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美術院 - 鈴藤 瑞樹 - 2010/09/12(Sun) 21:04:33 [No.7586]
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予定:ページタイトル用。 - 花陵ふみ - 2010/09/11(Sat) 19:02:12 [No.7582]
完成。 - 花陵ふみ - 2010/09/12(Sun) 00:17:25 [No.7583]
作業物でないけど、ひとつアイデア。 - 花陵ふみ - 2010/09/08(Wed) 10:35:18 [No.7580]
「デザイン」でくくると、よいかも。 - 花陵ふみ - 2010/09/18(Sat) 19:00:52 [No.7599]
シャッターアート - 鈴藤 瑞樹 - 2010/09/07(Tue) 22:11:38 [No.7579]
SS的なもの - 鈴藤 瑞樹 - 2010/09/02(Thu) 20:54:25 [No.7578]


シャッターアート (No.7577 への返信) - 鈴藤 瑞樹



もっと政策的な文章が必要かもしれないと書いてから思いました orz


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・キャンバスに咲く花

シャッターアートをご存知だろうか。
もともとは商店街などの自治体が中心となって、地域を盛り上げるためにと企画されたこころみのひとつだ。
お店のシャッターを真っ白なキャンバスに見立てて、ペンキで絵を描いていく。
街作りに個性を出すことで話題を呼んだり、地域交流の一環として行われたりするなど、さまざまな効果が期待されるイベントだ。

それとよく似たことが、詩歌藩国で行われることになった。

これから絵画を産業とするにあたって、若い画家たちの作品発表の場を確保するためのイベント。
優れた技術を持っているにもかかわらず、脚光を浴びていない者たちに必要なものはチャンスだけだ。
作品は評価されて、はじめてその価値を得る。
そこで取り上げられたのがシャッターアートだった。

手順はこうだ。

1 まず、仕事を欲している画家を国が募集する。
2 そして国中のあらゆる人々から「絵を描いてほしいもの」を募集する。
3 応募された案件を政庁の職員が画家へと割り振る。
4 画家は直接、依頼主のもとへおもむき指定された場所や物に筆を走らせる。
5 依頼が完了した時点で画家は日々の糧を得る、というわけだ。

ほかに細々とした決まりはあまりなく、あるのは「依頼主の希望を尊重すること」というルールくらいだ。
ちなみに、依頼遂行中の画家は臨時公務員扱いになったりする(といいなぁ)

音楽院や帝國環状線駅などの国有施設については、国が依頼主となる。
国からの依頼については、基本的に草花をモチーフとするようになっている。
それは、長く続く冬の中でも、春の息吹を感じることができるようにという、誰かの願いが込められていた。

かくして。国中をキャンバスにした巨大な絵画が描かれ始めた。


/*/

1年後

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その年の降雪量は、暖冬が続いていた詩歌藩国では珍しく多かった。
草木が葉を落としたまま、静かに眠る冬の終わり。
ようやく雪が溶け始め、そろそろと春が近づいてきたある日のこと。
まだ薄暗い。太陽が顔を出し始める、すこし前。

一件の民家から扉をひらいて出てきたのは、小さな子供だった。
いまだ時間が早いせいか、人の姿はほとんど見られない。
せいぜいが郵便配達の青年か、早朝の散歩を楽しむ老人くらいのものだった。
その時、小さな一軒家の扉がゆっくりと開く。
中から出てきたのは、手袋にニット帽にジャンパーにと、ばっちり着込んだ女の子。
まだちいさい。5、6歳くらいだろうか。
ドアノブを回すことにも苦労するほどで、背伸びをしてどうにかというほどだった。

少女はよたよたと扉をあけて、すぐそばに置かれていた牛乳瓶に目をやった。
毎朝、配達のおじさんが届けてくれるその牛乳瓶をリビングへと運ぶのがその少女、エンリカにとっての日課だった。

今日もまた、いつものとおりに牛乳瓶を両手で抱え込むようにして持ち上げる。重くてちょっとふらついた。
その時、シュティオン山脈によって遮られていた太陽がゆっくりと顔を出し、陽射しのぬくもりを背中に感じて振り返る。
すると、夜の暗がりに覆われて見えなかったものが、ゆっくりとあらわになってきた。昨日までとは違うその景色に驚いて、エンリカは思わず息をのむ。
その驚きを誰かに伝えたくなって、ぱたぱたと小走りに家の中へと戻っていく。
途中でビンを落としそうになったが、あやういところで踏みとどまった。
息を切らせてキッチンに駆け込み、朝食の準備をしていた母に告げる。

「おかーさん、おはながさいてる!」

エンリカの家の前には、一本の道があった。
交通手段が基本的に徒歩しかない詩歌藩国では珍しく、アスファルトで舗装されたキレイな道路だった。

つい昨日まで、それは灰色と、わずかな白線が描かれている程度の無味乾燥なものだった。
だが、今はちがった。
赤、青、黄色、緑、ピンク、オレンジ、紫、黒、ベージュ、水色、銀色、茶色、などなど。
おおよそ考えつくありとあらゆる色が踊っていた。
そこに描かれていたのは、エンリカが見たこともないような、広大な花畑だった。
エンリカが知っている花もあった。知らない花もあった。
丸い花、四角い花、三角の花。大きい花、小さい花。
そのひとつひとつが繊細であり、大胆さを含み、静かで、明るさを感じられた。
春も近いとはいえ、いまだ雪がちらつく時期にこれだけの花を見ることはまずできない。
その年でもっとも早くに咲いたその花畑は、まるで魔法のようだった。

それはもちろん、国から仕事を請け負った画家の仕事だった。
一晩のうちにエンリカの家の前を含めた数十メートルの距離を描き綴ったのだ。
エンリカがもうすこしだけ右を向いていたならば、精根尽きて爆睡する画家の姿を見られただろう。
現実を見れば、ただそれだけのことだったが。
それでもエンリカには、魔法のように見えたのだった。

その年の誕生日。少女が母親にねだったものはスケッチブックだった。


[No.7579] 2010/09/07(Tue) 22:11:38

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