![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
シーカヤックと呼ばれる船がある。 この島を流れる地下水路を行き来する際に用いられ、サイズは大小様々である。最近ではもっぱら観光客を乗せている。 音楽祭当日の朝、シーカヤック交通網はフル回転している。 最初漕ぎ手の中には往復した数を競う者達がいた。けれど、すぐにそのことは話題に挙がらなくなった。数えるのが馬鹿らしくなったらしい。 今は一刻も早く音楽祭に参加したいと頭で考えていたのだろう。 エンリル空港に戻る時、遠くから聞こえる楽しげな音楽を名残惜し そうに聞いていた。 どの船も目的地は殆ど同じであった。 サファイアラグーンの入り口である。 サファイアラグーンとは島の潟湖である。 観光客が主な拠点としている。露天温泉とホテルがあるからだ。 普段は「静かな湖畔でのんびり」がキャッチフレーズだが、今日だけは違う。 いたるところに楽団の姿が見える。格好からして地元民が楽器を持ち出して作ったものだが、その技術は眼を見張るものであった。 難なくアドリブとアレンジを加えセッションしている。アルトリコーダーにハープ、ギターにヴァイオリン、サックスにホルン。手にする楽器には統一感がまるでない。 強弱のつけ方が非常にうまい。楽器で感情表現をしていることが素人にも分かった。 それは素朴で切実な歓喜であった。 最後の一麦を刈り取った時から爆発していたそれが、もてる技術の全てを駆使させていた。 音楽は止まず、メロディーは春風にのっていた。 活気溢れるラグーンを、見下ろせる場所がある。 そこに一体の石像があった。巨大である。足元からだと顔は見えないだろう。積雪と春雨で像は黒くなっていた。野晒しであったけれど、みすぼらしくはない。 それはただの石像であったが、この国の友人である。詩歌藩国王犬シィが過去に雄々しく吠えたのは彼女の為だけである。 遠くから眺めれば、分かったかもしれない。彼女はどこか嬉しそうに微笑んでいた。 その視線の先に、収穫を終えた春の大地があった。 [No.7357] 2010/04/01(Thu) 00:35:28 |
この記事への返信は締め切られています。
返信は投稿後 180 日間のみ可能に設定されています。