*Book review

■ 村田沙耶香
「殺人出産(講談社)」 評価:☆☆★★★
Date:2014.12.25
ちょっと近未来の風刺を感じる不気味な物語たち・・・でもどこか物悲しく透明感あるというか。そんな短編集だ。

「殺人出産」は、人をCENSORED許可を公的に得ることができる社会が舞台だ。近未来。ただし、10人出産したらの話。男性は人工子宮を体内に埋め込んで出産する。ギャグみたいだけど、不可能ではないのかもしれない!とリアルを感じるからすごい。
だいたい一年で一人産むとして、10人連続すると10年かかる。そこまで身体と、誰かを殺したいという気持ちが持つのかということだ。
決意をしたら産み人となる。
壮絶な10人出産を経て晴れてCENSORED指名を受ける人を死に人と呼ぶ。共に尊ばれるということだ。
少子化の歯止めとなる尊い者というわけだ。
子供は愛の行為のCENSOREDで成すものでなく、受精やこういった産み人システムが主流になってゆくだろうと・・・。CENSOREDはもはや快楽だけの行為に過ぎないのだった。
殺人衝動という心の闇を抱えた主人公の姉は産み人となり、長い年月の果てにようやく10人目を産み落とした。姉の指名した人は意外な人だった・・・。というもの。
誰にでも一度は湧いたことがある、あいつCENSORED!あいつCENSORED!という闇、それを思うとぞっとしつつどこか恍惚とするストーリーだった。

「トリプル」は先の殺人出産と同じ方向の流れを感じる。今の若者の間ではやっているのはトリプル。カップルじゃなくてトリプル。そう、3人で恋人になるというやつだ。3人、男女の枠にもこだわらない。CENSOREDももちろん3人でする、特殊なものだ。男性2人女性1人、女性2人男性1人、女性3人、などなど、でも3人、それぞれ恋人同士。成り立つ?!とこれも笑い話のようだが、結構リアルで成り立つかも!と、思わせるからすごい。そして、本当にそんな時代がくるのだろうかと背筋が寒くなる。

「清潔な結婚」も、とにかく清潔に結婚生活を営みたい男女が結ばれ、でもCENSOREDもしたくない。したかったらその行為だけは外で済ませて処理すればよい。そんな感じ。でも子供は欲しい。だからそんなビジネスがあるんだ。人工授精とも違う、でも愛の行為とも全然違う、無機質で機械的で、ただただ、本当に受精させるためだけの・・・。これはいやだな。でもこれも、こんな時代くるかもと感じるから不穏な気持ちになる。

「余命」はCENSOREDが認められる世の中となるというやつ。長寿著しい世の中となり、人はCENSOREDしないとCENSOREDない時代に・・・。だからCENSOREDが認められるようになるという・・・なんともこれも寒々しい、でもどこかリアルな話だ。

ほんとうにページ数少ないし、あっというまに読めてしまうのだが、なんともどこか重たい。重たいライトさ。

読後感はそうよくはないが、社会の問題を考えさせられるし、ちょっと若い人も読むといいなぁと感じたりしした。

no.736
 

■ 朝倉かすみ
「遊佐家の四週間(祥伝社)」 評価:★★★★★
Date:2014.12.23
遊佐家にみえ子がやってきた。たったの四週間の居候。羽衣子の幼なじみ。
美しく儚げに微笑む良妻賢母の羽衣子には、夫のケンスケも娘のいずみも息子の正平も誰も逆らえない。完璧なお城、美しい理想的な家庭、そこが遊佐家。
そこにやってきたみえ子は羽衣子とは対照的に、とても醜い中年女だ。
しかもそこはかとなく下品。
でもどうも家はお金持ちの一応お嬢様だったらしい。そこにずかずか入ってくるわけだ。このみえ子が。

暗く醜い過去を隠し、美しさだけを持って生きてきた羽衣子。いつも本音のわからぬ不思議な微笑みで儚げで優しげで美しい。
親から認められぬコンプレックスを、履き違えた男らしさでカバーして頑張って生きてきたけんすけ。思い通りの美しい完璧な妻、少し思惑通りにいかない2人の子供。でもそこそこの素晴らしい生活と信じている。でも最近違和感を感じつつあるがなんとか抑えている。
父親似の外見、父の望む母のような女としての人生は望めなかったいずみ。醜いなら聡明に清潔感ある生きかたをしようと肩肘をはり、いつも不機嫌だ。
母親ゆずりの中世的な美貌をもち、でも父の望む男らしさはないことに苦しんできた正平。いじめられないようにへらへらと薄笑いを常に浮かべ媚びるようなしぐさ。父へのコンプレックスに弾けそうだ。

