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季節はずれの西風が風が吹いていた。 西風は空気を洗い、半月の宵に澄み切った空を広げていた。その下には湾が空に負けじと広がり水面に月明かりを受けしずやかに輝いている。 ほの明るい墨色の世界の気圏の底で、忍潮井レイラインはほぼ定位置となっていた堤防に腰を下ろしひとり杯を傾けていた。 ぼんやりと見上げた先では、羊雲がくるくると形を変えながら月にかかる様が面白く、詩才のひとつでもあればその面白みを即興で詠んだことだろうが、生憎そういった方面の才能は持ち合わせていなかった。 まあ、いい。とレイラインは静かに笑う。 ひまわりのおかげで放射能の脅威は去った。 目覚しい復興を見せる国土。 表現などしなくても、人の手と力により復活したうつくしい景色はここにある。 それを享受できればそれでいいのだと。 穏やかな満足感とともにレイラインはく、と杯を返す。 そこに声をかけたのは、旅支度をすっかり終えたジンジャーだった。 「レイさん、こんばんは」 「こんばんは、ジンジャー様。お散歩ですかー?」 「はい。今日は月がきれいですから」 レイラインはそうですかー。といつもどおりへなちょこに笑いながらジンジャーに杯を差し出した。 「『この杯を受けてくれ』」 「『どうぞなみなみつがしておくれ』ですか」 ジンジャーはいきなりのことに面食らいながらも、杯を受け取り少し笑った。 一遍の詩の続きを言葉にしないまでも伝わったことに笑みを深めるレイラインは、ジンジャーの手の中にある杯を酒で満たし、また静かに笑った。 季節はずれの西風が風が吹いていた。 ------------------------------------------------------------------------ 柄にも無くちょっとシリアスですよ。 次はトゥデイもトゥモローもナイスウェザー、ダンディズム全開のモモ様、お願いします。 [No.240] 2007/05/31(Thu) 20:48:59 |