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チャチャラチャーチャー(OPイントロ) 流れるアツイOPとキャラクター立ち絵はこちら!:http://www23.atwiki.jp/ty0k0/pages/146.html /*/ 宇宙の漆黒に漂う岩塊―――― 全長1kmほどもあろうか、コンペイトウのように尖った角を四方八方へと突き出した、その、かつては無限に孤独を旅していたであろう、星にもなれない屑星の欠片は、第一ラグランジュポイントと呼ばれる、月と地球の間に存在する、引力の拮抗点を公転し続けている。 月と火星の間に広がる広大な宙域をカバーする、ヘイムダルの目、と一般に呼称されている、無人の第六世界型人型機械、通称『人形』を配置して形成されたレーダー網よりも、地球から見て、さらに内側の領域でのことである。 本来ならば、地上から、アマチュアの天文家の観測装置ででも観察出来るような距離に置かれてありながら、その漂泊物のザラついた岩肌に、今、ぱっくりと開かれた人工の扉の存在に気付くものは、ニューワールド内には誰もいない。 そこに吸い込まれるようにして地球上から飛来する、小型の宇宙艇の存在にも、また―――― /*/ けたたましい羽根打ちの音と共に、混じり合わない五つの足音が、歩く。 残響は、ない。 悠然と五人が並んで行ける、幅広で滑らかな赤絨毯の道を、さらに広大な空間がくるんでいる。中世ヨーロッパの古城が如き、分厚い空間のしつらえ。そこに入り込もうというものをすべて飲み干さんとする、巨大な怪物の顎にも似て、天井は来訪者の心の準備を待つこともなく、ぽつねんと奥に潜む小さな扉の初めから突然に高く、また、深い。 光が上方に飾られていないのだ。 赤絨毯の道からは程遠い壁に据え付けられた蝋燭掛けに、差し立てられた白蝋は、ゆるゆる蕩けて揺らめきもなく、ほの暗く黄色い炎が垂直に立ち昇っている。 風もまた、どこからも吹き込んではいなかった。 閉塞した世界に、だが、蠢くことさえも忘れた異形のヒトガタが、互いに関係することもなく、まばらに点在している。 それらは、みな、一様に空間の中央、五人の存在へと向けて、かしずいていた。 クラウデス。 死(デス)を喰らう(クラウ)、恐るべき美食家(グルマンディーズ)の一団である。 五つの足音が、空間の中央にて立ち止まった。 「……お預けを食らう犬の気分だな」 フン、と、コックコートをまるで上等なスーツのように着こなす長身の男が吐き捨てた。 威圧的であり、また、高圧的な、到底人に奉仕する料理人のする着こなしではないという意味での、形容である。 肩を張り出し、立ち姿は垂直であり、口元が不遜であり、まなざしが悪意の形に鋭い、そういう男であった。 ヤミノ=クージャ。 五人の並びの中心に立つ、クラウデスの料理長。 「あらあら」 「ヤミノ料理長はせっかちですこと」 「殿方の気が早いのは、」 ≪いただけませんわよぉ キャハハハハハ――――!!≫ ヤミノの両脇を、左右対称に傾いてなまめかしいのはボンテージファッションの女たち。 年の頃は若くない。老いているわけでもない。 肉体が、熟れている。そういう年頃である。 労働の太みを持たない筋肉の上から、脂肪が肢体に丸くふくらみを加え、ふくらんだ肢体に食い込む革が、やわらかく肉の線を浮かび上がらせて、そのいずれもが男の掌に程よくはみ出す。日常の中にはありえない、爛れて妖しい輝きを放つ、影と、幻の中にのみ、可能な肉感を持った、女たちであった。 二つの肉体が、また、異様なほどに均一であり、蠱惑に幻惑を重ねて見る者を幾重にも惑わせる。 