彼らをほぐし、崩し、ほんとの素直な姿を恥じることなく出させるみえ子。
作りものめいた家庭が少しずつ体温をもってゆく。
みえ子にみんな心を開いて惹かれてゆく。その醜さごと。
・・・・羽衣子以外。←ここが怖いところ(笑)

羽衣子は、気づけば次第に夫が、息子が、娘が、自分よりみえ子を求めていることを知り、それでも静かにそれを微笑んで見つめているのだが、

心の穴は広がってゆく。封印していた過去。かつて自分のように美しく、今の正平に瓜二つだったけど、どうしようもなく頭が悪く人生を踏み外していた弟。みえ子が愛した弟。そう、弟もみえ子が面倒をみてくれたのだ。ドラッグの副作用で死ぬ瞬間まで。そのときの穴がまた広がるのを感じる・・・。

四週間目の最後の食卓。ついに決壊する。
羽衣子の仮面がはがれ、美しいだけの顔に影がさす。逆にそれが美しくもあり、醜くもあり、家族はそれをはじめて見ることになるわけだ。
みえ子もぼろぼろに泣き、・・・複雑な羽衣子とみえ子の友愛と絆を見たのだ。

はじめは羽衣子が不気味な女にうつっていた私だが、最後・・・結局家族の心をあっさり掴んで、去ったあともまだつきあいを続けているみえ子を、ちょっとだけ怖いと思ってしまったのはわたしだけだろうか。
まさか、すべて計算では無かろうけど醜さゆえのこの処世術は理解できる身上としても・・・なんとも・・・。

しかしこんなに引き込まれてあっという間に読破してしまえる一冊とは期待してなかっただけに、強くオススメである。

no.735
 

■ 伊坂幸太郎
「アイネクライネナハトムジーク(幻冬舎)」 評価:★★★★★
Date:2014.12.23
短編風にして繋がっている伊坂作風。
アクションとかでなく、静かな日常と時間の流れを感じるちょっと朴訥で不器用な登場人物たちの味わいが伊坂さんぽくて好き。

出会い。巡り会い。展開してゆく関係。移り変わり。すべてが自然に流れていくものたち。そして一度繋がったものは離れても切れないような、この感じがたまらなく好きだ。

織田一真と由美、一真が伊坂さんぽいキャラだな、今回(笑)。
そして由美に学生時代あこがれていた一真の友達、斎藤。
斎藤の上司で妻とうまくいかない精神的ショックで仕事の多大なるミスをおかし、落ち込む藤間。
藤間を励ます象徴だったボクサーの小野。
小野の電話のやりとりだけで結ばれてゆく香織。
みんな進んでゆく。時間の流れにのって。

そして。
時間系列もでこぼこで、それなりに読んでいるうち、最後のメイクアップという章でわかる。
ああ、この子はこの2人のあの時の子供だったのだな、とか。
そして、一曲の完成となるのである。そういう作風なのだ。

だからだろうか、読み終わってからがじわじわくる。
みんな小さな劇的の中で、幸せを掴んでいる。掴んでいく。

さらっと読んでじわっと味わう。
オススメの一冊です。

「俺、出会いがないって理由が一番嫌いなんだよ。何だよ、出会いって。知らねーよ、そんなの。じゃあ訊くけどな、出会いってなんだ。ようするに外見が良くて、性格もお前の好みで、年齢もそこそこ、しかもなぜか彼氏がいない女が、自分の目の前に現れてこねえかな、ってそういうことだろ?そんな都合のいいことなんて、あるわけねーんだよ。しかもその女が、おまえのことを気に入ってできれば趣味も似てればいいな、なんてな、ありえねえよ。どんな確率だよ。ドラえもんが僕の机から出てこないかな、ってのと一緒だろうが」

