*Book review

■ 伊坂幸太郎
「火星に住むつもりかい?(光文社)」 評価:★★★★★
Date:2016.06.08
重いテーマをさらりと書かせれば右に出るものはいないであろう伊坂作品。
今回は平和警察という言ってみたら戦争のときのナチスというか、ちょっとちがうかな、でも法の下でいかにも正義という大義名分で人をフランス革命のように危険人物と見定めたら(その真偽はともかく)ギロチンの公開刑をするのである。
そうだ、魔女裁判みたいなもので、水に沈めて浮いたら魔女で火あぶり、沈んだら人間だったチャンチャン♪というやつだ。

もとは、危険人物をあぶりだすには、疑わしき者もまとめてやっちまえ!みたいなところからできた組織らしいが。

とにかく酷い。もう無責任なリークでも、その当人を即死刑。拷問という取調べのもと、認めさせて自白という形でギロチンなのだ。

反対など唱えようものなら今度は自分や家族が狩られると、みんな口をつぐむ。

ところが。

現れた。正義の味方。つなぎのスーツを着て顔はヘルメットだったりマスクだったりでわからない。
けど、助けられた人が何人か。
協力な磁石の玉を使って。その磁石はとある大学の研究施設から盗まれたものらしい。

東京から真壁という男がやってくる。警視正も一目おいてるというブレイン、でも口を開けばチャラい感じで昆虫好きの変人だ。
でも頭脳は優秀で平和警察で幅をきかせてる薬師寺警視長もをぐぅの音も出ない有様。

ところで合間合間で床屋が出てきて、そこの会話の章が入る。
そこにくる常連客。
学生の大森鴎外(すごい名前!)は日に日にやつれてくる、でも磁石の研究室にいるのだ。おやおや?平和警察にもあまり好意的でない発言してるしこの坊やがもしや・・・というのはわりに早めにわかる。
そこにくる煎餅屋の社長。
床屋の店長とその妻。
ほかにもいる常連客。

そう、実はこの床屋こそがキーポイント。

伊坂マジックのどんでん返しは二重どころか三重にも四重にも。これはすごい。
最後のほうですべてわかったときの爽快感。

正義は死んでないってすてき!!

まさか刑事部長がねぇ・・・
大森くんじゃなくてねぇ・・・
床屋の久慈がねぇ・・・
真壁死んじゃうとはねぇ・・・と思わせてのねぇ・・・
薬師寺やられてやんの!!ざまぁみろ!

さあ、読後感最高、味わってください!!
伊坂ワールド!

no.766
 

■ 真梨幸子
「6月31日の同窓会(実業之日本社)」 評価:★★★★★
Date:2016.05.25
エスカレーター式のお嬢様学校。
でもどこでもあるように、中等部や高等部で外部受験の受け入れもあり、ステイタスのために目指す人も多い。
そして、どこでも聞くようにはえぬきの者と途中で学生となった者とは、どこか壁があったりもするのだ。
そしてこれまたどこの学校にもあるが、都市伝説のような、その学校独自の風習などに関するうわさなんかもまことしやかに・・・。

卒業してから、6月31日の同窓会の通知を受け取った者はお仕置きを受ける・・・。

この女子高にはそんなうわさがあり、でもチェーンメールのようないたずらなのでみんな慣れていた・・・はず。

ところが今年はなぜか受け取った者がどんどん死んでゆく・・・。
それは昔、学芸会の演劇で演じた劇の、死んだ順番どおりに???

