似している黄白色の青年が立っている。
「これが俺のPC♪。名前はリューカス。クラスはソードマスター。ここまで育てるのに結構苦労したよ。」
亮太は手短にPCの説明を終わらすと、ウィンドウを開きアイテムという欄の中の道具の欄を選択した。
「アイテムは十分だな。で、どのアイテム取りたいの??」
そう言うとFMDのサイドに付いているボタンを押した。すると目の前にあったFMDのディスプレイ画面が左右に開き、
亮太の目が現れた。その作業を行いながら亮太は穂波の方に振り向いた。
「えっとね〜・・・水精霊(みなしょうれい)の勾玉が欲しいの〜♪♪あたしの武器って水属性の攻撃方法無いから。」
「なるほど。確かにあれを装飾品で装備すれば、武器に水属性の効果が付くからな。でも、あれをソロで取るとなると結構きついぜ。」
「う〜ん・・・そこなんだよね(汗)特にあたしのクラスって、相当強くないとキツイから考えもの。」
「穂波のPCクラスって確かアーチャーだったよな。確かにソロプレイはきついかも。弓系は基本的に支援がメインだから。」
「お話の様子から察すると、相当Lv高いエリアっぽいね・・・亮太〜〜。」
穂波はそう言うと、捨てられそうな子犬の様な瞳で亮太を見つめる。
「分かったよ。そんなに欲しいんだったら俺の持ってるのをやるよ。」
「ほんとに!!さっすが亮太♪♪話が分かる〜♪♪ありがとね。」
「じゃあ、今日の夜に入ってきて。集合場所は・・・此処でいいよな??」
「OK〜♪♪ログインしたらメル1するね♪♪」
俺はその2人の会話をまったく理解出来ないまま椅子に座りアイスティーを飲んだ。
「・・・どうやら俺はお前らの話に付いていけそうに無いな。帰るか。」
そう言って帰り支度をしている俺の腕をFMDを外した亮太が掴みひっぱる。
「此処からが本番だぜ!!ほらほら、これを被ってみろって!!」
そう言い俺をPCの前の椅子に座らせ、FMDを俺に被せてきた。
ふぅっと俺は溜め息を出しながら亮太のされるがままにFMDを装着した。
そして・・・目を開けた瞬間、俺は俺らしくも無く膠着してしまった。
「どうだ。今の葉月の心を読んでやるよ。・・・ディスプレイで見たときよりずっと臨場感が溢れている。これ、本当にゲームか??」
俺は亮太の言葉を否定しなかった。まさに亮太の言った事に近い事を思っていたからだ。
視界に広がる町並み、内蔵ヘッドホンから聞こえる人々の声と水のせせらぎの音。現実とたいして変わらない世界が広がっている。
ぼーっとしている俺に穂波が声を掛けてきた。
「どう??すごいでしょ!!リアル感もすっごくあるでしょ!!これがThe
Worldなんだよ♪♪考え方変わってくれた??」
俺はFMDを外し立ち上がり、亮太と穂波の方へ顔を向けた。
「・・・想像以上だ。まさか此処までのリアル感をゲームで表せるとはな。正直驚いている。」
その俺の言葉を聞くなり2人の顔がぱぁーっと明るくなりガッツポーズまで取っている。
「よし!!そうと決まれば話は早い。これからのプランは、町に出てその後に葉月の家に直行だ!!」
「賛成〜♪♪ささ、早く用意して♪♪レッツゴー!!」
そう言うと亮太は起動していたPCの電源を切り外出する用意を始めだした。穂波もいつでも出れる用意を整えている。
「・・・おい。出かけるって・・・まさか。」
「そのま・さ・かだよ♪♪」
「ふぅ・・・確かにすごいとは言ったが、誰もやるとは言ってない。さっきも言ったが、その先走った・・・。」
俺が言葉を言い終わる前に亮太が俺の横につき、追い込みの一言を発した。
「俺もさっき言ったよな。キッカケってのは些細なことだって。葉月もたまにはこういう事をやってみるのもいいんじゃないか♪♪」
此処まで来ると、この2人を止めることは至難の技ということは知っている。
「ふぅ・・・分かったよ。そこまで言うんだったらやってみてもいいか。」
2人の顔がさらに明るくなったのがよく見なくても確認できた。
「それじゃあ、レッツゴー!!」
2人の声が見事なハーモニーを奏で部屋に響き渡った。


[No.1096] 2008/02/26(Tue) 20:22:09
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