「いいか、夫婦関係は外交そのものだぞ。宗教も歴史も違う、別の国だ、女房なんて。それが一つ屋根の下でやってくんだから、外交の交渉技術は必要なんだよ。一つ、毅然とした態度。二つ、相手の顔を立てつつ、三つ、確約はしない、四つ、国土は守る。そういうものだ。離婚だって、立派な選択だ。ともにやっていくことができない他国とは、距離を置くほうがお互いの国民のためだからな」

no.734
 

■ 井岡瞬
「もしも俺たちが天使なら(幻冬舎)」 評価:★★★★★
Date:2014.11.10
久々すかっとする一冊でした。
天才詐欺師の涼一。ほんとは金持ちの御曹司で超イケメン喧嘩野郎の睫。元刑事の義信。
それぞれが何かを抱えてる。
ひょんなことでクロサギという最大の黒幕に目をつけられ、敵にまわし追い詰められていく。
睫の実家のぶどう畑をめぐって・・・。
元は青木という好青年がぶどう畑を手伝うために居候としてやってきたのだが、そのうさんくささを睫が見抜いたことがきっかけだった・・・。
命を狙われ、あわやという目にあった涼一が、そこから本気出しちゃったから、すごいすごい・・・。
そう、涼一はほんとすごかった(笑)。

はっきり言って、3人の視点が順番に出てきて展開されてゆくので、3人それぞれが主人公たるものなのだと思っていたのだが、ラスト付近のどんでん返しで驚き、ようやく気づいた。

涼一が主人公だ!!
結局、素性がわからないままの涼一、でもその詐欺の手口、はったり、ポーカーフェイス、すべて計算で作戦で想定内。すごい。
かっこいい。
そのくせの、涼一の詐欺師としてのモットーはこれまた徹底してかっこよく、しびれるのだ。

これ、ドラマとか映画になったら絶対面白いと思うんだけどな。超オススメの一冊。

「なけなしの金を奪ってはいけない。
 善意を逆手にとってはいけない。
 弱者の恐怖心を利用してはいけない。」

「睫ちゃんのために説明すると、公正証書ってのは、裁判と同じくらいの効力を持つんだ。公証人っていうえらい人が立ち会って作る日本で一番信頼できる契約書とでも言えばいいかな」

・・・かっこいい。涼一。そして・・・
義信の元妻や娘にも匿名で一千万円!黙って助ける。それすら義信に礼を言われしらばっくれる。スマートすぎる。
続編でないかなぁ・・・。

no.733
 

■ 原田ひ香
「ミチルさん、今日も上機嫌(集英社)」 評価:☆★★★★
Date:2014.11.10
主人公のミチルは私とまさに同年代、バブルを知る女、でももうおばさん・・・どんなに美魔女といわれてもおしゃれして磨いていても、離婚してその時走った男とも別れて・・・仕事をやめて・・・急に現実をつきつけられた。
仕事がみつからない。チラシ配りなど、ばかにしていたはずだが、もうそれしかないと始めたミチル。
しかしそこからミチルの世界が開け、変わってゆく。

これを読んであまりに色々心情が共感できてしまい痛かったのだが、でも・・・砕かれて再構築していくその姿も自分に重ねて心があたたかくなった。
ミチルはもしかしてこの年下の光浦と、もしくは年上の横田と、再び恋愛することがあるのかもしれない、いやないのかな、ファミリーになって・・・。

それでもラスト、諦念というせつなさに包まれながらも、おだやかで爽快な風を感じたのはなぜだろう。
そして・・・そこには憧憬もあった。わたしにとって。間違いなく。
うん、年取るのも悪いもんじゃないよ。むしろ素敵なこともまだあるかもね!
そう思って知らず微笑みながら本を閉じていた。

no.732
 

■ 櫛木理宇
「避雷針の夏(光文社)」 評価:☆☆★★★
Date:2014.08.21
そこは睦間町という田舎町。
都会から誘われるままにその地に家族と越してきた梅宮。都会の私立高校教師をしていたが、校長と折り合いが悪くなり居心地は最悪になっていたところでもあり、また、妻の怜子と相性の悪い自分の老いた母の認知症も始まり、妻は鬱病と診断されていた。よそ者にきびしい片田舎でも、先生として一目置かれ、塾講師として事務員二人とそれなりにやっていた。しかし妻とは気まずく、家に帰らず塾に寝泊りする日々であった。

田舎の昔気質の色濃い集落にありがちな、権力者の派閥などもある。梅宮は免れた、よそ者への差別の村八分扱い・・・。
かろうじてバランスを取っていた均衡が、少しずつ崩れようとしている・・・。
町のシンボルだったガーゴイルを狛犬のように飾っている避雷針が粉々に壊されていたことが発端で・・・。犯人は見つからない。そのうち、猫の惨殺死体まで見つかるようになる・・・。犯人はわからないままに飛ぶ憶測。

