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No.167に関するツリー

   .hack//A.D. Vol.1 黄昏 - 菊千文字 - 2007/02/26(Mon) 19:20:57 [No.167]
最終話 漆黒の破壊者 - 菊千文字 - 2007/08/06(Mon) 22:03:30 [No.872]
第十四話 守護神開眼 - 菊千文字 - 2007/08/03(Fri) 20:32:13 [No.869]
第十三話 終末の日 - 菊千文字 - 2007/07/07(Sat) 17:59:00 [No.810]
第十二話 『彼女』 - 菊千文字 - 2007/06/20(Wed) 23:34:49 [No.789]
第十一話 魅惑の恋人 - 菊千文字 - 2007/06/09(Sat) 18:19:34 [No.770]
第十話 レイヴン - 菊千文字 - 2007/05/19(Sat) 22:19:01 [No.745]
第九話 Project G・U - 菊千文字 - 2007/05/02(Wed) 23:04:27 [No.709]
第八話 蒼炎の守護神 - 菊千文字 - 2007/04/29(Sun) 21:00:32 [No.673]
第七話 三爪痕 - 菊千文字 - 2007/04/07(Sat) 21:01:53 [No.569]
第六話 トライエッジ - 菊千文字 - 2007/03/25(Sun) 18:46:37 [No.456]
第五話 究極の選択 - 菊千文字 - 2007/03/17(Sat) 22:48:02 [No.387]
第四話 黄昏の鍵 - 菊千文字 - 2007/03/16(Fri) 21:06:27 [No.360]
第三話 惑乱の蜃気楼 - 菊千文字 - 2007/03/11(Sun) 22:07:01 [No.333]
第二話 ハッカー - 菊千文字 - 2007/03/10(Sat) 18:27:07 [No.329]
第一話 黄昏の守護者 - 菊千文字 - 2007/03/04(Sun) 21:22:20 [No.309]
[削除] - - 2007/02/26(Mon) 19:59:40 [No.170]
.hack//A.D. Vol.1 設定 - 菊千文字 - 2007/03/10(Sat) 21:15:09 [No.330]



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.hack//A.D. Vol.1 黄昏 (親記事) - 菊千文字

初めまして、菊千文字です。

公式ページの掲示板でほとんどカイトの話しかしていませんが、
それにちなんで(? G.U.の時間帯にカイトがいたら・・・
を自分なりに考えたものを書いていきます。

初めてなので文章が変になっていることがあると思いますが
大目に見て下さい。(殴
 
尚、.hackでよくある矛盾がここでも起こっており、あれ?と思うところが
ありますので、読む前に『設定』の方をご覧下さい。


[No.167] 2007/02/26(Mon) 19:20:57
[削除] (No.167への返信 / 1階層) -

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[No.170] 2007/02/26(Mon) 19:59:40
第一話 黄昏の守護者 (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

かつてThe WorldR:1の『黄昏事件』を解決した、.hackersの
リーダー『カイト』のプレイヤー。彼はもう大学生になり、
成人・・しかし子供っぽさはぬけていないようだ。
カイトはたびたび雑誌などでR:2の話題を目撃するが、プレイしようとは思わなかった。
R:1からR:2に移行し、同じPCが使えなくなったので、かつての仲間はいなくなってしまった・・・
彼の親友ヤスヒコは同じ大学に入学し、R:2のセットをカイトにプレゼントしていた。
それでもカイトはThe Worldに手をつけなかった。

ある日、カイトの元に、一通のメールが届く。
それはThe WorldのPCの名前で『欅』という者からだ。
メール内容は
「ネットスラムって覚えてるでしょ?そこの統治者だったヘルバっていう人も当然
 覚えてるでしょう?僕はそれを引き継いだ者。今、The Worldに危機が
 迫ってる。君の仲間も被害を受けるかもしれない。気が向いたらログインしてよ。」
−ヘルバのことを知っている?しかも仲間が危ないって・・・?

かつての仲間との再会、The Worldの危機・・・
期待と不安が重なり、腕輪のない今の自分に何ができるのかわからない・・・
カイトはおそるおそるThe Worldにログインする。


[No.309] 2007/03/04(Sun) 21:22:20
第二話 ハッカー (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

適当なPCを作り、ログインを済ませたカイト。
彼は行き着いた先、マク・アヌにいた。

「・・・スケールが全然違う・・これがマク・アヌ?」
以前のマク・アヌは港につらなる町並みだった。

バージョンアップの効果を見るが、それとは逆に懐かしさが感じられず
カイトは途方に暮れていた。

「・・・これからどうしよう?」
欅から気になるメールを送られてきて見たものの、肝心の欅がどこにもいない。

そこに聞き覚えのある騒音が走った。

−!?、ノイズ!?
耳と頭に響くほどのノイズ。しかしまわりのPCには聞こえていないようだ。

それに続いて声も聞こえてきた。
『聞こえる?聞こえるよね?僕が欅さ。詳しい話は後でするから、カオスゲートに来てみてよ』

どこから聞こえるのか疑問に思ったが、見覚えのあるカオスゲートに手を添える。

 ポーン・・

その音はハ長調ラ音。

「う、うわぁぁぁー!」
カイトの体が吸い込まれていく・・・目の前が真っ暗になった・・

「う、ううん・・」
カイトは真っ白な世界に横たわっていた。どうやら気を失っていたようだ。
「いててて・・なんだ?ここ?・・・ん?」

目線の先には昔使っていたPC『カイト』がいた。
近づいていくと、むこうも自分に迫ってきた。近くなった先で彼は気づいた。
「鏡だ・・・。何でこんなところに、・・・でもこれが鏡ということは・・」

服を見てみると確かに、そしてかぶっているふんわりした帽子、
それはまさしくカイトのものだった。

動揺を隠せないカイトに
「これでなつかしくなったかい?」
と少年が声をかける。子供の姿に水色の髪、それに角が生えている。

「君が・・・欅?」
「そう、そのとうり。その姿は僕がハッキングして呼び戻したものだよ。
R:1と今じゃシステムが違うからレベルは1だけど・・・」

「ハッキング?じゃあやっぱり君はヘルバと・・」
「知り合いだよ。ネットスラムの統治者をまかされたんだ。」
ヘルバとはハッカーで、前に八相を倒すためにかかせない人物だった。

「どうして僕にメールを?」
「いまThe Worldで異変が起きている。君の仲間も被害をうけるかもしれないんだ。
腕輪を使える君に手伝ってもらおうと思ってね。」

言われてカイトは右手を見るとそこには事件後、アウラから渡された
『薄明の腕輪』が・・・

「あのとき腕輪をなんでく渡されたか気になるよね?このときのためだったんだ。
これから腕輪所持者として活動してくれないかい?」

カイトは悩まなかった。
「仲間がいるの?ブラックローズもバルムンクもエルクもなつめもみんな・・・
ほっておけない、また会いたい!手伝わせて!」
欅の顔がほころんだ。
「決まりだね。じゃあ君はR:2のシステムに慣れて。ぼくは腕輪の分析をしてるから。
まだデータドレインは使っちゃいけないよ。」


マク・アヌに戻ってきたカイト。システムに慣れるためにエリアに
いこうとするが、
操作もままならない。外からは初心者同然の操作。


****


△隠されし 禁断の 聖域をたずねたカイトに

「どうかしたの?」と
後ろからカイトにやさしく声をかけた女性PC。

その人はピンクの髪で、白い帽子をかぶっていた。





 −第二話 ハッカー






あとがき
 PC復活、腕輪復活、志乃登場。いろいろ唐突ですいません。
 無印の仲間復活はいつになるやら・・・


[No.329] 2007/03/10(Sat) 18:27:07
.hack//A.D. Vol.1 設定 (No.170への返信 / 2階層) - 菊千文字

舞台:.hack//Rootsの時間帯と平行線

概要:G.U.でのカイトの話(.hackersの登場はVol.2)

主人公:カイト(無印)

A.D.の意味:Again DDの略


カイト設定
・PCは前のカイトを大人びせた姿(例えるならシラバスとエンデュランスの間)
・リアルは20歳(G.U.から21歳、志乃より年下)
・ハセヲと同じように志乃を気にかけている
・腕輪の力やオーヴァンへの感情爆発で蒼炎の守護神に開眼

欅設定
・カイトと話すときだけ異なるしゃべり方(親しみを持っている)
・ヘルバの関係者

志乃設定
・20歳だがその年で21歳になる(G.U.から22歳)
 理由は志乃よりカイトの方が年上だと不自然になるため(爆)
・カイトに教えてもらったこと(アウラの名前)をハセヲに説明している
・志乃のセリフ『大丈夫、ひとりじゃない。』はA.D.全体のテーマ


[No.330] 2007/03/10(Sat) 21:15:09
第三話 惑乱の蜃気楼 (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

マク・アヌのカオスゲート前にいたカイト。
PCが元通りになってから気になっていることがあった。

−△隠されし 禁断の 聖域

あの宮殿は今どうなっているのだろう?アウラの像は今・・・?
カオスゲートでカイトはワードを打ち込む・・・

****

転送された先、そこはなにも変わっていなかった。

「・・・・」
石造りの宮殿、空は2色に分かれている。
思い出の地にカイトは足を踏み入れる。

ブラックローズと出会うきっかけになった場所。バルムンクと対峙した場所。
しかし唯一違う点があった。

「アウラの像が・・ない・・」
中央に鎖でつながれていたアウラの像。それは足場だけを残して姿を消していた。

不思議なことばかり起きている。なにもかも。

−!?
足音が聞こえる。後ろから・・人の気配・・・

「どうかしたの?」
「うわぁ!!」
いきなり声をかけられてカイトは飛び跳ねた。
−ああ、あの時のブラックローズの気持ちってこんなのだったんだ・・・。
だがその声は、きれいで、優しい声・・・

