*Book review

■ 佐藤究
「QJKJQ(講談社)」 評価:★★★★★
Date:2016.10.11
今年の江戸川乱歩章受賞作。
でもなんだか評にあったように、なんとなく今までのイメージとちょっとちがって・・・なんというか引き込まれ方がすごかった。

こんな猟奇的な作品・・・と衝撃的なのに、途中のどんでん返しが中盤という早さで出てきて、もうそこから急転直下という感じ。読み始めには予想もつかない展開、でもよく思い起こせば伏線だらけで、きちんと最後つじつまがあって納得できる。

すごいなぁと思った。この発想。

殺人一家の17歳の少女。彼女も殺人衝動を抱えている。遺伝だから。家族全員狩りをするのだから。

でもある日、兄が惨殺される。家の中で。そのくせそのあと遺体は血のあとごと消えてしまっていた。どこに隠された?どうやって?
そのあと母が姿を消す。忽然と。どこ?まさか・・・。
父が殺した?兄の死にも母の失踪にも動揺しなかった父。

自分も殺されると思って少女は家出するのだ。父に渡された新聞を持って。
調べてゆくうち、少女はフラッシュバックのように過去を思い出してゆく。
恐ろしすぎて封印していた過去・・・。
そして頭のよい彼女は真相を探り当ててしまうのだ。

父とポーカーしたときの
QJKJQの意味。そこには父の深い思いがあったのだ。

最後も決して読後感がいいわけではなく、不穏でこの先どうなるのか、国家の恐ろしさもそのままで、・・・それでも父の愛・・・それを感じて切なくなった。

きっと少女もその愛を感じたからこそ、ほんとうの名前と生い立ちを捨てて、その父が与えてくれた人生で行こうと思ったのだ。
・・・本当の父ではない見守ってくれた育ててくれた父。凶悪な猟奇殺人鬼の血をひく時分にはその狂気がないことにいち早く気づき、見守ってきた男。

・・・ちょっと私はこの衝撃度の中に一本通っている筋みたいなものに惹かれて、この作品好きである。

no.777
 

■ 雫井修介
「望み(角川書店)」 評価:★★★★★
Date:2016.10.04
これは思ったより重たい一冊だった。

一登は建築デザイナーとして成功して仕事は順調。妻の喜代美は校正の在宅ワークでそこそこ仕事で稼げるくらい順調。
娘の雅は難関女子高を目指し勉学に励む美少女。息子の規士はサッカーがうまく将来を嘱望されていたが、怪我をしてリタイア。それから少し反抗期のようで最近夜遊びなどもしている有様。
でも普通の絵に描いたような家庭。だった。あの日までは。

ある夜ふらっと出ていった規士が帰ってこなくて、連絡もとれなくなった。
そして乗りすてられた車から少年の遺体が見つかった。それは規士の友達だった。
その数日前から顔にあざを作って帰宅したり、ナイフを購入していたり、なにか不穏な感じがしていた規士だったので、一登たちは不安をぬぐえない。

その乗り捨てた車から少年複数が逃げた証言。規士も犯人の一人ではないかと警察やマスコミ、ネットで散々翻弄され、仕事にも影響が出始める。

逃げた少年は二人。殺された少年も二人。そんな話も聞かれ、そうだとすると遺体が発見されずもう一体あることになる。それは規士じゃないのか。それとも規士は逃げている途中なのか。わからない。世間も親も真相はまだわからない。

規士は人をCENSOREDような子じゃない。でもそうだとすると被害者で死んでいる可能性が高い。
生きていてほしい。そうだとすると加害者で人をあやめたことになる。
どちらにしても地獄。どちらなのか。
苦しんでやつれはてて追い詰められてゆく一登たち。

そして・・・逃げた少年の一人が捕まった。もちろん規士ではない。
まだ規士が加害者か被害者かわからない。

最後真相がわかる。あっげないものだ。でも・・・。
被害者の親の気持ち、加害者の親の気持ち、両方に覚悟を決めて揺らいでいたがゆえに苦しみすぎて何もうらめない彼らなのだ。ただただ悲しい。