そして平行して梅宮の家庭も本格的に崩壊し始めていた・・・。

倉木家は村八分、郁恵が昔酒飲みの夫を殺したからだ。その娘の菊瀬と梅宮の娘の風紗は親友となっていた。その絆は、お互いが母親を追い詰めることになった父親を憎んでいることと・・・母親を家族という括りに縛りつけてしまった過去の罪悪感だった・・・。

クライマックスで語られる菊瀬の父の死の真相。そして少女2人は再び復讐をしようとしていた・・・この閉鎖的な町ごと!!!
祭りの晩に決行するのだ!!と。

まぁまぁ面白かったのだが、残念なのはラストのエピローグにその後の登場人物たちの末路や行く末をすべて駆け足で語りこめてしまったことかな。
言い方が悪くなってしまうけど、読んで損したとは思わないが、読んで良かったなぁとはどうしても言いがたい・・・そんな感じの読後だった・・・。
読みの浅いど素人の私がほんと生意気言って棲みません・・・。

梅宮のセリフ、ちょっと響いたものを。
「いやなことから逃げるために新天地にやってきたと言うのに、やっぱりここでもわずらわしい、いやなことばかりだ。結局のところ、生きていくというのは義務や労苦や困難を耐え忍ぶこととイコールでしかないのだ。」

no.731
 

■ 伊坂幸太郎
「首折り男のための協奏曲(新潮社)」 評価:★★★★★
Date:2014.05.21
時系列が飛びながら、章もそれぞれ一見ばらばらに進みながら、最後はかちっとパズルがはまる、この手法!伊坂さんっぽい!
と、感激する。

首が折られて死んでいる状態の殺人事件があちこちで起こっている。犯人と見られる男の顔写真がテレビで流れ、ある老夫婦はそれが隣に住む男ではないかと噂をする。
一方ある場所で。その首折り男と瓜二つの赤の他人の男が、似ているというただそれだけのことである出来事に巻き込まれてゆく。
いじめに苦しむ中学生は首折り男の助っ人の約束を信じていたが、窮地に来たのはその瓜二つの男のほうだった???
くわがたフリークの小説家。
泥棒をさせられた探偵。
合コンに現れた場違いで場慣れしてない男の正体。
・・・どの物語にもそれぞれの驚きが隠されている。ああ、そうだったんだ!と思わせるサプライズ、そしてそれらすべてを結びつけるキーワード、キーマンは、首折り男。

読み終わったあとに何となくようやく全貌がわかったような気がするし、逆にわからなくてもすっきりするような、面白い味わい。展開。ある意味、あとがきでご本人が言ってるように新しい。

伊坂さん、さすが。ゆっくり読もうと思ってたのに、やはりあっという間に読めてしまった。

キャラ立ち、セリフの秀逸さも相変わらず。

伊坂哲学を感じさせる魅力的な文もところどころにきらきらちりばめられて。

no.730
 

■ 長岡弘樹
「教場(小学館)」 評価:★★★★★
Date:2014.04.04
警察学校が舞台。よく知らない世界であったけど、こんなに厳しいとは!!と、警察官を見る目が変わりそうであった。

警察官を目指す者が学ぶ学校である。そこの教官の風間がなんとも。恐ろしい。そして・・・とても魅力的だ。・・・いや、でも恐ろしい(笑)。

あらゆる想いを抱いている教習生たち。厳しい環境で、ちょっとでも規則違反があったりあまりに成績が思わしくなければ容赦なく切り捨てられてゆく。退学させられてしまう。
嫉妬や羨望、恨みや挫折感・・・色々苦しむ生徒たち。風間に嘘やごまかしは効かない。恐ろしい洞察力ですべて見抜かれる。

風間はすぐ目を着けた生徒に問う。
「何故警察官を目指そうと思ったのか」
その答え方を言葉をじっと見つめている。
それだけで何かを見抜く。きれいごとを言っても模範解答をしても。
そして、すぐに退学しろと言う。甘い考えではとても一線で戦えないからそのほうが身のためだと。

宮坂は落ちこぼれの平田をほっておけない。わざと自分も平田のミスを目立たなくするためミスしたふりをしたりして。でも本当は優秀なのだ。それを風間はすぐ見抜く。やがて平田の逆恨みによる復讐・・・あわや命を落とすというところでお見通しだった風間が現れて・・・。その後平田は退学する。

