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   .hack昔話 - 狐憑き - 2007/03/17(Sat) 21:17:13 [No.381]
桃太郎そのにじゅうご - 狐憑き - 2007/09/20(Thu) 21:26:17 [No.929]
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桃太郎そのご - 狐憑き - 2007/03/18(Sun) 21:03:39 [No.409]
桃太郎そのよん - 狐憑き - 2007/03/18(Sun) 20:54:47 [No.408]
桃太郎そのさん - 狐憑き - 2007/03/17(Sat) 21:56:47 [No.384]
桃太郎そのに - 狐憑き - 2007/03/17(Sat) 21:41:08 [No.383]
桃太郎そのいち - 狐憑き - 2007/03/17(Sat) 21:28:51 [No.382]



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.hack昔話 (親記事) - 狐憑き

こんにちは、狐憑きです。ここに書き込むのは初めてですがよろしくお願いします^^

さっそくですが、もしも.hackが昔話だったらというのを考えてみました。今回は桃太郎で行きます。
筆不精なので更新が遅くなるかもしれません。文べたなためあまり面白くなくなってしまうかとも思いますが、気長に読んでいただけたら幸いです^^

以下が苦手な方は読まないことをお勧めします。
・本作はパロディーです。
・だいぶキャラが崩れています。
・声優ネタが所々混じります。
・設定ぐちゃぐちゃになるかもしれません。
・ハセヲさんはもち突っ込み役です。
・作者はかなり文下手&電波です。意味不明な言葉がよく混じります。
・こんなんもう桃太郎じゃねぇよ
・ネタ切れのときはかなり長期間更新されないかもしれないのであしからず。

以上の用法・用量を守って正しくお読みください。それでは本編スタートです!


[No.381] 2007/03/17(Sat) 21:17:13
桃太郎そのいち (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

 むか〜しむかし、あるところに、ヤタおじいさんとパイオバ…お婆さんが住んでおりました。
パイ「…直したのはいいけど、なんか余計にふけてない?」
ヤタ「17の私がおじいさん役というのも無理があるような気がするのだが…」
(無視)
おばあさんは毎日川へ洗濯に、おじいさんはどちらかというと労働は得意ではないので、住まい“知識の庵”で日々デスクワークに励んでいました。

 そんなある日のことでした。
いつものようにお婆さんが、やけに面積の少ない布地を川で洗濯していると、どんぶらこっこ、どんぶらこっこと、川上から、DDされてLv.1になった瀕死のハセヲさんが流れてくるではありませんか!!

 お婆さんはそれを拾い、知識の庵に持って帰りました。
そして、2人はその子に「桃ハセヲ」と名づけ…
ハセ「ちょっとまて、無理やりつけんな! 何だよ「桃ハセヲ」って。どう考えてもおかしいだろ!?」
赤ん坊の分際で突っ込んではいけません。2人はその子に桃ハセヲと名づけ、大事に修繕・管理、今後の計画に大いに役立てようとしていました。

 何年かたったある日のことです。
パイ「アリーナ…もとい、鬼が島からAIDA反応があったそうよ。行って調査をお願い。場合によっては駆除してきてくれると助かるわ」
ヤタ「アジアンマンゴーを3つ渡しておこう。途中で飢え死にすることのないように」
桃ハセヲは力いっぱい反論しましたがあえなく却下され、AIDA…ゴホン、鬼退治に出かけることになってしまいました。

続く。


[No.382] 2007/03/17(Sat) 21:28:51
桃太郎そのに (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

 旅立ってから数刻後のこと。先を急いでいると、なんと道端にお腹をすかせたぬ…さるが倒れているではありませんか!
桃ハセヲはうっかり蹴りそうになりましたが、それでは話が進みません。キングチムを呼んでほしいのをぐっとこらえ、お供のぬえ…猿にアジアンマンゴーを与えて、ぬえを仲間に入れました。

 それからまた数刻後のこと。
ハセ「この流れから行くとまたラッキーアニマルか…ん?」
先を急いでいると、なんと道端におなかをすかせた天狼が座り込んでいるではありませんか!
ハセ「いぃ!? なんで天狼が!!?」
天狼「AID…鬼の巣窟となってしまった鬼が島を取り戻すべく修行を積んでいたが、食料が尽きてしまい困っていたのだ。…けして犬っぽい外見がオレしかいないからではない!!」
ハセ「……」
桃ハセヲはだまってアジアンマンゴーを差し出しました。
果物一つでおなかが膨れたのかは微妙なところですが、天狼はそれで満足してくれたようです。
こうして桃ハセヲと、お供のぬえと天狼という、一風変わった一行が誕生しました。

 それからさらに数刻後のこと。
ハセ「さる、いぬときたら次はキジか…なんか嫌な予感が……」
先を急いでいると、なんと道端にはお腹をすかせた志乃が以下略。

ハセ「志乃!?」
志乃は少し困ったように笑い、言いました。
志乃「私、お腹すいちゃってて動けないんだ。何か食べ物持っててくれたら助かるんだけど」
志乃の頼みをこの男が断るわけがありません。桃ハセヲは何の疑問もなく、アジアンマンゴーを志乃に差し出そうとしました。すると…

アト「ちょっとまってください!! 私だって同じ鳥っぽいエディットじゃないですか!! ハセヲさん、連れて行くなら私を仲間に!!」
いつの間にいたのか、突撃電波少女アトリが桃ハセヲの死角で声を荒らげていました。

続く。


[No.383] 2007/03/17(Sat) 21:41:08
桃太郎そのさん (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

 桃ハセヲさん、驚きのあまりコケてます。
お腹がすいて動けなかったはずの志乃はというと、すくっと立ち上がり、アトリに笑顔で詰め寄りました。
志乃「私、今すごくお腹がすいて困っているの。(ゲームでも)後から来たくせに、変な口はさまないでくれるかな」
すさまじい迫力ですが、アトリがひるむことはありませんでした。こちらも負けじと前へ出ます。
アト「志乃さん、たしかエンディングでハセヲさんを私に譲ってくれていましたよね。女に二言は許されませんよ? ここはあきらめて引いてください」
志乃「…さっき同じエディットとか言ってたけど、同じな割にはあなた貧乳じゃない。ハセヲは母性的なお姉さんタイプが好みなんだよ。あなたなんかの出る幕なんかじゃないから」
アト「……お姉さんって言ったって、20超えたら女は早いですよ? ヒロインの座はあきらめて、そろそろ若い世代にゆずったらどうでしょうか^^」

 2人の間には火花が飛び交ってます。後ろには虎と竜が見えるかのようです。桃ハセヲと天狼はというと、口も挟めずアワワワワってな状態です。
アト「何なんですか」
志乃「何よ」
2人とも剣呑な表情で、無言で呪杖まで取り出しました。このままラウンド1に持ち込む気です。

 桃ハセヲさんは慌てます。
ハセ「ちょっとまてって、ストーーップ!! なんでここで2人が戦い始めるんだよ!! どっちが仲間になるのか話し合ってたんじゃないのか!?」
すると2人は、同時に桃ハセのほうへ振り返りました。めっちゃ見られてます。おもわず半歩下がります。
アト「じゃあどっちがキジにふさわしいのか、ハセヲさんが決めてくださいよ!」
志乃「そもそも、ハセヲのお供を決める話し合いだったんだから…ね?」
2人にずいっと迫られて、桃ハセヲは汗をだらだら流しながらしばらく考えます。考えた挙句、言いました。
ハセ「…どうせ鬼退治に行くんだから、数は多くていいんじゃないか? 2人ともついてこればいいだろ」

ぷちっ。






―――少々お待ちください♪―――


 結局その場は仲介に入った天狼がなんとか押さえてくれました。
心強い仲間もそろったところで、猿(ぬえ)、犬(天狼)、キジ(アトリ&志乃)と共に、桃ハセヲ(瀕死)は鬼が島を目指すことになりました。

たぶん続く。


[No.384] 2007/03/17(Sat) 21:56:47
桃太郎そのよん (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

 しばらく行くと、海が見えてきました。

ハセ「鬼が島って言うからには、この海渡らないといけねぇんだよな。さてと、どうやって…」
アト「ここは私のリウクルズで…」
ハセ「何年かかるんだよ!」
志乃「そうよアトリ、せめてオルリウクルズでしょ?」
ハセ「志乃も突っ込むとこ違うし!! どうして“舟使おう”とか考えないんだよ!?」
天狼「船といったってな…ん? あれは…」
都合のいいことに、桟橋には小船がかかっていました。桃ハセヲ達は駆け寄ります。

ハセ「……というわけで、鬼が島まで乗っけてってくれねえか? つれてってくれるだけでいいからさ」
桃ハセヲ一行は、桟橋の脇にある海小屋で船頭たちと交渉していました。
ガス「そ、そんなの無理だぞう! 鬼が島には怖〜い鬼たちがい〜っぱいいて…ってなんか左の名前の略し方変じゃない?」
ピンクで丸い先導はあまり乗り気になってはくれませんでした。台詞の最後のほうに若干、某双子妹の怖い歌姫混じってたのは多分気のせいです。
このまま交渉決裂かと思いきや、奥からもう一人の先導が現れて言いました。
シラ「いいじゃない、ガスパー。困ってるみたいだし」
ガス「あっシラバス! でもやっぱり怖いぞう〜」
シラ「困っている旅人たちを放って置かないのが僕たち“仮那亜怒”組だったじゃないか。ここであったのもなにかの縁だし、乗せていってあげようよ^^」
ガス「でも……うん、そうだね。わかった! おいら頑張るぞぅ!」
どうやら乗せる気になってくれたようです。のてのてと奥に引っ込むと、巨大なガレオン船を片手でひょいと担いできました。
ハセ「凄ッ!! っていうかこの掘っ立て小屋のどこにそんなスペースが…」
さすが将来横綱候補。
ガス「さあ、出発だぞぅ!」
聞いてねぇし。

とにもかくにも、一行は船を手に入れることができました。

続く?


