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人にはたくさんの可能性がある。しかし、それがいつどのように現れるかは、誰にも分からない。 人の可能性ですらそうなのだから、犬の可能性は更に分からないだろう。 /*/ いつも不精ヒゲの男、月光ほろほろは歩いていた。 時刻は夕刻、どこからか夕飯の匂いがする。 ここは、わんわん帝國のFVB。 勝手知ったる他国で、ゆっくりと歩いていた。 と、土手を歩くと見知った顔を見つける。 「おぉ、ボロマじゃねぇか」 「あ、月光さんだ」 土手に座って川辺を眺めていたのはボロマールである。 真紅の服を着ている。 「珍しいな、オメェとこんなとこで会うなんて」 「お酒入ってない月光さんの方が珍しいと思いますけど…」 ボロマールの言葉に月光は「違いねぇ」と言ってからからと笑った。 「一服すっか」 月光はそう言うとボロマールの隣に座って懐から緑と白色の箱を取り出すと、そこから煙草を出してくわえた。 「ここ、吸っても良いんですか?」 「ここは解放区だ。灰さえ落とさなきゃ大丈夫」 ボロマールは笑って携帯灰皿と赤い箱を出す。喫煙者の鑑である。 3杯目にはそっと出す居候の身。気は使って悪いものではない。 野郎二人が並んで煙草を吸う姿には、一種の威圧感があった。子供が見たら、避けて歩くだろう。 「不良を発見しましたー通報しますよー」 と、後ろから声。 「ぶはっ!」 驚いてむせた月光が振り向くと、そこには忍湖井レイラインが笑っていた。 「何をやっているんですか?ボロマ様、月光様ー」 端正な童顔をほころばせて、笑うレイライン。 敬称をつけるのは、彼なりの流儀らしい。 「一服ですよ、レイラインさんもどうですか?」 「遠慮します」 にっこり笑顔のレイライン。 「あ、でも川の流れを見るのは付き合いますよー!」 と言ってレイラインは二人の隣に座りこんだ。 …静寂。 風はさやさやと吹き、太陽は地平に沈んでいく。 「そういえば、資格は何か取りましたか?」 おもむろに尋ねるボロマール。 「取ってないですねー」 「取ってねぇな」 秒で返されるボロマール。 「って俺もなんですけど。みんなすごいですね」 「だなぁ。TAKAなんてたくさん取ってるだろ?スゲーよな。レイラインは何か取らないのか?」 「僕は置物ですから…」 少し寂しそうに言うレイライン。 「そんな事はねぇ。」 「そうですよ、レイラインさん!」 「いえ、本当の事ですから…」 レイラインの顔は笑っているが、どこか悲しそうに見える。 心配するボロマール。 良い人は心配事が多い。 難しい顔をした月光が口を開く。 「一つ、こんなおとぎ話がある」 「うは、似合わないですよ月光さん!」 「いいから黙って聞け、ボロマ! 昔々、鳥に憧れた少年がいたんだ。その子は空をはばたきたかった。でも、悲しいことに飛べなかった。落ち込んでいたその子に、母親は言った。『みんな違って、みんな良いのよ』ってさ」 「?」 不思議そうな顔をするボロマールとレイライン。 月光は話を続ける。 「つまり…男の子は空を飛ぶことはできないが、鳥は地面を早くは走れない。男の子は鈴のような綺麗な音はだせないが、鈴よりもたくさんの歌を知っている。みんな違って、みんな良いってさ」 ボロマールとレイラインは神妙な顔で聞いている。 「俺は、人はそういうものだと思う。資格をとって頑張るやつもいれば、資格以外の部分で頑張るやつもいる。感謝こそすれ、比べる必要は無いさ。根源力が人間の価値は決めない。決めちゃいけない。おいしい料理を作るのも、立派な才能だ。一人で何でも出来ないが、たけきの藩国はそうじゃぁない。新国民は、俺達の新しい仲間たちは、きっと今の俺達では出来ないことをするために、火の国の宝剣が遣わしてくれたんだろうさ」 レイラインは笑顔で言う。 「月光様、今その男の子はどうしていると思いますか?」 「さぁな。酒が好きな大人にでもなったんじゃないか?」 ボロマール、笑って煙草に火をつけた。 気付けば日は沈み、月が照らしている。 「月光さん、レイラインさん、呑みに行きませんか?」 顔を見合わせる3人。無言でうなづいて、歩き出す。 美味い酒が、飲めそうだった。 /*/ そしてどうなったかというと… 飲みすぎた月光が歌いだし、脱ぎだし(ボロマールもつられて脱ぎかけた)、レイラインは頭を抱えたという。 可能性は幾方向にも開かれているが、調子に乗るな、という。 今日は、そんな日誌―。 [No.82] 2007/05/05(Sat) 00:26:30 |