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農夫オズワルドは一枚の絵を描いた。 描いたのはオーロラである。 詩歌の国をすっぽり覆いつくす程の巨大で見事な円環、さながらエメラルドの王冠であった。 彼はケチであったので普段はデッサンしかしない。 しかし、この絵は水彩画である。 空の紺碧、オーロラの深緑は単色では出せない深みがあった。 多くの色が混じり合い、溶け込んでいる。 この一枚が描かれるのにどれほどの苦悩があったのか。 見た者の多くはそう考えるであろう。 ところが、驚いたことにこの絵は一晩で描かれたという。 この絵がいかにして生まれたのか、当人の話をたどる事にしよう。 農夫オズワルドはケチで勤勉である。 人里離れた山奥で気ままに独り暮らしている。 朝霜が露に溶け出す頃に寝所を出、夕暮れを眺めながら畑から家に帰る。 月が家の窓から見えなくなる頃眠りにつく。 毎日がその繰り返しである。 その日、詩歌の長い冬が終わって例年通り硬い土を鍬で掘り起こした。 掘り起こす度にむせ返るような土の匂いがする。 涸れた土には決して出せない命の匂いであった。 この国の冬は過酷である。 だから命の温かさには敏感になるのは当然のことであろう。 橡色の土から揚がる白い湯気を見て、冬に吐いた白い息を思い出した。 畑の半分を耕したあと、作業小屋の中で昼御飯を食べるのだが、そこで懐かしいものを見つけた。 水彩絵の具と画材である。 王都できままな絵描きをやっていた頃の商売道具であった。 最近は気が向いたときに落書き程度のデッサンしかしないのですっかり忘れていた。 家に持ち帰ろうかと思ったが、使うあてもない。 結局そのままにして、小屋を出た。 夕暮れが眩しいので帰路に就いた。 自分で草刈をして作った道を歩きながら、久しぶりに何か描いてみようかなとぼんやり考える。 何を描こうかと考えてみたが、考えなきゃ描けないのなら描かなくてもいいかと思いやめた。 あぁ、早く風呂に入りたいなぁ。 風呂から上がったら晩御飯を作ろう。 ジャガバターとビールがいいな。 ビールのゲップが5回を迎えた頃。 そろそろ月が窓から見えなくなるだろう。 いつも通りベットに潜り込んで目を閉じたのだが、さっぱり睡魔がやってこない。 どうしたものかと目を開けて気が付いた。 窓からの光がやけに強い。 どうしたのかと訝しんで外に出てみると、空一面を覆うオーロラである。 詩歌で生まれ育ったが、これほど巨大なものを見たことがなかった。 しばしぽかんと口を開け空を眺めていたのだが、ふとあの古ぼけた画材を思い出した。 久しぶりに絵具を溶いてみたい。 筆を整え色を混ぜ、絵を描いてみたい。 オズワルドは走った。 肺が痛い。 足が重い。 息を切らせるなど何年振りだろう。 その夜が世界にとって一番長い夜だった。 そして詩歌の音楽家がその力をNWに示した初めての夜だった。 あの巨大なオーロラは数多くの音楽家が生んだ奇跡だったのかもしれない。 暁の円卓から伝わる歌が、世界の糸を紡ぐように。 オーロラを貫く光の束が、その絵には確かに描かれていた。 これが芸術界に彗星の如く現れた画家、オズワルド・アマデウスの処女作となる。 [No.7694] 2011/06/04(Sat) 00:04:06 |
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