詩歌音楽祭ってきっとこんなのだよ!(アイデア募集) - 星月典子 - 2010/03/24(Wed) 01:50:57 [No.7344] |
└ 回答いただいたのでまとめてみました - 星月典子 - 2010/04/02(Fri) 20:24:10 [No.7363] |
└ 政策ぽく(?)作ってみました(ご意見募集) - 星月典子 - 2010/04/05(Mon) 05:38:19 [No.7368] |
└ こっそり - 星月典子 - 2010/04/08(Thu) 18:07:41 [No.7373] |
└ Re: こっそり - 花陵 - 2010/04/08(Thu) 22:01:00 [No.7374] |
└ きっとこんなのだよ! - 花陵 - 2010/04/01(Thu) 23:36:36 [No.7359] |
└ 音楽祭SS(1) - 士具馬 鶏鶴 - 2010/03/28(Sun) 00:40:42 [No.7350] |
└ 音楽祭SS(2) - 士具馬 鶏鶴 - 2010/03/29(Mon) 22:16:58 [No.7351] |
└ 音楽祭SS(3) - 士具馬 鶏鶴 - 2010/03/31(Wed) 00:21:17 [No.7352] |
└ 音楽祭SS(4) - 士具馬 鶏鶴 - 2010/04/01(Thu) 00:35:28 [No.7357] |
└ 音楽祭SS(5) - 士具馬 鶏鶴 - 2010/04/02(Fri) 02:13:00 [No.7362] |
└ 音楽祭SS(6) - 士具馬 鶏鶴 - 2010/04/03(Sat) 02:08:04 [No.7364] |
└ 音楽祭SS(7) - 士具馬 鶏鶴 - 2010/04/04(Sun) 00:12:41 [No.7366] |
└ 音楽祭SS(8) - 士具馬 鶏鶴 - 2010/04/05(Mon) 00:07:39 [No.7367] |
└ 音楽祭SS(9) - 士具馬 鶏鶴 - 2010/04/05(Mon) 23:28:14 [No.7369] |
└ 音楽祭SS(10) - 士具馬 鶏鶴 - 2010/04/06(Tue) 23:15:00 [No.7371] |
└ Re: 音楽祭SS(3) - 花陵 - 2010/03/31(Wed) 20:00:21 [No.7355] |
└ きっとこんなのだよ! - 岩崎経 - 2010/03/26(Fri) 12:48:54 [No.7348] |
└ きっとこんなのだよ!! - 鈴藤 瑞樹 - 2010/03/25(Thu) 22:04:27 [No.7347] |
王都イリューシアは、人に溢れている。 真上に輝く太陽が、ようやく傾きはじめていた。雪解けに濡れた屋根が光り輝いている。舗装された地面は黒く濡れているが水溜りはひとつもない。 道のいたるところに楽団の姿が見える。 演奏する人達は大別して2種類。音楽院の制服を着ているものとそうでないもの。 制服組は今コンサートホールで演奏している者以外は街に繰り出し楽器を好きに演奏している。自分の出番がくれば、コンサートホールに行くだろう。 手にする楽器に関連性が多少みられる。小規模でも役割分担を気にしてしまうのは音楽院での教育が染み付いているからだろう。洗練された技術が感情変化をより繊細に表現している。 学生以外の楽団もかなりの数いる。 手にする楽器には関連性がまるでない。見物客はこれで音楽になるのかと最初は心配したが、すぐに杞憂だとわかった。 脈々と受け継がれてきた音楽を見事なアドリブで演奏していく。込められた感情は素朴だが大きな喜びであった。 制服組の楽団のひとつが音楽院東棟玄関付近に陣取っている。 「あれ、ロレーラ。アネッテは?」 ディーノ・ベッテンドルフが尋ねた。 