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しばらくして、賢者は空をじぃと見上げた。 そのまま右手を持ち上げ、空を指し示す。 「カイ、見なさい」 「?」 青く輝く美しい空に、薄い白墨のような雲がけぶっていた。 「あれはなんだね?」 「ええと、雲です」 「うん、そうだ。 では雲の材料を知っているかな」 「それは、知りません」 カイは素直に答えた。 雲が何から出来ているかなど、考えたこともなかった。 詩歌藩国における一般的な教育は、各地に点在する神殿による慈善事業による部分が大きな割合を占めている。 カイもまた、村にあるゴマフアザラシ神殿で神官のヤハト爺さんに読み書きなどを習っているが、雲の話などは今まで聞いたこともなかった。 なぜ今そんな話をされるのだろう。 カイは疑問に思ったが、それ以上に興味を引かれた。 賢者様はなにか大事なことを伝えようとしておられる。 そう感じて自然と佇まいを変え、正座になる。 その様子を見て、賢者はしわしわの顔をくしゃりと丸め、笑みを浮かべた。 「雲とは、水の集まりだ。 たまに雪や氷の時もあるが、まぁ雨の元だと思って良い」 「あの白いものは水なのですか!?」 カイは驚いた様子でそう言った。 「白く見えるのは、可視光を反射するせいだな。 水滴の密度や雲厚によって色が変わることもある」 「えっと、よくわからないです……」 再び正直に、カイは言った。 こんなに頭がこんがらがったのは、ヤハト爺さんに共和国語を始めて聞いたとき以来だ。 「ハハハ、まぁゆっくり覚えていけば良い」 賢者はそう言って優しく笑ったが、カイは自身の血の巡りの悪さを恥じた。 明日からはなにか書く物を用意しようと思った。 「大事なのは、雲は雨を呼ぶということじゃ。 そして、海が荒れることはすなわち、雨が降り風が吹くこと」 そこまで聞いて、ハッとするカイ。 気がついたことを、そのまま口にする。 「つまり、雲をよく知れば、いつ雨が降るのかがわかる?」 「その通りじゃ。 カイよ、あの雲を見なさい」 次に賢者が指し示したのは、僅かな白ペンキを薄く延ばしたかのような、ずいぶん薄っぺらい雲だった。 「あのように、向こう側が透けて見えるほどの薄雲を巻雲(けんうん)と呼ぶ」 言われてよく見れば、空に浮かぶ雲はほぼすべてが巻雲であった。 厚さを持った雲はほとんどないように見える。 「雨を落とす雲は厚く、暗い灰色をしておる。 あれだけ薄いと固まって雨になることもなかろう」 「では、巻雲が出ている間は晴れが続くのですね」 「うむ、その通りじゃ。 この様子であれば数時間は天候に変化はあるまい」 カイは賢いのう、と言って賢者はカイの頭を撫でる。 くしゃりと髪を掻かれるのは気持ちがよかった。 「荒れた海を鎮めるのは魔法でもなくば難しいが、雨風の漁を避けることはカイにもできる。 大事なことは、正しい知識を身につけることじゃよ」 カイは瞳をキラキラと輝かせながら、何度も頷いた。 自分にも賢者様と同じことができる。 その言葉が何よりも嬉しかった。 「さて、講義の続きはまたにするとして釣りを再開しようかのう。 きちんと釣らねば昼食がなくなるわい」 「はいっ!」 そうして、二人は日課となっている朝釣りへと戻った。 カイはうずうずとしながら、はやく明日にならないかと願った。 話の続きがはやく聞きたかったから。 実際には、賢者の語った話は気象学の雲学、その初歩の知識にすぎない。 長く生きれば誰もが経験則で理解しうる内容だ。 だがカイにとってはまったくの未知なる知識であり、強く引きつけられる内容だった。 だってそうだろう? 雲を見ただけで明日の天気を予知できるだなんて、まるで魔法のようではないか。 こうして、荒海の賢者が一番弟子はその一歩を踏み出した。 [No.7766] 2011/12/04(Sun) 20:10:09 |
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