後ろを見てみると白い帽子をかぶり、ピンク色の髪をしている女性PCだ。
カイトはその姿にしばらく見惚れていた。

「ごめんなさい。いきなり声かけちゃって。失礼なこと聞くけど・・・もしかしてこのゲーム初めて?」
−図星。やっぱり初心者に見えてた。たしかに歩き方、フラフラだったしなぁ・・・

「は、はい・・・。前のバージョンはプレイしたことがあるんですけど、
今はシステム違うみたいで・・・」
「ふふ、確かにそうだね。私の友人に前のThe Worldのこと教えてもらった
ことがあるの。じゃあ実質私の先輩ってことになるね。」
相手は場の空気をなごませようとしているが、カイトは緊張しっぱなしで頭の中が真っ白だ。

「ごめんなさい。紹介が遅れちゃった。私は志乃。」
「ぼ、僕はカイトって言います。」
「え・・・。」

志乃はその名前に反応した。
「ど、どうかしました?」
「ううん、ちょっとね。ところでよくここが解ったね。」
「い、いや前に友達と一緒に来たことがあって、思い出の場所なんです。」
−どっちかというとつれてこられた。はじめてブラックローズと会ったときにに。

「そうなんだぁ。ここはロストグラウンドといって管理者も手を出せない場所で
グリーマー・レーヴ大聖堂っていうの。知ってた?」
「へ〜、そういう名前だったんですか?よく知ってますね。」
「ふふ、豆知識。友人に教えてもらったんだけど(笑)」

そして志乃は消えたアウラの像の話題を話し始めた。
「ここには昔、女神の像があるのも知ってる?」
「名は『アウラ』。ですよね?」
「へえ、初めて聞いた。物知りだね。」
「豆知識、です(笑)」
ふふふっと彼女は笑った。カイトはなぜかうれしくなっていた。

ピリリリと音がなった。彼女宛のメール音のようだ。
「あ、メール・・。もういかなきゃ。あの、よかったら明日またここで会ってくれる?」
突然の誘い。カイトは断れない性格で、断る気もなかった。
「はい!喜んで!」

志乃は笑いながらカイトに手を振って宮殿をあとにした。
カイトもその後、タウンに戻りログアウトした。


****


「オーヴァン!、ハセヲ!」
志乃は銃戦士の青年と錬装士の少年のもとに行った。

「ごめんなさい、おまたせ。」
「いや、そんなことはない。」
「別に・・・」
この3人は同じ目的を持つ団体=ギルドのメンバー。

「オーヴァン、さっきね、ロストグラウンドにかわいいPCがいたんだよ。
礼儀正しくて、名前はカイトっていうの。」
「カイト・・・?」
「オーヴァンが私に話してくれた『黄昏事件』を解決した.hackersのリーダーと
同じ名前でしょ?」
「・・・・そうか。」

いや、たまたまだろうと思っていたオーヴァンに、嫌な予感が漂った。




 −第三話 惑乱の蜃気楼






あとがき
 矛盾してると思う人もいるかもしれませんが、志乃はこのころまだ像の名前は
 知りませんでした。カイトに教えてもらってからハセヲに教えたという
 形になります。
 ちなみにオーヴァンはカイトの姿、活躍を詳しく知っています。


[No.333] 2007/03/11(Sun) 22:07:01
第四話 黄昏の鍵 (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

翌日、カイトは欅の元にいた。

「で、内容なんだけど君には腕輪の力で以前のウイルスバグのようなものを
駆除してもらうから。」
「またウイルスバグが?どうして?」
「いや、正確に言うと別なんだけど・・・」

欅は深刻な表情で話した。
「ただ被害が多くなる前に消しておかないと。このThe Worldに君の仲間もいるしね。」

−そうだ、みんながいるんだ。みんなに会うために僕は・・・
「でも、もし仲間と会っても関わらないほうがいい。」
欅のその言葉に、カイトは驚きが隠せなかった。
「調べてみたんだけどその『薄明の腕輪』には『腕輪の恩恵』が施されてない。
もし倒されたりなんかしたら・・・」

「一瞬で・・未帰還者?」
欅はうつむいた。カイトから発せられた言葉があまりにも暗かった。
腕輪の恩恵とは未帰還者になるのを回避する能力だ。カイトたちが無事だったのもそのおかげだった。

−僕だって、みんなを危険に巻き込んでまで会いたくない。でも・・・

「僕もちょっと君に押しつけすぎたみたいだ。無理にとは言わない。
協力するつもりならこのゲームに慣れてきて。」
そういうと欅は後を去った。

−パーティに誘えなくても、一緒にプレイできなくても、一目会えればいい。
 ただそれだけでいいんだ・・・



****



カイトは志乃と待ち合わせした、『グリーマ・レーヴ大聖堂』にむかった。
そこにはすでに志乃の姿があった。

「すいません。お待たせしちゃって。」
「ううん、私も今来たところだから。それに誘ったほうが先に来てないと悪いでしょ?」
志乃はおだやかな表情で言った。
「どう?R:2のシステムは。もう慣れた?」
「いえ、全然・・。まだ戦闘もしてません。」
「それならちょうどよかった。ねえ、一緒にクエストしない?」
「え・・・、いいんですか?」
カイトは耳を疑った。
「うん、システムとかR:2の要素とか教えてあげる、ってのはちょっとアレかな。」

−なんでだろう。なんで僕にそこまで・・・

「あ、ありがとうございます。」
「そんなに堅くならなくてもいいよ。じゃタウンにいってパーティ組もう。」
カイトは欅の言葉を思い出したが、バグ退治に行くわけでもないので大丈夫だろうと思った。


****


−△大いなる 早成の 仏足石


「じゃあ、R:2の要素を教えるね。」
志乃はカイトにいろんなことを話した。
レンゲキ、スキルトリガー、ギルド、アリーナ、クリムゾンVS・・・そして

「あとはPK。R:2ではプレイヤーを攻撃できる仕組みになっちゃったから
PCを狩るPCがでてきちゃったの。」

R:1でも一時期あった。あの『楚良』がそうだった。

「志乃さんは、PKをどう思います?」
「PKをするPCは初心者ばかりねらうの。つまり弱いものいじめ。そんな行為、許せない。」

志乃は顔をひそめた。
「ハセヲもそんなPCにPKされて・・・」
「?」
「あ、ごめんなさい。なんでもないの。ささ、早速戦闘しましょ。私がサポートするから。」


****


あれから一週間が経った。志乃は暇を見つけてはカイトを一緒にクエストに誘っている。

カイトは志乃に前から思っていたことを質問した。
「あの、どうして志乃さんは・・・僕を誘ってくれたんですか?」
ん〜、と志乃は考えた。
「友達でもほしかったのかな。それにカイトを見てるとなんだかほっとけなくって。」

−ほっとけない、か。

カイトはなつめを思い出す。彼女はほおっておいたら泣き出しそうな感じのPCだった。

「それにR:1の『黄昏事件』って知ってる?それを解決したメンバーのリーダーが
あなたと同じ名前の人だから・・ごめんなさい、こんな理由で。」
カイトはその人物と同一人物、.hackersのリーダーだった。
だがカイトは知らないふりをして
「志乃さんって、優しい方ですね。」
と言い返した。

そんな中、怪しげなPCがこちらに襲いかかってきた。
そのPCは斬刀士で鋭い刀をカイトに振り下ろしてきた。
「うわあああぁぁぁ!!」
カイトに剣が振り下ろされるかと思ったそのとき
「リウクルズ!!」
と呪文が言われた瞬間、カイトを襲おうとしたPCの体力が一気に瀕死状態になった。

「貴方、この子を初心者だと知ってて襲ったでしょう!?恥ずかしくないの!?」
志乃が怒った表情は初めて見た。
「ちっ、覚えてろ!」
と吐き捨て斬刀士は遠くへいった。

「カイト、大丈夫?」
と志乃はカイトの様子を伺った。
「無事ね、本当によかった・・・」
PKの猛威、レベルの低いカイトにとっては恐ろしいほどであった。
「あ、ありがとうございます。志乃さん。」

起きあがろうとしたカイトに志乃は手を差し伸べた。
「あんなPCがいるところだけど、私は逃げたりしない。だってここには私の仲間とカイトがいるんだもの。
だからカイトもこのゲーム、やめちゃだめだよ。」

−え・・・?

そして志乃はこう続けた。

「ようこそ、The Worldへ。」


****


また何日か経った。欅からまだ連絡がこないカイトは、志乃と一緒にクエストを進んでいた。

「カイト、今日もよろしくね」
志乃はカイトの手を握りフィールドをかけていく。

「ち、ちょっと待って下さい〜!」
何か陽気だった。志乃らしくはないが、それもいい。

カイトにとって大切な人になりつつあった。




 −第四話 黄昏の鍵






あとがき
 志乃に無理矢理「ようこそ、The Worldへ。」って言わせました。
 題名の意味が分かりにくかったですね、G.U.『誓い』イベントエンデュランス
 参照の意味です。
 カイトにとって志乃がどういう存在なのかを表しています。


[No.360] 2007/03/16(Fri) 21:06:27
第五話 究極の選択 (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

「ねえ、前にギルドのこと話したの覚えてる?」
志乃はカイトに話しかけた。
「はい、同じ目的を持った人達が集まるグループみたいなもの・・ですよね。」
うん、と言い志乃は話を続けた。

「私も『黄昏の旅団』っていうギルドに所属しててね、このThe Worldのどこかにある幻のアイテム
 『キー・オブ・ザ・トワイライト』をさがしてるの。」

−キー・オブ・ザ・トワイライト?たしかR:1でもちょっと耳にしたことがある。

「そのギルドマスターはオーヴァンっていう銃戦士PCなんだけどね、
 私はその人に惹かれて入った面もあるんだ。あと最近入団したハセヲっていう錬装士に・・・」
この言葉で志乃は一端口を止める

