[ リストに戻る ]
No.1316に関するツリー

   今回限りの帰還 - 夕叢ヒビキ - 2009/12/28(Mon) 23:16:58 [No.1316]
.hack//With 暁の剣神話第3部 40節 - 夕叢ヒビキ - 2009/12/28(Mon) 23:18:37 [No.1317]
.hack//With 暁の剣神話第3部 44節 - 夕叢ヒビキ - 2009/12/28(Mon) 23:21:32 [No.1321]
Re: .hack//With 暁の剣神話第3部 43節 - 夕叢ヒビキ - 2009/12/28(Mon) 23:20:28 [No.1320]
.hack//With 暁の剣神話第3部 42節 - 夕叢ヒビキ - 2009/12/28(Mon) 23:19:54 [No.1319]
.hack//With 暁の剣神話第3部 41節 - 夕叢ヒビキ - 2009/12/28(Mon) 23:19:11 [No.1318]



並べ替え: [ ツリー順に表示 | 投稿順に表示 ]
今回限りの帰還 (親記事) - 夕叢ヒビキ

覚えている人はお久しぶり。時間に余裕が出来たので恥ずかしながら帰ってきました。
とりあえず続きを載せます。


[No.1316] 2009/12/28(Mon) 23:16:58
.hack//With 暁の剣神話第3部 40節 (No.1316への返信 / 1階層) - 夕叢ヒビキ

第40節

「さぁ、血の宴の時よ!喰らい尽くせ、ゲイヴォルグ!!」
二叉の槍の穂先を通じて邪眼から荒廃の呪いが“眼を合わせる事無く”吐き出され、周囲を侵食していく。邪眼と直結したゲイヴォルグはまさに“災いの一撃”を放つ『ロンギヌス』。
呪いによるデータ破壊は遅効性である事と、このフロアは通常のものよりも広大であるからよかったものの、そうでなければとっくにこの場は破壊し尽くされていた。
「もう無茶苦茶じゃない!!」
そんなプリムの悲鳴もゲイヴォルグの一撃がにべも無くかき消す。
「下がれ! 巻き込まれるぞ!」
バロールとロンギヌスが睥睨し合い、再び紅と青の破壊光閃が交わる。すると今度はゲイヴォルグが弾かれる。使いこなせていなくとも、破壊力では魔眼が邪眼を上回っている。
ルーガスは続けて、次の標的をターゲットする。狙いは右腕。邪眼もろとも呪いの発射口たるゲイヴォルグを打ち砕く。
そしてバロールがゲイヴォルグを捉え、その力を絞り込む―
「ぐ!!?」
ルーガスの左顔面に痺れとも火傷とも言えない激痛が走る。魔眼が宿主の意思を拒絶。否、侵食を始めたのだ。魔眼も邪眼も言い換えれば、移植された臓器のようなものである。データの上では適合しているとはいえ、異物と判断されればどちらかが侵される。その拒絶反応が起き始めた。
「こんな時に…!」
「危ない!!」
ドリルのように飛来したゲイヴォルグの切っ先に捕まり、ルーガスはその叉に体を挟まれる形で縫い付けられた。
「がぁッ!!」
「残念。もう少しあんたのネコミミ姿見てたかったんだけどなぁ」
そうなった以上仕方ない、と諦めたように言いながら、ルーガスの元にゆっくりと歩み寄る。
「まぁ、コレもあたしとあんたの運命。マニフェスト・デスティニーってヤツね」
愛すべき恋人(とも)の眼前に翳された邪眼が、引導を渡すべく見開かれようとしていた。磔のルーガスに逃れる術は無い。