卒業生の松川凜子の元にその不安を相談にくるOGたち。

彼女らの相談の会話で章がわかれていて、徐々に進んでゆく。

最後のどんでん返しは不気味。
ほんとに恐ろしかったのは・・・真犯人、、、

うーん、これは二度読み必須。

なるほど、まさかそういうことだとはねぇ!!
なにより、登場人物のキャラがリアルというか、私も女子高卒なのでわかるものがあるというか(お嬢様学校じゃないけど)

こわいなぁ、ってところどころ思った。
女ってほんとおしゃべり。臆病なようでいて、実はそうではなく人目を気にして姑息。全部がそうじゃないけど、そんな性質があるよね。

あっというまに読んじゃった。
あ、6月31日がそもそも架空じゃん!と思っていたけど、実際あるみたい??それともこの学校だけなのかな?世界暦っていうの。
閏年に2月29日じゃなくて6月31日なのだという。

お嬢様学校の生態を垣間見るだけでもまぁまぁ面白いからお勧めかな!

no.765
 

■ 木内昇
「よこまち余話(中央公論新社)」 評価:★★★★★
Date:2016.05.20
昭和初期なんだろうか・・それすら曖昧な不思議な長屋。そこに住まうのは駒江さんという仕立てを生業とする40歳まえくらいの不思議な美しい未亡人と、トメさんという口の達者な老婆だ。
隣の魚屋の浩三と浩一兄弟は何かと駒さんのところに入り浸る。
無神経でKYな糸屋のせがれも注文を取りにくる。
ゆったりと流れる時間。平和に。
・・・たまに不思議なことがあるけど、気づくのは浩三だけ。

たまに雨ふらしと呼ばれている男がどこからともなく来て、駒江やトメから家賃を取りにきているようだが、その顔はいつも隠れていて見ることができない。

浩三は中学に進みたい。でも貧しい家計を知っており言い出せない。
でも・・・猿田彦様の導きにあい、決意するのだ。

そう。時間は進む。ずっと同じではいられないのだ。
動き始める。なにもかも。

中学に行った浩三はそこで遠野さんという昆虫好きの変わり者と出会う。
駒さんのなくなった夫も昆虫好きだとか。
(しかし、この遠野さんのなんと魅力的なキャラだこと!もう引き込まれて。まるでこんな漫画の主人公作れそうってくらい魅力的だ、変わり者すぎて)

遠野さんと仲良くなって、駒さんとあわせたときの駒さんの顔は浩三の胸に残った。
そう、きっとそのときから時の動きは始まったのだろう。

雨降らしがくると

人がいなくなる・・・。

まずトメさんが消えた。そして誰もトメさんを覚えてすらいなかった。浩三だけが覚えている。

やがて駒さんも・・・。

わかってきていた。浩三は。トメさんは遊郭に売られた女性だった。青春をやり直したくてきたのだ。未来に飛んで。約束の刻限まで。戻るまで。
駒さんは夫をなくして過去に飛んだ。
まだ自分に出会う前の夫のいる過去へ。そして・・・これから若かったころの私に会うあなた・・・・。
せつなくて、一人忘れぬ浩三がいとおしくて、なんだかじんときた。

じわじわとくるいい話だった。
猿田彦さまが出てきたとき、とてもうれしかった。道開きの神様・・・まさに。

この横丁に行ってみたい。菓子屋の饅頭たべてみたい。
ああ、もっと世界に浸っていたかった・・・。

no.764
 

■ 井上荒野
「ママがやった(文芸春秋)」 評価:☆★★★★
Date:2016.04.07
百々子78歳。夫の拓人72歳。
息子が一人に娘が二人。
ひろと、という夫の名前の小料理屋もそこそこ流行ってそれなりに暮らしてきた家族たち、という感じ。
ところが、百々子が拓人を殺したという。
子供たちが駆けつけてみれば本当に父が殺されて死んでいた。

みんなイカれてると思うのは、そのあとみんなが淡々としていること。
騒ぐでもなくさほどパニックにもならず、淡々と死体を眺め、一応途方にくれる。
でも当の本人の犯人の母が一番落ち着いて他人事のように飄々としている。

そこからこの家族らのそれぞれの視点から見た、さまざまな時系列からの拓人に関する回想シーン、の章だ。
読めば読むほど、誰の目線から見ても。
拓人はダメンズ。救いようのないダメンズなのだが、べらぼうに女にモテる。とにかくもてる。こんな年でも若い女性にもモテる。そして愛人をひらくにつれてきて一緒に飲んだりもする。妻の作る料理を食べながら。サイテーである。
でも妻はずっと昔にすっかり諦めて、もう何もいわない。