「ハセヲはね、初ログインと直後にPKされたの。」
「・・・!」
カイトは反応した。PKは彼女が嫌っている行為だ。

「最初の頃からそんなことされるなんて、かわいそうでしょ?」
志乃はなにかを思い詰めているようだった。

「私は彼らにPKなんてなってほしくない。ハセヲにもカイトにも・・・」
「志乃さん・・・。」
「・・・ごめんね。カイトはそんなことしないよね。」

「カイトは自分でギルドを作ろうと思ったことはないの?」
できれば作りたかったが、欅に仲間との関係を断ち切れと言われたので作るにも作れなかった。
「頼み事ばかりで悪いんだけど・・・もしよかったら私たちのギルドに入らない?」
「え・・・」
「オーヴァンには私から頼んで置くから。きっとみんなも歓迎してくれるよ。」
たしかに志乃とこれからも一緒に居れるのなら嬉しいことだが、ウイルスバグのこともある。
欅の許可が必要だった。

「すいません、少し考えさせてください。」
こう答えるしかなかった。許しがでればすぐに頼むつもりなのに・・・
「ごめんなさい。すぐ返事がでないの、わかってるから・・・」
「あ、謝らないで下さいよ!僕のせいなんですから!
 す、すぐに返事しますんで!それじゃ!」
「うん。じゃあね。」
カイトはすぐさま欅の元へ行った。


****


「え?ギルドに入りたいって?」
カイトはうん、と頷いた。
「どうしたのいきなり・・・で、どんなギルド?」
「えっと・・たしか『黄昏の旅団』っていう・・・」
「!」
欅の表情が一変した。驚いているようだ。

「一員の志乃さんって言う人に誘われたんだ。ギルドマスターは
 オーヴァ・・・」
「悪いけど、絶対に駄目だ。」
「!?ど、どうして?」
「君はオーヴァンに関わってはいけない。」
「オーヴァンっていうPCを知ってるの?」

「とにかく!その志乃っていうPCに断って。理由は後で話す。」
「・・・!」
カイトは言葉がでなかった。あれだけ親切にしてくれた志乃の頼み事を断ることになるとは
思ってもいなかった。

−・・・・


****


−志乃、いよいよだ。行ってくる。後は頼んだぞ。

「え・・?オーヴァン?」
黄昏の旅団がTaNとの戦闘中志乃に聞こえてきたオーヴァンの声。

そしてオーヴァンの失踪を理由に、黄昏の旅団が解散することとなった。





 −第五話 究極の選択





あとがき
 無印のThe Worldのログイン画面や、SIGNにキーオブ・ザ・トワイライト
 関連がありました。
 カイトは運が良ければハセヲと会う機会があったっていう設定です。
 新旧主人公はすれ違いが多すぎ。


[No.387] 2007/03/17(Sat) 22:48:02
第六話 トライエッジ (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

「よお、今日も寝坊しないで来れたな。」
大学の登校中、カイトはかつて『オルカ』のプレイヤーのヤスヒコに出くわした。
ちなみにヤスヒコとは同じ大学。

「うん。っていうかヤスヒコ目の下にクマができてるよ。また夜遅くまでゲームしてたでしょ。」
「最近The Worldで怪奇現象みたいなのが起きててな、気になってんだ。」
「怪奇現象?どんなの?」
「神出鬼没の蒼炎をまとったPCがいるそうだ。名はトライエッジ。
 エッジって言うからに双剣士だな。そういえばお前も前『蒼炎のカイト』って呼ばれてたよな。
 まさかお前じゃあ・・・」
「いやいやいや、そんな訳ないよ!だって僕もうThe Worldやってないし。」
カイトはもちろんThe Worldをしていたが、危険な状況に友人を巻き込みたくないと思い、
ヤスヒコには嘘をついた。

「それでな、そいつにPKされたPCは未帰還者になっちまう噂だ。んなわけないよな?」
未帰還者。かつてオルカ、ブラックローズの弟カズ、そして楚良、
ジーク達など
ゲーム中に意識不明になってしまった者達だ。

「俺も前スケィスに倒されて意識不明になったからやべえと思ってたんだけど、
 この『蒼海のオルカ』、この状況をだまって見てらんねえ!」
「ヤスヒコの今のPCオルカじゃないでしょ。」
「何言ってんだ。オルカは永久に不滅だ。俺はまた名を轟かせてバルムンクやお前と一緒に
 モンスター制覇するつもりだからな。」
「バルムンクかぁ・・・今どうしてるだろう?」
「まだThe Worldでもやってるんじゃないか?元気ならそれでいいさ。」

「つー訳だから、お前も早くThe World遊べよな。」
「うん、気が向いたらね。」


****

送信者 志乃
 カイトへ
 話があります。△隠されし 禁断の 飛瀑へ来てください。

パソコンを開くと一通のメールが届いていた。志乃からだ。
カイトはまだ志乃にギルドの誘いを断っていない。
「話・・なんだろう?ギルドのことかな・・・」
カイトはすぐThe Worldにログインした。


****


−△隠されし 禁断の 飛瀑・ロストグラウンド

その奥には見覚えのある人影があった。志乃だ。
周りは滝だけだが、結構距離があり、シルエットしか見えない。

「・・・志乃さん?」
「! カイト、来てくれたんだ。」
その声はまさしく志乃。いつもの優しい声・・・いや、ちょっと違う。

カイトは志乃に言いづらい言葉をかけた。
「志乃さん・・・ごめんなさい。僕・・・」
「カイト、ごめんなさい。」

−?

突然の志乃の言葉がカイトには理解できなかった。

「黄昏の旅団は、先ほどをもって解散しました。」
「え!?ど、どうしてですか?」
志乃は黙ってカイトの方を向く。
「志乃さん・・・その姿は・・・?」
見ると志乃の服、帽子は白から黒に変貌していた。

「決意表明、かな。ギルドを解散するための。」
「どうしてギルドを解散したんですか?」
「キー・オブ・ザ・トワイライトはThe Worldに存在しなかった・・・
 それで・・・、突然オーヴァンが・・・」
「・・・姿を消した?」

志乃はコクリと頷く。
「きっかけは?」
「わからない。それに・・・リアルでも連絡がとれないんだ。」


「ハセヲの前では我慢してたけど、こんな状況、私・・・」
志乃はそう言いかけ横を向く。その目から涙がこぼれ落ちそうだった。
「志乃さん・・・」


PCの涙は、プレイヤーの涙。

明らかにいつもの志乃とは違っていた。カイトとハセヲの前では感情を
押し殺していたのだろう。


「そのオーヴァンっていう人は志乃さんにとって大切な人なんですね。」

カイトは自信気に

「大丈夫ですっ!そのオーヴァンっていう人はきっと帰ってきますよ!僕のカンは当たりますから。
 だから・・・」

「だから・・・1人で抱え込まないでください。そのハセヲっていう人も・・・
 僕も・・・いますから。志乃さんは・・・ひとりじゃないですよ。」
「カイト・・・」
志乃は涙を拭い、カイトの肩を腕で包んだ。

「し、ししししし、志乃さん!!?」
「ありがとう、カイト・・・。あなた達がいる。」


    『大丈夫、ひとりじゃない。』


志乃はそう言ってカイトに笑って見せた。一方カイトは気が気ではない。顔が一気に真っ赤に。

そのときだった。

 

  −ポーン・・・

その音とともに抽象画めいた姿が目の前に現れた。


 −イニス!?


「?、カイト?」
はっとカイトは正気を取り戻す。さっきと変わらぬ風景がある。
「い、いえ、なんでもないです。」
そう言いながら意識を整理した。
「信じていれば、オーヴァンだって戻ってきますよ。」
「うん。私、ずっと待ってる。オーヴァンが帰ってくるの・・・。」


ちょっと残念だった。好きな人に気に入られたいのが人の性(さが)。
志乃の心は完全にオーヴァンに向いている。
でも、志乃が元気であればカイトはそれでよかった。


「今日はありがとう。また一緒に冒険にいこうね。」
「はい!それじゃまた!」
そう言って2人はこのThe Worldを後にした。


****


「データ増量!グリーマ・レーヴ大聖堂に異変が!」
欅はネットスラムでキーボードのようなものを使いながら焦っていた。
「どうかしたの、欅!?」
「大聖堂にバグに感染しているPCを発見した!その近くに一般PCが!」

△隠されし 禁断の 聖域を知るものは数少ない。カイトは直感した。
「志乃さん?志乃さんが危ない!!」
「ちょっと!あそこに行っちゃ駄目・・・」
欅が言い終わる前に、カイトは転送してしまった。


****


「いた!志乃さん!」
カイトは大聖堂の扉にいる志乃を発見。

志乃は大聖堂の中に入った。
そこにはかかんでいる瀕死の銃戦士が。


「オーヴァン!」

その銃剣士はあのオーヴァンだった。
志乃はオーヴァンの元へ行く。

「オーヴァンって言ってた?よかった、見つかったんだ!」
表情がほころび、カイトも大聖堂に入る。


そこには・・・


「志乃・・・。」


「! あれは!?」
銃剣士の左手が黒い腫瘍のようなもので包まれていた光景を目にした。

「オーヴァン・・・」

「志乃さん!!」
「!、カイト!危ない、逃げて!!」
志乃は後ろにいるカイトに気づき、慌ててカイトの前へ駆け出した。
まるでカイトをかばうかのように・・・

 
  ズバアァァッッ


カイトは目を疑った。
刻まれる三つの傷痕。
志乃がカイトに覆い被さるように倒れてゆく。

カイトの耳に、今にも消えそうな声が聞こえてきた。


−カイト・・・最後のお願い・・・ふたりを・・・


「え・・・?」
カイトのまわりに円形の光が何度も下っている。
PCが半透明になり自動的にゲートアウトされていく。
その場に倒れそうな志乃を残して。


「志乃さん・・・!」





 −第六話 トライエッジ






あとがき
 ヤスヒコ登場。
 題名を見て蒼炎が出るんじゃないかって思ってた方、すいません。本物の方です。
 ハ長調ラ音の時に見えたものは無印の第二相イニス。
 志乃は元々アトリより前のイニスの適格者ですので。
 なぜ見えたのか、見えた意味は後ほど・・・
 この後大聖堂にハセヲが来ます。(Roots参照)
 また新旧主人公すれ違(略)