「リィル!」
「わかってる!」
これ以上傍観は出来ないと、誰それと合図をせず二人が駆け出す。そして―
「「スペリオルユニオンッ!!」」
詠唱も“巻き”で飛ばして一気にセラフィムへと合体変身した。
「(最初から全力全開でいくわよ!)」
「(了解、リィル! 62秒でケリをつけるよッ!!)」
合体で生じた光は一瞬にして紅蓮の羽衣へとシフトする。
「「緋憐天翔ッ!!」」
翼が纏った聖火をブースターに、爆炎を引いてセラフィムが飛ぶ。
「ア゛〜〜ッ、もう邪魔しないでくんないッ!!」
邪眼の標的がルーガスからセラフィムへと変える。その隙を狙ってルーガスがアロンダイトを繰り出した。
それに気付き再びルーガスに戻そうとした時、今度はセラフィムのハルモニアがベイリンを狙う。ならばと、バックステップでやり過ごそうとするも、足元はプリムのデータトランスで固められている。ベイリンの退路は絶たれた。
―ギャァァァァァァン!!―
頭部を捉えていた二つの剣は、ベイリンの正に眼と鼻の先でクロスしていた。その場を動かずに紙一重でスウェーし、間一髪躱していたのだ。
「おーおー、上等切ってくれるじゃないの。ブチ撒けられてぇかぁ!!」
至福の時間に茶々を入れられたベイリンは山猫のような雄叫びを上げ、ゲイヴォルグをルーガスから引き抜いて横薙ぎにフルスウィングした。
「「くっ!」」
急速反転させてゲイヴォルグの斬撃波を掻い潜る。開放されたルーガスも体を引きずって何とか脱出した。
「やめてよねぇ。あたしと本気で喧嘩して―」
ゲイヴォルグの赤と青の穂先から炎と氷がそれぞれ渦を巻きはじめる。
「あれは―!」
「ゆるゆるのあんた達が敵う訳無いでしょ! 禍つ災王への聖痕(ペレス・スティグマータ)!!」
濁流、奔流。そんな表現ではきかない災禍の流れがゲイヴォルグより解き放たれ、全てを薙ぎ払う。
セラフィムは烈神火形態(イグナイテッド・フェイズ)の機動力をフル全開にし、流れの僅かな隙間を縫って避ける。しかし―
「「!? プリムッ!!」」
プリムが災流の中で立ち往生していた。破壊された影響で、データトランスもオートリープも出来ないこの場では、プリムは増水した河の中洲に取り残された幼児同然だった。
「間に合え!!」
ルーガスが投げたアンサラーがゲイヴォルグを捉え、矛先がわずかに動き、流れが少し逸れる。その隙に高速で飛来したセラフィムがプリムをすれ違い様に抱え上げた。方向がずれていなかったら、二人(三人)まとめて巻き込まれていた所だった。
「あっはっはっはっ! マーリンのジーさんが言った通り、あんた達の頭って本当に鯛焼きが入ってるんじゃない?」
災厄をも操る邪神と化したベイリンは、自然の猛威にか弱く抗う卑小な人間を見るように、セラフィムらの甘さを嘲う。この時点ではただの挑発、としか思わなかったが…。
プリムを離れた場所に避難させ、再加速をかけた瞬間、爆炎の翼が急激に推進力を失い、そのまま空中に投げ出されたセラフィムが荒廃した地に墜落する。
「「ッ!?」」
燃え盛っていたはずの翼の光焔が燻り、終に炎は完全に消失した。
「えっとぉ。ひ〜、ふ〜、二回だったかなぁ」
ワザとらしく、指折りしながらベイリンが回数を報告する。至近距離のスウィングを避けた時、プリムを助け出した時。完璧に避けたはずだったが、その2回が翼をかすめていた。さっきの嘲笑は仲間を気にかける余り、それに気付かなかった事に対するものだった。
「ロンギヌスの呪いは一回かすっただけでも命取りだからねぇ。それが2回ともなると無事で済むものやらどうやら」
「「う、あああああ……!!!」」
聖火を失った6枚の翼は、あたかも重油を浴びた海鳥のそれのようにどす黒く変色し、邪気を振り払う神々しさも、聖母の両腕のような温かさも失われた。ハルモニアも消失し、さらにはセラフィム自身も蝕まれ、毒物を投与されたようにのたうちまわった。

「ウルサイ鳥はさっさと首落としちゃおうかしら!!」
鳴き喚く調理用の鶏を屠殺するように、ゲイヴォルグの切っ先が唸りを上げる。
セラフィムは元より、ルーガスも魔眼の拒絶反応で未だ身動きがままならない。唯一動けるプリムにしても、荒廃したこの場では成す術が無い。絶体絶命だった。
(何か…、せめて盾ぐらいには出来るデータか何か…)
それでも諦めず辺りを見回して使えそうなものを探すと、さっきルーガスが投げたアンサラーが落ちていた。
「ルーガスゴメン、必ず元に戻すからぁッ!!」
プリムがアンサラーを手にしたまま両の手を合わせ、光を纏った短剣をセラフィムに投げた。
投げ放たれたアンサラーはデータトランスで分解されたが、何故か盾にも壁にもならず、そのままセラフィムを包み込んだ。
(え? あんな風にトランスしてないのに―)
疑問を口にする間も無く、アンサラーのデータがセラフィムを取り巻くように収束した瞬間、爆発のような閃光が放たれた。その凄まじい光はゲイヴォルグの奔流をも消し飛ばし、フロア一帯に渦を呼んだ。
一瞬の後、渦巻く光によって、呪いに侵された羽が光の中を巻き上がるように飛び交う。
舞い散る翼の奥、姿を現したのは―
黎黒の鎧を纏ったセラフィムだった。


[No.1317] 2009/12/28(Mon) 23:18:37
.hack//With 暁の剣神話第3部 41節 (No.1317への返信 / 2階層) - 夕叢ヒビキ