拓人のサイテーぶりにあきれながらも、どこか好意も抱いていることに気づく。これがモテるというゆえんか。
そして、百子の無表情に淡々とCENSOREDしまう気持ちもどこかわかる。理解できる。

子供たちもすっかり無感動で、こんな家庭環境と父親を見てきたせいかとも思える。笑

最後はちょっとサスペンス。すがってきた最後の愛人を家族でおそらく拓人との遺体をトランクに入れた車で山に連れてゆく・・・・。
そこで百子の本当の本音?のようなものがはじめて聞ける。あれは本当の気持ちだと思う。
愛人の首を突然しめて、
あの人のどこがそんなに好きだったの?
というあのシーン。

このあとたまたまの通行人が現れて終わるので、いったいどうなったのかわからないラストだけど、テーマはそれまでに書かれていると思う。

あっというまに読めて、独特の空気と世界。一読して味わってみてください。

no.763
 

■ 米澤穂信
「王とサーカス(東京創元社)」 評価:★★★★★
Date:2016.04.03
ネパールって行ったことない。
周りにもたまたま行った人がいなくて、ほとんど話を聞いたことがない。そんなイメージ。
そのネパールのカトマンズが舞台だ。
太刀洗万智は28歳。記者である。
現地のルポをするために来た。
現地の子供サガルの案内、同じホテルに滞在してるアメリカの大学生のロブ、ずっとこのトーキョーロッジというホテルに滞在して何年も経つという自称破戒僧の八津田、絨毯商人のシュクマル、ホテルの窓口のシュメリという女性・・・出会いも深めてゆく。

そんな矢先に国王暗殺が起きる。外出禁止令などで不穏な空気に。
絶好のチャンスとその取材をすることにした万智。ネパール政府はこの事件を隠蔽しようとしているため、国民の不満と不信は募り、情報収集も困難を極めた。
そんな中有力な情報をもたらすと思われたある軍人との会話・・・でも結局彼は口が堅く話は得られなかった。
その翌日・・・その軍人の変死体が発見される。

誰が?万智とあったあとのことだ。どのようにして?

警察に一度は容疑者と疑われた万智だったが、ほどなく釈放され、万智は軍人の死と国王の死に関係があるのかどうか調べ始める。

万智が冷静沈着で感情をあまりださないタイプの女性であることもあって、作者のハードボイルド型文章が冴える。
やがてたどり着く意外な犯人。そしてさらにどんでん返しに近いくらい意外な真犯人、その動機・・・。

いろいろテーマは深く、考えさせられる。

それにしても・・・
カトマンズ、未知の土地なのに、まるで万智とともにそこに滞在したかのような気持ちになるのは米澤さんの筆致のせいか。

描写が細かく、すごく臨場感ある。
ほんと映像で見ているかのよう。
サガルが、行けばまた日本人相手にあくどく商売しているんではないかと思ってしまう。

この作品とても人気がある。その理由がわかったような気がした。

no.762
 

■ 島本理生
「Red(中央公論社)」 評価:☆☆★★★
Date:2016.03.25
以前「ナラタージュ」を読んだとき、心が震えたことを思い出して手に取った・・・が。

私が年取ったからなのか?ナラタージュではもう少し年若い女性がプラトニックな恋に揺れる有様がよかったからだろうか。
今回のこの作品は、個人的には主人公の塔子がどうしても好きになれず、そのせいで感情移入ができなかった・・。
人妻の塔子がかつての恋人と再会し、まだ消えていなかった恋に火が灯る。そこまではいいのだが・・・
どうしても相手の鞍田に魅力を感じることができなかった。