加害者の身内は生きてゆくのも大変だ。
加害者であってほしくない。
それくらいなら被害者であってくれ。

そう願う瞬間があったからこそさらに苦しいのだ。

結果。規士は被害者だったわけだが、でもこれらはリアルだった。
実際あるかもしれない話だ。マスコミが可能性で報道をして、ネットで炎上する。
加害と被害、正反対であるのに、こんな背中合わせで苦しむことが、実際ありうるのだろうと思う。
それはそれは苦しい。どちらでも地獄なのだから。

残酷な物語だ。でもゆえに考えさせられる物語だ。今しみじみと反芻している。次の本をなかなか読めないかもしれないな。と思わず思った。

no.776
 

■ 道夫秀介
「鏡の鼻(集英社)」 評価:★★★★★
Date:2016.10.01
ちょっと毛色の違う感じの道夫作品かも。
鏡というのがあの世とこの世の境界線だというのは聞いたことあったけど、ほら、真夜中の合わせ鏡に異界のものや未来が見えるとかそういう類の。
でも科学的にも、鏡は左右逆転するのになぜ上下逆転しないのか?実は左右逆転というより前後逆転しているのだ、その証拠にこちらが鏡に近づくと像のこちらに寄ってくるのだから。方向は逆だ、と。
ほかに魔鏡のこととか、左右逆にならない鏡の実在(しかしその鏡で見る自分は、傍からみている他人の見た目と同じなのにもかかわらずものすごく違和感があるらしい)などの話も出てきて、すごく引き込まれてしまった(ストーリーとは直接は無関係)。

物語は3つの軸があり、それらが最後結びつく、といった趣向なのだが、それがなんとも・・・。なんというか、ゲームやノベライズを思い起こすような・・・。

そう、パラレルワールドのような。
胡蝶の夢、のような。
そうだ、蝶が最後出てくるのは誇張の夢の象徴なのかも。

祥子と章太という兄弟。祥子が一歳半でベランダから転落して死んでしまい、章太は妄想の姉と会話する。妄想好きな少年なのだ。心の空洞。

そのあとに女子高生の祥子の視点の物語が(!)。そこでは逆に章太が事故で死んでしまっている。そこで偶然出会った親友の真絵美の弟の直祢とこっそり逢瀬を重ねる。心の空洞。

そしてまた別軸。瀬下は同僚の飯先と結乃の中を取り持ったあと、水死した。瀬下の妻の栄恵は結乃と夫の不貞を疑って長年苦しんだが、真相を知って・・・そう、夫の死因は事故で、原因が息子だったという・・・。どのみち心の平穏はないのだ。

次の章では瀬下は死んでない。どころか結乃と飯先夫婦と瀬下夫婦は仲良しなのだ。瀬下の息子の俊樹は父の仕事を追って林業関係の会社へ。一人暮らしをしてがんばっている。飯先のところには葎という美しい娘がいる。そんなときだ。息子の直樹が死んだと警察から連絡が入ったのは。CENSORED?そう思って瀬下夫婦は絶望するのだが、実は事故だったということがわかる・・;・。

その次は。なんと、直樹は死なないで、葎と出会っていて結婚している。
そう、瀬下と飯先たちのところがなんとか大団円・・・。
ところが。真絵美と直祢の両親が、火事で亡くなっているのだ。火事で。その火事は蚊取り線香の火の不始末。原因をそれぞれ姉弟は自分のせいだとずっと苦しんでいた・・・。

ラスト。
美代という顔に火傷の傷を負った少女が出てくる。祖父が鏡職人だったのだ。そのときの薬剤の事故での火傷だ。
祖父は後悔の嵐のまま他界した。
そして、今は民宿をやっている。そこに。
やってくるのだ。
真絵美と直哉、祥子と章太、瀬下夫妻と飯先夫妻、直樹と葎夫婦とその子供の創一。