[No.408] 2007/03/18(Sun) 20:54:47
桃太郎そのご (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

船旅は順調でした。

アト「見てください、ハセヲさん! トビウオがいますよ^^」
志乃「ほら、イルカ達がついてきてる。こっちだよ」
女達ははしゃいでいます。
天狼はさっき見かけたので話しかけてみましたが、青ざめた顔で部屋に戻ってしまいました。どうやら人一倍ノッポさんなんで、船ゆれは並大抵ではないようです。メトロノーム効果でシェイクされまくりです。そりゃゲロるな。

 女たちが怖いので、桃ハセヲさんはしょうがなく部屋に戻っていました。ぬえはしりません。今頃どこかで早口言葉の練習中でしょう。

ハセ「…にしても、この船いつになったら鬼が島に着くんだ?」
シラ「後3日もすれば見えてくるよ」
ハセ「3日もかかるのか…ってシラバス!? 何勝手に部屋に入ってきてんだよ!!」
シラ「いやあ、エロ本読んでるとこでも見つけられたら、後で強請りのネタになるかなって思ってw」
ハセ「旅にんなもん持ってくるかあぁぁ!!」

 3日という数字は桃ハセヲさんにとって微妙なところでした。
先日受けたキジたちからのリンチ…もとい、杖でもぐら叩きごっこしたときの傷は、実はまだ癒えていませんでした。短い間ですが、決戦前の療養としての猶予が残されているのは本来なら喜ばしいことです。
喜ばしいことなのです、が……
ハセ「問題は、怪我の原因が乗っているこの船で3日も過ごさなけりゃいけないってことだよな…」
つまり今桃ハセヲさんは、猛獣のいる檻の中に放り込まれている図式になります。エサが檻の中を裸で歩いてるも同然です。危険です。デッド・オア・アライ熊ってやつです。あ、違うか。とにかく危険なことに変わりはありません。

 果たして鬼が島まで無事に付くことができるのか?
今の桃ハセヲさんにとっては鬼が島についてからのことよりも、そっちのほうが大きな問題のような気がしていました。

続く続く。


[No.409] 2007/03/18(Sun) 21:03:39
桃太郎そのろく (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

ズズー――…ン……

 突然、船内に轟音が響き渡りました。
船内は一瞬にして緊迫した空気に包まれます。

ハセ「な…何だ!?」
シラ「デッキのほうからだ!!」
ハセ「お前まだそこにいたのかよ!!」

 桃ハセヲとシラバスは廊下を走る途中で、天狼やガスパー達と合流しました。
じゃあ今一体誰が舵取ってるの? という疑問はとりあえず無視して、一行は甲板へと急ぎます。

甲板へのドアが勢いよく開け放たれます。

ガス「うわぁ!」
天狼「何だこれは!?」

 甲板についた一行は目を疑いました。みると、大海原からモサ・マシーンの大群が、この船に押し
寄せてくるではありませんか!!

ハセ「これは一体……そうだ、志乃とアトリは!? あいつら確かまだ甲板に…」

いくら強いといっても、2人はか弱き乙女です。桃ハセヲさんは不安にかられ、2人の姿を探しました。


――ドスッ…ドスッ…

 2時の方向から鈍い音が響きます。
見ると、キジの二人は桃ハセヲ達に気付くこともなく、無表情で黙々とモサ叩きを楽しんでいました。
二人の後ろにはすでにモサの山。真顔ですが、どこかとても楽しそうに見えます。
桃ハセヲさんは賢明にも見なかったことにしたようです。首をぎぎーっと前へ戻します。

 戻したところで前方にはモサの大群。すでに十数匹が船に乗り込み、こちらのほうへと迫ってきています。

ハセ「にしてもなんでこんなに急に…」

 桃ハセヲさんがうなります。こういうときこそまず冷静に、どういう状況なのかを把握しないといけません。

パイ「これはきっと、敵からの死角よ!」
ハセ「死角って鬼ヶ島からの? ……ってオバs…じゃなくてパイ!? 何でここに!!?」

 すぐ横をみると、家で桃ハセを見送ったはずのお婆さんが、まるで最初からそこにいたかのように
堂々と立っていました。腕を組んで仁王立ちです。

パイ「“何でここに”? そんなの決まっているでしょ!」
ヤタ「もちろん、君がきちんとAIDA…あ、言っちゃった。鬼を退治できるように、サポートするべく駆けつけたのだ。けっっして“この後ぜんぜん出番なさそうだから、どさくさにまぎれて出ちゃえ!”なんて理由などではない!! …先方もどうやら私たちの行動に感ずいたようだ。先に仕掛けてくるとはな」

 いつの間にやらおじいさんまでもが、船首の上でポーズをとってます。きっと高いところが好きなんでしょうね。微妙に話そらそうとしたのもバレバレですよ。

 桃ハセヲさんはというと、まるで豆鉄砲がハトくらったかのような表情になっていました。逆ですね。ハトが豆鉄砲くらったかのような顔でした。

ハセ「……ま、まあ、応援に来てくれたなら心強いけど。でもこんな数、相手にできるのか?」

 桃ハセヲが疑問に思うのもありません。
無数に沸いてくるかのように思える相手に比べ、駆けつけてくれた曽祖父'sを数に入れても、こちらはせいぜい8人と一匹。
多勢に無勢もいいところです。まともに戦ったところで、勝ちが見えてくるかどうかは正直微妙なところでしょう。

 それでも桃ハセヲは勇敢でした。たとえ勝機のない戦いだとしても、彼はけしてあきらめません。


だって彼は、主人公だから。


続くぜぃ☆ (謎


[No.417] 2007/03/20(Tue) 18:48:51
桃太郎そのなな (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

おおーん!!

モサの咆哮。
一番近くにいたやつが桃ハセヲの首を引きちぎろうと、鋭い歯を剥き飛びかかってきました。



――ぃいんっ!!

ハセ「くっ……」

 耳ざわりな金属音。
桃ハセヲは一瞬の判断で双銃を構え、牙が首筋に突き刺さるのを防ぎました。
双銃によってさえぎられ、牙は首から一寸足らずで、小刻みに震えて止まります。

 相手はまだなお双銃を離しません。
こちらが少しでも気を緩めれば、ナイフの様なするどい犬歯で肉を引き裂くつもりなのでしょう。
相手は機械なのですが、心なしか生臭い息を浴びてるかのような、嫌な錯覚に陥ります。

 相手は牙に全体重をのせてきます。双銃と大きな牙がこすれ、ぎりぎりと、腕に嫌な振動が伝わりました。

ハセ「オラァッ!」

ハセヲは足を踏みしめて、全身で相手を跳ね除けました。
押されたモサはひるむこともせず、その反動を利用し、さらに加速して迫ります。


が、時すでに遅し。

 開け放たれたモサの上あごには2つ小さな穴が開き、ビクンと体を震わせたかと思うと、
気だるくその場に伏しました。

倒れたモサの虚ろな瞳は、恨めしそうにハセヲを映しだします。
最後にモサが見たのはきっと、彼の手元から薄く伸びる、綺麗な硝煙だったことでしょう。


to be continued…(続く)


[No.422] 2007/03/21(Wed) 21:45:39
桃太郎そのはち (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

ハセ「ちっ…、いったいあと何匹いるんだ!?」

一匹倒すのにもこの調子です。なにかのはずみで一斉に来たら、こちらの命はまずないでしょう。

 今こそ決断力が問われるときです。
皆に的確な指示を与え、少しでも勝機をかせがなければなりません。

少しの間目を閉じて、何かを決意し顔を上げます。

まずは全員の配置から。

ハセ「右側は志乃とアトリだけだと不安だから…天狼、お前が行ってくれ」
天狼「分かった。任せろ」

天狼はすぐにうなずきます。どうやら信頼は厚いようです。

ハセ「ヤタとガスパーは右側の固まってるやつらをスペルで攻撃。残りはそれに巻き込まれ
ないようにしながら、オレに続いて、船首辺りから乗り込んでくるやつらを押さえて倒す。それでいいな?」
ヤタ「ふむ…まぁ妥当な判断だろう」
ガス「うぅ……怖いけどがんばるぞぉ!」
パイ「敵の牽制なら任せなさい。ある程度分散して倒すわよ」
シラ「がんばろうね、みんな!!^^」
揺光「うん! まぁ揺光さんに任せなさいって!!」
エン「ハセヲ…君のために剣を振るうよ……」
ハセ「よし!いくぜ!! みんなオレについて来い!! …って」




…………ん?

1、2、3、4、5、6、7、8、9…

ハセ「って10人になってる!?」

仲間はハセヲさんも含めて8人と一匹だったはずが、いつの間にやら10人います。増えるワカメかなにかでしょうか。

ハセ「揺光にエンデュランス! お前らどうしてここにいる!?」
揺光「え…とぉ、ほら、あ…あのさ! 偶然その辺通りかかったら、たまたま見かけたんだよ! 
別にこっそり乗り込んで来たわけじゃないんだからっ!!」

たまたま見かけたですって。ちかリンは海の上歩けるんですね。

エン「ハセヲが僕を呼んでる気がして…君のためなら、僕はどこへだって駆けつけるよ……」

愛の力は理屈抜き。


ハセ「ヤタといいパイといい、なんでみんな突然出て来るんだよ! 話の歯切れが悪くなるだろうが!!」

いやね、2人ともアリーナ関係だし、後で鬼役で出てもらおうと思ったんですよ。
でもホラあれでしょ? 2人ともなんかすごい人気で。人気投票すごかったなぁーって。
だったら敵役よりも味方役にしちゃったほうがいいよなぁと思って。出るなら早いほうがいいし。

ハセ「作者の都合を持ち込むなぁぁーーーッ!!」

果たして、桃ハセヲ一行はこの状況を打破することができるのか!?
そして、彼らは無事に鬼が島まで行くことができるのか!!?