うーん。こうなると読んでいてしんどい。
でもきっともっと深いところにテーマがあるのだ。塔子はこの経験で成長したのだから。

だから共感したり、もっとよい感想をもつ人も多いに違いない。
でも今の私の状況には合わなくて、とても残念だった。

島本さんファンの人に怒られちゃうな・・・。

今回は勘弁。
官能的なラブシーンも、ポルノみたいに感じてなんとなく入れなかった。
きっと読み手の私が今あまりよくない常態なんだろうな・・・。

no.761
 

■ 古内一絵
「痛みの道標(小学館)」 評価:☆★★★★
Date:2016.02.26
初めは、ああ、こういうのあったよな、主人公が人生に迷ったり追い詰められたときに死んだはずの親父や祖父が出てきて、何か大切なものを教えてくれるという設定。
そう思った。
そして、祖父の願いを叶えるために海外のインドネシアにわたり、過去を読まされたときは(回想として)それでもよくあるパターンだと思った。

それなのに・・・。

だんだん祖父の勉に寄り添って、その苦しみに同調して涙がにじんでしまったのは、作者の筆力なのか。
自分がちょうど苦しんでいたときだったからなのか。

赤道で卵が垂直に立つという。それは真実なのか、そんなことが稀にあるというのは。
それを成し遂げてから確かに達希の気持ちと運命の流れも変わったように見えた。
少なくとも達希の気持ちは確かに変わったのだ。

これは形通りのハッピーエンドではなかった。後味は悪くないが、劇的ではなく、まだまだ達希の闘いも続く。終わってない。どうなるかわからない。のに。

希望を感じるのが不思議だった。

戦争で恩人を殺さざるを得ず、そのことをずっと悔いて隠して生きてきた祖父。
恩人の娘を援助していた祖父。

達希は親とも会社とも正面から向き合って生きていく強さを覚えた。

私も空を見て、誰もうらやまず恨まず、笑顔で幸せをつかんでいこうと、そう思えた一冊である。

no.760
 

■ 湊かなえ
「山女日記(幻冬舎)」 評価:★★★★★
Date:2016.01.25
妙高山、火打山、槍ケ岳、利尻山、白馬岳、金時山、トンガリロ。
山の名前で章が分かれている。そこに挑む女性たちのそれぞれの人生模様が描かれている。
この山のどれもが、初心者向けの縦走できる山たち。
何を隠そう、女子高で山岳部だった私は、そういった山しか経験がないこともあり、…懐かしく読めた。
そして当時子供だった??私は、お風呂に入れないことやトイレがままならないことが、生理的に気持ち悪くもあり、そんなに山女としてのめりこめなかったコンプレックスも抱いている。
でも覚えてはいる。頂上にようやく到達したときの達成感とその景色の美しさ。
水は甘く感じる。山で炊くごはんはおいしかった。重い荷物も今ではいとおしく懐かしい。

今なら。あのころより体力はかなり落ちたけど、もっと素直に味わえるのに、と、羨ましく読んだ。

彼女たちは恋愛や結婚、離婚騒動などに苦しんで山に登って活路を見出していたりする。私も高校時代より違う次元の苦しみがあったりもするが、だからこそ、挑みたくなる気持ちもどこかに沸いた。
・・・もう一度。今度こそ。

そうだ、バンダナを巻いて。
登山靴を履いて。
水の甘さを思い出して。
一歩一歩踏みしめる重さを味わって。
植物を見て。息を切らせて。
…空気の甘さも味わって。

経験が全くない人でさえ、きっと登ってみたくなるだろう。
山は厳しいけど、とびきり優しいのだ。

物語も湊さんらしくて引き込まれて素敵だったが、なにより山を思い出させてもらえた一冊だった。

no.759
 

■ 中村文則
「去年の冬、きみと別れ(幻冬舎)」 評価:★★★★★
Date:2016.01.11
読んでいて変な気分になる。
この一人称は誰なんだ?と混乱してきて、それすら作者の計算なのだ。狂気へ読者をいざなう・・・。

木原坂雄大という天才的な芸術家、カメラマンの男がモデルの女性を殺した罪で死刑になった。その男には朱里という美しい姉がいた。
雄大に興味を抱き、本にしたいと取材を兼ねて対話を望む男がいた。
かつて雄大の「蝶」という写真を見て魅せられたからだ。その男にも心になにがしかの闇があるのだった。
・・・そこまではいい。
男が雄大とのやりとりを手紙にしてゆくのも理解の範疇。そして、朱里に会って、朱里に惹かれ、肉体関係を結ぶ、そこも理解の範疇。ところが。

