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「畜生、なんで見つからんのだ」 調香師ソフィア・フォルシウスはぼやいた。 美術館の蔵に潜り始めて30回になる。 あの無限と思える数の扉はしばらく見たくない。 グスタフさんの引きつった笑顔も見るに忍びない。 蔵から出て、通った回数30回目の喫茶店に入ったのは30分前。 2杯目のアイスレモンティーは中程まで減っている。 天井を眺める目は遠い。 ソファは相変わらず硬い。 華奢な手足が重く感じる。 長い銀髪を纏めた香匙を抜いた。 バサバサと派手な音を立てて髪が散らばる。 完全なスイッチオフ、今日の探索終了。 店を出ると、青かった空がすっかり赤い。 丸い雲に夕日が射して、熟れたトマトのようだった。 調香師ソフィア・フォルシウスのお目当ては太古の香を記したレシピである。 詩歌という国は薬草に恵まれた。 厚い雪が草花の香を強めている。 彼女の実家は香料を扱う大家。 幼少より慣れ親しんだ無数の香。 実家には秘伝の調香書が伝わっており、それら全てを自らの物としたのは18の春。 だが、彼女は出会ってしまう。 未知の香に。 わずか3ヶ月後のことだった。 歩き続けて海岸に出た。 森から海に香の光景が変わる。 近くのパン屋から漏れる芳ばしさ。 嗅ぎ続けて30回になる匂いだと思った。 (明日で31回目になるのかなぁ) そんなことを考えていると、ふと嗅ぎなれない香が鼻をかすめた。 形の良い眉が歪む。 なんだこれ。 胡乱が一瞬で吹き飛ぶ。 目つきが鷹のように鋭くなった。 犬妖精にも劣らない嗅覚が研ぎ澄まされる。 そして、見つけたのは一匹の犬。 赤いマフラーに黒い毛並。 王犬シィ?あんな香り、いったいどこで? かくして、彼女の日課に王犬追跡が加わった。 この後、調香師ソフィア・フォルシウスは新たな香を生み出した。 類する物はNWのどこにもなく、その材料・配合すら誰にも分かっていない。 名を月光の雫といった。 [No.7719] 2011/06/25(Sat) 01:24:02 |
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