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はぁ、ちょっと休憩。 万年筆が机をたたく。 ぐっと体を伸ばすと、関節が鳴った。 盛大である。 久々の書き物は楽しいなぁ。 そんな感慨と共に息が漏れた。 学芸員グスタフ・サンダールは詩歌藩国で暮らしている。 今年で30の半ばを超える。 筋骨隆々の体躯に厳つい顔。 名前も相まって、軍人のようである。 けれど、人間見た目はあてにはならないものだ。 殊この男の性格はおよそ軍人向きではない。 この国の在り様が気に入って、住み着き始めて早6年たった。 当初、自前の収集癖からこの国の骨董屋で働いていたのだが、そこで一人の老人と知り合う。 目の利き、知識、物への敬意、骨董屋が頭を垂れるに足る人物であった。 2年後、偶然この御仁が探している一つの箱を見つけ出し、届けた所いたく気に入られ親交を持つようになる。 種々様々な名品悪品珍品凡品を見せ、触らせ、教えられた。 その後この御仁が亡くなり、彼のコレクションを受け継ぐ。 そして、藩国政府からの要請でこのコレクションの展示を始めた。 これが、グスタフ・サンダールという異邦人がこの国で学芸員として生きていくことになる事情である。 えーっと、あとやらなきゃいかんのは修復1、研究2、教育2か。 とりあえず修復からかかるか。 椅子から立ち上がり、首を鳴らす。 部屋に並ぶ作品修復に必要な機材を避け、ドアへと向かう。 四方の壁には天井まで届く本棚。 無数の背表紙が並ぶ。 すべてが一つの作品を理解するために必要な資料である。 その作品が生まれるに至った歴史的社会的背景を知る。 学芸員にとっての基礎である。 しかし、ここに注力することは極めて地味で困難である。 並ぶ背表紙の大半は一見何の共通点も見いだせない。 歴史書の横には家庭料理の指南書、小学校の教科書に劇場のポスター集。 無論作者の自叙伝や概論・注釈書や作品集も揃っている。 だが、それだけでは駄目なのだと師匠は言った。 この本棚に並ぶ物達が繋がっていく。 その時、初めてお前はこの作品を理解できるだろうと。 部屋から出た。 壁には無数の木製扉と灯りが等間隔に並んでいる。 細く長い廊下を歩いていく。 高い天井は闇に閉ざされ梁一本見えない。 それぞれの扉にはナンバーが打たれており、各々には文化財と研究に必要な全ての物が収められている。 つまり恐ろしい数の仕事場があるということである。 学芸員になって初めての仕事はナンバーと研究対象の組み合わせを暗記することであった。 お目当てのナンバーにたどり着き、ドアノブを捻る。 さて、やるか。 芸術作品の修復作業は、一時的な精神改造を要する。 それが師匠の言葉である。 随分修復もこなしたが、未だこの真意を知ることはできていない。 作業を終え、自室に戻り、蜂蜜入りホットミルクを飲みながら、胡乱な頭で考える。 スプーンで底に溜まった蜂蜜を掬い、口に入れる。 ミルクを啜り、思う。 はぁ、この一杯の為に働いてる。 「グスタフさーーーーーーーーん!実習生のソフィアですーーーーー!」 あぁ、そうだ。今日はあの子が来る日だった。あぁ、そうだった。 重い重い腰を上げる。 自室を出て、長い長い廊下を歩き、たった一つしかない鋼鉄のドアを開ける。 「おーう。よく来た、今日もよろしく」 それじゃ、教育2 始めるか。 [No.7695] 2011/06/06(Mon) 22:42:00 |
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