だんだん読んでゆくうち、人形師が出てきたり、そうだ、合成写真で被害者の燃える様の写真が出てきたり、なにやら読んでいてわけがわからなくなってゆく。

そして・・・。
驚愕の真相。最後にわかる。
ネタバレで言ってしまえば。雄大は誰ひとりCENSOREDいないのに、死刑になった。でも自分がCENSOREDないことに雄大は気づいていないのだ。
本当の犯人は?では見つかった女性の遺体とは誰?
・・・それは思いがけない展開だったので、さすがにミステリー擦れした私も思いもよらなかったので、これは★を5つにせざるを得ないと思ったわけでした。

誰が狂っているの?誰がまともな人なの?誰もいない・・・。そんな感じ。
一人目の犠牲者の亜希子だけが。まともだった。

最後どうなるんだろう?雄大にほんとのことを伝えるのか?そして、M・MとJ・Iに捧ぐのイニシアルは誰なんだろう?とすごく考えてしまう。登場人物にはそのイニシアルの人は出てこない。
誰のことなんだろう?実在する歴代犯罪者を思い浮かべても該当しないし、謎・・・。

そんな未消化な読後感がいいのかもしれないな。
不穏で不気味。

でも・・・あっというまに引き込まれて読んでしまった。
だから・・・面白かったというよりないのだ。

no.758
 

■ 藤岡陽子
「晴れたらいいね(光文社)」 評価:★★★★★
Date:2015.12.31
看護師の高橋沙穂。夜勤巡回のとき、ずっと寝たきりの雪野サエ(95歳)の部屋で地震にあう。
そして、・・・再び目覚めたときにはそこは昭和20年のマニラの病院。日赤の志願看護師として赴任している雪野サエとして目覚めた。
スマホは?ナースコールは?とパニックになる沙穂。
次第に現状を受け入れる。ここは戦場。
傷ついた兵士、病気で倒れた兵士のために働く使命をもって、劣悪な環境でも懸命に働く看護師たち。沙穂もサエとして従事する。

ただ、時代背景、教育の差で、お国のためにと命を差し出そうとする皆にはどうしても同調できず、当時ではありえない上官に意見して殴られるという体験も・・・。
そんな中、佐治軍医中尉は、興味深く沙穂に接する。
みんなも、サエの人格が変わった?と思いつつ、そのバイタリティと生きることへの執着を堂々と述べる沙穂に惹かれ、救われてゆくのだ。

タイムスリップものは多々あるし、現代人が戦中に・・・という設定もべたではあるが、・・・今回もやられたなという感じ。
読後は涙ぐんでしまっていた。

贅沢いえば、最後一緒に逃げた仲間、梅、新藤たち・・・どうなったのか、わかるラストが望ましかったけど、そうでないところがリアル感でいいのかもしれない・・それにしても現代に戻ってくるタイミングが唐突でちょっと残念感がぬぐえなかったけど・・・。

あっという間に読めて、ちょいちょいの隙間時間に読むおすすめ一冊である。

「自決なんて絶対にしません。命が尽きる最期まで自分の命を守りますよ。敵が目前に迫っているのなら降伏します。捕虜になってでも生き延びて日本に帰るんです。私には、私たち班員には会いたい人が日本にいるんです。まだまだやりたいことだってこの先たくさんある。誰が始めたかわからない、誰のためなのかもわからない、こんな戦争なんかで死にたくないです」
今では当たり前のこの言葉を、現代人の沙穂だから堂々と言って述べた。
軍人たる上官はわなわなと震え、大変なことになったが、周りの婦長や同僚はあまりの驚きと衝撃で固まり、やがて涙したのだ。

・・・私も沙穂の言葉は打たれた。まぁ現実的ではないが、そこは小説フィクションとして・・・。

no.757
 

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