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やっと、帰ってきた。 藩王九音・詩歌は舞台に続く一本道を歩いていた。 薄暗く狭い通路である。 本来広かったが、大小様々な楽器ケースがそこかしこに置かれていた。 雑然と積まれて出来たその山を見て、少し緊張する。 これに声楽科と総合科のコーラスも加わるのか、すごい数だな。 舞台に上がり、その数に圧倒される。 どこをみても人だらけだった。まず演奏者の数に驚き、次に聴衆の数に眼を見張る。 雰囲気に飲まれそうだったが、人々の表情を見てほっとした。大人も子供も期待に目を輝かし、口元から笑みがこぼれている。 さて、名残惜しいがフィナーレといこう。 音が奏でたのは、笑顔との再会だった。 一音のズレもなく、歌と演奏は始まった。 曲目が分かった聴衆から、一瞬の大歓声が湧く。 それは壮大な夜明け、眩しくてとても直視できないような。 ヴァイオリンの清廉さをフルート、クラリネット、木琴の音色が包み込む。 チェロ・コントラバス・ギターの低音がしっかりと音楽を支えている。 ヴァイオリンが描くのは長い長い毎日。 いくつもの苦悩に頭を抱える日々。人々の手、その温もりを知る度に深まる悩み。 歌う詩歌に無数の手拍子、前からも後ろからも。 そして、ワンシーンが終わるその瞬間に流水の如く滑り出すハープの音色。最高のリズムで鳴る打楽器。 ファンファーレのように高らかに鳴り始めるトランペット、トロンボーン、ホルン、チューバの音。ヴァイオリンの音色が次第に駆け上がっていく。 だが、思う。心から。 この無数の手が、自分を支えたのだと。万里の道を行く勇気を、与えたのだと。 詩歌は伝う汗を散らし、歌った。 言葉に出来ない無限の感謝を、一片でも伝える為に。 それにコーラスが答える、盛大に。 初雷の如く、時に春風の如く。 最後の大演奏を惜しむように、数百の楽器達は絢爛豪華に謳う。 山が笑い、崩れ行く氷雪の如く。 最後の大団円。 図ったかの如く、背後のラズライトラインに巨大な水柱が同時にいくつも上がった。 聴衆は圧倒され、言葉にならない。オーケストラの面々は、イタズラっ子のように笑っている。 静かな湖面を貫き、夜空に伸びる白い柱。その陰から黒い巨体が次々と浮かび、派手な水飛沫と共に沈んだ。 それは、ささやかな企て。水竜達とオーケストラの贈り物だった。 九音・詩歌は歌い続けた。 内心の驚きは隠し通せたが、喜びは隠せなかった。 この祭りが、人だけのものではなかったと安心できたのはこの時である。 指揮棒が勢い良く下ろされた瞬間、音楽は唐突に止んだ。寸分の狂いもない。 詩歌は汗を拭うこともなく空を見上げ、思った。 ありがとう、みんな。 空に穴が開きそうな拍手喝采の中、藩王九音・詩歌は恭しく頭を下げた。 (終) [No.7371] 2010/04/06(Tue) 23:15:00 |
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