新規取得アイドレス作業ツリー - 竜宮・司 - 2011/07/22(Fri) 00:08:29 [No.7725] |
└ 荒海の賢者 文章【賢者と野兎】 - 鈴藤 瑞樹 - 2011/12/04(Sun) 20:13:43 [No.7767] |
└ 荒海の賢者 文章【賢者の愛弟子2】 - 鈴藤 瑞樹 - 2011/12/04(Sun) 20:10:09 [No.7766] |
└ 荒海の賢者 文章【賢者の愛弟子1】 - 鈴藤 瑞樹 - 2011/12/04(Sun) 19:57:24 [No.7765] |
└ 花陵さんへ - 鈴藤 瑞樹 - 2011/11/28(Mon) 10:21:36 [No.7763] |
└ お返事です。 - 花陵ふみ - 2011/12/04(Sun) 09:16:28 [No.7764] |
└ [削除] - - 2011/11/11(Fri) 16:06:06 [No.7760] |
└ 誤字がありました。 - 花陵ふみ - 2011/11/20(Sun) 13:04:08 [No.7762] |
└ 竜の自己進化提出しましたー - 竜宮・司 - 2011/10/22(Sat) 13:06:54 [No.7754] |
└ 竜の自己進化 設定文 - 九音・詩歌 - 2011/10/21(Fri) 01:06:48 [No.7751] |
└ 平和の剣(アイテム)作業枝 - 竜宮・司 - 2011/10/01(Sat) 00:18:57 [No.7744] |
└ 平和の剣のイラスト依頼 - 竜宮・司 - 2011/10/01(Sat) 00:38:58 [No.7745] |
└ 描きます - 岩崎経 - 2011/10/01(Sat) 00:47:04 [No.7746] |
└ 平和の剣かきました! - 岩崎経 - 2011/10/21(Fri) 23:29:33 [No.7752] |
└ Re: 平和の剣かきました! - 九音・詩歌 - 2011/10/21(Fri) 23:36:16 [No.7753] |
└ 書き足しましたー! - 岩崎経 - 2011/10/26(Wed) 17:36:35 [No.7755] |
└ Re: 書き足しましたー! - 九音・詩歌 - 2011/10/27(Thu) 20:21:17 [No.7756] |
└ 荒海の賢者(ACE)作業枝 - 竜宮・司 - 2011/10/01(Sat) 00:18:53 [No.7743] |
└ かきましたー! - 岩崎経 - 2011/11/05(Sat) 19:32:26 [No.7757] |
└ 海藻農場(施設)作業枝 - 竜宮・司 - 2011/07/22(Fri) 00:15:20 [No.7726] |
└ 完成、提出しましたー - 竜宮・司 - 2011/09/26(Mon) 19:42:48 [No.7740] |
└ 絵の依頼:海藻の近くを泳ぐイルカ - 竜宮・司 - 2011/09/16(Fri) 02:20:32 [No.7737] |
└ 1枚?描きました - 清水魁斗 - 2011/09/21(Wed) 23:00:19 [No.7738] |
└ 文は私が書くよー - 竜宮・司 - 2011/07/22(Fri) 00:16:14 [No.7727] |
└ 設定文完成ー - 竜宮・司 - 2011/09/22(Thu) 03:07:50 [No.7739] |
【賢者と野兎】 音のない静謐な風景が広がっている。 辺りは白一色に塗り潰され、今なお降り続く雪の重みが静々と世界を染め上げている。 寄せては返す波音もそのほとんどが厚く積もった白雪に吸われ、人の耳には届かない。 いや、そもそも聞き届ける耳がどこにもない。 獣たちは森の奥で冬籠もりをはじめているし、いつもは朝一番から船を出す漁師たちも同様に家に篭っている。 詩歌藩国で今年の初雪が観測されてからはや三日。 砂浜に動く影はひとつもなく、漁師たちが海から引き揚げた小船だけが、静かに春を待っていた。 そんな静かな場所で、よくよく目をこらせば、ひとつだけ揺れ動く姿があった。 砂浜の端にある平たい大岩。 その上に、いつもと変わらぬ様子で彼はいた。 長く伸ばした白い髭。 頭には濃い青色の布で作られた帽子。 