第41節

新たに身に纏ったのは、赤い『プリムラ・マラコイデス』を象った紋章が胸部に刻まれた、闇の鎧。鎧の装着に合わせて全体の服装も僅かにシフトチェンジし、背には飛び散った6枚の白翼の代わりに、8枚の青い光の翼があった。
光を表した白を基調とした服装の上に、闇を思わせる黒の鎧。天使でありながら戦神(ヴァルキリー)を髣髴とさせるその姿は、まさに光と闇の完全な融合体。セラフィムの最終極形態(ミトラス・フェイズ)だった。

「『天装合体(アーセナルユニオン)』…」
パーシヴァルによって齎された知識がルーガスの思考を瞬時に巡る。まさかセラフィムがアンサラーと、しかもデータトランスを介して合体するとは、思いもよらなかった。
今のセラフィムはアウラ、リィル、ルーガス、プリムの力が一つになった姿。鎧に刻まれたプリムラ・マラコイデスの『運命を開く』と言う花言葉の示す通り、4人の絆が『新世界』への運命を切り開く力を―真のセラフィムへの覚醒によって得たのである。

「ほぉ〜〜〜。王道パターンってヤツね。ま、折角だから楽しませてくれるかどうか、試してあげる」
ゲイヴォルグを掲げると、その二つの穂先を砲身とし、氷と炎の暴流がビームのように放たれる。
「「…」」
焦点が定まらない視線で虚空を仰いでいたセラフィムが振り向くと、目元を絞った。
―熾天結界・浄華聖堂(プリマローズ・カテドラル)!―
瞬間、セラフィムの前に幾重もの桜色の花弁を模した“盾”が展開され、氷炎の暴流を塞き止めた。
「「「!!?」」」
「データを寄せ集めないで…!?」
データトランスの使い手であるプリムは真っ先にその“違い”に気付き、驚いた。データトランスは『ザ・ワールド』に内在するデータの性質・形質を変化させるもの。セラフィムが今行なったのはそれを使わず、『新しく盾のデータを“創った”』のだ。
花弁の盾が引くと、その先のセラフィムの瞳にあたかもキャンドルに聖火が燈るかのように意思の光が宿る。
そしてアウラの理解力とリィルの知力が、この力の持つ意味の全てをセラフィムに伝える。
スッと右手を出すと、そこに盾のような護拳が具現化され、更にその端から刃が生じた。光子を鍛え上げたかのようなその刃の基には、複数のエンゼルクラウンが掛かっている。
その形状は言うなればシールドブレイド。神話の名匠か神の業物に等しいそれは光と闇。そして守護を司る、曙宵剣『エクスシア』。アークエンジェルの力と意思が顕現した“ふたり”の剣(つるぎ)であった。

セラフィムは徐にエクスシアをその場に突き立てる。するとそこから溢れた光がエリアを包み込んだ。それに呼応して余剰エネルギーを放出するように、背の青い翼がフィールド状に大きく拡散する。
フロアを抱いたセラフィムの光は、邪眼と魔眼によって受けた傷を治癒し、完全に元の姿に復元させた。
「すごい…」
「『蒼翼のセラフィム』…」
ルーガスは讃えるように、思わずその名を呟く。蒼翼を展開したセラフィムの姿は、さながら創造の神が光臨したかのようだった。
ベイリンはと言うと手品を目の当たりにしたように、素直に「スゴイスゴイ」と称賛している。
「ほぉ〜〜。こりゃぁ、想像以上の上玉ねぇ。そんな誘い方されちゃったら……お姉さん、興奮し(感じ)ちゃうじゃない!!」
ベイリンの全身が再度、殺意と凶気でざわめきだす。彼女はセラフィムをルーガス同様“好意”を抱くに値すると判断した。それはつまり、その身に宿る全ての殺意と凶気をもって殺しにかかる、と言う事を意味する。
徐に槍の叉部に軽く口づけをすると、ダイデントの二つの矛先が捻れて一つに纏まり、スピア型に変形した。それをセラフィムに向けて真っ直ぐに構えると、赤と白と青の帯が渦となって螺旋を描く(床屋と言ってはいけない)。
全力を持ってこの殺劇を制しに来たのだ。そしてそれはセラフィムも同じ。
「「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな。南天に紡ぐ交頌― 暁に集いし双翼の奇跡― 千夜を経て― 今刹那より羽搏く、紅き星君の業の許に―」」
セラフィムの三聖頌に呼応しエクスシアと翼の輝きがブーストする。
「念仏は…、唱え終わったかぁーーーーーッ!!!」
地面を蹴ってゲイヴォルグを繰り出す。否、助走をつけて槍を投擲した。
「災悲なる虐鋩の螺(ディアド・ホロコースト)!!!」
魔剣ガラティンと邪眼ロンギヌス。ベイリンの全ての力が集約された、渾身にして必殺の一撃。
「「熾天剣、サザンクロスソウルッ!!」」
対するセラフィムは蒼翼をはためかせ、深紅の十字を纏ったエクスシアを掲げて特攻する。
―ドォッ!!―
災厄の螺旋とロザリオの軌跡が真っ向から対峙し、セラフィムの斬撃が荒廃の呪いを切り裂き、投げ放たれたゲイヴォルグを押し返していく。
「チッ!!」
ベイリンは逆流してきたゲイヴォルグを握り返すと、踏み止まり、更に力を加える。
「あっはっはっはっは!! 最っ高よ! ランセレッド以外でここまでヤれる奴がいるなんて!!」
激突した二つの存在(ちから)が発する膨大なエネルギーの奔流の中、ベイリンは目の前に迫る死を介して己が生命を感じ、絶頂と歓喜に塗れた昂揚感に酔いしれた。ベイリンは満たされつつあった。
その時。意思と意思の交差点が閃いた。
一筋の突風がベイリンを襲い、視界は光に包まれる。
「―ッ!?」
周囲は嵐が過ぎ去ったように静かになった。光の中にベイリンのみが閉ざされた。
そして目の前に“誰か”いる。セラフィムでもルーガスでもない誰かが。誰かは白い両手をベイリンの頬に伸ばし、優しく包み込む。
「あ…――」
触れた両手は温かさと心地よさに満ちていた。常に“死”と共に波旬を存在し(いきて)きたベイリンが、初めて感じた『安らぎ』だった。

