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all 荒海の賢者 文章 - 鈴藤 瑞樹 - 2014/02/10(Mon) 22:33:01 [No.7848]
最後の部分については - 鈴藤 瑞樹 - 2014/02/11(Tue) 00:32:52 [No.7853]
【賢者と詩と歌の王】 - 鈴藤 瑞樹 - 2014/02/11(Tue) 00:30:45 [No.7852]
【賢者と仲間たち】 - 鈴藤 瑞樹 - 2014/02/11(Tue) 00:29:59 [No.7851]
【賢者と詩人】 - 鈴藤 瑞樹 - 2014/02/10(Mon) 22:34:08 [No.7850]
【賢者と花の娘】 - 鈴藤 瑞樹 - 2014/02/10(Mon) 22:33:23 [No.7849]


【賢者と仲間たち】 (No.7848 への返信) - 鈴藤 瑞樹

【賢者と仲間たち】


レイフョルドの訪問からしばしの時が流れた。
いつもの海岸には、小さな小屋が建てられていた。
冬の間、賢者が森の洞穴で寒さを凌いでいたことを知った村人たちがあわてて建てたものだった。

賢者はたいそう喜び、入り口に彼の瞳の色によく似た青い蒼い布を掲げた。
そこには帝国の文字とも共和国の文字とも違う文字が書かれていたが、読める者はいなかった。

カイが、なんと書いてあるのですかと聞くと、賢者は遠くを見るように、砦を示す言葉だと教えた。
カイは砦を見たことはなかったが、賢者の瞳が真剣であることだけは理解できた。


小さな小屋が建ってから、さらに数日が経過した。

その日、賢者の元でカイが学び、賢者の元を舞音が訪ね、賢者の後ろにいつの間にかレイフョルドが佇み、賢者の頭上でノウスが寝こけていた。

「新築祝いをしましょう!」

舞音がぽんと手をたたき、良い笑顔でそう言った。
全員が舞音を見たが、あまりの唐突さに言葉をつむげる者はいなかった。

「えっと、新しいお家が建ったらお祝いをするものだって父から聞いたことがあって、それで・・・」

「良いのではないでしょうか」

言葉に詰まった舞音にレイフョルドが助け船を出す。

「見れば危急の用事も無いご様子、せっかくのご好意を無碍にすることもありますまい」

「ふーむ、では甘えるとするかのう」

真っ白な髭をしごきながらの賢者の一言で、新築祝いの宴が催されることとなった。

/*/

ぱちぱちと弾ける炭の音と、香ばしく焼ける肉の匂い。

新築祝いのため、いつもの海岸はバーベキュー会場と化していた。

いったいどこから取り出したのか、レイフョルドは網や炭などをするりと取り出し、賢者とカイの釣った魚や
舞音が市場から買ってきた肉などが串焼きにされたのだった。

舞音はよく焼けた肉や野菜を串から取り外し、ノウスに食べさせてやっていた。

「ウサギさん、おいしい?」
「きゅい(イイ肉だ、美人に出してもらったと思えばなおさら旨く感じるぜ)」
「えへへ、かわいいねぇ(なでなで)」
「きゅい!(おっとお嬢ちゃん俺に惚れるのはやめときな、触れたら火傷しちまうぜ)」

見た目には小動物と少女が触れ合う微笑ましい光景であった。



レイフョルドはもくもくと串焼きを頬張っていた。
食べる量は少しづつ、ゆっくりと咀嚼する。
旅の中で飢えるうちに身に付いた、少量で満足を得る食べ方だった。
そのほほえみはわずかにも崩れることなく、綺麗に張り付いたままである。

その様子を横目で見つめるのはカイだ。
傍目にも不機嫌であることがすぐにわかる。
レイフョルドの笑顔とは対照的であった。

「なぜ、賢者様を悪人扱いするのですか」

馬鹿らしいほどの正直さ加減に、レイフョルドはうっかり出そうになった苦笑をかみ砕いた。

「していませんよ、そのようなことは」

「嘘です、貴方の目は疑いの目です」

糸のように細い目をさらに細める。
鋭いなと、素直に感心してしまう。
伊達に賢者に師事しているわけではないらしい。
こういう人物が世に出れば、少しは世界もマシになるだろうとレイフョルドは夢想した。

「悪とはなにか、考えたことはありますか」
「人に迷惑をかける人のことです」

迷うことなく少年は答える。
いっそ眩しささえ感じるほど。

「では、キミは人に迷惑をかけたことがない?」
「・・・それは、その分、人を助けるようにしています」
「迷惑が少なく、助けが多いものが正しい、そうかもしれません。 しかし、行動が善か悪か決まるのは結果が出たあとなのです。 善人のフリをし続けたあと、最後の最後で大きな悪事をしでかす・・・そんな人がいたらどうでしょう? 狡猾な悪とは、悪であると最後まで気づかせないものです」

「・・・・・・」

カイは額にしわをよせて、考え込んでいるようだった。
絶対と信じていたものが揺るげば当然のことではある。

「私に賢者様が善なのか悪なのかはわかりません、しかし強者であることは確信している。 ゆえに、見つめ続けるつもりです」

レイフョルドの話を聞き、カイは深く考え込むようにじっとしていた。
レイフョルドが三本目の串焼きを食べ終わった頃、ようやくカイが口を開けた。

「あなたの言うことは、間違っていないように思います。 さきほどは無礼なことを言ってしまい、すみませんでした」
「いいえ、信じることも疑うことも、等しく重要な事柄です。 キミが賢者様を信奉することは悪いことではない」

すこし言い過ぎたかもしれないと、レイフョルドは思った。
はぐらかしてもよかったが、少年の愚直さは好ましかったためについ口が滑っている。

これからの関係をよくするためにも、堅い空気を解すべきだ。
女性が相手なら花束でもプレゼントするところだが、さて勤勉な少年にはなにを贈るべきか。

「知っていますか。 新築祝いには、蕎麦を食べるのが通例だそうですよ」
「ソバ、とはなんですか?」

やはり話にのってきた。
勤勉な少年には知識を贈るのが相応だろう。
吟遊詩人の面目躍如、口先については自信がある。

「そう、あれは私が神聖巫連盟へ旅したときのこと・・・」

詩人の話は少年の心を強く引きつけた。

そんな二人の様子を見て、荒海の賢者はちいさく笑った。


[No.7851] 2014/02/11(Tue) 00:29:59

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