待て、次回!!!

ハセ「綺麗にスルーすんじゃねぇ!!」


続くといいなぁ


[No.423] 2007/03/21(Wed) 22:00:55
桃太郎そのきゅう (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

一気に人数が増えたおかげで、甲板の上はお祭り騒ぎの大乱闘になっていました。

司会「さあ、いよいよ始まりましたモサ軍団VS桃ハセヲ一座!! 司会は不肖この私! 今まさに、
戦いのハロウィンが始まろうとしておりますっ!!」

あんたも一体どこから出てきたのさ。

司会「戦いあるとこどこへでも!! さあ、この無限大の大海原、その水平線の向こうから、モサの軍団がまるで怒涛のように、あれよあれよと押し寄せてきます!! 偉大な海のその中に一度引きずり込まれれば、そこはもぅやつらの領土! 地理は彼らの味方です!! しっかぁーしッ! 桃ハセヲ一行も決ッッして引けをとっておりません!! 少人数ながら、一人一人のその破壊力はまさしく一個師団並み! パーティメンバー中4人がチャンピオンという最強チーム、モサたちよ、果たしてお前らに、この鉄壁が崩せるかぁ!? 長い戦いの幕明けです!!」

よ〜舌が回ること。
そーこーしてるうちに、どうやら戦いの火蓋は切って落とされたようです。酢豚じゃありません。火蓋です。

ハセ「蜂の巣だ!!」

司会「先頭を行くのは我らがヒーロー、元死の恐怖で三冠王!! PKKのハセヲだぁーーッ!!!」
ハセ「……なんか調子狂うんだけど」
司会「私にかまわず続けてください! そして右手に見えますは、犬役天狼&キジの志乃とアトリの3人だ!! さすがは元碧聖宮チャンピオン、その座を下りた今でも力はまったく衰えておりません!!」

天狼「凶迅葬爪!!」
ハセ「何!? それって三蒼騎士(ニセ)いないとできないんじゃあ…」
アト&志乃「ヴオォォォ…!」
ハセ「なにいィィッ!!?」

今ので、甲板の右半分にいたモサたちの4割は一気に吹っ飛びました。アトリと志乃、若干前髪がiyotenなのは気のせいでしょうか?

司会「そしてあちらに見えます爆風は、スペル攻撃重視タイプのふんどs…八咫とガスパーだ!! それとは少し離れた場所で、他のメンバーは這い上がってくるモサどもを蹴散らしている!!強いぞ、桃ハセヲチィームッ!!!」

ヤタ「滅天怒髪衝!! 月の木四番隊隊長楢、参る!!」
ハセ「ロール間違えてるって!」
エン「僕にかまうなァッ!!」
ハセ「今度はシリーズ間違えてるし!!」
志乃「銀漢…くたばりなさい!!」
ハセ「声優ネタかよ! それにしたってキャラ違うから!!」
揺光「いけませんいけません」
ハセ「何が!?」
ガス「ぶ○ぶりざえもん、ケツだけアターック!!」
ハセ「もはや.hackですらねぇ!!」
パイ「哀れなAKUMAに、魂の救済を!!」
ハセ「悪魔じゃなくてモサだろ!!」
シラ「まったく、救済してほしいのはうちの家計のほうですよ! 誰かさんがジャンプ買いあさってるせいで…」
ハセ「……眼鏡?」
アト「ハルーーッ!!」
ハセ「誰ーーーッ!!?」
ヤタ「いいぜぇカズマ、もっとだ! もっと…輝けぇェーーッ!!!」
ハセ「一周した!? ってかマニアックすぎて元ネタ分かるやついねェよ!!」

なんだか作者の趣向のせいで物まね大会になってしまっていますが、敵は一通り一掃できたようです。残るはモサ一匹。仲間がやられてどうすればいいのか分からず、その場に丸まり小さくなっています。

最後のしめは桃ハセヲさん。何か物まねでお願いします。

ハセ「は? えっと…血を流すことは本意ではないが…やむをえぬ。お主を切る!!」

ノリノリじゃん。
ザシュッ!! っという子気味良い効果音と共に、最後のモサはまっさかさまに海へと還っていきました。

司会「勝者…桃ハセヲチームッ!!」

ハセ「やったぜ…!!」

喜んだのもつかの間、このチャンスを逃すまいと、女性陣+αが我先にとハセヲさんに押し寄せてきました。

ハセ「のわっ!?」
アト「やりましたね、ハセヲさん!! ^^」
志乃「かっこよかったよ、ハセヲ」
揺光「やったな、ハセヲ! さすがはアタシを倒した男だ!」
パイ「まぁ…あなたにしては上出来ね」
エン「愛してるよ…ハセヲ」

どさくさにまぎれて変なのもありましたが、桃ハセヲはあっという間に女性人+αに包囲、突撃されて押しつぶされてしまいました。

残された男性人はというと、大勝利を収めた後とだというのに、まったく嬉しそうではありませんでした。ただ白い、ひたすら白い視線を桃ハセヲさんに注ぐだけです。何この敗北感。やってられるかコンチキショー。

ハセ「誰か…たす、け……」

人込みから唯一逃れていた腕が、やがてそれさえ吸収されて見えなくなりました。


桃ハセヲの本当の修羅場は、この後だったそうな。


つづ…く…?


[No.446] 2007/03/24(Sat) 21:59:01
桃太郎そのじゅー(祝!) (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

※お詫び

本当は提供していただいたネタをすべて取り入れてから更新しようと思っていたのですが、執筆が思うように進まずあまりに時間を開けてしまったので、今できてる分だけでも更新します。
ネタを下さった皆様には大変申し訳なく思いますが、物語に取り入れることができるのはもう少し先になりそうです。
いただいたネタは後日必ず取り入れますので、どうか御了承ください。

↓↓下からが本編です。↓↓



船旅2日目―――。

女性陣+αのおかげで怪我が悪化し、前にも増して満身創痍です。
桃ハセヲさんは一人、部屋で寝込んでしまいました。

ハセ「…つつ、かっこわりぃ〜」

よっぽどすごい大乱闘だったようです。
ほーたいぐるぐるで、氷袋まであててあります。すごいね。車にでもはねられた?



きぃぃ…
ゆっくりと、部屋のドアが開きました。

アト「ハセヲさん…大丈夫ですか?」
ハセ「あ? あぁ、アトリか。まあなんとかな」

部屋に入ってきたのはアトリです。
原因の一環は自分にもあるということは気にも留めず、ハセヲの怪我を心配してやってきたようです。

アト「とりあえずリプスはかけておきましたけど…ラファリプスはもったいないんでやめておきました」
ハセ「お前な…。っつつ……!」
アト「!! 大丈夫ですか?」

アトリがベッドへ駆け寄ります。

アト「氷…ぬるくなっちゃったみたいですね。私、新しいのに変えてきます」
ハセ「あぁ、わりぃな。ありがとう」

アトリは氷袋を持つと、そそくさと部屋を出ていきました。
それとはすれ違うかのように、今度は揺光が、手に果物かごを持って入ってきました。

揺光「よ、ハセヲ! お見舞いに来たぞ」
ハセ「揺光か。それどうしたんだ?」
揺光「あぁコレ? 船の中にあったから、ハセヲ食べるかと思って勝手に持ってきたんだw」
ハセ「おいおい…。でもサンキュな」
揺光「いいっていいって。ついでにリンゴの皮むいてあげるよ」

そう言って、揺光は果物ナイフを取り出しました。

が………

ハセ「おいおい、大丈夫か? 手が震えてるじゃねぇか」
揺光「だ、大丈夫だって! これでも料理は得意なんだから…。カップラーメンだけだけど」
ハセ「え? 今最後になんつった?」

ものすごく真剣な面持ちで、左手でリンゴを握り締め、震える右手でナイフを当てます。

……あれ?
リンゴって切ったとき、赤い果汁なんか出しましたっけ?

揺光「いった〜〜!!」
ハセ「だから言ったじゃねぇか! ほら、傷見せてみろ!」

慌てた桃ハセヲさんは身を乗り出して、揺光の手をつかみました。



そこでお約束。ドアがギィッと開きます。

ガス「ハッセヲ〜! お見舞いに来たぞぉ〜!!」
シラ「やあハセヲ! ケガ大丈夫?」
アト「氷を変えてきましたよ!! って……」

勢いよく入ってきた3人の顔から、一気に表情が消えました。



狭い部屋の中。桃ハセヲと揺光2人っきり。手を握るハセヲ。赤くなる揺光。

キレるアトリ。飛び出す呪杖。炸裂する殴打。めり込む顔面。吹き飛ぶハセヲ。


アト「ハセヲさんのフケツーーーッッ!!!」
ハセ「ごはあぁぁッ!!!!」

ベッドに収まっていたはずの桃ハセヲさんの体は向こうの壁まで飛んでいき、それにぶつかって落ちました。どさっと鈍い音がします。
シラバスとガスパーはというと、横たわっている桃ハセヲを、氷のような眼で見下ろしていました。

シラ「へえぇ〜…。ハセヲもてもてだね。なに? これは寂しい僕らへのあてつけなのかな?^^」
ガス「ハセヲうらやま……サイテーだぞぉ」
アト「ハセヲさんのバカッ!! 私や志乃さんだけでは飽き足らず、揺光さんにまで手を出すだなんて! 分かんない!! やっぱりハセヲさんの考えてること、ぜんぜん分かんない!!!」

涙を浮かべて叫んだアトリは、そのままくるりと背を向けて、廊下の先へと消えていってしまいました。
ガスパーとシラバスもそれに続きます。横目で冷たい視線を向けながら、何も言わずに去っていきました。

残された桃ハセヲと揺光の2人。
揺光は廊下を見つめたまま、なにやらぼ〜っと固まっていましたが、きゅうにボッと音を立て、顔がリンゴ色になりました。

揺光「て、手をだすだなんて……! 違うからな!! ゼンゼン、そんなつもりでやったんじゃないんだからな!!」

そう一方的にまくし立てると、顔をそらして、転がるように部屋から出て行ってしまいました。
廊下の向こうの暗がりで、どたどたと足音が遠ざかっていきます。
あ、こけた。


そして、静かになりました。

結局、残ったのは桃ハセヲさん一人でした。
うつむいたまま起き上がり、一人無言でベッドに戻ります。……あれ? もしかして泣いてる?