光が消えると、ベイリンはフロアの壁際にもたれていた。吹き飛ばされたわけではない。現にベイリンの体に傷らしい傷は全く無い。
「あ〜〜〜……。何か、もうな〜んもヤル気が無くなっちゃったぁ〜。起きるのもかったるぅ〜」
ダメージは残っていないのに、精も根も尽き果てたようにベイリンは体を投げ出していた。戦いに対するありとあらゆる衝動がセラフィムによって消し去られたようだ。
「…あ、あは…、無くなっちゃった…」
体の違和感に気付き右腕を擡げた。しかし、肩から先の“カタチ”は無い。ベイリンの片腕は邪眼と共に失われていたのだ。
それを見たアウラは申し訳なさで言葉が無かった。最善の行動であったとは言え、ベイリンの生き甲斐を奪ってしまった。それは有る意味、命を奪うより残酷なことである。
「ま、取り敢えず生きてるわけだし。あたしもあんたら本気で殺そうとしたんだから。片腕一本だけなら安いモンよ。ただ、それでいいの?」
片腕一本もっていっただけでいいのか、という問にアウラは言葉に詰まった。
「目的はそこに無い」
ルーガスが代弁した。『命あっての物種』と言う人生観を持つベイリンを理解しているからこその言葉だった。ベイリンには生命さえあればよかった。
「じゃ、もう気にしない気にしない」
あっけらかんと言うと、ベイリンは再び歪な大の字になった。
「ベイリン。これからどうする? ナイツに戻るのか?」
「ん〜…。どうしよっかなぁ〜。今戻ったら、用済みのあたしは即行(ソッコ)で消されるだろうし〜」
「どういうことだ? ラウンド・ナイツで何があった?」
「実は―」
ベイリンのその言葉はアウラの顔と心を引き裂くように凍てつかせた。


[No.1318] 2009/12/28(Mon) 23:19:11
.hack//With 暁の剣神話第3部 42節 (No.1317への返信 / 2階層) - 夕叢ヒビキ

第42節

ヒカリは今日も病院で定期健診を受けていた。根本的な解決には繋がらないが、体の生命維持がちゃんと機能しているかどうかを確かめる為にも日々の検診は欠かす事ができない。
もうすっかり顔見知りになった医師が慣れた様子でいつものように検診を行っている。
「体は大丈夫だけど、今日はちょっと元気がないかな? なにかあったの?」
カルテにペンを走らせながら尋ねた。本人は軽い気持ちで聞いたのだろうが、図星を付かれる形となったヒカリはゴニョゴニョと答えにくそうに口ごもる。実際今日のヒカリはいつになく口数が少ない。
彼女の気懸かりの一つは、やはり『ザ・ワールド』のこと。コレばっかりは、話せないし、理解もされないだろう。
「もうすぐだからね」
10歳とは言え、恥じらいも知るし、秘密だってある。そう察した医師は詳しくは聞かず、別の話題を振った。
「やっぱり海外行くのは不安?」
「ちょっと…」
ヒカリは苦笑しながら濁すように答えた。
そして、もう一つの気懸かり。それはリアルの自分自身のことにある。
サトシが紹介されたイギリス人医師と何度かのTV電話を通して面談を行い、本格的な治療を行う事になった。
カウンセリングと幾度と無く発作―フリーズを起した体の療養、脳の負担の軽減。社会生活を維持しつつそれらを両立するのは、現日本の環境では難しい。その為、イギリスに来ることを勧められ、近い内に向かうこととなった。
即ちヒカリの―、リアルでのリミットが迫ってきていたのだ。