 あ、あとカイトと全く関係ないG.U.キャラを出してほしいとかリクエストがあったら
 感想スレなどに送って下さい。(有名なキャラで)
 予定では揺光、碧を出そうと思っています。


[No.456] 2007/03/25(Sun) 18:46:37
第七話 三爪痕 (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

「志乃!」
大聖堂で倒れた志乃に叫びかけるPC『ハセヲ』。
「志乃!おい、しっかりしろよ!!」
ハセヲが呼びかけるも、志乃の反応はない。
「リプス!リプス!!」
ハセヲは何回も回復魔法『リプス』を唱えても志乃は目を開けなかった。そして・・・

志乃の体からプログラムの破片がいくつも散っていく。
「なんだよ、これ・・・?くそっ!」
ハセヲのPCが動きを止め、電話の音が聞こえる。どうやら志乃に電話をしているようだ。
「おい、電話出ろって!おい!頼む、早く!」
その電話は一向に繋がらない。やがて志乃に異変が・・・

「し・・・志乃・・・」
志乃は全身が分解され、・・・消えた。
「あ・・ああ・・・」
ハセヲは呆然とその場にすくんだ。その目の前には、台に刻まれた三本の傷。
ハセヲは憎しみの表情を浮かべた。

「志乃おおぉぉぉぉぉ!!」

****

カイトはネットスラムに戻っていた。欅が強制的にゲートアウトさせたらしい。
欅によると志乃はやはりPKされたようだ。カイトは欅にオーヴァンがPKしたと
言っても「忘れて」としか返してこなかった。

志乃に何通もメールを送った。それもまだ返ってきていない。
行方を同じギルドだったハセヲに聞く選択肢もあるが、ハセヲの居場所も分からない。
このまま留まるしかないのかと思うとやりきれない気持ちになるカイトだった。
「志乃さん・・・どうしたんだ・・・」


****


「バグ反応発見!」
欅が異常なサーバーを見つけたようだ。
「じゃあ初仕事をしてもらうよ。今から僕の言うところに行って、黒い物体を
 除去してもらう。そいつにデータドレインを使うんだ。」
「黒い物体?オーヴァンの左腕にあった・・・」
「それはわからない。君しか見ていないんだろう?僕は詳細は知らない。」

「腕輪を所持してると感染まではしないようだ。・・・でもそこはなぜかログアウトできない。
 黒いやつを倒すまで他のモンスターにやられたら未帰還者になるのを覚えといて。」

−そんな危険なところが・・・やっぱりThe Worldには異変が起きている。


****


カイトは決心をしてそのエリアに踏み込んだ。他のモンスターはレベル的にも
差があるので楽勝に進めた。

その先にいたのは・・・
黒い物体、志乃をPKした物。

 −久しぶりだ、腕輪を使うのは・・・

カイトは右腕を上に掲げ、そして物体に向ける。
腕輪が光り出した。そして青い斑点が浮き出て、開花する。
この感覚・・・懐かしい。
今にもデータドレインを放つその時。



別の光が黒い物体を貫いた。

−!!?

その物体は形が変形して、消滅した。
カイトは腕輪の動きを止め、光の出所を見た。


−神出鬼没の蒼炎をまとったPCだ。

そう言ったヤスヒコの声が蘇った。
そこにはPCがいて、右腕を前に出している。その姿は・・・


****


「八咫様、三爪痕を発見しました!!」
女性PCがモニターを見ながら八咫というPCに呼びかけた。
「!? 待って下さい!三爪痕が2人います!!」
その声に八咫ははっとした表情でモニターを見る。
「馬鹿な・・・そんなことが・・・?」
「八咫様・・・?」

「本当に・・・彼なのか・・・?」

モニターには、゛2人のカイト゛が移っていた。


****


「君は・・・僕!?」

カイトはその姿を見て動揺した。
そのPCは目を見開き、カイトを威嚇している。

「アアアアアァァァァァァァァ・・・・」

呻き声をあげたその人物は、至る所がツギハギで、
蒼炎をまとい、カイトによく似た姿だった・・・

手に持っている双剣を展開させ、三本の刃が見えた。
彼はカイトの右腕に目をつけ、間もなく襲いかかってきた。

「ウオオオオォォォォォ!!」





 −第七話 三爪痕






あとがき
やっとトラ様を出すことができました。
ちょっと適当にまとめすぎましたね。第八話は細かく書こうと思います。


[No.569] 2007/04/07(Sat) 21:01:53
第八話 蒼炎の守護神 (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

「ガアアアアァァァァァ!!」

異物駆除の際に出くわした少年PCがカイトに襲いかかってきた。
三つの刃を持つ双剣で斬りかかる。
「がっ・・・!」
カイトはすぐさまガードしたが、あまりの勢いに弾き飛ばされてしまう。

壁にぶつかりずり落ちるカイト。その様子を見据えている少年。
少年は蒼い炎をまとい、ところどころにツギハギがあり、カイトに酷似している。

−なんでだ?僕にそっくりだ・・、しかも・・・

異物を難なく制したこと、妙な不陰気を出していること、なぜここにいるのか、
なぜカイトに似ているのか・・・

「こいつ・・・ただのPCじゃない・・・」

直感だったが、自分のボディだということがもう普通ではない。
この少年もThe Worldの異変の一つなのか・・・

−今は考えてる時じゃない・・・倒されたら終わりだ!

このサーバーで戦闘不能になった者は意識不明、未帰還者になってしまう。
カイトは逃げ切ろうとした。

が、目の前に少年がいなくなっている。

「ど、どこ・・・」
背後に気配を感じる。
「だ・・・」
迫り来る蒼いオーラ。
カイトは後ろに目をやった。そこにはあの少年が双剣を振り落とした後。

「ダッ!」
少年のかけ声とともに攻撃が繰り出す。

それはあの゛傷跡゛に酷似していた。

−!!

カイトのHPは0に。
その技はオーヴァンが繰り出した技。
志乃がPKされた技。

薄れゆく意識の中でカイトはヤスヒコの言葉を思い出した。
「神出鬼没の蒼炎をまとったPC」のことを・・・
ヤスヒコの言っていた条件がすべてその少年には備わっていた。

 
 −こいつが・・・三爪痕!?


三爪痕は仕留めたと思ったのか、その場を去ろうとした。


が、カイトの体が激しく光り始めた。
HPが回復し、完全復活している。

「「・・・?」」

カイトも三爪痕も理解できなかった。The Worldには自己復活の
システムはない。
ひとつカイトのアイテム欄から目立つ物が出ていた。

−イベントアイテム『黄昏のお守り』

このアイテムは△隠されし 禁断の 飛瀑での後に志乃がくれた物。
オーヴァンがレアアイテムだと言って志乃にくれた物だという。
「大事に持っててね。きっと役に立つから。」
そう言ってカイトにプレゼントしていた。

復活したのはその『黄昏のお守り』の効果なのだろう。お守りは効果を発動した後、
消滅した。
「志乃さん・・・。」
消息不明な志乃。どんなときででも彼女は自分を守ってくれていた。



「アアアアァァァァァアアア!!」
三爪痕の呻き声が沈黙を破った。右手を上に掲げている。
「!こいつも腕輪を!?」
三爪痕の腕には腕輪がついていた。その腕輪が光り、赤い斑点を開花させていく。

 
 −ポーン・・・


あの音が聞こえた。イニスを見た時のあの音が。
「ウオオオオォォォォォ!!」
二人は異世界に着いた。三爪痕の体が変化していく。
巨大で禍々しく、神とも呼べる姿に。


−『蒼炎舞・百花繚乱!』
 「ハアアアァァァアアアッッッ!!」
 「ぐあっ!?」

カイトは三爪痕に捕らえられ、空間の壁に押しつぶされる。
今度こそカイトのHPは0になり、その場からPCが消えていった。

「こ、こんなところでっ・・・。」

苦痛のカイトの声だけが残っていった。


****


−ネットスラム・タルダルガ

そこに一人のPCが流れ着いた。
「ううん・・・。」
そのPCは確かにカイト。PKされたはずのカイトだった。
「け、欅!」
カイトの目の前には欅がいた。
「ぼ、僕ちゃんと意識があるけど・・・どうして?」
「ちゃんと話を聞いてた?僕はバグを駆除するまでっていったけど。」

−あ、そういえば・・・言ってたような・・・言ってなかったような・・・



「三爪痕・・・オーヴァンと同じ技を使ってた・・・。」
三つの傷跡を付ける攻撃。
「それにあの腕輪の力・・・そもそも腕輪を持ってた・・・。」

「調査するべき所はいくらでもある。どうするカイト?」

言うまでもない、覚悟はできている。
「僕は仲間に会いに行く。そして志乃さんを探し出す!絶対に!」
「そうこなくっちゃ♪」

カイトはそう決心し、一歩踏みだした。





 −第八話 蒼炎の守護神






あとがき
ひさびさの更新です。最近勉強忙しくて・・・
自分の文とみなさんが作った小説が比べ物にならないくらいになってます(泣)
無印キャラをそろそろ出したいと思っているのですが、どのタイミングか
解りません。
次回出そうと思います。


[No.673] 2007/04/29(Sun) 21:00:32
第九話 Project G・U (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

三爪痕の出現から数日が経った。
あれからカイトは落ち着いていなかった。自分と同じPCがPK『三爪痕』だと
いうことが気がかりでしょうがない。
三爪痕についてはまだ情報不足だという。カイトは三爪痕とオーヴァンの関係が知りたかった。

三爪痕の情報は欅にまかせ、カイトは高難易度のエリアにバグが発生する可能性が
あるので、レベル上げに専念することにした。
と言っても今までカイトは志乃としかPTを組んだことがなく、
志乃がログインしていない今、カイトはソロ状態になる。

ソロでのレベル上げは効率が悪いので不安になるが、仕方がないので
カオスゲートに向かった。

 −前にもこんなことがあった気がする。

カイトがR:1時代、スケィスにオルカをデータドレインされ、
その翌日に一人でエリアに行こうとカオスゲートに向かうと
後ろから声をかけられた。

これがカイトとブラックローズが初めてPTを組んだ時のことだった。

期待が膨らむ。またあのようなことが起きるのではないか、
後ろからあの「ちょい待ち!」と声がするのではないか、と。
カオスゲート前に立ち、それに触れようとする。

「・・・やっぱりないか。そんな偶然・・・」

「待つのだ〜!!そこの人〜!!」

−!!