そこのが大団円なのだろう。
誰も欠けていない。死んでない。
それぞれ不満や不安を抱えているけど、それまでのどの章より、全員不幸でない。

きっとこれが現実で、今までのは章太の妄想の物語か・・・そう、胡蝶の夢なのだ。
どちらが現実か少し曖昧だ。
でも最後のが正解で、ほんとうなのだ。
そうでなければならない。そう思う。

ちょっと不思議な物語でした。

no.775
 

■ 東野圭吾
「人魚の眠る家(幻冬舎)」 評価:☆★★★★
Date:2016.09.12
臓器提供と脳死。難しくデリケートな重いテーマを扱った物語。

妻とうまくいっておらず別居中の医療機器メーカーの若き社長、和昌の今進めている研究は、目の不自由な人や手足が麻痺した人などの脳に電極機械を埋め込んで、電子刺激により視覚を与えたり、意思のとおり手足を動かしたりするというもので、順調に進んでいた。

そんな矢先、長女の幼稚園児の瑞穂がプールの水難事故で植物状態となる。医師からは意識が戻ることはないと告げられ、脳死判定と臓器提供を示唆されるのだ。
妻の薫子はまだ死んでないと言い張り認めない。
和昌も自己の研究を生かしたいと考え、若き研究者星野の協力を経て、まず人工呼吸器を体内に埋め込み、機械操作によるものとはいえ、一見自発呼吸と同じように息をしはじめる瑞穂。
手足も毎日動かしすようにしたため、筋力も骨量も落ちることなく瑞穂は成長してゆく。それどころか医師も驚くほど、すべての薬を必要としない、眠っていること以外健康ですくすくと成長してゆくのだ。

星野は薫子を支えるうちに惹かれてゆく。
和昌と薫子も、以前より歩み寄って別居はしているものの、関係はよくなってく。

しかし。世間は冷たかった。
もうとっくに死んでいるのに機械で無理に生きてるように見せかけて。ほんとは死体なのに。
瑞穂の弟の生人が学校でそのことでいじめられても、薫子は瑞穂に夢中で気づけない。

星野も理解してくれる聡明で優しい恋人を振り、薫子に夢中だ。

薫子はくたくた。でも瑞穂は生きているとそのことだけを糧にしている。

危うい均衡。
やがて我慢していた生人が爆発して本音を吐き出したことからゆっくり崩壊する。
ある夜中、薫子の夢枕にたった瑞穂がお別れを。
ありがとう、ほんとにさようなら。
薫子はその瞬間に瑞穂が死んだ(逝った)と悟った。
ほんとにその直後から今まで順調だった瑞穂の体調が急に悪化。

・・・薫子は決意する。和昌に告げる。
臓器提供を、と。

自分がドナーの親となることと、レシピエントの親となることと、どちらも想像できない。つきがたい、けど、どちらも苦しいものだとわかる。それだけはわかる。

瑞穂が薫子の夢枕にたったのは、ほんとに奇跡が起きたのだろうか、それともうすうすほんとはわかっていた薫子が、諦めれない自分と決裂するために見せた幻なんだろうか。

でもこの物語の救いは。
和昌と薫子がこのことで歩み寄れたこと。
生人と薫子が、やっと心を通わせられたこと。
星野が別れた恋人と再び会えたこと。
・・・眠っていた車椅子の瑞穂に恋した少年がそのあと心臓病で倒れ、ドナーがいないため死にそうだったときに瑞穂が臓器提供することになり・・・
瑞穂の心臓がその宗吾という少年の中に息づいたこと・・・。

希望と再生、未来を感じる読後感だったので、重たいテーマだったけど救われました

no.774
 

■ 古野まほろ
「新任巡査(新潮社()」 評価:★★★★★
Date:2016.09.06
読み応えある一冊でした。
はじめは警察の新人二人、ライトとアキラ・・・ライトは天然入った素直な青年、アキラはまるで生きたコンピューターのような頭の切れる(でも感情がどこか欠落している)美女。この二人が上司や警察世界の荒い教育によって成長していく物語・・それに尽きるのだと思っていた。それはそうなのだが、だからそこは事件とかよりも、元警察署勤めの経験のある著者によるリアルすぎる警察署の実態などが面白みなのだと。
そうなのである。それはそうである。

