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「お・に・ぎ・り」 目の前に標識が見えた。 『たけきの藩国国境まで5キロ』 さわやかな風が身体を吹きぬけた。 つられるように僕はふと上を見上げる。 ああ、明るいなぁ。 そういえばいつ以来だろう、太陽を見ようと思ったのは。 暖かいし、ここは何より火薬の匂いがしないのが嬉しい。 そのことを思い出し僕は少し悲しい気持ちになる。 僕の町も少し前まで火薬の匂いなんてしなかったのに。 僕の住んでいた町はにゃんにゃん共和国と呼ばれる国にあった。 木がいっぱいあって、森の中に作った秘密基地でいつもみんなと遊んでいた。 空気はいつも木のにおいがして、吸うとなんかすがすがしい気持ちになったんだ。 でもいつからか空気の匂いに木の匂い以外の匂いが混ざってきた。 夏にみんなでやった花火みたいな匂い。 その匂いはいつからか私の長い髪や、着ている皮衣にもいつしか染み付いて取れなくなったのが、歯痒かったのを覚えている。 それからかなぁ、街のみんなの感じが変わったのは。 学校に行く途中いつも会って挨拶していた、警察官のおじさんとは会わなくなっていた。 教室に行く度に、友達の数が少なくなっていった。 お母さんに外に遊びにいっちゃ行けませんって言われた。 そしてとうとう学校にも行かないでいいっていわれたんだ。 いつもは女の子のなのに僕って言っちゃいけませんってしか言われないのに。 それから何日か経って僕たち家族は、家を出てながいながい旅行に出た。 /*/ 【たけきの藩国国境〜入国管理所〜】 入国管理所という厳しい字面にもかかわらず、そこはどことなく暖かい雰囲気に包まれていた。 ここまでやってきた共和国の人々はもしかしたら迫害を受けるかもしれないという、無意識の恐怖を誰もがもっていたが、少しは薄れたように見える。 入国管理所には『共和国のみなさま、たけきの藩国はあなたがたを歓迎いたします』と書かれた横断幕が掲げてあった。 /*/ 難民がたけきの藩国にたどり着く数週間前・・・ たけきの藩国が共和国の難民の受け入れを表明し、帝国内での調整で最終的に325万人の方々のお世話を仰せつかった。 藩王竹上木乃はその対応策を協議することとなったのだが、まず最優先事項として、たけきの藩国に着の身着のままたどり着く人々に対して食料を提供することが何よりと判断した。 「ん〜レーション放出しておけばいいってものじゃないわよね・・・」 「陛下何かおっしゃいましたか?」 「ひわみん、ここまですっごく大変な思いして、はいこれ食べてねって軍用レーション出すのってなんか、なんかあれじゃないかしら?」 「ひわみんとおっしゃらないでとあれほど・・・まぁそうでございますね、何か温かみにかけますね」 「そうそう、そうなのよ!何かいい案ないかしら?」 「そうでございますね・・・んっ?」 藩王執務室に向かう足音がした直後、扉をノックする音が響き渡る。 「藩王さま〜」×2 竹上木乃は部屋にはいる許可をだした。 転げるようにはいってきた人物の影は二人。 「ゆみちゃんとりあらさん、どうかされました?」 「ふぅふぅ」×2 荒い呼吸を何とかなだめようと、二人は深呼吸を繰り返した。 ひわみは戸棚からコップを二つ取り出すと執務室の水差しから水を注ぎ二人に手渡した。 会釈もそこそこ、二人は水を飲み干した。 先に息が落ち着いたのだろう、コダマゆみが口を開く。 「藩王さま、おなかすかせている人が国境に一杯いるんだって?じゃ、私たちに任せてくれないかな。私たち料理得意だし、それに何より今まで苦労してきた人たちに暖かいごはんを食べさせてあげたいじゃないか!」 