どんどんボロボロになっていく桃ハセヲ。
はたして、彼に安らぎは訪れるのでしょうか?



続けーーーッ!!!


[No.520] 2007/04/03(Tue) 18:18:07
桃太郎そのじゅういち (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

コンコン…

ふいに、ノックの音で目が覚めます。
起こした上半身に流れる嫌な汗。すでに恐怖が染み付いているようです。

ハセ「……誰だ?」

怖るおそる尋ねます。入ってきたのは、エンデュランスでした。

エン「君の事を思うと、いてもたってもいられなくって……。ハセヲ、ケガは大丈夫…?」
ハセ「なんだお前か……。大丈夫だよ。ケガ増えたけど」

桃ハセヲは、とりあえずさっきの怖い人達じゃなかったことに安堵しました。
エンデュランスは近くにあった椅子に座ります。

エン「…やっぱり女の人は怖いね。かわいそうにハセヲ……こんなにボロボロになって……。快癒の水を一個だけ見つけたんだ…良かったら使って…」

そういって、心底心配そうな目を向けます。
普段なら強すぎる想いに引いているところですが、今は素直にありがたく感じます。何ででしょう?

いい加減ケガが痛くてしょうがなかった桃ハセヲさんは、それをうけとり、一気に飲み干しました。

ハセ「っぷはぁ!! お、痛みが引いていく! ありがとな、エンデュランス!」
エン「良かった……。うれしいよ、ハセヲの役に立てて……」

ゲームのキャラって不思議だよね。
さっきまで重症だったのが、回復すれば次の瞬間には絶好調だよ。

エン「もう少し君のそばにいたいけど…甲板の様子見てなきゃいけないから……。じゃあね、ハセヲ。ゆっくり休んでて……」
ハセ「お〜、じゃあな〜!」

そういって、桃ハセヲさんは部屋を出て行くエンデュランスに返事をしました。
……返事はしたものの、ずっとベッドの上にいて退屈しきっていた桃ハセヲさん。怪我も治った今、寝ている理由もありません。

ハセ「あいつには悪いけど、ちょっと船内でも見てまわるか!」

桃ハセヲさんはつぶやくと、ご機嫌な様子で意気揚々とベッドから抜けました。
平気で約束破ったね。ひどいなぁこの人。

とりあえず、続きます。


[No.579] 2007/04/10(Tue) 21:53:00
桃太郎そのじゅうに (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

その時、ドアが開きました。

志乃「ハセヲ、大丈夫? お見舞いに…」

目が合います。
次の瞬間、桃ハセヲさんはお見舞いに来たはずの志乃から、なぜかクリティカルヒットを食らっていました。

ハセ「ごほおぉっ!!?」

桃ハセヲさんは口から、何かキラキラと赤いものをまき散らしながら倒れました。
志乃はというと、まるで“たまたま通りかかったら倒れているのを見つけた”とでも言うような白々しさで桃ハセヲさんに駆け寄ります。

志乃「ハセヲどうしたの!? 大変! こんな大怪我で歩き回るのは無茶だよ!」

志乃さんは悶絶している桃ハセヲのそばで膝を突き、妙に演技がかったしぐさで天を仰ぎます。

                    ・ ・ ・ ・
志乃「でもだいじょうぶだよ、私がお見舞いにきたから。ハセヲのそばについててあげるね」

あくまで優しく微笑みます。
どうやら、元気になられては2人っきりになる口実がなくなるというのが本音らしいようです。
白目を剥いて気絶している桃ハセヲを、その細い腕で軽々と持ち上げた志乃は、彼をベッドへどさっと投げました。

志乃「……ふふふ。ここで優しく看病すれば、ハセヲがついに私のものに……」

うわっ黒っ。
イメチェンしたのはPCだけじゃなかったようです。
天使のような外見に、潜んでいるのは志乃恐怖でした。

首尾よくハセヲと2人っきりになれたことを、優しく志乃がほくそえんでた、
そのときです。

アト「待ってください! 抜け駆けは許しませんよ!!」
志乃「アトリ、いつの間に!?」

背中から、高くてかなり大きな声が室内に響きました。
死角から一部始終を見ていたアトリが、ここぞとばかりに叫んだのです。

アト「ハセヲさんはわたしません! …病み上がり女のくせして、いきがってんじゃねぇよ」
志乃「なによ、文句あるの? …電波の分際で。目障りだっつってんだろ!!」

すごい剣幕でお互い怒鳴りあいます。
室内は、そこにいるだけで肌を刺されているかのようなするどい空気に包まれ、2人の間には猛烈な火花が飛び交います。


その後の2人のトークバトルといったら、とても放送できたものではありませんでした。
女子特有の陰険な口げんかから、気の弱い人なら聞くだけでも泣き出してしまいそうな罵詈雑言が延々と、室内を約小一時間は飛び交います。

そして、決着がつかないまま―――

アト「…やっぱり、決着はコレでつけるしかなさそうですね」
志乃「……そうね、そろそろケリをつけないと」

ふたりとも、息をするのも忘れて叫び続けていたせいで酸欠状態です。
ゼェゼェと息を切らしながら、やはり取り出したのは呪杖です。

アト「いつかの決着もここでつけさせていただきます!!」
志乃「望むところよ。かかってらっしゃい!!!」

ラウンド1、開始。

戦いのゴングが鳴り響きます。
二人の戦いはもう、誰にも止めることはできません。
本気の二人が戦えばきっと、船も無事ではいられないほど周りに被害が及ぶことでしょう。泥沼になるであろう死闘の幕が、今あけました。

……重症の桃ハセヲさんのすぐそばで。



続こう。


[No.580] 2007/04/10(Tue) 22:05:59
桃太郎そのじゅうさん (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

実況「さあ、かなりの期間更新をサボってしまいましたが、何はともあれ第一回キジvsキジ、志乃対アトリの戦いが今始まりました!!」

言い終わるまでもまく、2人の取っ組み合いは始まっていました。あれ? 呪杖は?

アト「…んのクソアマァ!! 昔の女のくせして未練がましいんだよ!!!」
志乃「昔の女だぁ!!? いつハセヲと私が終わったってんだよ。言ってみろよ? えぇ!!?」

2人とも完全にキャラを忘れています。
普段おしとやかだからって幻想を見るものじゃあありません。男がみんな狼ならば、女はみんな
ティンダーバロンなのです。え? 違う?

アト「死にさらせええぇぇッッ!!」
志乃「去ねやワレエエェェッッ!!!」

一体腹のどこら辺から出しているんだと疑問に思うほどの野太い声で、二人が叫んだのが同時。
次の瞬間には、お互いの拳が相手の頬に、と言うより顔面にめり込んでいました。
これがあの噂に聞く、伝説のクロスカウンターというやつらしいです。

志乃&アトリ「!!?ッッ」

攻撃の威力で一瞬衝撃波ができたかと思うと、一泊間をおいて2人は反対側へと吹き飛んでいました。どちらも壁に背を叩きつけられます。

アト「ふぐっ!?」
志乃「がっっ!!? げほっ…やるじゃねぇか」
アト「へ…へへ……そっちこそな」

2人とも、なんだか妙に男前な顔でいいました。
アトリがあごにつたう汗を拳でぬぐい、志乃は首をごきごきと鳴らします。あれ? これ何の漫画?


これだけの大騒ぎ、外に聞こえないはずがありません。
誰かが騒ぎを聞きつけたらしく、廊下の向こうから走る足音が聞こえてきました。

天狼「何の騒ぎだ………へぶをおぉッ!!?」

天狼がなんだか聞いたこともないような悲鳴で吹き飛びます。
相手を捕らえ損ねた二人の拳が、流れ弾の如く天狼の顔にヒットしたようです。
天狼はなす術もなく、その場に悶絶しました。

パイ「これは……!!?」
八咫「なんてことだ………」

天狼に続き、騒ぎを聞きつけた船員たちが次々と到着しました。
全員、広がる光景に目をうたがいます。

壁は、でかいハンマーでも打ち込んだのかと思うほど大きな穴が開き、椅子は足が折れ、
ハセヲさんが寝ていたはずのベッドはというと、真ッ逆さまにひっくり返っていました。
けが人は今頃下敷きでしょう。

エン「ハセヲ…ハセヲは無事……!?」

エンデュランスが駆け寄ります。
しかし右方向からなにか熱を感じ、危険を感じてバックステップで回避します。
次の瞬間、さっきまで自分がいたところを中心に大爆発が起きました。爆風までは避けきれずに少し後ろまで押されます。

エン「!!?」
アト「ちっ…はずしたか」

見ると、アトリが杖を構えた姿勢で立っていました。
今の爆発は、どうやらオラバクドーンによるものらしいです。

アト「そうだよなぁ、そういえばお前も障害物の一つだったんだよな。いっつも薔薇だかなんだかばらまいて、ハセヲさんにくっつきやがって!! 最初ハセヲさんのことバカにしてたくせしてなれなれしいんだよ!!!」
志乃「ど〜かん。いっそのこと、邪魔者はこの場でまとめて屠ってあげる!!」
エン「……君たちに興味はないけど、これ以上ハセヲを傷つけようって言うなら……僕が許さない………!!」
アト「はっ!! 上等ォ!!」
志乃「かかって来いやぁ!!!」
パイ「…って人数増えてどうするのよぉ!!?」

騒ぎは大きくなる一方。はたして、ハセヲさんの命運やいかに!?
…多分駄目だね、こりゃ。


続くっ!!