町の交番のお巡りさん=巡査、が、かほど気楽とは程遠い過酷なルールに縛られた厳しい環境だったとは!初めて知った。
まぁ、舞台となってる愛与警察署が(架空ではあるが)大きな部署であることもあるだろうが、その分所である交番すら、気楽ではないのだ、ぜんぜん。

お巡りさんはすごいんだなぁと、ほんとに感激して感動する。

そしてライトの章では、天然で一生懸命なのに失敗しちゃったりしている、でもまじめで憎めない、上司もいじりながらもかわいがってしまう、その感じをほほえましく読む。
一方アキラの章では、切れすぎてどこか非人間的なアキラの活躍に舌をまきつつ、どこか欠落してるところに不安を覚えながら見守る感じの流れだ。

しかし。
実は途中から、内部告発的なミステリーが一気に絡んできて、ものすごくスリリングになって驚く。
二人とも死んじゃったの?!こんな殉職なの?!逆に二人主役がいることでどちらかが死ぬのはありえるかもしれない・・・と思わせるのがある意味テクニックだ!!

そう、プロローグでの公安の登場が、最後の最後で意味をなす。
そうだったのか!!だからこの二人だったのか!と。
二人ともに、立派なお巡りさんと婦警さんになってもらいたいな。いやきっと絶対なれると思った。
キャリアの出世組でなく、ぜひ、町の交番勤務の職質のプロに。

そう、職質ひとつにもものすごくルールやテクニックが要るのだ。そこもみどころで面白い。

分厚い一冊なのに、あっというまに読めてしまうところが、面白さと魅力の表れ。
ぜひ秋の夜長に一読を!

no.773
 

■ 荻原浩
「海の見える理髪店(集英社)」 評価:★★★★★
Date:2016.08.30
油断して読んでると思わぬ感動に引き込まれるような短編集だった。

タイトルの「海の見える理髪店」も最後の最後のほうで意味がわかって、じんと目頭にくるような。
「いつか来た道」も主人公と同世代の私には胸が痛い。かつて憎んだ母が認知症・・。どうしてそれがこんなに切ないのだろうか。
「遠くから来た手紙」は旦那に不満いっぱいで実家に子供を連れて帰ってしまったものの、おかしなメールが届くことから様子が変わってくる・・・。ベルエポックという言葉が胸を占めた。昔のほうが贅沢だったのかもな・・・・
「空は今日もスカイ」は、夏のさわやかな子供の冒険譚かと思いきや、・・・子供の非力さ、その悔しさを思い出すような一編。ここで終わるとはにくい!!
「時のない時計」も父親のことを馬鹿にしていたはずなのに、こんなところで思わぬ本音?(笑)そこはかとなくいい感じ。
「成人式」は・・・親である人、みんな泣いちゃうね。死んだ娘の年を数えれば、ああ、今年成人式、生きていたなら振袖に・・・そこで老夫婦は一念発起する。このままじゃ進めない。自分たちが成人席の正装をして式に出ちゃおう。これ、好き。なきそうになっちゃうけど、大好き。

no.771
 

■ 湊かなえ
「ポイズンドーター・ホーリーマザー(光文社)」 評価:☆☆☆☆★
Date:2016.07.26
6つの章にわかれているが、どれも重たい読後感。後味はよろしくない。
「ベストフレンド」以外はみんな母娘の愛憎というか・・・確執というか・・・。
「ベストフレンド」は同じシナリオライターを目指す男女三人の(特に女性二人の、いや、たった一人の女性の課?)心情というか、苦しみというか、それが招く最終的な悲劇というか。これはこれで後味悪いにしてもとっても理解できてしまう誰しも中にある暗黒面で、ちょっと引き込まれながらもつらい。