マク・アヌの運河に掛かる大橋にアウラの姿があった。いつもなら元気に駆けていくはずだが、今日はゆったりとした徒歩だ。
今のアウラの脳裏にはベイリンと戦った後の事が鮮明に焼き付けられ、片時も離れなかった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――
「実は“リュー”って奴がきたおかげで、ナイツは今エライ事になっててさ〜」
「何―」
「どういうこと!?」
ルーガスが聞くよりも速く、アウラが光の速さでベイリンに詰め寄った。
「あ…えと…。ジーさん(マーリン)が連れてきたリューってNPCがアジトに着いた途端に豹変してさぁ。そこのロリッ娘連れて来いとか、ウチの大将にまでエラそうにアレコレ命令しだして。実質ナイツの支配者になっちゃってんだよねぇ…」
いやはやもうお手上げ、と言わんばかりにベイリンが肩をすくめた。
「そんな! リューはちょっと言葉っ足らずで、パジャマも一人で着れない甘えんぼで、思わず家に連れ帰って親身に面倒を見たくなるような、雨に濡れた仔犬のような子だよ! そんな悪行三昧をするなんて考えられない」
(悪行三昧って…)
(だから拾ってきたんだ…)
(アウラの眼にはそう映っていたんだろうな…)
「まぁ、信じるかどうかはそっちしだいだけど。とにかくそういう状況になってんの」
―――――――――――――――――――――――――――――――――

何かの間違いだ、嘘であってほしい。そんな考えに始まり、そして終わる。
カオスゲートから仲間の許へ向かう間。否、ベイリンからその事を聞かされた瞬間からずっと、それがヒカリの頭の中で何度も同じ螺旋を描いていた。

そんなモヤモヤした状態のままルーガス、プリムと合流し、遅れてリィルがやってきた。
「リィル、何かあった…?」
いつもと様子が違う事を敏感に感じ取ったアウラが下から顔を覗き込むように聞く。
「時期が時期だから。ちょっと家で色々あったの」
察して欲しい、という意図を含んだ言葉を返した。
いくら成績優秀でも受験が近くなるこの時期にネットゲームを毎日長時間プレイしていれば、大抵の親は心配して口出しするなり何なりするだろう。規範的なエリの義両親もその例に漏れなかった。
曰く、普段は無関心なくせに、こういう時に限って親面をして上からもっともらしくモノを言って、頭ごなしに全てを否定する。子供が一番嫌がるパターンである。

「アウラだって、多分一晩中考えていたんじゃない?」
お茶を濁すように、アウラを模した口調で問い返した。
「うん…。いまでも信じられない…」
「でも、元々リューは『聖杯の器』として連れ去られた」
驚愕ではあったが、考えられないことでもない、と。相変わらずプリムの言葉は容赦ない。
「だから…、 だからこそ会って確かめたいの…!」
アウラが真っ直ぐに言った。どこかの神宮の要石の如く、重力を反転させても決して動かないような強固な意志を持った瞳だ。
「なら、これからすべき事は一つだな」
「え?」
「こちらから『円卓の城 ヴァゴン』へ打って出る」
「ヴァゴン…?」
「ラウンド・ナイツの拠点にして総本山。そこへ行く事がリューとラウンド・ナイツ…、僕達にとっての全ての決着の地となるはずだ」
最終決戦。三人はその緊迫した空気に息を呑む。
「ベイリンの話だと誰かに操られている風でもない。アレが本来である可能性もある。アウラ、お前に真実を知る覚悟はあるか?」
「…覚悟は、できてる!」
「…。ならば、これ以上僕からは何も言わない」
「ちょっと待って。敵の本拠地に乗り込む事になるのよ? これまで以上にバトルが厳しくなれば…」
「大丈夫! だって皆が一緒だから」
「ハ〜…。アタシ達も参加、って決定事項なわけね…。どうなるか判らないわよ?」
呆れながらもリィルが折れた。
「危険なのは知っての承知。どんなときでも命懸け、だよ」
「その台詞が出て来た事に負けた」
よくわからない謎の敗北宣言をしてプリムが折れた。
「全会一致、だな」
「言い出したら聞かないのは判っているし。ナイツもアクロスも関係無しにアタシ個人として、この物語を最後まで見届けなきゃいけない気がするから」
「プリムも、プリムの真実を知りたい」
「伏線は十分だ。僕達の物語を書き上げる時が来たな」
「でも、それは新しい始まりだと思う。だから、みんなで行こ。『終わりと始まりの物語』を書きに」
リィルとプリムは各々の決意を胸に頷いた。ただルーガスだけはそれとは別の覚悟を秘めた表情だった。
アウラは「隠し事は減点だよ。罰金だよ?」といいながら微笑んだ。ルーガスは無言のまま顔を逸らした。
いざ、運命との決着の地へ、と。


