・Se non ora, quando?
・la signora
長いことイタリア好きをやっていると、芋づる式にイタリアおたくの輪が広がることがある。 私の知る限り、イタリア好きが高じて、せっせとイタリア通いを始めるようになると、 すべからく人は日本人としてのアイデンティティーに目覚めるようになり、 より日本に、日本人に、日本の文化にも惚れこんでいくような気がする。 イタリアに、イタリア人に、イタリアの文化に首ったけになるのと同じぐらいに。
わたくしも自他共に認める“イタリアおたく”だと思ってはいるが、 単なるイタリアかぶれ、外国かぶれになり下がるつもりは一向にない。 不思議なことに、芋づる式に集まる友人も、皆そんな感じだ。 それぞれに非常によく勉強をしているし、非常にアクティヴに経験を積んでいるし、 それを何かに役立てるべく、伝える術を持っている。
私自身も、たまたま向けられた偏愛の矛先を、可能な限り草の根外交に役立てたい、とも思うし、 今、こうして縁あって、イタリア料理を生業にさせていただいているのであれば、 イタリアの食文化に敬意を表し、できる限り正しくイタリアの食文化を紹介する、 一助となれれば幸いに思う。
わたくしとAtticoさんとの出会いは『ラ・スコリエーラ』の開店とほぼ同時。八年前に遡る。 当店のSHOPCARDやHP内に使わせていただいている、とってもキュートでイタリアっぽくて、 雰囲気のあるイラストを描いてくださった、イラストレーターのカワムラナツミさん (イタリアに10年暮らしていらした方。ご本人もとってもキュートで雰囲気がある方だ) が、もたらしてくれたものだった。
Atticoは、イタリアの文化のみならず、日本の文化を紹介することも目的としている。 だから、イタリア語教室やイタリア料理教室のほかに、みんなで歌舞伎を観に行ったりする会もある。 雑誌記者として日本中世界中を飛び回らせて戴いていた時代にも、実はずっとお茶を習っていた者としては、 そのあたりにとっても共感を覚えたのだ。
※「日伊文化交流サロン アッティコ」のHPはこちら!→ http://www.attico.net/
Atticoを主催する村本幸枝さんは、撮影のコーディネートなどを手掛けつつ、日伊を往復している。 こんがりと焼けたブロンザートなお姿が、tipicaイタリアのマダムっぽい、バリバリ元気な40's仲間だ。 彼女から送られてくる活きたイタリア情報満載のメルマガは、わたくしの楽しみのひとつ。 今回、とても胸に迫るコラムがあったので、ここに転載して、御紹介しようと思う。 日々忙しいことを言い訳にして、今やらなければいけないことをずるずると伸ばしている怠惰な私に、 神さまが「渇!」って言ってくださったのかしらん…。「今やらなければいつ?」ホント、その通りだ。 エジプトの民衆も、きっとみんなそんな気持ちで立ち上がったのに違いない。 今日できることを明日に延ばさず、もうちょっと、もう一歩、もうひと踏ん張り、頑張ろうっと…。
…………………………………………………………………………………………… 『La Scogliera』が好きだけど、「Attico」はまだ知らなかったというイタリア好きの皆さん! このメルマガに登録するだけでも、お薦めです★ ちなみに、Atticoの会員さんには、『ラ・スコリエーラ』『八丈島 ゆうき丸』どちらでも、 会員証提示で、食前酒一人一杯サービスという、特典も付いています!
え? なぜ和食の『ゆうき丸』もなのかって? それはですねー、『ゆうき丸』にはうちの石橋マネージャーがおりますゆえ、おそらく都内で唯一の、 「イタリア語でお魚の説明ができる和食店」だからなのです(笑)。 旨い刺身・鮨・天ぷらがあり、足も伸ばせる掘りごたつ式座敷の個室。 イタリア人接待にぴったりなことこの上なし! な和食店だからなのですわー。
実際、Atticoの皆さんには、何度イタリア人のお客様をお連れいただいたことか。 イタリア関係の輸入業の皆さん、映画関係、通訳業のみなさ〜ん!!! 刺身がおいしい『ゆうき丸』は、イタリア人接待に使えまっせー。ぜひぜひお見知りおきを!(笑)
…って、前置きがやたらと長くなってしまいましたが、そろそろ、 Atticoの村本さんによる、ローマからの便りをお楽しみください。
…………………………………………………………………………………………… 【引用元】Atticoのメルマガ(2/14配信号) Se non ora, quando? 『今じゃなかったら、いつ?』 ……………………………………………………………………………………………
事の発端はイタリアで誰もが知る『ルビー事件(Caso Ruby)』。
昨年、盗難でミラノ警察に拘束されていたモロッコ人で、自称ダンサーのルビーちゃん (当時未成年、不法滞在者、本名カリマ・エル・マフルーグ)を釈放するようにと、 ある日、ミラノ署に連絡をしてきたのは政府筋の人間でした。
その理由は『彼女がムバラックの姪だから』というもの。 電話口に出た担当警察官『ムバラックって誰だ?』(苦笑) 政府筋『エジプトの大統領だろ!』と苛つき気味に応答。 (もちろんそんなの嘘。政府筋がそんな嘘をついていいのか?)