[No.724] 2007/05/06(Sun) 21:08:39
桃太郎そのじゅうよん (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

キジ対キジの戦いだったはずが、いつの間にか三つ巴へ。
それどころか止めに入ろうとした人達まで暴走しだして、狭い船内での大乱闘が始まっていました。

ガス「はう〜ん、みんな、喧嘩はよくないぞう〜!!」
志乃「うっせぇんだよこの肉ダルマ!! 邪魔くせぇからどっか失せろ!!」
ガス「ひどっ!!」
パイ「ちょっとみんな落ち着いて!! ねぇ八咫さま…」
八咫「オルバクドーン!! わはは、私に逆らう愚か者どもは、みんな灰になるでおじゃる〜!!」
パイ「って八咫サマ―――ッ!!?」

あれよあれよの大騒ぎ。

戦いの土煙から少しはなれたところで、揺光がハセヲのいたベッドを探していました。
しかし突然鋭い殺気を感じ、双剣をとっさに前に身構えました。
見上げれば、硝煙に黒い影が映ったかと思うと、そこからアトリが揺光めがけて切りつけてきます。

アト「てめぇも障害物の一人なんだよ!!」
揺光「くっ…!?」

キイィィンッ!!
かん高い金属音。揺光が攻撃を直前で受け止めます。
しかし相手の力は尋常じゃありませんでした。よろめき、その場に突っ伏します。
揺光の首もとに、アトリが呪杖を突きつけました。

アト「年貢の納め時、ってなぁ。観念しろ」
揺光「……なめんじゃないよっ!!」

元宮帝の称号は伊達ではありません。
この絶望的な体制から、揺光は双剣で杖を押し切りながら回り込み、受身を取って相手の射程距離から逃れます。
この好機を逃すまいと、身体の俊敏さを生かして壁蹴りで高く飛び上がり、土煙の上空までジャンプしました。
そのままひじを突きたて、煙に映る相手の影目掛けて体重を乗せて飛び掛ります。

揺光「くらええぇぇッ!!」

クリティカル!!
揺光の必殺・空中エルボーは見事影を捉え、ドスッと鈍く大きな衝撃を与えました。
相手の口から短い悲鳴が漏れ、心地よいまでの手ごたえが腕をつたいます。

揺光「へへっ、どうよ!?」
アト「なにがです?」

え?
と思ってとなりを見ると、アトリが涼しい顔をして立っていました。じゃあ、これは一体誰?

揺光「げっ……は、ハセヲ!!?」

そう、それはハセヲさんでした。
ただでさえ瀕死の重傷だったのですが、どうやら戦いのうちにいつの間にか巻き込まれ、更なる重症を負っている模様です。知らず知らずのうちに攻撃を当てたり、踏んづけたりしていたことを、誰一人として気付いていませんでした。

揺光「ハセヲ!?」
アト「ハセヲさん!!?」

二人の声に、みんなが我に返ります。
ハセヲさん、重症なんてもんじゃありません。目は白目を剥き、口からはなにか半透明の魂っぽいものがもれ出ています。
表情だけは、どこまでも穏やかでした。

志乃「しっかりして、ハセヲ!」
エン「ハセヲ………!?」
アト「ハセヲさあぁ――――んッッ!!!」

桃ハセヲの耳には、もはや誰の声も届いていませんでした。


終わり。嘘。続く。


[No.725] 2007/05/06(Sun) 22:04:01
桃太郎そのじゅうご (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

前回のあらすじ
 取り合いのドサクサで女性陣にボコられて、桃ハセヲさんマジピンチ♪
 死線さまよってます。



 ●
―――桃ハセヲさんは、長いながい夢を見ていました。
もしかしたらこれが走馬灯ってやつなのかもしれません。どこまでも続く真っ暗闇の中にたゆたいながら、思い出が、まるで明るいスクリーンに映し出されるかのように、次々と浮かびあがってきます。



初めてインした日。

初めてPKされた瞬間。

オーヴァンとの出会い。

黄昏の旅団。

志乃の意識不明。

碑文との会合。

スケィス暴走。

大人への成長。

クビアとの対決。

衝撃のラスト。

ガスパーのへそに隠されていた真実。

実は子持ちだったミストラル。

リミナリティのメガネ率。

ぴろし社長の富士登山。

舞ちゃんのまゆ毛。

コミヤン2世。

パイと凰華のスリーサイズ。

ばみゅん。

問題。色男になる薬を飲んだぴろしさん。何色になった?






ハセ「知るかぁッ!! いい加減クドいだろ!!!」

なんてことでしょう! 
あれだけの怪我を負って、先ほどまで死の淵をさまよっていたにもかかわらず、桃ハセヲさんは反射的に飛び起きました。さすがツッコミ担当。流れる血潮が突っ込まずにはいられなかったようです。

しかし…

ハセ「あれ? 俺は一体……」

目の前に広がる暗闇は、いっこうに開けませんでした。
無理もありません。
腹部に揺光のひじてつ、後頭部にアトリと志乃の呪杖を計12発食らって、さらにはあの大乱闘の中みんなに足蹴にされているのです。無事でいるほうがどうかしています。


ハセ(俺は一体…もしかして、俺はこのままここで死ぬのか……?)

だんだんと意識が遠のいていきます。上も下もない深遠の中、桃ハセヲさんの命の灯火は、今まさに尽きようとしていました。
何の気力も出てきません。桃ハセヲさんは、すでに何かをあきらめかけていました。


続きますよ。ウン。


[No.751] 2007/05/20(Sun) 12:08:25
桃太郎そのじゅうろく (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

ハセ(ろくな人生じゃなかったが…まぁ悪くはないかな……)

そう心の中で一人つぶやき、静かにまぶたを閉じようとしていた、
その時です。

欅「ハセ…さ…。きこえ…すか? ハセ…さん……」
ハセ(この声…欅か?)

どちらの方角からか、というより暗闇全体からなのか、幼さの残る声が響いてきます。

欅「…ハセヲさん、あきらめてはいけません。あなたにはまだやるべきことが残っているはずです。“生きたい”という強い思いを捨てないでください」

遠くから欅が訴えかけてきます。
それでも、すでに沈んでしまったハセヲさんの心にはまだ届きません。

ハセ(希望……? だけど俺、もう………)
欅「しっかりしてくださいハセヲさん! 僕の知ってるハセヲさんは、そんなヘタヲじゃなかったはずです!」
ハセ(おま……何でそのあだ名………!!!)
欅「僕が見込んだ人なんです。こんなところでくたばったら僕の顔に泥を塗ったっていうことで、
ハセヲさんのあ〜んなヒミツやこ〜んなヒミツ、み〜んなネットに流しちゃいますよ〜♪」
ハセ(え? おい、やめ…)
欅「たとえばハセヲさんはこの間独り言で、“俺は将来○○のお婿さんに……”」
ハセ「やめろおおおぉぉォッッッ!!!!!!」

欅様の言葉をさえぎって叫んだその時、ハセヲさんの体がまばゆい光を放ちました。
体中に焼けるような熱を感じ、遠のきかけていたハセヲさんの意識が一気に覚醒します。

ハセ「!!?」



意識が急速に戻り、ハセヲさんは目をカッと開きます。
暗かった視界が一気に開け、目の中の水晶体に大量の光がなだれ込んできました。
そこには見慣れぬ風景。先ほどまでいた暗闇とはまるで対象的な光の空間がハセヲさんの目に
飛び込んできます。
力が抜けていた全身が即座に感覚を取り戻しました。四肢を動かす再に多少の痛みを感じながらも、桃ハセヲさんは硬く平らなベッド……と言うより、台座の上で身を起こします。
それに反応したのか、周りから何かイーイーと声が上がります。

ハセ「ここは…一体……?」

いつの間にかまわりに群がっていた顔がテレビな方々が、まるで雲の子を散らすかのように跳ね回りながら、イーイー言ってどこかへと逃げていきました。○ョッカー?

欅「気が付かれましたか? ハセヲさん♪」
ハセ「欅……ってお前! そうだよ、さっきの何で知って……!!」
欅「ハセヲさんなら気が付いてくれるってボク信じてました。やっぱりハセヲさんはすごい人です♪」
ハセ「いやそうじゃなくて!! だからさっきの……」
欅「はい♪ ハセヲさんがあの空間から戻ってこれたのは、ハセヲさんの意志の強さの賜物です。あのままあきらめてたら間違いなく戻ってはこれなかったでしょうね。すばらしいです、ハセヲさん♪」
ハセ「だから人の話を聴けえええええぇぇぇぇ!!!!」

ハセヲさんの苛立ちを、欅様は華麗にスルーしていきました。
欅様には必ず“様”をつけないといけないと思っているのは私だけでしょうか?


続くのさ。


[No.752] 2007/05/20(Sun) 13:44:05
桃太郎そのじゅうなな (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

自分の主張がまったく相手の耳に届いていないのを悟ったハセヲさんは、今度は別の何かをあきらめたかのように肩を落としてため息をつきました。そんな桃ハセヲを前に、欅様はニコニコです。

欅「ハセヲさん♪ 新しい身体の調子はどうですか?」
ハセ「あ? 新しいからだってなに……うおっ!!?」

ハセヲさんの両目が驚きに見開かれました。
なんと!
いつの間にやらXフォームになっているではありませんか!!