[No.1319] 2009/12/28(Mon) 23:19:54
Re: .hack//With 暁の剣神話第3部 43節 (No.1317への返信 / 2階層) - 夕叢ヒビキ

第43節

「…で。どうすればいいんだろう…?」
前回、『次回いよいよ』という締め方に、氷水をさすような穢れなき一言だった。
「アンタねぇ…、何にも考えてなくて『覚悟は出来てる』とかいってたわけ?」
「と、肩透かししつつ僕の方を見ると言う事はお前も考えがないということだな?」
「当たり前でしょ。この中で一番詳しいのアンタなんだから!」
「ほう。逆ギレっぽくきたか」
この手のノリにも慣れてしまったのか、ルーガスは怒る事も無く何処か諦観した様子だった。
「まあいい。丁度ボクもこれからの事で皆に話がある所だ」
「これからのこと? 何?」
「今この場じゃない。後でメールを送るからそこにあるエリアに来てくれ」
「どうして?」
「色々準備がいるんだ。お前達もそれなりの準備が必要だろう。特に、二人はリアルと(時間の)話をつけておくといい」
「うん…、わかった」
―じゃあ、エリアで待っている―
釈然としないアウラ達に一言残してルーガスはその場を後にした。
ルーガスからのメールは2日後に来た。本文は指定したエリアに来るようにと、ルーガスらしく手短に認められていた。

Ωサーバー:凍てつく 煉獄の 狂犬

指定されたのは、つい先日アウラ達がベイリンと死闘を繰り広げたエリアの最奥、通称『異邦神の間』である。現実と虚構の“境界”であるここはネットスラムと同様に監視の眼が行き届かず、言わば管理の治外法権、悪く言うと無法地帯であった。もっとも、『異邦神の間』を知る者が極端に少ないため、大抵は訪れてもさほど何とも思わずに出て行ってしまうが。

―勿体無さ過ぎる幸福だった―

「お待たせルーガス。話って何?」
「出来れば、どうしてここを、時間を置いて指定したかの理由も教えて欲しいんだけど」
「…。お前達に最後の道標を示すためだ。そのためにはここでなくてはならない」
「それだけ? わざわざここにした答えになっていないよ」
「邪魔が入らないからだ」
不意にルーガスがマントを翻して振り向く。
ルーガスと向き合ったアウラ達は息を呑んだ。
「ッ!? ル、ルーガス、それ…ッ!!?」

ルーガスの左半身、裂けた黒衣から見える身体は異物に蝕まれた様な、眼も当てられない有様となっていた。そして顔面の左側、前髪に隠されたその奥からは魔眼が紅い、不気味な光を湛えていた。
「…見ての通りだ。ベイリンとの戦いで魔眼の力を使いすぎた。もう仮面の封印も役に立たない」
「じゃあどうして、あんな無茶を…!」
「あの時何もしなくてもいずれはこうなった。早いか遅いかの問題だ」
誰がどう見ても非常事態であるというのに、当のルーガスは普段以上に冷静で、淡々としていた。
「…ルーガスは、どうなっちゃうの…?」
「どうなるだろうな。魔神の入れモノという殺戮者になるか、モンスターとなるか…。まあどの道、“存在してはならぬもの”となるだろう。だが…、その前に…やっておかなければ…、ならない事が…」
どうすればいいのかと、急かすようにアウラはルーガスの次の言葉を待った。
「殺せ。今すぐ僕を殺せ!」
「な!? い、いきなり何を…?」
「そうだよ。悪い冗談はやめてよ。そんなシチューション今時ウけないよ…」
狼狽したアウラとプリムが声を絞り出す。リィルも予想してはいたが、出来ればそうでない事を願っていた。
「言っただろう…。“存在してはならぬもの”となる、と。そうなる前に僕を殺せ! お前達の手で! でなければ…、僕が貴様ラヲ殺ス!」
「どうして!? そんな事できるわけないよ!!」
「死にたくナケれば殺セ!」
「ヤだよ!! ベイリンの時もそうだった…。どうしてみんな友達にそんなことさせるの?! 全然判らないよ!!」
「アウラ。お前は自覚していないかもしれないが、僕達は皆そういう環境に身を置いている。その現実を酷いと言うなら、わからない・理解できないで目を背けるなら、その甘さを抱えたまま逃げればいい。僕からも、この『世界』からも!」
「ルーガス!」
「僕はルーガスじゃないッ!! 今の僕は…、ラウンド・ナイツの一人、魔眼の黒騎士(デル・タスラム)のランセレッドだッ!!」
仮面を取り払ったルーガスの顔は体と同様、魔眼を中心に火傷を負ったように爛れていた。
「よかった、ネコミミは無事」
「シリアスな場面にお約束のギャグを入れるな!」
普段どおりのペースに戻そうと、プリムなりの抵抗なのだろう。
「逃げる気が無いのなら、今一度この現実を自覚させる。その上でお前の覚悟を試そう。それがやらなければならないこと。僕がお前達に手向ける最後の花束だ!」
アロンダイトとアンサラーを鞘から引き抜き、ルーガスがラウンド・ナイツとして、アウラたちの前に立ちはだかった。