ワインレッドの外套は胸元一箇所で引き結び、その下には帽子と同じく青い色をした貫頭衣を身につけている。 手には身長ほどもある長さをもった木製の杖らしきもの。 荒海の賢者その人だった。 いつから座り込んでいるのか、すでに半身が雪に埋もれているにもかかわらず、動く気配は微塵もない。 杖の先には生糸が括られ、糸先は冷海の中へと続いている。 雪の中でも相変わらず釣りを続けているらしい。 すでに気温は氷点下にある。 普通であれば、とても釣りなどしていられる状況ではない。 木杖を握る手指は白くかじかみ、細く吐き出される白息と共に凍てつく寒さを感じさせる。 以前と比べて、着衣が厚くなったわけでもないし、魔法のたぐいを使っているわけでもないようだ。 ということは、己の精神力で堪えているのだろう。 根性論にもほどがあるが、あるいはその胆力こそ賢者に相応しいと言えるのかもしれない。 ふいに、老人はぽつりとつぶやいた。 「寒いのぅ……」 よく見れば全身が細かく震え、目元にはうっすらと涙がにじんでいるように見える。 どうやらやせ我慢をしていたようだ。 /*/ 遡ること三日前。 紅葉も終わり、いよいよ本格的な冬が始まろうとする頃。 賢者はいつもの通りにカイと二人で釣りをしていた。 「賢者様、明日には雪が降るのですよね」 「うむ、おそらくはな」 日々の気温の変化と、森に住む動物たちが姿を消したことからそろそろくるだろうと賢者はあたりをつけていた。 カイが村にあるラジオで聞いた天気予報でも、同じように言っていた。 カイが知る限りでは、一度雪が降り始めればあとは積もり続けるのみ。 次に溶けるのは来年の春だ。 「賢者様、お話があります」 「うん、なんだね?」 脚を揃えて竿を置き、珍しく真剣な面持ちでカイが顔を向けてくる。 「雪が振り出せば、砂浜まで来ることも難しくなります。 父や祖父も、漁は今日までだと言っていました」 「ふむ」 カイの住む村からこの砂浜までは歩いて30分ほどの距離にある。 たしかに、雪が振り出せば今までのように通い続けるのは難しいかもしれない。 ちなみに、カイは漁の手伝いや神殿での勉強がない限りは、毎日欠かさず賢者のいる砂浜までやってきて釣りを続けていた。 カイはいつも決まって、夜明けからきっかり35分後に賢者のもとを訪れる。 本人が意図してやっているのかはわからないが、賢者の体内時計によれば(そもそも賢者は時計を持っていないが)カイの行動には1分の狂いもなかった。 「なので、その……冬のあいだは、修行をお休みさせていただいてもよいでしょうか」 息を止めて、じっと賢者を見つめるカイの顔は、わずかに赤くなっていた。 弟子が勝手なことを言って申し訳ない、とカイは考えているのだろう。 賢者を慕うこの素朴な少年は、ときどき真面目すぎることがあった。 その様子が微笑ましくて、つい頬がゆるむ。 「わかった、では次に会うのは来年の春だな」 そう言っていつものように、くしゃりと頭を撫でてやる。 くすぐったそうに笑うカイ。 ホッとした為か、少年は見落としていた。 賢者は冬のあいだ、どう過ごすのか。 もう少しだけ、彼は気にするべきだったのかもしれない。 /*/ 「寒いのぅ……めっちゃ寒いのぅ……」 ザクザクと、膝まで積もった氷雪を踏み締めながら森のなかを進む。 寒すぎてつらくなってきたのか、若干しゃべり方が崩れている。 その日の釣りを終えた賢者は、肌を刺す寒気を堪えながら雪道をせっせと歩いていた。 カイと別れてすでに三日。 そのあいだ、彼は夜をこの砂浜からほど近い森で過ごしていた。 雪が降る前までは砂浜で寝ていたのだが、さすがに雪に埋もれてしまうため、場所を移動した。 木々が屋根代わりになるので砂浜と比べればまだ雪の量は少ないし、木の実など食料もあると判断したためだ。 さいわいにも、大型の獣が使っていたと思われる洞穴を見つけたので、そこを寝床としている。 「しかし寒いのぅ……冷え冷えじゃのぅ……」 人生の大半を旅に費やし、そのほとんどを野宿で過ごしてきた。 雲の上に出るような高山や灼熱の砂漠など、劣悪な環境で過ごしたことも一度や二度ではない。 それに比べれば雪中でのサバイバルくらい問題なくこなせるだけの知識と経験はある。 だが、しかし 「寒いのは嫌じゃ……こたつ欲しい……」 いくら慣れているとはいえ、苦手なものは苦手だった。 そもそも独り言にも特に意味はない。 こたつなど、もう何十年も使った覚えがない。 