艷やかな唇の紅が、たわわに笑っていた。 この二つの女の体の名を、ワルーニャと言う。 ネーヤ、マーヤと、それぞれに名はあるが、これに区別の着けられるものはいない。 また、本人たちも区別を必要としている様子はなかった。 クラウデスに咲き誇る、フロアマネージャたちである。 「…………」 最右翼に位置するのは着流しの男。 黒い。 真一文字に引き結んだ唇の間の沈黙が黒く、纏う衣が黒く、括り束ねた長い髪が黒く、感情を面に表さぬ静かな瞳が黒く、また、東国人のやわらかな肌色が、一層にそれらの黒を、深めている。 何よりも黒いのは、男の背負う、剥き身の黒鉄であった。 たすき掛けに締めた布帯に挟み込まれた刃は、反りを持たず、身幅太い片刃の、明らかな包丁拵えであるにも関わらず、その鋼色が、黒いのだ。 粗く巻き付けられた握り部分の布が、柄の代わりに働くのだろう、これもやはり黒いが、よく見れば、その巻きの粗さは、使い込まれたがゆえの、布地の立ちであり、締め込みは固い。 クラウデスに砥ぎ置かれし包丁人、ヤイーバだ。 「ヤミノ料理長。ジビエの扱いは心得ておいでで?」 そして―――― ヤイーバとは正反対の、左端に佇む細目の美男子が、支配人、アーク=マ=デュウス。 慇懃な美しさが狷介で、ワルーニャ姉妹と同程度の背丈に、細い体。 ただ、それだけ。 「俺を誰だと思っている」 忌々しそうにヤミノは顔を歪めた。 「熟成。目玉に蛆が湧くほどに……だ」 「その通り!」 大仰に両の腕を広げるアーク。 「身共は世界征服を企む悪の秘密結社でもなければ、正義の巨悪を貫く偽悪家集団でもありません」 その左目だけが、何が嬉しいのか、ぎょろんと喜悦に見開かれる。 「究極の美食を追求する、料理人です」 舐めずるような饒舌。 「口を揃えて誰もが問います、求めます。美味しさの秘訣は? 愛情。 愛情とは即ち相手に捧げた感情のこと! 食の本質とは物質に非ず、感情にあり! 感情の熟成とは一日にして成らず。それはさながらに物語を紡ぐが如き、料理人の秘伝! 肉汁滴る情熱をヤミノ料理長が好むように!」 ヤミノを指差し、 「フロアマネージャーが糖蜜果実の華美にて熟れたる愛欲を好むように!」 両の手で捧げ持つようにしてワルーニャ姉妹を示し、 「ヤイーバ氏が冴え冴えと生の割鮮したる孤独を好むように!」 そして、 恍惚に我が胸を掌で抑えながらに、 「……身共が心の闇を尊ぶように。 人は、己が根ざした感動に基づき、生きるものです」 ここで、初めて彼ら五人を取り巻いていた異形のヒトガタたちが声無く笑う。 とりどりに揺れるシルエット。 ある者はだらしなく頭を揺らし、 ある者は感極まるかのように身を震わし、 ある者は手振りを交えて口元を典雅に抑えながら、 ある者は微かに吐息で空気をそよがすのみで、 その数は、まばらに点在すれども、針を平面へと穿ち立てたかのように、異彩を放って埋没することがなく、密やかに大きい。 いずれもが、クラウデスの末端、あるいは五人に近しい存在たちであり、 今はまだ、存在としか形容し得ぬ、異形の塊たちであった。 アークは笑みをス……と消し去り、美しく佇んでは、誰にともなく、深く腰から頭を垂れる。 「得るべき物語は、未だに序章。 そして身共が求めしものも、また――――」 急ぐ必然など、何一つ、 あの世界にはもう、残されていないのですから――――。 『ナニモナイ、ナニモナイ、ケケケー!』 九官鳥の羽根音が、人に似て非なる醜い声色と共に、この場の何もかもを嘲笑った。 [No.6249] 2010/02/18(Thu) 00:22:14 |