楠本は女ながらに優秀である。沙織という鈍くさい同期といつもつるんでいる。沙織は脅迫手紙を受け取りおびえており相談に乗って。でも本当は・・・風間には問われて黙っていたが、本当は婚約者を轢き逃げで殺され、その犯人が沙織と見当をつけて復讐するために警察官になったのだ。かくしていたのに考えられない生死に関わる事態に追い込まれ風間に白状してしまう。そして風間は楠本の退学届を受け取らなかった・・・。代わりに沙織の姿はその後なかった。

白バイ乗務員を目指している鳥羽。同僚で親友としている稲辺を、絶対嘘が許されない日誌に書いてしまった嘘を隠匿するため裏切ることになり、その事で稲辺から受けた制裁は白バイ乗務員としての夢を絶たれるものだった・・・。もちろん。すべてを風間は見抜いてしまった・・・嘘をも。それでも鳥羽の退学届はやはり受け取らなかった。稲辺は退学した。

元ボクサーで30過ぎで遅く入校した日下部。ボクサー時代は冴えなかった。今度こそ家族を養うためにと背水の陣であるが成績はひどく悪い。そんなとき、樫村の規則違反を指摘した際、樫村から口止めとして成績アップの秘訣の取引を持ち掛けられて・・・。それは実は罠だったのだが、そもそもを見抜いてしまった風間の樫村との対峙は鳥肌もののかっこよさ。ミステリーもあいまって、ほんとに一番面白かった章かも。尾崎と樫村の退学。

由良は蜂恐怖症だ。再度刺されたらアナフィラキシーと医師に脅されて以来。パトカー実習のとき、車内に蜂がいてパニックになり重大なミスをしてしまった。その蜂を入れた犯人を安岡のせいだと思い込んで安岡を追い詰めていたとき風間が登場。それとなく誘導して真の犯人を由良にわからせる風間。ちょっといい感じの大団円。

優等生でトップ成績の都築は、もうじき実戦だというプレッシャーで胃腸を壊して苦しんでいた。それをも見抜いた風間は都築に最後勧告をつきつけた。修羅場を味わったことのない優等生は第一線で使い物にならない絶対に。だから辞めてしまうのが身のためだと。都築は自分を追い詰めた。その方法とは?なかなかやるなと風間が最後ほくそえんだ。

風間は始めの問いで見抜くのだ。見込んだ者を試すのだ。それをクリアしたものが真の警察官になれるのだと。ミステリーであると同時に、とんだ人間ドラマでもあり、警察学校というものの内情も分かるというお得感。

これはオススメである。交番のおまわりさんにも今度思わず敬意を払わずいられない。
風間はほんとにかっこいい。
続編、もしくは外伝のようなものが出たら・・・いいのになと本気で思った。

no.729
 

■ 誉田哲也
「増山超能力師事務所(文芸春秋)」 評価:★★★★★
Date:2014.03.22
ストロベリーナイトと同じ作者と思えないような展開設定で始め戸惑ったが、すぐそんなことを忘れてしまうほどに引き込まれてしまった。

世の中は超能力というものが認知されつつある状態で、協会や法律なども新しくできている。超能力者たちは能力別に検定によりランクづけされている。
一級超能力者の増山圭太郎という男が立ち上げた探偵事務所。
そこの従業員は五人。
発火能力の高い才色兼備の悦子。
ようやく二級検定に合格したばかりの半人前の篤志。
ブサイクだがテレパシー能力はきわめて高い二級の健。
能力はないが、年の功の洞察力は能力者をもしのぐ経理担当の朋江。
新人で能力にムラがあるが天才肌の美形、いまどきギャル(実は男)の明美。
そしてみんなを統括する一見脱力系の何故か女にもてる増山。
もちろん、検定なのだから透視、読心、一般理論などなど、皆できるようにならねばならないのだから大変だ。そしてまだ世の中、超能力への不信感や嫌悪感などの偏見も多いのだ。