ハセ「な……なんだこれ!?」
欅「桃ハセヲXフォームです。僕とその部下で改造を施しました♪ これでバトルの幅が格段に広がりますよ♪」
ハセ「っつったって、双銃はvsモサ戦ですでに使ってたし、ダッシュだって……。一体何が強化されたんだよ?」
欅「見た目がボク好みになりました♪」
ハセ「お前の都合かよ!!?」

理不尽な改造に多少憮然としつつも、ハセヲの命を救ったのが欅様であることには変わりはありません。

ハセ「まぁなんだ。その……サンキュな」
欅「いえいえ♪ さあ、元の場所まで帰りましょうか。皆さんお待ちかねです♪」

欅様がそういって桃ハセヲの手をとった瞬間です。
一瞬体がふっと浮くような感覚がしたかと思うと、まるでテレビのチャンネルでも変えるかのように一瞬で甲板まで戻ってしまいました。

アト「ハセヲさん!!」
シラ「ハセヲ! もう大丈夫なの?」
ガス「よかったぁ〜。ハセヲが帰ってきたぞぉ〜!」

みんな嬉しさで桃ハセヲに駆け寄りますが、欅様がそれを目だけで制します。顔は笑ってるのに結構な迫力です。

欅「せっかく僕が直したんですし、またもみくちゃになるのだけは避けましょうか♪ それから、今後も引き続いてハセヲさんのオペをしていこうかと思ってます。みなさん、今後ともよろしくお願いしま〜す♪」
女+α(ちっ…また邪魔なのが……)

元気よく挨拶したはずだったのですが、一部からはなぜかドス黒いオーラが発生しました。
それに気付いていながらも、我らがリーダー桃ハセヲは軽く咳払いをしました。

ハセ「……とにかく、鬼ケ島まではあと一日だ。みんなしっかり準備しとけよ」

そういって、くるりと背を向け船内に戻っていきます。
そしてハセヲさんの後姿を見て、なぜか後ろから……

八咫「!!」
パイ「………ぷっ」
アト「プフフ……ッ! は、ハセヲさん、かわい……!!」
ハセ「? どうしたんだよお前ら、くすくす腹抱えたりなんかして……」
揺光「な…なんでもないって! ……ぷぷっ!」
シラ「も、もうだめ……^^; あは、あははははッ!!」
ハセ「???」




桃ハセヲさんは気づいていませんでした。
欅様が施した改造で、本来のXフォームでは2つの円盤があるべき腰の位置に……
…というかお尻の位置にでかでかと、恥ずかしい桃のアップリケがつけられていたことは。


続くのさ…


[No.753] 2007/05/20(Sun) 14:05:57
桃太郎そのじゅうはち (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

夜も満ちたころ、静寂なデッキに一人佇む、黒く高い影がありました。
細身ながらも風格のあるたたずまいと、アフガンハウンドのような凛とした顔立ち。元碧聖宮の覇者、天狼です。
自分のわき腹よりも低く構えた手すりに寄り添い、天狼は一人、心地よい潮風を浴びていました。毛並みは潮に荒れるどころか、気持ちよさそうになびいています。
対照的に、その表情にはどこか憂いを含んでいました。

天狼「嫌な波だな…」

眼下には月明かりを受け、よりいっそう昏く光る波がうねりを上げています。一見いつもと何の変哲もないのですが、じっと見つめていれば、こちらが引きずり込まれてしまいそうな、何かとても不吉な感覚を覚えます。

天狼「思い過ごしならいいが……」

そう言って、他所の毛並みの例にも漏れない長いまつげを静かに伏せます。聞こえるのは風と波の音だけ。再びデッキに閑寂が訪れます。天蝋はその静けさに一人、耳を澄ましました。


………なんとかかっこよく表現しようとしてるつもりなのですが、杖で殴られて面白いくらいに腫れた顔面を、シップでベタベタに覆った姿は、どうにもフォローできそうにありません。

潮風にしみたほっぺたをなみだ目でさする姿には、なんだか間抜けでかわいいものがありました。







所変わってこちらは船室。
あれから何時間か過ぎ、寝巻きに着替える段階になってようやく桃尻のことに気付いたハセヲさんは、元に戻せと血相変えて欅様へと詰め寄りました。
しかし、どんなに怒鳴ってもわめいても、華麗に無視し続ける欅様に対して、桃ハセヲさんは泣く泣く土下座をするなどして、やっとのことで直してもらうことに成功したのです。そのときの欅様の面白くなさそうな表情と言ったら、まさにアプカルルでチムを振り回してた顔そのものでした。

で、今は一人自分の部屋に戻っている桃ハセヲさん。
双銃の手入れは欠かせません。いざと言うときにジャム(弾詰まり)が起きたらシャレでは収まらないでしょう。島に着いたときのためにも、今はせっせと薬莢を磨いているところでした。

シラ「たぶん、明日の昼過ぎぐらいには島が見えてくると思うよ。しっかり準備しておいたほうがいいと思うな」
ハセ「昼過ぎか…。それまで何もなきゃいいけどな」

いつの間にか勝手に部屋に入ってくるシラバスにももう慣れっこです。この船内にはプライベートの文字は存在しません。

たった3日間の船旅なのに、こんなに密度の多い3日間はそうはありません。
モサの強襲、女達の暴走、大怪我して療養、女達の略奪合戦……
考えて見ればかなり女なn(ry
…災難な旅でした。せめて最後の一日くらいは楽しく行きたいものです。


だけど桃ハセヲさんの鋭い勘と経験は、とうに答えを告げていました。
「この船に静穏などありえない」、と……。
そして実際に、海の奥深くからこの船に迫る影が一つ。


しかし彼らがその存在に気付くのは、次の朝日を拝んでからのことになるでしょう。


つつつ続く。


[No.772] 2007/06/16(Sat) 14:36:54
桃太郎そのじゅうきゅう (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

それは、みんながそろって朝ごはんを食べていたときの話でした。

楽しい団らんの場の和やかな空気を割るように、廊下からドタドタとあわただしい足音が響いてきます。
ドアがバンッ! と音を立てたとき、入ってきたのは甲板で見張りをしていたシラバスでした。

シラ「みんな大変だよ! 漂流してる人がいるんだ!! 誰か来て!!」
ハセ「漂流?」

ハセヲはシラバスを手伝うため、残りのほとんどはなんだか面白そうだからと言う理由で甲板に駆けつけます。
見ると、ちょうどガスパーが漂流者を助けようと、船からロープを降ろしているところでした。

ガス「あ、ハセヲォ〜! おいらの力だけじゃムリだぞぉ〜!」
ハセ「よし、俺が引き上げるから、他のみんなは手伝ってくれ!」

桃ハセヲさんは素早い動きで自分の腰にロープを巻くと、もう片方の端っこを手すりにきつく結び、足で船体を伝いながら、漂流していたいかだへと降りていきました。

余談ですが、ハセヲさん達の乗ってるこの船はガレオン船なので、高さだけ見てもかなり巨大です。普通、生身の身体がロープ一本でいかだまでたどり着けるようなもんじゃあありません。

ですがハセヲさんはすべり止めの白い粉を軽く手にまぶすと、ベテランのロッククライマーも真っ青な手つきで、軽々と下りていきました。

なぜこんなことが簡単にできるかって?
やってくれないと話が進まないからです。

ハセ「助けに来たぞ! 大丈夫か? ………って」

ぐったりして、半ば意識を失いかけていた漂流者にハセヲが呼びかけます。漂流していたのは、なんとクーンでした。
ロープをみんなに引っ張ってもらい、ハセヲさんは衰弱しているクーンをいそいで船まで引き上げました。平手で何度か頬を叩いて、相手の意識が戻るように促します。

ハセ「おい、クーン! 大丈夫か? しっかりしろ!!」
クーン「ううぅ………。み、水と食料、あとかわいい女の子を……」
ハセ「………」

最後の要求はサラリと流し、桃ハセヲ一行は何か食べ物と毛布をクーンに持ってきてあげます。
もう何日も水を飲んでいなかったのに、もらった水を待ちきれないとばかりに一気飲みしたりなんかするから、渇ききってカラカラだった喉がギャップに悲鳴を上げました。苦しそうに咳き込む姿を見ると、本当にひどい目にあってきたようです。

クーン「げほっげほっ……。ッアァーー! 生き返ったーー!!!いやぁー悪いな! ホンット助かったよ!!」
ハセ「大丈夫かよ。いったい何があったっていうんだ?」
クーン「いやぁな、AIDA地獄になってる鬼が島から何とか脱出して、お前らと合流しようとしたところまでは良かったんだよな。だけど、そしたら運の悪いことにとんでもない怪物に船がおそわれちゃって。脱出用のいかだで化け物引っさげて逃げること数日……。いやあ、ホントひどい目にあった!!」
ハセ「化け物?」

疑問を口にして相手が応える暇もなく、桃ハセヲさんの洗練された直感が、何か近づいてくる不吉なものを予感します。
アトリがおずおずとクーンにたずねます。

アト「さっき、“化け物ひっさげて”って言ってましたよね。まさかとは思いますが……」

不安を感じ取ったのは、どうやら桃ハセヲさんだけではなかったようです。だんだん、妙な緊迫感のようなものがみんなへと広がっていきました。

そのときです。

揺光「ちょっとまって! あれナニ?」

揺光が見つけたのは、前方の海面に不気味に映った、何か巨大な影でした。明らかにこちらへと迫ってきます。

パイ「あれは一体…」
欅「皆さん気をつけて。…来ます!!」

巨大な影は、突如周りの水面を持ち上げて海上へとその姿を現しました。山かと見まがうほどの塊から、滝のような海水がおびただしいほどの巨大な波を作り出し、船を大きく揺らします。
ずいぶんと水が流れた後、ソレは姿を現しました。

ヌラリと光る不気味な白に、人の頭ほどもある巨大な吸盤。
船乗りたちの恐怖の象徴。イカの怪物クラーケンだったのです!!!