ほかのものはほとんど、母の重すぎる愛情につぶされ壊れてゆく娘が描かれている。
私も母にとってあまりよい娘ではなく、だからこそどこか身につまされるつらさがあったのだが、そうなのだ、どんなに母を疎もうが、愛してるのだ。だって母なのだもの。だから苦しいのだ。憎んでも苦しいのだ。切り離せない。

ここに出てくる母親たちのように押さえつける母ではなかったが、私はたまにつぶれそうに感じることもある。重たい。逃げたい。でも大事だ。だからできない。

私はそれを超えた気がする。でもここに出てくる娘たちは超えられず、壊れてしまうか、あるいはようやく反旗を翻しても報われず、なんとなく孤独なのだ。

母が子を愛してゆえの行動なのにそこまでするのは非道で無理解のなせる罪である、ということになる。世の中的に。世論的に。仁義的に。道義的に。
ネグレストは罪となるが、その間逆、正反対、それもある意味程度の問題で罪に近くないの?と思うけど。

だから声に出せないのだが、でもわかる。私にはわかる。だから引き込まれた。

湊さんは、ちゃんとその落とし前というか、落ちというのかな。まとめというか。
それを最後の「ホーリーマザー」で書いているからすごいなぁと感じた。

これは思ったより深く面白く、つらいテーマだ。永遠の。今までも、そして今も、そしてこれからもついて回るものだろうなと思う。

no.770
 

■ 湊かなえ
「ユートピア(集英社)」 評価:★★★★★
Date:2016.07.05
鼻先町。海が見える田舎町。地元の人と新たにきた人が融合して住む町。
昔、金塊をめぐって殺人事件が起きて、犯人は見つかっていないが、それも風化していまやみんな平和に暮らすのどかな・・田舎だ。表向きは。

菜々子はこの土地に生まれ育ち嫁ぎ、地元の人間だ。医者の娘でおっとりしているが、線香屋に嫁ぎ、店番などしている。娘の久美香は不幸な事故で足が不自由になり車椅子なのである。

光稀は夫の転勤でこの地にやってきた都会の女性。娘の彩也子は容姿端麗で成績優秀、それでも久美香の親友でこの土地で楽しそうである。光稀の趣味のブリザーブドフラワーが人気で、町起こしにでもなればと雑貨ショップを経営している。

すみれ。恋人の健吾が鼻先町の光景を気に入り、そこに工房を建てた。一緒に芸術活動をこの鼻先でしようと誘ってやってきた陶芸家。光稀のショップで一緒にがんばっている。

この三人が主に軸なんだろうか。

三人とも、さほど鼻先を好きではないのだ。でも今要る場所でがんばっているのだ。それらが交錯してなかなかにほかの人々も含めて、田舎ならではの複雑な人間関係がくりひろげられている。

しかし、すみれの陶器でできた翼の形のストラップを彩也子が久美香と買ったところからなにか歯車が狂い始める
そのことを作文に読んだ彩也子のことがネットで広まり、美談として世間に知られることとなり、すみれは「クララの翼」という法人を立ち上げる。
全国からストラップの注文が相次ぎ順調だったが、これまたネットにうわさが流れて・・・。
それは「久美香は本当は歩ける」というもの。

真相は?そして、菜々子の家にある金の延べ棒はかつての殺人事件と関係あるのか・・・。

健吾は菜々子や彩也子と久美香をモデルに絵を描きたがるが・・・。

やがて工房が火事になり、その中から逃げてきた彩也子と久美香。
それが収束となる。そうだったのかという驚きの。

そして傷心のすみれは軽井沢へ。
光稀は一度は離婚を切り出された夫についてベトナムへ。
菜々子は鼻先に。
ばらばらになる。おそらく二度と会わないだろう。

だからさらに本当の真相は、彩也子の最後に出てくる日記に永遠に封印されるのだ。

・・・思ったより深かった。
さすが主婦目線のわかる湊さんならでは。

no.769
 

■ 道夫秀介
「透明カメレオン(角川書店)」 評価:★★★★★
Date:2016.06.21
桐畑恭太郎。声だけは人が振り返るほどの美声。でも見た目は冴えないメガネくん。その容姿と声とのギャップに長年苦しめられてきた男。でもラジオパーソナリティという天職を得て、そこそこ聴率を取っている。
普段はできるだけしゃべらないようにしているだけに、ラジオでは声のイメージを崩さないようなキャラを作って饒舌だ。