「命をかけた贈りもの、か…。いいわ。受け取ってあげる」
リィルが身を乗り出し重剣の切っ先をルーガスに向けた。
「そんな…! リィルやめて!!」
“ドスッ!”
「きゅう…」
止めようとしたアウラのボディーブローを打ち込み、さらに『吊り男のタロット』で動きを封じた。
「邪魔しないで」
「リィル…」
「ルーガスは苦しんでいる。誰かが助けなきゃいけない」
耳元で囁くと、アウラの身をプリムに預けた。
「…アンタとは短かったけど一緒に子守りをした仲だから。望み通り、本気で、一思いに楽にしてあげる」
ルーガスに向き直った瞬間、闇の聖女は己の覚悟をという刃をもって、壁となったかつての仲間と相俟見えた。

―元々何度も捨てかかった命。ならば最後までこのために―


[No.1320] 2009/12/28(Mon) 23:20:28
.hack//With 暁の剣神話第3部 44節 (No.1317への返信 / 2階層) - 夕叢ヒビキ

第44節

リィルの直線だが眼に映らない一撃がルーガスを襲う。しかし振り下ろされる重剣は途中で、水平に繰り出されたアロンダイトに弾き返された。
(先に攻撃を仕掛けたのに…!)
即座に双剣に切り替えて追撃をいなし、バックステップで大きく距離を空ける。そして呪紋による牽制を織り交ぜ、遠距離から近距離へ一気に切り込む、天剣の能力を活かしたヒット&ウェイで攻撃する。いつもならもっと近距離から、よりアグレッシブに攻めるが、今のリィルは魔眼を警戒してか慎重を重視した。
一方のルーガスはリィルの攻撃一つ一つに完璧に対応すると、わずかな隙から反撃する。
電光石火の連撃(フラガラック)で防御の上からリィルを刻み、続けてガードの隙間を縫って蹴りを放ち、フィールドに転げ倒した。

「…PCの動きじゃない…」
改めて普通のPCとNPCの性能の違いを目の当たりにし、エリは愕然とした。
大見得を切ったものの、やはりリィルの状態では魔眼開放モードのルーガス相手では分が悪すぎる。
「でも今更アウラに助けを求められないよね」
「わかってるわよ!そういうわけだからプリム、援護よろしく!」
「仕方ないなぁ」
言うと、リィルは自分に回復と強化を施し、矢を乱れ打ちした。そして明後日の方向へ放たれた矢をプリムがデータトランスでルーガスの方向へ誘導する。
「ぬるい!!」
ルーガスの左眼が血の光を放つ。直後、誘導弾となった矢が魔眼の閃光に飲まれ消滅した。
「まだまだぁッ!」
プリムのオートリープで転送されたリィルがルーガスの死角から奇襲する。
しかし、必中するはずのリィルの天剣の一撃は空を切り、金属音だけが虚しく響いた。
リィルが嘘だ、と叫びだしそうな様子で頭上を見ると、ルーガスは彼女の頭上に舞い上がっていた。
「あえて魔眼を使わせ、オートリープで死角をつく。いい戦術だが…、まだまだだな」
「…うッ!?」
「上を知るがいい」
―イーヴィルプラント!―
アロンダイトから放たれた闇の波動が鷹の爪となって頭上からリィルに迫る。
「リィル!」
間一髪、オートリープで“爪”からは逃れられたが、今度はルーガスの方から仕掛けてきた。
黒と赤。闇と血を両の刃に纏い、魔眼の騎士が漆黒の聖女を八つ裂きに掛かる。リィルは全身を覆うほどの幅広の大剣に換装し、盾代わりにして攻撃に耐える。
「…確かに、動きは上だろうけど…」
言って次に来たルーガスの一撃を初めてキレイにはずした。PCの規格内でかわせる攻撃を狙っていたのだ。
「ナメるな!!」
渾身のフルスイングがカウンターとなって顔面に直撃し、ルーガスは吹き飛ばされる。
ルーガスはすぐさま空中で姿勢制御し、危なげなく着地した。が、立ち上がろうとせず、上半身を低くしたまま、四つ這いに近い体勢で獣のように唸りを上げている。
「?」
先ほどからリィルはルーガスの挙動に違和感を覚えていた。ガードの隙間を突くことなど造作も無いはずのあのルーガスが、それをしないばかりかP Cの操作範囲で避けられる攻撃をするとは思えない。
少しずつ、洗練されていたルーガスの動きが荒れ始めたような気がした。
警戒しながらリィルが様子を伺おうとすると、アウラが叫んだ。
「ルーガス、ダメェッ!!」
蹲るようにしていたルーガスが、突如上体を持ち上げ、異端神を仰いだ。

