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その場に居る誰もが、天上に光る星々が孤独ではないと今日思った。 夜闇に沈む姿がずっと寂しそうだった。大海にポツンと浮かぶこの国も。 だが、そうではない。 今ならそう言える。隣を見れば見知った顔も見知らぬ顔もあった。 詩歌藩国音楽祭、最後の幕が開こうとしていた。 使用される楽器、人員共に過去最大数を誇る。楽器演奏科と総合科の学生、講師陣、全てが楽器を手にしている。 これまで繰り広げられていた大騒ぎが、嘘のようである。静謐が過ぎ、聴衆の背がぞくりと揺れた。演者達の手にうっすらと汗がにじむ。酒の酔いなど、とうに抜けていた。 最後の演者が、整然と並ぶ演者達の前に現われた。 詩歌が誇る二人の摂政が一人、竜宮・司・ヒメリアス・ドラグゥーンである。 最後の空席、グランドピアノが埋まった。メガネをくいと押し上げる。 指揮台に立つ初老の男が、指揮棒を高く突き上げた。今まさに振り下ろされんとする一本の棒を、誰もが注視していた。 第一幕、開始。 音が奏でたのは、魂との再会であった。 始まりは、ピアノの緩やかな独奏。スピードは、歩くような速さで。 二人の男と一機が緑の森を抜ける。落ち葉を踏み、銀の森を故郷にもつ彼は言った。 ここは、死の森だと。湿っていて、暖かいけど、どこか冷たいと。 曲調、急転。ヴァイオリンの鋭利な音が平穏を切り裂く。 それは、突然の別離。 何十ものヴァイオリンはつのる不安、緊張を次々にえがきだす。 シンバルの爆発でピアノのリズムは急上昇。トランペットの音が高らかに響く。 透明な絶望。薄氷の上を無我夢中で走り抜ける必死さであった。 涙を流しながら見上げた空が、青かった。広く、穏やかだった。 それが、無性に悔しかった。 曲調は再び穏やかに。チェロ、トロンボーンが低く深い音を編みこむ。 男は気づく、もはや救いはないのだと。 深い失意と悔恨の中、彼は出会う。運命の少年と。 トランペット、ホルン、トロンボーン、チューバが告げた、信じがたい奇跡を。 ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、コントラバスが告げた、再会の喝采を。 シンバルの爆発で全ての音が止む。 そして、流れ出すのはピアノの静かな音色。 スピードは、歩くような速さで。 手をつなぎ、歩くような。 最後の一音が止んだ。耳が痛くなるような一拍の静寂、そして。 耳が痛くなるような喝采が、惜しみなく、演者達に向けられた。 [No.7367] 2010/04/05(Mon) 00:07:39 |
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