短編仕様になっているが、読み進めると増山の過去やそれぞれの能力者たちの思いや苦労などがわかっていく。

持ち込まれる依頼は旦那の浮気調査から行方不明の娘の捜査から、なんと殺人未遂の真相のヒントまで・・・幅広い。
ライトなものからヘビーなものまで、なのだ。

増山の口癖は「面倒くさい」「超能力なんてそんな便利なものじゃない」。ものすごくめんどくさそうなので、なんだか脱力亭の怠け者なのかと思って読み進めてゆくわけだ。そして、いくら能力があっても法で厳しく制限されているため、相手の裸を透視したり、悦子の得意とする発火能力などは厳重に禁じられている。
しかも、増山は悦子と不倫関係にあるようだ。なんともいい加減な男なのだろうと思って読んでゆく。するとその決めつけが徐々に打ち壊されてゆくのだ。
増山の真意。そして超能力者たちへの将来への思い。壮絶な過去。今の妻と結婚に至った理由などなど。実に衝撃的。そして、ああ、これならもてるだろうな女がほっておかないよなとうなづく羽目になる。
そう、増山、素敵なのだ。

そんな理由で結婚していいのか。いや、それすらわかってすべて背負いこむ覚悟で人生ごと増山は文江を受け止めたのだ。普通の男にここまでできるまいと思う。
増山の過去を知る旧い仲の刑事、榎本。
榎本の部下も過去に何か超能力の絡んだ事件で殉職したのだ。いまだ真相は闇の中。榎本はいつか知りたいと思い続けている。
他にも少し、像編への伏線を感じる描写がところどころある。
・・・出るといいな。出ないかな、私も少し増山に惚れてしまったのかもしれない。

「朋江さん、超能力者ってのはね、いつだってスマートじゃなきゃいけないんですよ。だってそうでしょ。俺たちが売りにしてるのはあくまで〈超〉能力なんだから。なんても普通の力を使うより楽にできなきゃ意味ないんです。それに俺たち上の者が苦しい顔したら、下のやつらは不安になりますよ。ああ超能力なんてあったって駄目なんだ、いいことなんて何もないだって。最悪自分が能力者だってことにコンプレックスを持つようになりますよ。でも俺、それだけはさせたくないんです。だから俺はこれからもカッコつけます。やせ我慢だってします。あいつら全員がちゃんと一人前になるまで・・・またたまにこうやって朋江さんに薬もらうことはあるかもしれないですけd(胃薬を飲みながら)黙っといてください。お願いします」

うーん・・・かっこよすぎ、増山!!!

no.728
 

■ 伊坂幸太郎
「死神の浮力(文芸春秋)」 評価:★★★★★
Date:2014.02.19
死神の千葉のシリーズ第二段。長編だ。
嬉しかった!!(笑)
千葉のノリは相変わらずで、うん、この感じ。音楽を愛して。ちょっと人間からみるとずれてて(当たり前か)ちっとも変わってない(そこも当たり前)。

死神の千葉が今回、生死の判定を下す担当にされたのは、作家の山之辺。娘を殺されて、その犯人が証拠不十分で無罪判決されたのち、ただただ妻の美樹とその犯人の本城に復讐することだけを胸に秘め、生きている男である。
千葉が「可」と言えばターゲットは死ぬ。そして「見送り」といえば今回は何があっても死なない。一週間の判定期限。その審査の間ターゲットは何があっても死ぬことはない。
普通、死神たちはターゲットを調べるためにターゲット調査に近づくのだが、そうはしない適当な一週間を過ごしたのち、「可」という死神も多いのだが、千葉はきちんと仕事をこなす。生真面目な死神である。

そして山之辺に近づき、本城をCENSORED作戦に加担することになるのだ。千葉にそんな自覚はないものの、憔悴して暗かった山之辺夫婦が、千葉のおかげで活き活きしてくる変化がちょっと心が緩む感じがする。

本城というサイコ男は二十五人に一人と言われる、いわゆる心を持たない?種類の男。怖いものがないので何をすることも恐れない。だから殺せる。平然と殺せて罪悪感ももてない。
そのくせものすごく知能は高い。ルックスにも恵まれている。

本城を担当している死神は香川という女の姿の死神。さあ。どうなるどうなる?

最後の自転車で本城の車を追いかける千葉なんて、まさにターミネーターのようで(笑)笑った。そして・・・痛快。なにしろ不死身なのだから、千葉は。

最後、香川と千葉のくだした判定は、私の予想を180度裏切り。
でも・・・結局はそれこをが一番いい結末におさまった。
痛快以外ない。

本城苦しめ(笑)。山之辺、美樹は大丈夫だね。山之辺も確執のあるまま死に別れた父の気持ちを本当の意味で理解できたのだ。これも・・・千葉のおかげということか。

天然で生真面目で。音楽だけをなにより愛する千葉。私の前にも現れてくれないかな・・・可の判定でも・・・いいから。

no.727
 

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