聞き覚えのある独特の声が聞こえた。直後にエリアワード入力画面が出てしまったので
解除して確かめようとした。

今の声は確実に『あの人』。

カイトにとっては゛超゛が付くほど意外で
無意識にログアウトしそうになったが、肩をその人にポンと置かれた。

「おぬし!私と以前出会ったことがないか?」

 −うっ、捕まった・・・

おそるおそる後ろを見やるカイトは金色の巨大鎧をつけたPCを見る。
ヘルメット的なものの奥に見える目、それは前に見た目と同じだった。
こんなセンスを持つ者は世界に一人しかいない、とカイトは思った。

 −ぴ、ぴろしさんだ・・・

カイトは口を開けたままぴろしであろう人物を唖然と見つめていた。

「やっぱりおぬしか〜。いや、ゆかいゆかい。久しぶり・・・」

と言ったとたん彼は言葉を止めた。

「・・・誰だっけ?」

この言葉にカイトはもっと唖然とした。

 −え!?お、覚えてないの!!?

「いやあ、すまんすまん。私の思い違いであった。
 さらばだ!頭上に星々の輝きのあらんことを!!」
「ちょっとぴろしさん!」
気づかないままその場を去ろうとするぴろしをカイトは制止する。
「僕ですよ、カイトです!覚えてますか?」

「・・・おお!いい目をした人か!?久しぶりではないか!七年も経っていたんで
 一瞬忘れてしまった。」
「やっと思い出してくれたんですね。僕は一瞬でぴろしさんだって思いましたけど。」
「いい目をした人、もう私は『ぴろし』ではない。」

そう言うとキラーン!とポーズを決めながら、


「『ぴろし3』だっ!!!」
と叫んだ。


ぴろし3(読み「ぴろしさん」)
明らかに自分の名前を゛さん゛付けで言わせようとしているようだ。
「ちなみにR:1の時点で『ぴろし2』を作っていた。」
誤解されたくないのか、ぴろし3は補足を言う。

「私は今『project G・U』というギルドの創立者をしておる。
 絵がうまい人は大歓迎だ。おぬしも入らぬか?」
「か、考えときます・・・っていうか他に誰が所属してるんですか?」
「ん、私となつめの二人だが・・・」

「なつめ!なつめもいるんですか?」

なつめやぴろし3は以前カイト達『.haclers』の一員で、緑色の髪と
糸目がチャームポイントのPC。

「そういえばなつめおぬしに会いたがってたぞ〜。モテる男はにくいな〜。」
「い、今どこに?」
「新しい双剣を手に入れる〜とかでエリアに行っているようだが。」

一度に二人も再会できる、そう思い、
カイトはなつめに会うべくぴろし3と一緒にそのエリアに向かうことにした。

もちろん、欅に言われたとおりほんのわずかだが。


−ぴろし3のメンバーアドレスを手に入れた!


****


−△欠かさざる 森厳の 眠り姫

エリアではレンゲキなどを駆使し、なつめを探す。

このエリアのミッションはボス討伐。二人はボスのいるところまで進んだ。
すると、

「ん、あの娘なつめではないか?」
「え?」
二人の先にはボス『ギガマウス』を倒していたPCがいる。

「なつめ?君、なつめなの?」
カイトは彼女にに声をかけた。こっちを振り向いた彼女は以前より大人びて、
面影がある。が・・・

「「な、なつめ!?」」
同時に二人は驚いた様子で言った。なつめのあの糸目が開き、妙な不陰気を出していた。
あの三爪痕のように。

「ああああぁぁぁぁぁ・・・・」
発声も三爪痕のようだ。こちらを睨んで迫ってくる。
「ひとまず逃げるぞ!キルされる!来い、いい目をした人!」
そう言ってぴろし3はカイトの手を引き走り出した。
ただならぬ状況にカイトも駆け出す。

タウンに戻るゲートを発見し、すぐさまこのエリアから抜けだそうとした。
なんとかなつめに襲われる前に逃げ延びることに成功。
あと数メートルで攻撃を喰らっていたところだ。

「なつめ・・・!」
人格が違うように変わったなつめをカイトは転送されるまで心配そうに見ていた。


****


マク・アヌに着いたカイトとぴろし3。
「たまになつめはああなることがあるのだ・・・リアルには影響ないようだが
 当分あのPK状態のままになる・・・。」
ぴろし3はそう言って落ち込む。ぴろし3は大黒なつめ本人に聞くと
そのことは全く覚えていないという。

「おぬしと会えば直ると思っていたが・・・
 まあなつめが戻って来たらおぬしのことは知らせるので安心したまえ。」

わっはっはっは、とぴろし3が自信満々だったのでカイトは任せることにした。
「はい、お願いします。それじゃあ。」
「さらばだ!いい目をした人!」
そう言ってぴろし3はログアウトしていった。


カイトもそろそろログアウトしようと思ったその時、
また後ろから声をかけられた。

「ちょっと失礼。」
振り向くとピンクのツインテールの髪に、眼鏡をかけた女性PCがそこにいた。

「『カイト』。いきなりだけどちょっとついてきてもらってもいいかしら?
 我々のギルド『レイブン』へ。」
「・・・?」

欅、三爪痕、そしてこの女性PC。カイトの元へ現れる謎の人物によって
カイトは着々と謎に迫りつつあった。





 −第九話 Project G・U





あとがき
 終わり方がパターン化してきた・・・(泣)
 何度も新しい人物が出で終わりかよ!とか思ってた人すいません。
 誰か話のいい締め方を教えてください(殴)
 本題ですが無理矢理ぴろし3となつめを出した感が出てしまいました・・・
 というか最初に再会した仲間がぴろしさんっていうのも問題が(ぴろし社長すいません)


[No.709] 2007/05/02(Wed) 23:04:27
第十話 レイヴン (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

「最近よく人に背後から声かけられる・・・」
「? 何か?」
「い、いえ!何でも・・・」

なつめ騒動の直後にピンクのツインテールが特徴的なPCに呼ばれ
(仕方なく)ついていくことにしたカイト。
どうやら彼女のギルドのホームに向かっているようだ。

「あの、どうして僕がカイトって分かったんですか?」
「正確には私のギルドマスターが。貴方のことをよくご存じだったようよ。」
「・・・・」
「さて、着いたわ。ここよ。」
そこには案外小さめの@HOMEがあった。

「ここにいるんですね。」
「いえ、ここのホームの施設に。」
「施設?」
「詳しくはそこで、行きましょう。」

****

「ここって・・・」
辺りを見渡すカイト。そこにはモニターのようなものがいくつもあった。
「八咫様、ただいま戻りました。」
そう女性PCが言った後、施設の奥から声がした。
「ご苦労。」

−この声・・・どこかで・・・
「ようこそ”知識の蛇”へ。カイト。」
この施設の名だろうか。そしてようやくギルドマスターの姿が見えた。
八咫というPCは修行僧のような姿をして、威圧感が漂っている。

「初めまして。八咫さんとおっしゃるんですね。」
「別に敬語でなくていい。私達は旧友なのだから。初めましてでもない。」

−初めてじゃない?やっぱり聞き違いじゃなかったのか・・・

「本題に入るが・・・なぜ君を呼びだしたのかは、三つほどある。
 君はなぜそのPCの姿なのか。」
「・・・・」
答えづらかった。なるべく多くを語るなと欅に言われていたからだ。
「答えたくなければ、答えなくていい。誰にも事情はある。」
「す、すいません・・・」
「次に行こう。」

「とあるダンジョンで君は三爪痕に遭遇している。そうだろう?」
「! なんでその事を!?」
「この『知識の蛇』ではThe World内すべてが手に取るように見える。」
そう言って八咫が端末に手をかけると、目の前にスクリーンが現れた。

カイトがバグに向けデータドレインを打とうとしているところが映った。
「このフロアの右を見てみよう」
八咫の声と共に映像が右に向いていくのが解った。
そこには・・・

「三爪痕!」
カイトとは別のところに立っていた三爪痕。彼は確かにデータドレインを使っている。
「あの時の光は三爪痕のデータドレインだったんだ・・・」
「彼は君に似ていながらさらに腕輪も所持しているようだ」

映像が早送りし、カイトが志乃に貰ったアイテムで回復したところに映った。
三爪痕が右手を上げ、腕輪を開花させて異世界に・・・

「ここだ。憑神に似る存在・・・」
「憑神?」
「君が以前倒した、『禍々しき波』に由来する存在だ。」
「八相・・・!」
「君には見えたのだね?」
「はい。」

「あの力は碑文ではなく腕輪の力か。しかし憑神に匹敵するほどの・・・」
カイトは八咫の言葉に追いついていけず、チャットコマンドで?を出していた。

「君の腕輪にもあの力が宿っている。いや、データドレインやゲートハッキング
 以外にも様々な力が・・・」
「・・・この腕輪に、あの力が?」
手も出なかった覚醒した三爪痕の力が自分の腕輪にあると言うのだ。

「憑神の力は計り知れない。スクリーンではなく実際に見てみるとしよう。
 アリーナで決勝戦が始まるころだ。」
「アリーナに?」
「紅磨宮のチャンピオンに挑戦者が挑む。その挑戦者が『碑文使い』なのだよ。」


****

アリーナは観客の歓声に包まれていた。
カイトと八咫は一番上の人が少ない場所にいた。

チャンピオンの名は“揺光”。
挑戦者の名は“エンデュランス”。

「あの『エンデュランス』っていうPCが、三爪痕と同じ力を・・・?」
「第六相の碑文使い・・・君は彼を知っている。」
「え?」
そう会話をしていると揺光、エンデュランスが入場してきた。

「ミア・・・懐かしいにおいがするね・・・どこからだろう・・・」


エンデュランスは呟いたあと、観客席の周りを見渡している。
カイトにエンデュランスの顔がはっきりと見えた。



 ポーン・・・



−!! また! まただ!!