続くくく。


[No.788] 2007/06/20(Wed) 22:43:16
桃太郎そのにじゅううう!(激祝 (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

ガス「うわわわわわっ!? で、出た〜〜〜ッ!!?」
天狼「でかい! でかすぎる!! こんなやつ、やれるのかっ!!? (バル風」
ハセ「嘘だろ、おい……」

突如現れた超絶巨大イカを目の前に、一行はただただ目を見張るだけでした。

無理もありません。

そのイカの異常な巨大さは、海上にあらわになった頭部だけでもこのガレオン船を凌駕しているのです。軽く見積もっても、全長は山一つ分と見てもよさそうです。

イカの登場から一拍おいて、ヤツが引き起こした津波にも等しい巨大な波がガレオン船へと、ありえないくらいのスピードで猛突進してきます。

欅「いけない!! 皆さん、何かに捕まって!! 振り落とされますよ!!!」


ド・ドオオオオオオオォォーーーーーーンッ!!!

聞いたこともないような轟音と共に、船が転覆するギリギリまで傾きました。

アト「きゃああああぁぁ―――ッッ!!!」
シラ「ぅわああああああぁッッッ!!?」

船の甲板からは、ただ絶叫のみが響いてきます。
阿鼻叫喚とはまさにこのことを言うのでしょう。船内は大パニックに陥り、船に乗っているものは皆、ただ無心で手すりにしがみ付きます。塩水にぬれてよくすべる手すりは無常にも皆を引き剥がそうと衝動をあたえ続けますが、知ったことではありません。あんな高波に飲まれるくらいなら、腕が引きちぎれたほうがまだマシというものです。


船はまるで振り子のように、波の上をすべるように揺れています。
あのイカのほうから見れば、攻撃したつもりさえもないのでしょう。ただ登場しただけでもこの大被害でした。

存在そのものが恐怖、○ャック・ス○ロウも大苦戦のこの怪物。
あまりにも現実離れしているせいか、桃ハセヲさんはこの臨場感にもかかわらず、つい映画のワンシーンでも見ているような気分になってしまいました。

始まりを告げるブザーの音、暗くなっていく部屋に高まる鼓動、ポップコーンを片手にスクリーンを見つめればホラ、重奏なオーケストラが今にも響いてきて……




………って、ん?
オーケストラとはまるで別物の、妙に明るいBGMが聞こえてきました。
お〜い、音声さ〜〜ん。曲間違えてますよ〜〜。




??「間違いなどではなあ〜いッッ!!!」

この大轟音の中でも聞こえるくらい、異常に明るく大きな声が、波に、空気に、よどんだ空にと響き渡ります。
刹那、クラーケンの腕(足?)のなか、きらりと光る何かが垣間見えました。

ハセ「な!? あ、あれは……!!?」

見間違えではありません。遠目ではありますが、いま、また確かに光りました!
クラーケンが、ソレを握った腕をガレオン船近くまで振りかざした、
そのときです。
今、はっきりと、その黄金色の物体が、桃ハセヲ達の眼下へと姿を現しました。



ぴろ「んなアァーーーッハッハッハッハ!!! そう、私! この私だ!! 歩く太陽、唸る獅子!! 第にじゅううう話がこの世で一番似ッ合う男!!! みんなのヒーロー、白銀のぴろし3!! 今、かっこよく登場なのであ〜〜〜るッッ!!!」
ハセ「……なにやってんだ?」



クラーケンに片足ひっ捕まえられて、宙ぶらりんでまっさかさまなその姿は、お世辞にもかっこいいとは思えねぇのでした。

つづづづく。


[No.827] 2007/07/09(Mon) 22:53:54
桃太郎そのにじゅういち (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

ぴろ「おお、よき目をした人ではないか! ちょうどいい。ちょっと助けてはくれまいか?」
ハセ「お前ホント何しに出てきたんだよ!!?」

クラーケンにぶんぶんおもちゃにされながら、場違いな能天気さでぴろしさんが呼びかけます。
桃ハセヲ一行、すっかりテンションダウンです。もうすでにばかばかしくなってきている模様です。

八咫「……どうやら波も収まってきたようだ。ハセヲ、今のうちに作戦会議といかないか?」
ハセ「そうだな。あんなのにかまってる暇はない」

なにやら平たい会話が終わると、船に乗ってるみんなで丸くなり、まじめな座談会が始まりました。ぴろし3は当然無視。キジ2人組なんか会話にも参加しないで、2人してオーヴァンのお面らしきものを投げ合って遊んでいました。さっきまでの混乱と緊張感は影も形もありません。もうなんか、どうでもいいよって空気です。

ぴろ「ぬぬぬっ!? 何故誰も助けにこんのだ? おーいよき目をした人ー! 私が目に入らんのかー!? 貴殿と永遠の友情を誓い合った、白銀のぴろし3はここにいるぞ〜!!」

いつ誓ったよ、いつ。

ぴろ「これでも気付かんとは……しかたがない。ここは……」



突如、ぴろし3の金のヨロイが、カッと、目の焼け付くような閃光を放ちました。
これにはハセヲさん達も少し驚きます。

ぴろ「超秘奥義! ウルトラゴージャスぴろし3ハリケーーーンッッッ!!!」

なにやら胡散臭い技名をぴろし3が叫んだ、その直後。

ハセ「んなぁっっ!!??」

ぴろし3は金色の光を放ちながら竜巻の如く猛回転しだし、クラーケンの、あのお城の搭のようなぶっっとい腕を、なんとまるまる一本粉砕してしまったではありませんか!!
そのまま周りの風も巻き込みながら本物の竜巻を作り出すと、クラーケンに大ダメージを与えていきます。目の前で起こっている出来事に、桃ハセヲさん達、もうボーゼンです。

ぴろ「はあっっ!!!」

ある程度気が済むまでまわり続けると、空高くで徐々に減速し始め、当然な顔をして船の上へと着地しました。なんともいい笑顔です。この表情は、職人が一仕事終えた後の顔です。

ぴろ「ぬっふうぅ〜、白銀のぴろし3華麗に復活!」
ハセ「おま……一体なんなんだよ、今の!!!」
ぴろ「超絶秘奥義! ゴージャスデリシャスぴろし3アフターファイブなのであ〜る!!!」
ハセ「さっきと名前変わってんじゃねぇか!!」







やあ、いつもぴろし3を応援してくれてる良い子のみんな。ここで、ウルトラゴージャスぴろし3ハリケーンの出し方のおさらいだよ!

まずぴろし3の攻撃で連撃リングが出現した際、連撃を発動。
さらにR1ボタンでJUSTICEを決めます。
その状態でハセヲさんが硬直してる間、上+△、右+□、下+×ボタンを順に押していきます。このとき、できるだけ素早く入力するのがポイントだよ!!
最後に、「ウルトラゴージャスぴろし3ハリケーン!」とできる限り大きくて長い声で叫びながら、○ボタンを力いっぱい連打だ!!


丸3日間連打しながら叫び続けたら秘奥義発動だ!!
さあ、みんなもレッツ・トライ♪


ハセ「できるかあぁぁーーッ!!! っつーか、んな技ねぇだろぉがあぁぁ!!」
ぴろ「よいか? よき目をした人! 人間努力すればなんでも成し遂げることができるのであるからして……」
ハセ「限度あるわッ!! っていうか、そんなことができるんだったら最初っからその技使え!!!」


そうこう言ってるうちに、怒り狂ったクラーケンがガレオン船めがけて突っ込んできました。

欅「ハセヲさん油断しないで!来ます!!」
ハセ「ッ!!?」

はたして桃ハセヲたちは、この窮地を乗り越えることができるのでしょうか?


続くッッッッ!!


[No.829] 2007/07/09(Mon) 23:58:34
桃太郎そのにじゅうさん (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

前回のあらすじ。
 怒り狂ったクラーケンの猛攻!
 桃ハセヲ一行必死の反撃!!
 鬼のようなクラーケンの攻撃に次々と倒れる仲間たち!!
 ハセヲさん、無我夢中でバ○ウ・ザ○ルガ発動!!!
 (このときガッ○ュの代理をしていたぬえが尊い犠牲に)
 清○本人じゃなかったのでやっぱ効き目なし!!
 クラーケンの腕で船大破!!
 真っ二つの船から転がり落ちる仲間達!!
 そのまま海に流されていく全員!!
                       etc etc...