食料調達のためとはいえ、明日もまた同じ雪道を寒さに震えながら行き来しなければならないと思うと、ちょっぴり涙が出てくる。 「なにか」を見つけたのは、そんなことを考えながら歩いていた時だった。 それは、木の根元のあたりでうずくまり、もそもそと動いていた。 「んん……?」 それはちいさな枕ほどもありそうな、毛のかたまりだった。 雪に馴染むような白い毛玉には、よく見れば長細い二本の耳が見える。 「ウサギか?」 前側に回り込んで見れば、雪に埋もれかけた草に門歯を押し当て、ちいさなくちではぐはぐと食べている。 おそらくアンゴラウサギの一種だろう。 被毛を利用するために生み出された長毛のウサギで、非常におとなしい性格だったはずだ。 実際に見るのは初めての経験だが、ふわふわもこもこしていてじつに暖かそうである。 それにしても、一匹だけなのだろうか。 野性であれば何匹かの集団で行動するだろうし、もしかすると家畜として飼われていたものが野性化したのかもしれない。 「ふむ……」 ウサギの前に腰を下ろし(雪が染みて冷たいが、無視して)考え込むように野兎を見つめることしばし。 「もし、そこなウサギ殿」 なにを思ったか、いきなりウサギに声をかけた。 「きゅい?」 ウサギは一心不乱に草をはむのを止め、まるで賢者の言葉がわかったように高く鳴いた。 「ひとつお尋ねしたいのだが、すこしよろしいかな?」 「きゅい」 「おお、ありがとう」 「きゅいきゅい」 「うむ、ぶしつけかもしれぬが、もしやおひとりかね」 「きゅい……」 「ふむ、なるほど」 「きゅい?」 「いやなに、わしもこれから冬籠もりじゃが暇になると思うてのう、よければ年寄りの話し相手でもなってくれんかと思うたんじゃ」 「きゅい、きゅい?」 「うむ、むこうの洞穴に住んでおるよ、たいしたものはないが、魚くらいは馳走出来よう」 「きゅい!」 「おおそうか、ありがとう」 なにやら話がまとまったのか、くしゃりと顔を丸めて笑う。 「きゅい?」 「わしはこの辺りでは荒海の賢者と呼ばれておるよ」 「きゅい」 「ハハハ、ありがとう」 「きゅい!」 「なるほどノウスか、良い名じゃ」 まったく原理は不明だが、どうやら賢者はウサギと意思の疎通ができるらしい。 カイがいればツッコミが入ったかもしれないが(むしろ感動したかもしれないが)あいにくと、この場には賢者と野兎を除いてはネコリス一匹すらいなかった。 「では、ちと失礼して」 洞穴まで案内すべく、よっこらせ、と賢者は野兎(他称:ノウス)を抱え上げた。 思った以上にもっふりしていて、心地いい重量感とぬくさにほんわかする。 小さな動物は体温が高いというが、どうやら本当らしい。 その柔らかい感触に、抱き抱える腕にも思わずちからがこもる。 ぎゅむぎゅむと、ふわもちなノウスの腹を揉んだり、つついたりする賢者の顔は嬉しそうにゆるんでいた。 本人にすら自覚はないが、賢者には動物を愛好する癖があった。 特に毛の長い生き物が好物で、旅の途中に遊牧民がつれたヒツジなどを見つけると、ふらふらと吸い寄せられるように抱き着いて「よーしよしよしよし」といきなり撫で回したりすることがあった。 遊牧民が気付いて注意したところ、あと30分だけ触らせてくれと頼み込んだりもした(その後、ヒツジに夢中になりすぎて迷子になったことに気付いた) 賢者が立ち尽くしたままだったことに疑問を持ったのか、ノウスが尋ねるように声をあげる。 「きゅい?」 「おおすまん、ぼーっとしておった」 ようやく我に返った賢者が返事をして、歩き出そうとした。 と、その時 てーれってれー♪ けんじゃ は だきまくら を てにいれた! どこからかファンファーレが鳴り響いたような気がした。 「では、行こうか」 「きゅい!」 しかし、すでにふわふわもこもこに夢中な賢者が怪音などに気付くはずもなく。 十分にもふもふを堪能した後、風変わりな友人(?)を得た賢者は洞穴へと歩き出した。 その後、一人と一匹は冬の間、寒くて暖かい日々を過ごすことになる。 さらにその後、一匹の野兎は賢者の終生の友となり、【賢者と野兎】の詩を詩人たちが語り継ぐこととなるのだが、それはもう、何十ターンも後の話である。 [No.7767] 2011/12/04(Sun) 20:13:43 |
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