「美味しいご飯を食べることこそ、自分が助かったんだという自覚が生まれてくるんだと思います、私たちに任せてもらえませんでしょうか?何より私たちは料理に慣れています、それは大人数の料理にも応用が利くんですよ。例えお握りだって冷えきってしまったものより、人肌の温かみがある方が何倍も美味しいんです!」 二人の剣幕に目を回しながらも、竹上木乃はひとりごちる。 (そうよねーレーションより、手作りのお握りのほうがすっごく美味しいわね) (それであたたければさらに美味しいし、そこに熱いスープ(豚汁)なんかもあれば最高よね) 「分かりました、二人にはこれから国境の入国管理所の外に出て、炊き出しをやっていただけますか、機材等は月光ほろほろさんと相談して必要なものを持ち出す許可を出します。難民の方々が来る前に必要な物資を揃え出発してください。ひわみんは適切なサポートを命じます。各人己が最適という行動をしてください!ただし突貫作業なので担当者は不眠不休になると思うけどそれでもよろしい?」」 「イエス、ユア、ハイネス」×3 /*/ ここ何日か、おなか一杯になるってことはなかった。 家を出てから、長いたびをしてきた。 あれから何日経ったのだろう。 しばらくしてたけきの藩国国境って標識があったんだ。 お父さんに聞くとここが旅の終わりの始まりって言ってた。 これからどうなるのかなぁ・・・ 入国管理所の辺りには猫耳のみんながいっぱいいて、ところどころ犬の耳の人もいる。 ふと耳を澄ますと声が聞こえる。 『共和国のみなさま〜お疲れ様でした、こちらに美味しい食べ物を用意させていただきました、順番を守ってくださいね〜皆様に充分いきわたる分を用意してまいりましたので〜!』 声の方に目を向けると、白い前掛けを着けた二人の女の人がテントの下でお握りを配っていた。 そのうちの一人は、お米の補充の補充とつぶやきながら、奥に下がっていったようだ。 ごはんのいいにおいがする。 お父さんの顔を見ると何か難しい顔をしている。 周りの大人たちもおにぎりのおねーさんに近づこうとしないで、少しはなれてひそひそ話し合っている。 『美味しいお握りをつくってま〜す、無料ですので是非召し上がってください〜』 あれたべてもいいのかなぁ・・・ 「おとうさん、おにぎりもらってきてもいい?」 「・・・」 「ねぇ、おとうさん?」 「・・・ ・・・」 なんかおとうさんへんだなぁ? 『皆さまお疲れだと思いまして、ちょっとしょっぱめの美味しいお握りです、どうぞ〜』 いいや、もらってこよっと。 僕はおにぎりのおねーさんのところまで走った。 後ろからおとうさんがなにかいったような気がしたけど、あとでいいや。 おねーさんは眼鏡をかけた、奇麗なひとだけど目の下になんか陰があるなぁ。 それに紫色の服がとっても似合っているなぁ。 僕はなんかいきなりドキドキしてきて、赤くなって下を向いてしまった。 「こんにちは、お握り、はいどうぞ」 おねーさんが絆創膏だらけの手で差し出してくれたおにぎりを受け取った僕は、下を向いたままちっちゃな声でありがとうとつぶやいた。 「このおにぎりね、おねーちゃんたちが心を込めて握ったの、とってもおいしいわよ」 その言葉に顔を上げた僕は、おねーさんが“んっ”と顔で合図してくれたのを見て思わずおにぎりにかぶりついた。 「おいし〜!!、おねーさんこれとってもおいしいよ!」 「そう、まだいっぱいあるからね、おなか一杯食べて頂戴」 「みんな〜このおにぎりとってもおいしいよ〜いっしょにたべよ〜!」 あ、おとうさんもこっちくる、あっちのひとたちも、みんな、みんな、みんなあつまってきた。 わけもなく嬉しくなった僕はおねーさんの顔見たんだ。 そこでみたおねーさんの笑顔とっっってもすてきだったなー。 fin [No.3203] 2008/06/18(Wed) 00:33:10 |