カイトに“あの音”が聞こえる。それと同時に第六相『マハ』の姿が現れた。


「はっ!」
カイトが正気に戻る。

−彼を知っている
−あの顔、あの面影
−第六相 マハ

すべてが繋がった。

試合が始まった。揺光がエンデュランスに迫っていく。

「つまらないな・・・」





 −第十話 レイヴン






あとがき
や、やっと書き終えた・・・
そして無理に無印キャラを出した・・・(爆
それでは(早


[No.745] 2007/05/19(Sat) 22:19:01
第十一話 魅惑の恋人 (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

「これが・・・憑神!!」

アリーナ紅磨宮タイトルマッチ『揺光VSエンデュランス』
試合開始直後に三爪痕との戦闘の時のように異空間が広がる。

カイトが見たものは猫の上半身に薔薇の下半身を持つ巨大な生物、
かつての第六相『マハ』の面影を持った生物。

「弱い・・・よわい・・・ヨワイ・・・こんなんじゃ『彼女』が喜んでくれないよ・・・。」

エンデュランスの声が聞こえてくる。『彼女』とは一体誰のことを指しているのだろうか。
「!? どこにいった!?」
対して揺光は憑神が見えていないのだろうか。あたりを見渡している。

エンデュランスの憑神が激しい光を放ち、異空間が消え、もとの闘技場に戻った。
揺光はその場に倒れ、HPが0になっていた。

「おお〜っと!!いきなり勝負が着いてしまった!!どういうことだ〜!?」
「どういうことって・・・憑神が見えてないの?」
「一般PCにはな。憑神は碑文使いにしか見えない。」

「紅磨宮新チャンピオンはエンデュランス選手だぁ〜!!」
ナレーターがそう言うと、観客席は開始よりももっと歓喜に見舞われた。

「これが憑神だ。君と君の腕輪にはあれと同様の力が眠っている。」
「これが憑神だ。って言われても全然ピンとこないんですけど。」
「ならば直接エンデュランスと会って見たらよかろう。次に私が呼ぶときまでに
 接触を試みてくれ。以上だ。」
「え?ち、ちょっと!」
カイトの言葉を最後まで聞かず八咫はログアウトしてしまった。

「全く勝手・・・ん?」
カイトが反対側の観客席を見てみると、見覚えのあるPCがこちらを見ていた。
大聖堂、三角形の傷痕が思い起こされる。
青年PCは左腕に拘束具のようなものをつけていた。


−オーヴァン!!


あの時志乃をPKしたPC『オーヴァン』がカイトを見てニヤリと笑っているのが見えた。

「見つけた・・・!逃がすか!!」

カイトは急いでオーヴァンの後を追う。あの事件の詳しい事情を聞くために。

カイトはアリーナの裏路地まで行った。オーヴァンがログアウト寸前のところだった。
「待て!オーヴァン!!」
オーヴァンは叫ぶカイトに横顔で勝ち誇ったような笑みを浮かべ、ログアウトしてしまった。

「くそ、あともう少しだったのに・・・。」
そんなカイトの後ろに1人の人影が立っていた。


「ちょいとアンタ!なんでこんな所におるん!?」


関西弁の少女の声がし、見てみると帽子をかぶり、ランドセルを背負った
魔導士のPCがカイトを睨んでいた。

「ここはエン様の特別入退場の場所や!はは〜ん。さては
 エン様を独り占めしたくてここにいるんやな?そうはさせへんで!」
「エ、エン様?」
この少女はどうやらエンデュランスのファンらしく、カイトがエンデュランスに
会うためにここにいるのと勘違いしているようだ。

「ち、違うよ、僕は・・・」
そう言おうとした瞬間、横からPCが転送してきた。

−!
「エン様〜!」
転送されてきたのはエンデュランスであった。
「アンタ!そこをどき!エン様の邪魔になるやないか!」
そう少女が言っていたが、カイトはそのままエンデュランスを見ていた。
「エン様はアンタみたいなもんに興味は・・・ってエン様?」
エンデュランスは驚いたようにカイトを見ていた。

「カイト・・・?」
エンデュランスが呟く。
「久しぶりだね、エルク。」

エルク、かつて.hackersの1人だった。
七年前に行動を共にした仲間との再会。





 −第十一話 魅惑の恋人






あとがき
 文章に無理が出てきた・・・。キャラの出し方も無理が出てき(ry
 予定しているVol.2にもうすぐ行きそうです。
 Vol.1が終わればですけど・・・
 タイトルあんま関係ねーじゃん!て思っている方すいません。


[No.770] 2007/06/09(Sat) 18:19:34
第十二話 『彼女』 (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

「は?アンタ何言ってんねん!エルクって誰や!」
「何年ぶりだろう・・・元気にしてた?」
「って聞いてへんし・・・」

「カイト・・・キミはどうしてボクの前からいなくなったりしたの・・・」
エンデュランスは悲しげな顔を浮かべていた。
「そ、それは・・・」
「キミがいなくなって・・・彼女もいなくなって・・・
 ボクは本当に1人だったんだよ。」

「でも、もうボクは1人じゃない。ボクのところに戻ってきたんだ。彼女が。」
「彼女?」
エンデュランスの肩に白い猫が寄り添うようにいた。エンデュランスはその猫を
優しく撫でている。

「ほら、ここにいるでしょ?」
「エルク・・・その猫は・・・」
「姿は変わってても、ミアはミアだよ。ボクには解る。」
「それはミアじゃない!ミアは・・・」

カイトはあの光景を見た、あの『事件』を・・・

「カイト、キミは誤解してる。戻ってきたんだよ。ボクのところに。」
カイトに対し、エンデュランスは困ったような顔をしている。


どちらもミアの存在を否定してほしくない、そう思ったから。


「あ〜もう!アンタなんの話してんねん!?わけわからんわ!
 エン様、こんなんほっといてウチと一緒に・・・」
「カイト、キミがどうしてこの世界でその姿なのか、キミをもっと知りたい。
 ボクはいつでもここにいる。また逢おう。」
「うん・・・またね・・・」
その言葉を聞くとエンデュランスはカイトと向き合いながらログアウトしていった。

「エン様も聞いとらへん〜!ちょっと〜!」
少女が呼び求めたが、もうそこにはエンデュランスはいない。
まさに置いていかれた捨て猫状態。
少女の目はすぐさまカイトに向けられた。

「アンタ!エン様のなんなん?どういう関係や!気安くエン様に話しかけおって!」
「えっ、え〜っと・・・」
カイトは少女の気迫に押し倒れそうになったが、体を持ち直して答えた。
「前のThe Worldのときからの友達・・・かな。あれから七年だから
 僕らは中学生だったような・・・エンデュランスがその時に使ってたPCの
 名前がエルクって言って、姿は今のエンデュランスの少年時代みたいな・・・」

こんなに喋って良いのだろうかと思ったが、何か喋らないとなにか起こりそうなな気がした。

「・・・どうしたの?」
少女が黙り込んでいる。震えているように何かを言おうとしていた。

「エ・・・」
「?」



「エン様の子供のころの姿やてえええ〜〜!!!!!?」



少女はそう叫びながら両手を顔に当て頬を赤く染めていた。

−え?そ、そっち?友達とか、そこじゃなくて?

「エルクって名前だったんや〜!エン様の少年時代・・・
 あ〜もう考えただけで頭爆発しそうやわぁ〜!」

そんな少女をよそに
「あっ、ショートメールだ。」
カイトに届いたメールは八咫からの呼び出し。

「あの〜僕もう行っていいかな・・・?」
「ダメや!アンタにはいろいろ教えてもらうで!どんなんやった?
 好きなアイテムは?なにが趣味?あとは・・・」
少女はカイトに背を向けいろいろ質問を考えている。

「しょーがない、今のうちに・・・」
このままここにいたら質問漬けにされるのが目に見えたカイトは少女が後ろを向いている隙に
ここから立ち去ろうとした。
「とりあえずこれだけでい・・・ってアンタ!待ちぃ!!」
「用事できたから!じゃあねー!」
カイトはマクアヌへ転送していった。

「カイトって名前やな・・・覚えとくで・・・」


****


レイヴン@HOME
ここには八咫とパイ、そしてもう1人の青髪の青年PCがいた。
「皆、集まったようだな。」
「あの、用事って?」
「君はエンデュランスとの接触に成功したようだな。」
「なんでその事を?」
「この知識の蛇ではThe Worldの出来事はお見通しだ。」
知識の蛇にはたくさんのモニターがある。そこから見ているのだろう。

「なんかずっと監視されてるようで嫌だな・・・」
カイトは聞こえないように呟いたが、
「? 何か?」
「い、いえ!何でも・・・」
またパイに聞こえていたようだ。

−このパイっていう人、地獄耳だなぁ・・・

この言葉は聞かれないように、口には出さなかった。

「エンデュランスの正体や肩の猫について解ったようだね。」
「あなたも.hackersだったなら覚えていますよね、ミアを。
 エルクはあの猫をミアだと思っているようですが・・・」
カイトは一息おいて続けた。

「僕はそうは思わないんです。」
「その通りだ。先程調べたところ、あの猫からウイルスの異常が発見された。」
「! じゃあエルクはウイルスに騙されてるってことですよね!?」
ウイルスのバグはあの『黒い腫瘍』のことだろう。早く処理しなければ
エンデュランスの身になにか起こることは予想がついた。

「しかしもし削除したとして、エンデュランスの精神が崩壊し、The Worldを
 やめかねん。そうなれば我々の計画はストップしてしまう。」
−そうか、エルクにはミアが唯一の支えなんだ。