そして、政府筋からルビーの後見人として送られ、 警察署に彼女を迎えに来たのはロンバルディア州の女性執務官でした。 (彼女もずっと昔はベルルスコーニ首相の歯のお掃除を担当していた歯科衛生士 (当時25歳) だったらしい…)
でも、なんでそんな小さな事件に政府が関与するのか…、 という疑問は当然残り、そこから再び浮上したのが一連の首相の未成年売春疑惑…。 もちろん、首相もルビーちゃんもその関係については否定しています。
さらに続く、首相の『若くて奇麗』であることが女性の価値を決めるような言動、 『女は金持ちを見つけて結婚するのが一番』といった発言に、 もうこれは、政治とか、政党とか、国策とか、お騒がせ首相のレベルの問題じゃなく、 女性の尊厳そのものを傷つける一大事だ! と、 女性映画監督クリスティーナ・コメンチーニが音頭を取り、 『今じゃなければ、いつ? (Se non ora, quando?) 』グループを創設。
女性が記号化・商品化されつつあること、 長年に渡って獲得してきた女性の人権が後退への道を辿りつつあることへの危機感をインターネットで訴え、 ベルルスコーニ首相辞任を求める署名と抗議集会への参加を呼びかけたのでした。
という流れで、昨日2月13日、 イタリア主要都市の広場にはベルルスコーニ首相に対して辞任を求める多くの国民が集まり、 平和的な抗議集会が行われたわけです。 一部の報道によれば、イタリア全土で100万人以上の人々が集まったそうです。
私も多くの友人たちに誘われ、昨日14:00にポポロ広場へ向かいました。 私が到着した頃はすでに広場はものすごい数の人々で埋め尽くされていて、 人をかき分けながら広場の中央に進むのがやっと。
政治的な集会ではないと謳われていた通り、左派も右派もフェミニズムもなく、 インテリ層も、主婦も、キャリア組も、男も、女も、老いも、若きも、 子供たちまでもが参加するパワルフな集会でした。
政治的な意図や思惑がなく、純粋な同じ目的を持って集まった人々がつくるパワーは感動的です。 今ここで何とかしなければ、本当にこの国は駄目になる、 という想いと危機感がひしひしと伝わってきました。
ヨーロッパでは『それはおかしい』と思えば、一般市民が団結し、御上に物申し、 自分たちの生活を向上させるべく広場に降り立ち、声をあげます。
私自身、日本でこういった集会に参加したことはありませんが、 イタリアでは(少なくとも日本より圧倒的に)『署名』や『参加』を求められることがあります。 だから、普通に生活していても、とくに気にはしていなくても、政治や人権問題に目が向きます。
平和的解決を好む、声を荒立てて騒ぎ立てないのが日本人の特徴でもあり、良き面でもありますが、 長年、海外に暮らしていると、日本人も時にはもっと熱く、自分の意見を主張してもいいのでは、 と思うことがあります。私たちはちょっと『クール』過ぎるかもしれません。
そうそう、この抗議デモは、実は東京(イタリア文化会館前)でも行われたんです。 在日イタリア人女性会が集まったそうですが、TVの映像ではほんの少人数によるものだったよう。
参加を呼びかけた在日本のベアトリーチェ・ロンバルディさんがインタビューで応えていた 下記のフレーズが印象的でした。
Se non si inizia da qualche parte, non si va da nessuna parte. どこかで誰かがはじめなければ、私たちはどこにも行けない。
アッティコ・ローマ 村本幸枝
Update:02 15. 2011 20:13 [No.626]
|