副題に「探偵・藤森涼子の事件簿」とある。そう、これは藤森涼子という40歳の才色兼備の女性が所長を務める探偵事務所の事件簿なのだ。女性だけの事務所には個性豊かな所員たちがいる。還暦を迎えてなお活躍する季理亜、パソコンやネット、サイバー系は大得意の美紀、ゴスロリファッションで変わっているが推理や洞察力がものすごい若者の綾。今までも難事件、殺人事件までもに巻き込まれては解決の一旦をかつぎ、警察にも多少名前が知られている。
3つの章で成っている。 「石楠花の詞」「金木犀の徴」「夾竹桃の焔」。 それぞれ花が関わっている事件・・・。花言葉だったり香りだったり・・・。そこが女性好みな設定。 事件自体が凄惨な感じは一切ない。だからこそリアル。ほんのちょっとした日常の不穏を切り取る感じで、ああこんな事件なら実際あるんじゃないかって、そんなリアルさ、だから面白い。
ある工場の社長が自分を落としいれようとしてると、娘婿の調査を依頼。洗ってみてもどこにも相手に非はなく、結局そのワンマン社長が探偵たちを翻弄させて楽しむという厭な事実がオチだったりするんだが、最後に涼子が、その娘婿のあまりにできすぎた感じにふと、うすら寒い真相を見抜いたあたり、ちょっとリアルで(笑)。なかなかいい毒の効き方だったりする。 「石楠花の花言葉は、威厳、俺の一番好きな言葉だ、と北江は言った。北江は知らなかったのだろうか。石楠花には別の花言葉があったことを。それは〈警戒心を持て〉そして〈危険〉。」
涼子が通うボクシングジムの選手、茉莉花から兄を捜して欲しいとの依頼。茉莉花の兄は両親の離婚で離れ離れとなりメールでのやり取りが続いていたのだが、8年前の夜道を歩く女性の髪の毛を切る通り魔事件の容疑者にされ、それから行方を絶ってしまっているのだという。調べてもみな一様に口が重く家出の先はわからぬまま。その兄のかつて友達だったという男を訪ねたとき、涼子はその男よりその妻が何か言いたげなのが気になる。そしてその妻が8年ぶりに発生した髪きり魔の餌食になる。さあ、ここから涼子の行動力綾の推理力が冴える。兄の行方の真相は。そして・・・8年前の髪切り魔の真犯人は。ちょっぴり悲しい終わり方。
さて、ラストは涼子の姪の静子からの依頼。静子の部屋に盗聴器が仕掛けられており、その出所を辿るうち、静子の先輩の加奈が本当はその盗聴器のターゲットだったことに行きあたる。そこから涼子譲りの好奇心と怖い物知らずで静子が独断で捜査を続け・・・夾竹桃の毒、という言葉に出会い、そして・・・・。思わぬ犯人。思わぬ真相。事件の解決としては尻切れトンボだが、まぁそこもリアル。こんなもんだろう、現実はって思う。誰も死ななかったのだし。しかし女って怖い、というオチ。
なにがいいかってね、これ、舞台が名古屋なんだよね、作者が名古屋の人だから。 平針まで出てきちゃう。平針の救急病院なんて、記念病院だろうってなもんで、そこもリアルなのだ。桜通り、栄、昭和区、その他もろもろ、出てくる地名が全部わかり、その地理もわかっちゃうんだから名古屋がわかる人にはよりリアルに、面白く感じるのだろう。 ほんとに・・・覚王山あたりに涼子が出現しそうな(笑)。
続編出ないかなぁ・・・もっと読みたいなあ。
no.695
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