すると青年が
「そんじゃあ今はエンデュランスのことよりカイトに憑神のような力を
 身につけさせるのが優先だろ?」
「・・・そうだな。パイ、クーン、カイトを連れてその手ほどきを頼む。
 精神の調整のために長い猶予をあたえておく。」
「じゃあカイト、1ヶ月後にまたここに。いろいろ準備をしておいて。」
「はい、わかりました。」
カイトはあまり状況が把握できなかったが、パイに頷いた。

「気楽にいこうぜ。実は俺もこのギルドに入ったばっかなんだ。
 慣れないだろうけどあまり堅くならなくてもいいって。」
「ありがとうございます。僕はこれで。」
声をかけてくれたクーンに礼を言い、@HOMEを去った。


****


−腕輪の力・・・かぁ。
月の樹@HOMEで腕輪について考えていた欅。
彼は三爪痕やオーヴァンについていろいろ調べていたが情報は今ひとつ。

「どうなさいました?欅様。」
そう問いかけたのは月の樹三番隊隊長、楓。
「いえ、なんでもないです。」
欅は感づかれないように何とかごまかした。

−まあ『あの2人』が何か掴んでそうだから、気長に待とうかな・・・


****


−志乃さん・・・いつ戻って来るんだろう・・・。

マクアヌの港区で1人物思いにふけていたカイト。

−僕は・・・いつブラックローズ達に逢えるんだろう・・・。

もしかしたらこのまま逢えないかもしれない。そして志乃にも。
「そんなこと考えちゃダメだ!憑神の力も使いこなしてみる!絶対に!」

「『大丈夫、ひとりじゃない。』、か・・・」
そう言うと右腕を空にかざす。
「待ってろ、オーヴァン!!」



残り1ヶ月・・・それがカイトのカウントダウン・・・





 −第十二話 『彼女』






あとがき
 決して欅は猫かぶっている訳じゃありません。(汗
 普段はゲームみたいな無邪気な子供みたいなんですよ。カイト以外には(オイ
 さあVol.1もあと2話!!(順調にいけば)
 Vol.2への伏線も作ったし、レッツ・トライエッジ!(?


[No.789] 2007/06/20(Wed) 23:34:49
第十三話 終末の日 (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

−1ヶ月後・・・

カイトはマク・アヌの広場で八咫からの呼び出しを待っていた。
この1ヶ月間は精神を休ませるためのものだったが、正直休む暇も
なく、いろんなことが起こっていた。

−やっと今日が来た・・・この日が。
待ちわびたこの日。オーヴァンや志乃に関する情報が得られる機会をずっと待っていた。

武器を買い、レベル上げをし、準備万端・・・かと思いきや、
「あ、回復アイテムが少ない。」
カイトのレベルにあった『癒しの水』が残り3つになっていた。
「呼び出される前に買っておこう。」
広場にいたのでそこのギルドショップによることに。

ショップ名は『ショップどんぐり』

ギルド名は『カナード』

そこには斬刀士の青年PCと魔導士の獣人PCがいる。
「すみませ〜ん。『癒しの水』ありますか〜?」
「はい!いらっしゃ・・・」
青年PCの言葉は途切れ、少しの間沈黙が起こる。

「ああああぁぁぁぁぁ〜〜〜!!君は!!」
青年はカイトを見て広場全体に響き渡るような声で叫んだ。
「ひいいいぃぃぃぃ!!」
一方、獣人PCは青年の後ろに隠れている。なぜか怯えている。
「び、びっくりしたぁ。」
目の前で叫ばれたので耳に響いた。音量調節を誤ったのかとも思えるほどだ。

「あの時の初心者さん!いやぁ〜こんな所で会うなんて。呼んでも返事が来ないから
 心配したよ〜。(^^)」
「あの〜すいませんが・・・どちら様で?」
「いやだなぁ〜、とぼけちゃって!君にガスパーがぶつかったの覚えてるでしょ?」
相手はカイトのことを知っているようだが、カイトには見覚えがない。

−なんで僕のことを・・・?僕が彼らのことを忘れてるのかな・・・
「あ、ごめんごめん。ガスパーっていうのはここにいる彼。」
「は、はぁ・・・」
「でもあの時とちょっと様子がちがうね。前はもっと暗くてPCも
 怖かったし・・・」
「やっぱり思い出せな・・・」
「そうだ!僕達のメンバーアドレス持ってるでしょう?」
そう言われて確認したが、リストには

志乃
クーン
パイ
ぴろし3
蒼月

匂坂
フィロ

の8名のみ。

「ないね・・・。あの後PKされちゃったのかな・・。
 まあいいや、もう一度あげるよ。受け取って。」

−シラバスのメンバーアドレスを手に入れた!
−ガスパーのメンバーアドレスを手に入れた!

「よ、よろしくだぞぉ〜・・・・」
「ガスパー、いつまで隠れてるのさ。」

シラバス達が話をしているところでカイトはあることを思い出した。
「そうだ、『癒しの水』ありま・・・」
と言いかけたところで
「おっ!カイト見っけ!」

「「クーンさん!」」
背後から声をかけた主はクーンだった。3人は声を揃えて驚いた。
「クーンさん、どうしてここに?」
「別にいても珍しく無いと思うけど・・・そこにいる勇者に用があったもんでな。」
「ゆ、勇者〜!?」
勇者と呼ばれた勇者カイトは困った顔をした。

「え〜、カイトが〜?」
「カオティックPKから一般PCでも助けたりしたの?」
「そんなわけないよ!ほらっ、クーンさん、行きましょう!」
「おいっ、そんな押すなって。」
恥ずかしくなったカイトはすぐにここから立ち去りたくなり、おもわず力が入った。

「バイバ〜イ、カイトォ〜!」
「またのご来店お待ちしてま〜す!」


****


−マク・アヌ、カオスゲート前

「じゃあカイト、このエリアに行ってくれ。」
「・・・クーンさん、レベル40のダンジョンじゃないですか。僕まだ25なんですけど・・・」
「今の時期にPCがあまりいないダンジョンだ。お前の開眼練習は自分以外のPCがいると
 気が散っちまうみたいだから。」
「? っていうことはまさか・・・」
「俺は『知識の蛇』で見ていることになる。」
「えー!そんなぁ!パイさんも『知識の蛇』ですか!?」
「そーいうことになるな。少なくともパイと2人きりなんて絶対にさせん。」

 −そういう問題ですか?

「よし、じゃあ行って来い!」
「はぁい・・・」
笑顔のクーンはやる気のないカイトを見送った。

「あ、『癒しの水』忘れた・・・」
時すでに遅し。カイトはエリアに転送されていった。


****


−△絡みつく 喜びの 毒牙

一般の洞窟ダンジョン、しかし異変が起きていた。
グラフィックが全体的に暗く、ノイズが走っていた。

「どうしたんだろう、ここ。」
不安げにダンジョンを歩くカイト。だが彼は七年前の経験でノイズには慣れている。

 
 キイイイィィィィィィィン・・・


「これは・・・」
突然腕輪が光り出した。一点を光が射している。その先を見ると
壁に三角形の傷ができていた。
−三爪痕の傷痕〈サイン〉!?

なぜこんな所にあるのか解らなかったが、カイトは傷痕を調べようとし、触れてみた。

その瞬間、ノイズが激しくなり、触れた手が吸い込まれていく。

「わああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

カイトは完全に吸い込まれ、傷痕も消えてしまった。


****


 −・・・・

カイトが目を覚ますと、印象的な建物が目に見えた。

−グリーマ・レーヴ大聖堂

引きずり込まれた先は大聖堂の扉付近だった。

「Welcome to The World」
「!」
声をかけられ、さっと振り向くカイト。そこにはいつしか見た銃剣士の姿が。

「聞いたことがある言葉だろう?.hacker」






 −第十三話 終末の日






あとがき

最近未完成が多くてすいません。
設定の方少し変えました。(志乃の年齢、カイトの容姿)
メンバーアドレスの件で目を疑うような点がありますが今のところスルーで。(おい
後々わかると思います。


[No.810] 2007/07/07(Sat) 17:59:00
第十四話 守護神開眼 (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

「やっと見つけたぞ、オーヴァン!」
カイトはオーヴァンに詰め寄り胸ぐらを掴む。

「勇者は大人になるとこんなに失礼な態度になるのか?」
「うるさい!聞かせてもらうぞ!志乃さんのことや三爪痕のこと、
 それにその左腕のことを!」
「志乃・・・あの男にでも聞いたらどうだ?」
オーヴァンの指は聖堂を指す。

そこには2人のPCが戦闘していた。1人はよく見ると錬装士だ。
黒く、まるで死神のような、おぞましい姿。

「ハセヲ・・・君?」

今やPPKとして名高い『死の恐怖』、スケィスと同じ異名、ハセヲ。
かつて志乃やオーヴァンと同じギルドにいた。

「こんなところに何で・・・なにをしてるんだ?」
「俺もその質問をお前に聞きたいな。強制的に呼び出され、そんな姿になって
 何をしているのか。」
カイトは欅からメールをもらい、The Worldを再会した。
危険ではあったが欅は決して強制的にカイトを差し向けていた訳ではない。
辞めるという選択権を与えてくれた。
それでも辞めなかったのは、かつての仲間に会いたい、その思いがあったからだ。

「お前のPCも半分はあっちが持っているようだ。」
カイトはもう1人の方に目を向ける。生気が感じられない、自分と同じ姿のPC。

「三爪痕!!」

アウラの像があった場所の前で三爪痕はハセヲの攻撃を片手で軽々と防いでいる。
「ハセヲはずっと待っていた。そして見つけたんだ、志乃の仇を。」
「違うっ!お前がPKしたのを僕は覚えている!」
「ハセヲにそう思いこませているだけだ。俺の目的のためにな。」
「思いこませている?なんで・・・?
 それに志乃さんはハセヲ君の前にも現れていな・・・」

「志乃はこの世界に眠っている。」

「・・・え?」
「リアルは病院にいる。どういうことかわかるだろう?」
カイトに悪夢が走る。

「そんな・・・嘘だろ・・・!?」
「憎いか?俺が。志乃を未帰還者にしたこの俺が。」
「ふざけるなああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
双剣を手に持ち、殺気を剥き出しにしてオーヴァンに斬りかかる。


「ん・・・迷い犬が追ってきたようだ。」


双剣で斬りかかるより先にカイトに突き刺さったものがあった。
オーヴァンの左腕の拘束具が外れ、黒い腫瘍が浮かび上がり、槍のような
ものがカイトのPCを真っ二つに引き裂いた。

「ぐ、ああっ・・・」
「貴様ら.hackersが何をしても構わない。だが俺の邪魔はするな。
 お前達でも解決できないことがある。」

「ぐあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
二つの悲鳴が重なった。カイトとハセヲが場から消されてゆく。

−.hacker、お前には力がない。だから志乃も救えなかった。
 お前には・・・


****



かつて見た異空間。バラバラのカイトのPCが広がっていた。

オーヴァンの声が休むことなく頭の中で響いてくる。

−目覚めろ!憑神と対なる力に!