年は20を超えた位のモヒカン男である。ギターの弦を調整している。ベストの下に着ているワイシャツの袖を肘あたりまで折り上げていた。 「バレエ科で出演中。」 ロレーラと呼ばれた女性が答えた。 高い背に長く伸ばした白雪色の髪。かわいいというより格好いいといわれそうな人物である。 年はまだ若いが外見から年上に見られがちだろう。モヒカン男と同じとスラックス。袖はまくっていないが、アームベルトをつけている。 ハープの弦を優しく撫で、ため息をひとつ。どうやらアネッテという人物がいないことに不満らしい。 「じゃ、曲はダンス抜きのやつか。」 メガネをかけた青年がキーボードをいじりながらつぶやく。 トゥーサン・プーサン、彼がこのバンド結成の張本人にして作曲担当である。ブレザーが大変よく似合っている。 「何でもいいからさっさとやろう。ホールでの演奏だけじゃ全然足りないんだ。」 「トマス、燃えていますね。いい演奏になりそうです。」 やる気迸る目付きが悪い金髪の少年に先程から終始笑顔の青年が答えた。少年、トマス・オルディアレスの手にはフィドル、青年、マシュー・ウィングフィールドの手にはマンドリンがある。二人はトゥーサンと同じ、ブレザーにスラックス。 「じゃ、やるか。」 キーボードの低音から、その曲は始まった。 時間が引き延ばされているような、音色。それは、かすかな音をたて、燃える暖炉の薪。 ハープの響きが重なった、穏やかに。それは、家に流れるくつろぎの時間。 主旋律が移った。ギターの弦が、一本ずつはじかれる。テンポは、ロッキングチェアの揺れるスピード。近づく春に、心躍らせる若者。それを静かに眺める老人。 キーボードが高音に移った。フィドル、マンドリンが軽快さを演出する。それは、団欒のなかで響く笑い声。 「んー、やっぱり明るさが足りないかな」 演奏を終えた後、トゥーサンが不満げに言った。 「ダンスが無いんだ、パンチが足りない選曲になるのはしょうがないさ」 ディーノの言葉にロレーンが頷く。早くアネッテ来ないかなと思ったが口には出さなかった。 「しょうがない、なぁんということでしょうっ!!それが私の生徒の言葉とはっ!!」 五人の頭上から、声が降ってきた。見上げると、屋上に人影が五つ。 声の主は、男であった。 年は20代後半、ウェーブのかかった髪に細身で中性的な顔立ち。ロレーラの顔色が驚愕に染まる。顔に見覚えがあった。 トビアス・コルッカ、彼女が属する声楽科の名物講師である。 「そうですね、あまり褒められた態度とは言い難い。」 また別の声が降ってきた。 よくとおる女性の声である。今度はトゥーサンの顔が凍りついた。原因は声の主、長身長髪の女性、セルマ・ライネ。彼が身を置く作詞科の名物講師である。 「トマスッ、アンタ祭りだからって気の抜けた演奏してんじゃないわよっ!!もっとエネルギッシュにっ!!」 若い女性の怒鳴り声である。苦い顔をしたのは、トマス。この声には聞き覚えがあった、嫌というほどに。 ソフィア・レトネン、楽器演奏科の講師である。短い白髪、手にはハープをもっている。 「まぁ、言ってわかるってもんじゃねぇだろ。」 「何事も実践ですよ、ソフィア」 なだめすかす二つの声。トマスの表情がますます苦々しくなった。 パーヴォ・ヤルヴェ、筋骨隆々の顎鬚男。ギターのネックを握り締めている。 アルベルト・ユーティライネン、ひょろりとやせた長身の男。フルートがきらりと光った。 「「「「「講師の実力、魅せてくれるわっ!!!!!」」」」」 「あの人らは、大人なんだか、子供なんだか・・・・・。」 音楽院東棟工房室の中、禿頭白髪のリペア科講師セヴェリ・ハルトネンの嘆息が響いた。 [No.7364] 2010/04/03(Sat) 02:08:04 |
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