いきつけのバーはif。そこに集う常連やホステス、ママとはよくしゃべれるのに・・・。
個性的な面々で年齢も職業もまちまちのファミリーみたいな店なのだ。

そこにある日ふらっときた三梶恵という若い女性。
桐畑のファンだったそうで、うっかり声を出した恭太郎を、おねぇのレイカ(男の格好していてかなりのイケメン)と勝手に勘違いして・・・・。
そこから始まるとんでもない事件の数々。

恵は勝手に勘違いして?それに乗じてみんなで演技して隠してたことを怒って、とりあえず自分のある作戦への協力を強制的に依頼するのだ。
これがとんでもない変なこと。誰かを殺そうとしている?!
でもどうやらCENSOREDぎりぎりのところでCENSORED気はないような??

だんだんそんな恵に惹かれてしまう恭太郎。
でも彼氏はいるような?
一人暮らしの恭太郎の家に転がり込んでもなんの間違いもない(笑)
でもストーリーはどんどん進んでゆき、やがて逆に恵が狙っていたはずの男にさらわれてしまう事態に。

助けたいという恭太郎に、ifのみんなはうなづくのだ。
きょうちゃんが言うなら断れないわ。
しかたねぇな。人肌ぬぐか。

そこからノンストップで進んでゆく。
恵の秘密を見抜いた恭太郎。
そして最後に自分の本当の秘密をも恵に明かすのだ。

その恭太郎の秘密の嘘たちこそ、読者だましであって、そして・・・
本当を知った読者を泣かす真相なのだった。

そう、あたしもじわーと泣いてしまったじゃないか泣

道夫秀介はやはり上手い・・・悔しいけど面白いし、上手い。

だからお勧めとしか言いようがない。

no.768
 

■ 真藤順丈
「夜の淵をひと廻り(角川書店)」 評価:★★★★★
Date:2016.06.18
表紙のイラストに惹かれて手に取ったようなもの。
いわゆる町のおまわりさんの手記という感じのつくり。
山王町の交番のシド巡査は夜回りをするたび不可思議で不条理な事件に遭遇し、それをつづっているのだ。誰に読ませるともなしに。

何編かの章でなっているが、それぞれ難事件の解決に、シド巡査の長年の土地勘や経験、あるいは鋭い考察力、推理力、そして・・・優しさがものを言わせて迷宮入りしていたものも年月がたっていた事件でさえ、奇跡的に犯人検挙となっているのだ。

ひとつひとつにトリックやどんでん返しがあるとかではなく、ごく普通のそれでも陰惨な事件の数々。・・・リアルだ。

虐待、通り魔と見せかけた委託殺人、洗脳による監禁、覚醒剤・・・。
そこには悲しい人間の気持ちや境遇、あるいは家族の思いもあるわけで、そういう盲点をシドは見逃さないからこその解決なのだ。

相棒の後輩、アイザワや、やがて警視総監に昇りつめる足癖の悪い上司クラマなども
みな実はシドを好きなのだ。

シドは栄転の話も蹴って、いつまでも最後まで巡査として夜回りすることを愛する。

途中途中出てくる老紳士。なぞの老紳士。
私は町の意思だという、怪しい紳士。
幻か、あるいは人智を超えたものかと思っていたら・・・実在してハンニバル・レクターよろしく拘束されている危険人物だったとは。
彼がささやきたぶらかされた者たちが行った殺人の数々・・・。

最近この世の中、本当に物騒な事件が多い。本当に・・・このような町の意思があるのかもしれない。
闇は人間の誰にでもあり、そこを一押しする恐ろしいモノが。

この一冊は思いがけず面白かったので一押しである。

no.767
 

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