 
  ポーン・・・


「イ・・ニ・・ス・・?」
姿は違っていたが、直感で気がついた。マハも姿が変わっていたからだ。
−腕輪が光ってる。まさか腕輪に引き寄せられた・・・?

ひとりでに腕輪が開花し始めた。イニスを越えるほどの大きさに。

−来る・・・

感情が、憎しみが、殺意が、こみあがってくる。

−来る・・・!

 −憎いか?俺が。志乃を未帰還者にしたこの俺が。




「オーヴァアアアァァァァァァァァァン!!!」



「はあああああああぁぁぁぁぁっっ!!」
体が修復され、カイトの背中から巨大な角のようなものが突きでできた。
その姿は三爪痕と、いや両手に巨大な蒼炎に包まれた剣を持っているのが唯一違かった。

イニスがカイトに目がけて突進してくる。カイトもイニスに双刀で
斬りかかりに出た。

「がああああああああああああああああああああぁぁぁ!!」


守護神と憑神が今、激突する。





 −第十四話 守護神開眼







独り言

久しぶりの更新です。
もうすぐVol.1が終わります。後二話くらいで終わるって嘘ついちゃって
すいません。まだ続くのかよって思っている人もすいません。
Vol.となっている以上、二作以上続きます。
どうか最後までどんな目でもいいですから見ていてください。

アリプロで怪○王女とも出会・・・(終了


[No.869] 2007/08/03(Fri) 20:32:13
最終話 漆黒の破壊者 (No.167への返信 / 1階層) - 菊千文字

「一発で開眼しただと!?あいつ・・・天才か!?」

−レイヴン@HOME、知識の蛇
八咫、クーン、パイがカイト達が写っているモニターを見ている。
「パイ!あいつが危険だ!行くぞ!」
「待って!三体以上も憑神を使ったらサーバーが崩壊してしまうわ!」
「だからってこのままここにいても・・・カイトはまだあの力は初めてなんだぞ!?
 野生化した憑神に対抗するのは危険すぎる!」
「大丈夫だろう。」
「八咫・・・?しかし・・・」
「彼は負けはしない。近くににいた私だから解る。」
八咫は絶対の自信を持っていた。
しかしカイトになにもしてやれないクーンには罪悪感が漂った。


****


「おおおおおぉぉぉぉぉぉっっっっ!!」
蒼炎の守護神とイニスが激突。どちらも一歩も引かない。
「この力!この力だぁ!!」
双刀を一回転させイニスをなぎ払う。

−これが『憑神』と対なる力『守護神』!
コントローラーではなく体の神経がThe Worldに繋がっているようだ。
この力さえあれば何者にも屈さないと感じるほどだ。

一方イニスも引かない。過去にカイトに倒されたからなのか、
腕輪に敏感に反応し、暴走している。
しかし絶対的な力を手に入れたカイトの目的はひとつ、

「邪魔だ、お前じゃない・・・奴を・・・オーヴァンを出せえええぇぇぇぇぇ!!」
表情が一変し、双刀で五連撃をたたき込む。相手を弾き、追いかけ、頭部を鷲掴み、
空間の壁に突き落とす。

「蒼炎舞・百花繚乱!!」

前に三爪痕にPKされた技だ。その技ももう身につけた。
イニスの体力が消滅し、逃げようとしている。
「とどめだぁっ・・・」
カイトは右腕を構え、腕輪を開花させてゆく。データドレインを放つつもりだ。


****


「ええええええええ!!カイトさんが!!?いつ!?どこ!?ねえ!!」
「お、落ち着けぇ、まったくあやつのことになるとそそっかしくなるなあ、お前は。
 相変わらずあの赤い服だったぞ。」
「そ〜ですか・・・ん?前のPCは引き継げないはずじゃあ・・・」
「・・・・」
「・・・・」
沈黙が続く、ここはProject G・Uの@HOME、ギルド員はたったの二名。
「と、とりあえず呼び出してみるか。」
図体のでかいPCぴろし3がメンバーアドレスを確認している。

−あぁ・・カイトさん・・・あなたと出会えた時が懐かしいです・・・早くあなたにお会いした・・・
「おや?返事がない。」
「・・・え?」
また沈黙が続く。

「あっはっはっは!忙しいようだ。また日を改め・・・ってうお!」
「早く呼んでください〜!どうしても今会いたいんですぅ〜!!」
女性PCなつめがぴろし3の肩をこれでもかと言うほど揺らす。
「やめろ〜!暴れるな〜!」

このなつめとぴろし3のやりとりはあと30分ほど続いた。


****


「・・・カイト?」
アリーナの裏でエンデュランス=エルクが何かを感じ取ったようだ。
「キミはまた・・・ボクの前からいなくなろうとするの?」
彼にはもうThe Worldからカイトは存在しなくなったと思っていた。

だがそれは、想像ではなく、確かに感じ取れた。


****


「くそ!このPCめ!」
1人の男性PCが何かを刀で切り刻み、消していく。
それはあの黒い腫瘍、バグデータ。

「あのハッカーめ!今更こんなものを!」

斬刀士、並はずれた実力の持ち主だと伺える。

「俺は俺の正義を貫く!誰にも干渉させない!」

背を向けると、彼はそのダンジョンから転送していった。


彼の背の白く輝く翼の光だけがその場に残る。


****


カイトの親友ヤスヒコが向かった先はカイトのプレイヤーの家。

彼はカイトにあることを伝えに来た。

カイトの部屋のドアの前に着く。一息おいて扉を開ける。


「よお!俺・・・お前に・・・」
部屋の中を見た瞬間、ヤスヒコの表情が変わった。


「おい!!しっかりしろ!どうしたんだ!!?」


彼が見た光景は、床にCCDゴーグルをつけたまま倒れ込んだカイトのプレイヤーの姿。


****


「だめだ!止められない!」
ネットスラムでカイトを監視していた欅が焦っている。
「こんなことになるなんて・・・くそ、オーヴァンめ!」

「もう、彼らを呼ぶしかないか・・・」
欅は七年前の英雄達を思い浮かべる。
それは危険を伴う最大の手段だということは知っていた。


****


「アアアアアアァァァァァ・・・・」

グリーマ・レーヴ大聖堂に渡る呻き声。
三つ又の双剣を持ちたたずんでいる三爪痕のものだった。
彼はアウラの像があった場所をずっと見つめている。

「? カイトくん、どうかしたの?」
「・・・・」

三爪痕の隣にいる帽子をかぶった小柄な少女PCが声をかけてみる。
しかし三爪痕は動じず反応がない。

 キイイイィィィィン・・・

右腕の腕輪が突然光り出した。何かの合図だろうか。

「その右腕に・・・アレがあるんでしょう?」
「・・・・?」

一般PCには腕輪が見えないはず。
しかし少女は三爪痕の腕に何かがあるのがわかるようだ。

「ボクの友達も君と似たようなPCで、特別なアイテムを持ってたから・・・」
「・・・・」

少女の言葉や腕輪が光っている意味が分からなかったが、
のちに三爪痕は知ることになる。

「アアアアァァァァァ・・・」


****


データドレインを受け、遙か彼方にとばされるイニス。

「第二の碑文、惑乱の蜃気楼ゲットォ・・・」

空間が元通りになり、カイトも元に戻った。
「やった・・・すべてがひれ伏す力、すべてをねじ伏せる力を・・・」
殺意が満ちた声で腕輪のついた右腕を突き上げ、


「手に入れた!!!!」


ダンジョンの隅から隅まで聞こえるような声を張り上げる。
普段のカイトとは思えない。

「ふはは、ははははははは・・・ハハハハハハハハハハァ!!!!」

カイトに異変が起きた。腕輪から、色が黒く、服が、帽子が、
フェイスペイントが、そして目の色が、

肌の色以外すべてが漆黒に染まった。

「オーヴァン!待ッテイロ!決着ハ、必ズ着ケテヤル!!」

オーヴァンに戦線布告をし、黒い炎に包まれ消えてゆくカイト。

彼はもうカイトではなく、The World最悪のAIと化してしまった。







カイトとハセヲ、この2人の出発点は同じだったが、違う運命を歩もうとしていた。



                        −ライト・エゼル
  





 −.hack//A.D. Vol.1 黄昏 完







あとがき
祝!Vol.1、完結!!
始めた時からもう五ヶ月以上たってますね!
無事に終わってよかった。カイトは無事じゃないけれど(爆
さて次行きましょう。
次の主人公は蒼炎でも違う蒼炎!ちゃんと書けるか心配ですけど
ちゃんと続けようと思います。
ご愛読ありがとうございました。そしてこれからもお願いします。

いざ『.hack//A.D. Vol.2 守護神混乱』へ!ドコドンッ!!


[No.872] 2007/08/06(Mon) 22:03:30
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