―があああああああああああああああああああああああああ!!!!―

絶叫と共に、魔眼から魔神の力が血飛沫のように吹き出る。暴走した力の本流は異端神の偶像を破壊し、宿主を赤黒い光で包み、飲み込みにかかる。
魔眼は自ら更なる餌を求めて宿主の理性のたがを外し、強引に精神を暴走させた。そしてそれらを貪り食った“内”なる魔神が、宿主の戒めを食い破り、この『世界』に顕現した。

「…これが…、ルーガス…?」
魔神と化したルーガスの身体は至る所が機械化され、ボロ布のような翼が生えている。
異端神バロムを模したその姿は、まさにサイボーグ化されたドラゴン。アウラたちの5倍の体躯を誇る巨大な魔神竜である。

3人は博物館の肉食恐竜を再現した展示ロボットを目の当たりにしたように見上げた。ここまで巨大なモンスターと相対したのは邪竜と化したマーリン以来である。
「デ、デジ○ン…?」
プリムは既に少し錯乱しているようだった。
「……」
リィルの方は絶望とも諦めとも違う茫然とした感覚を覚えながら、どう相手にしたものかとこの巨大な魔神竜を前に逡巡した。
しかし通常のイベントバトルと違って待ってくれるはずもなく、スピーカーを揺るがす咆哮を上げて、『魔神竜ランセレッド』が『アロンダイト』と一体化した巨大な右腕を振るう。
大振りのテレフォンパンチだが、かするだけでも致命傷となる一撃を危なげなくかわし、魔眼にとって死角となるランセレッドの右側面に回りこむ。
(どう攻める? 一気に頭部へ斬り込むか…。それとも足を狙って転ばせるか…)
安全圏へ回りつつリィルが次の戦術を講じる中、ランセレッドはスピードに翻弄される事なくアロンダイトを振るった反動を利用して、一気にリィルの姿を捉える。
(は、速い!?)
リィルが魔眼の死角へ逃げる事を見越し、翼とアロンダイト、そしてその巨体を十二分に利用して回避領域を削っていきターゲットを捉える。攻撃+移動・回避。複数の行動を組み合わせるのはNPCであるルーガスの得意とする戦術である。たとえ魔神竜と化しても、芯は変らずルーガスのままであった。
(スピードじゃ誤魔化しきれない。ここは、短期決戦―!)
大きく薙ぎ払われた鉤爪状の左腕を流し、一気に頭部へ飛び込もうとする。が、スイングで出来た隙にあわせて見開かれた魔眼がリィルの前に待っていた。
(ッ!! しまっ…!!)
魔眼にはリィルの姿が、リィルの瞳には魔眼が、それぞれしっかりと映し出されている。
(見るな見るな! 逸らせ! 逸らせ―!!)
懸命に魔眼の視線から逃れようとするが、視線があった時点で死を意味する。
そして次の瞬間、リィルの瞳から魔眼が消えた。

「……!!?」
次にリィルの視界に現れたのは天井。魔眼の代わりにリィルは別の、何か大きな塊の直撃を受けて弾き飛ばされていた。
それと入れ替わるように、魔眼の閃光はリィルがついさっきまでいた地点を焼き払っていた。
「アウラ!? アンタなにしに―」
「リィル、合体すれば魔眼は大丈夫のはずだよ!」
「だけど…」
「泣いているだけじゃ…今までと変らない。誰も救えない。だからルーガスが苦しんでいる現実から逃げない! トモダチの決意から眼を逸らさない!」

アウラとリィルは決意を秘めた瞳で荒れ狂う魔神竜を見据える。
「強い決意の相手を止めるには、こっちも強い決意で向き合うしかない」
「うん」
輝きの神子が守るための力を、漆黒の聖女が貫く意志を掲げた時、『異邦神の間』は急速に閃いた。
「「ルーガスを助けたいって思いを全力でぶつける。それが『わたし達』の覚悟だーーーーーーー!!!」」
灼熱のような陽光を湛え、大天使が魔神竜の前に光臨する。
生と死。二柱の神の使徒が今ここにあいまみえた。


[No.1321] 2009/12/28(Mon) 23:21:32
以下のフォームから投稿済みの記事の編集・削除が行えます


- HOME - お知らせ(3/8) - 新着記事 - 記事検索 - 携帯用URL - フィード - ヘルプ - 環境設定 -

Rocket Board Type-T (Free) Rocket BBS