ハセ「って知らない間に戦闘終わってる!!?」

海岸まで流されて気絶していたハセヲさんが、ツッコミながら飛び起きました。
さすがですね。まあソレは置いといて。

ハセ「あれ、ここは……?」

流れ着いたのは見知らぬ海岸。辺りを見回しても誰もいません。
仮面な皇子とかピンクな皇女とか、セクシー担当なレジスタンスの少女とかもいません。

ハセ「ここは一体…。おーい!! 誰かいないのかー!!?」

誰の返事もありません。
どうやらハセヲさんの仲間は、本気でどこにもいないようです。
あ、いや、友達がいないとかそういう意味でなくてね。

ハセ「相当遠くまで流されたみたいだな…。ってか、どうして戦闘終わってんのかすらゼンゼン思い出せねぇし…」

そりゃあれですよ。
うっかり二ヶ月近く更新遅れちゃったから、ここでガラッと雰囲気変えとかないとノリが悪い、ってか、ぶっちゃけ前の話が思い出せないっていう作者の深い都合の上です。

ハセ「勝手だなオイ!! つーかこういうのって、夏休みとかこそはかどるもんじゃないのか? 2ヶ月近くも遅れやがって…」

いいのいいの。

ハセ「よくねぇよ」



ソレはともかく、船が壊れて海に流されたおかげで、仲間はみんな散り散りになってしまったようです。
ハセヲさんも見知らぬ土地にただ一人。
ナレーションしか話し相手がいないような、とても寂しい状況です。

ハセ「ほっとけ!! …しかし、ホントにみんないなくなっちまったのか? 少しあたりを探してみるか」

そういって、島(?)の中心へ向かいハセヲさんは歩き出しました。


海岸沿いをだいぶ歩いたところで、ハセヲさんは、崖に面したいかにも怪しげな洞穴を見つけます。
普通は気味悪がるところなのですが、

ハセ「なんかこの穴、ダンジョンっぽいな」

ハセヲさんはなぜか普通に入っていくのでした。


ツヅク。


[No.909] 2007/08/31(Fri) 16:31:46
桃太郎そのにじゅうよん (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

洞窟は、松明を掲げてもなお暗く、どこまでも深く続いているかのようでした。

こういう未開の地にはどんな危険があるか分かったものではありません。しかし、ハセヲさんは「とりあえず獣神像行こう」的なノリでずんずん進んでいきます。
洞窟の中はヒンヤリとしていてなかなか気持ちがいいのですが、潮風を溜め込んでるせいか、どこかジメジメしていて不快でした。

ハセ「ったく、何でこんなことに…」

暗さと重さで陰鬱になってきます。死の恐怖時代は一人でいるのが普通だったのですが、あれだけたくさんいた仲間と離れてしまうと、心細さはもうピークです。付き合う前とふられた後の差ですね。

見知らぬ土地の暗くて狭い洞窟の中、ごつごつした床や寒さに体力を奪われ、ハセヲさんの精神力はゆっくりと、限界へと近づいていました。

堪えかねて声さえあげます。

ハセ「おーい、誰もいないのかーー!!? いたら返事してくれーー!!!」

ノーエコー。
ハセヲさんの悲痛な叫び声は、壁に跳ね返りながら深い闇の奥へと吸い込まれていきました。
同時に、ハセヲさんは心から何かが抜けていくのを感じ、体中がずしっと重くなるのを感じます。足には力が入らず、ハセヲさんは壁にもたれてそのままその場に座り込んでしまいました。


ハセ「ちくしょう…何だよこの重い展開……どこがパロディーだってんだよ………」

心なしか、そんなことをつぶやいています。このお話のハセヲさんは基本的にヘタヲなのです。

もういいや。
そう思い、眠気にまぶたを任せたその時―――


―――ふと、落ちてくる水滴の音に混じり、かすかに音が聞こえたような気がしました。
最初、布を擦り合わせるかのようにかすかだったその音は、だんだんとはっきりとした靴の音へと変わり、こちらのほうへと近づいてきます。かつん、かつんと小さな音は、洞窟中を跳ね返り、大きく鋭い響きとなってこちらの耳に伝わります。

このときハセヲさんの心を支配したのは、仲間かもしれないと言う期待感ではありませんでした。
足元さえ不確かな暗闇の中から、得体の知れないものが徐々に近づいてくるという、えもいえないような恐怖感です。
うろ覚えですが、洞窟などで遭難したとき普通の人はだいたい3日ぐらいで発狂してしまうそうです。
それほど苦しい状況の中これだけの恐怖を感じたせいで、ハセヲさんの限界は一気に早まってしまったようです。

ハセ「あ…あぁ……っ!!」

恐怖に胸がザワリとします。
それを皮切りに、限界寸前だったハセヲさんはついに限界を迎えました。

ハセ「あ、ぅああああああああああああぁぁっッ!!!」

スケィスが暴走したときのような絶叫でハセヲさんは立ち上がり、足音の反対側へと夢中で走り出しました。疲れで動けなかったことなど忘れ、もつれる足で暗闇の中を懸命に走ります。



暗い中、途中壁にぶつかり転びながら、もうどれくらい走ったころでしょうか?
あるいはそんなに時間なんて経っていなかったのかもしれません。頭の中は真っ白です。

ハセヲさんは、ついに足音に追いつかれてしまいました。
肩をがっとつかまれて、振りほどこうと必死にもがきますが…

――を………セヲ、ハセヲ!!!
エン「ハセヲ、落ち着いて!! 大丈夫……!!?」
ハセ「ああぁっ……って、え、エンデュランスか……?」

呼び止められて正気に返ってみれば、仲間の一人がそこにいました。

エン「さっき洞窟を通りかかったときに、ハセヲの声が聞こえた気がしたから……。驚かせてごめんね……怪我はない…?」
ハセ「あぁ、は、はははは……。だ、大丈夫だって! はは…」

乾いた笑いでごまかしますが、自分が無意識のうち叫んでいたことに、今になって気が付きます。
今だに心臓バクバクな自分が恥ずかしくて、顔は見事にレッド&ホット。穴があったら入りてぇ!! あ、今いるの洞窟だっけ。

ハセ「と、とにかくお前だけでも見つかってよかった! 一人よりずっと心強いもんな!!!」

やっと孤独から開放されました。
仲間の大切さをわかっている彼は、仲間が見つかったことに心から安堵し喜びます。

が―――

エン「ハセヲ…」
ハセ「ん、なんだ?」
エン「二人きり……だね」





 ぞくり。


ハセヲさんの背中を冷たい汗が、目にも留まらぬスピードで駆け抜けます。
薔薇のよく似合うエン様は、意味ありげな熱い視線をハセヲに向けながら頬を朱に染めています。ハセヲさんはその場に硬直しました。


暗い中。このひとと。二人きり。

よく考えたら一人ぼっちのときより、今のほうがよっぽどピンチかもなハセヲさんなのでした。


ヅツク。


[No.912] 2007/08/31(Fri) 18:03:59
桃太郎そのにじゅうご (No.381への返信 / 1階層) - 狐憑き

暗く狭い洞穴を、ハセヲさんはただ黙々と進んでいました。
その間にもあの方は、ハセヲさんのきっかり3歩後ろを付いてきます。言わなくても誰かわかりますよね。

エン「ハセヲは足が長いんだね…。普通に歩いているだけでも、付いていくのが精一杯だよ……」
ハセ「さぁて、早くみんなに合流しないとな!! 一体どこにいるんだろうな?」

後ろから催眠術師が使うような、低く甘く耳障りの良い声が聞こえてきます。
が、ハセヲさんはかなり露骨に無視をしました。足はエン様のほうが長いです。ハセヲさんは振りほどこうと、わざと早歩きにしてるんです。

エン「初めてであったときから、キミには運命を感じていたよ……。光り輝く聖樹の下で、僕の心はキミのその深い瞳におちていったんだ……」
ハセ「(あれ? 最初は相手にもされてなかったような…)…やっぱりみんな遠くまで流されたのか? 案外近くにいたりしてな!」

ここで突っ込んだら負けです。振り向いたらアウトです。
そんなことはハセヲさん、痛いほどよく分かっています。

エン「ねぇハセヲ…。君は今何を考えてるの? 君の瞳は今、何を見つめているの……?」
ハセ「ひっ!…み、みんな無事でいるのかどうか心配だな!?」

そっ…と肩に手が触れます。
そろそろ無視が難しくなってきました。

エン「ハセヲ…ッ!!」
ハセ「っひぃ!?」

両頬を手で挟まれ、ハセヲさんはとうとう、真正面へ顔をぐりんっと手繰り寄せられてしまいました。
じっと見つめる両眼を直視してしまったショックからか、ハセヲさんのまぶたは、金縛りにあったかのようにまばたき一つすらできません。顔はかなり近く、潤んだ瞳はすぐそこです。息づかいすら聞こえる距離です。
ハセヲさんは文字通り、相手の手の中ですね。さすがにもう無視は通りません。

エン「僕は君のためなら、なんだって捧げるよ…!! だからおねがい、ハセヲ…ずっとそばにいて……!!」
ハセ「ちょ! 近い、顔近いって!! もしもし!? エンデュランスさんっ!!?」

相手がかわいい美人だったらなら、とてもドキドキな状況です。
しかしこの場合、相手は美人といえどもれっきとした男です。正真正銘の男ですよ。違う意味でドキドキですよそりゃあ。冷や汗タラリ。


もうこりゃアウトだね。
作者ですら面白がっ……げほっゴホッゴヘッッ!!!
…あきらめて、画面中を薔薇で埋め尽くして、『しばらくお待ちください』の文字と共に放送禁止をごまかそうとした、



そのときです。



ぴろ「なんだか人の声がした気がしないような気もしないが…お〜い、そこに誰かいるのか〜〜?」

どっかで聞いた、能天気な声が奥のほうから響いてきます。
どんなに力を込めても離れない手に反泣きだったハセヲさんは、珍しく、そして大いにその声に救われます。エン様はかなり聞こえがよしに舌打ちでしたが。

ハセ「その声…ぴろし3か!?」
ぴろ「おおっ! そういう貴殿はいい目をした人ではないか!! どうしてこんなところに貴殿がいるのだ?」
ハセ「どうしてって…そりゃこっちの台詞だ!! どうしてお前がここにいるんだよ!」
ぴろ「はっはっは! それは愚問というものではないか!!」

どういう意味だ?
ハセヲさんが再度問いかけます。するとぴろし3は、もったいぶって言うのです。

ぴろ「よく聞くがいい、よき目をした人よ!! この島こそが鬼が島! そして、このトンネルこそが敵のアジトへ直結の、秘密の抜け穴なのであ〜〜る!!!」



ツツグ。


[No.929] 2007/09/20(Thu) 21:26:17
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