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剣聖 (親記事) - 神

世界は、滅びへの道を一歩一歩進んでいる。
それは、時計の針が時を刻むようにゆっくりと。しかし、逆らうことのできない決まり事。色褪せた大地に、燃える暁の陽光が差し込む頃。一人の少女が全身に繋がれた鎖を鳴らしながら歩くのも人間の業だろうか?

「こっちだ」

屈強な兵に、獣のように連れられる少女。破れた服には返り血が付き、痛々しいほどに体は傷だらけ。瞳に生気はなく、胸に二本の剣を抱いたまま、一点を見つめている。

「跪け」

 廃墟のような場所に連れてこられると後方から蹴られた。這いつくばるように彼女は膝をつく。
まるで、物。人間として扱われていないのは明白だった。

「おやおや、久しく見ない間に随分と大きくなった」

 小太りの男が薄ら笑いを浮かべながら近づいていく。
その声を聞いた瞬間、少女屈強な数人の兵さえ引きずる力で無数の鎖を引っ張った。

「お前ぇ!!」

 生気のなかったはずの瞳に業火の炎が宿る。怒りだけが少女を突き動かす。拘束具が体に食い込むが、腕や足が裂けてでも殺してやると言わんばかりの憎悪が男に向けられている。
 だが、男は気にするそぶりもなく汚らしく口角を上げた。

「怖い、怖い。しかし、感謝はされても怒りを向けられる筋合いはないなあ?」
「ふざけるな! 騙したくせに!!」
「騙した? 何を言う、貴様の望み通り強くしてやっただけ。それよりも、まだ人間の言葉が話せたのか。獣小屋に五年も閉じ込めておいたのに。くくく、お笑いよ」

 下品な笑みを浮かべ、腹を抱える男。
許せなかった。あの日、自分を地獄に落とした神官がのうのうと、自分を死より苦しい目に合わせておきながら肥えていることに。
少女の怒りは、頂点に達していた。

「死ねぇぇぇぇ!!」

 鎖を引き千切り、少女は胸に抱いた剣を抜く。
周りにいる兵たちが食い止めようとするが、紙きれのように切り刻まれるだけ。生まれながらの剣聖には、ただの兵など路上に転がる小石程度の障害でしかない。予想外の事態に、神官の顔色は一気に強張った。

「は、話と違う!! 鎖は絶対に壊れないという話ではないか!? 守れ! 儂を守れ!!」

 額に浮かぶ脂汗。神官は周囲の兵を身代わりに逃亡を図るが、肥えた体は鈍い動きしか出来ない。後方から聞こえる兵たちの絶叫が男の耳に痛いほど響く。
 一人、また一人、轟く絶命の音色。赤黒い液体を剣から垂らし、少女は神官に近づいていく。

「待て待てっ!! 儂を殺したところで、貴様の運命は何一つ変わらないぞ!? な? な? あの時のことは謝る! だから、だから! 殺さないで!!」

 泣き叫び、命を請い。肉塊は許しを求める。

醜い。

これ以上醜いものはあるだろうか、と少女は嘆く。
 自分を貶めた人間の末路はこんなものか、感情をぶつけるまでもない。
 未だ騒いでいる醜肉に、剣聖は無言で剣を振り降ろした。

「あぅぁ……」

 呆気ない最期。神官だった物からは大量の血が溢れ、水たまりのように広がっている。声を上げることも、動くこともない、ただの屍。
 周囲には五年もの間、閉じ込められていた獣小屋のように人間達の屍が無造作に転がっている。
虚無。
少女の心に広がっていくのは、ぽっかりと空いたような虚しさだった。
血を払い、剣を鞘に仕舞う。

「終わり……? こんなもの……?」

 二本の剣に問いかけるが、答えはない。全てから解放され自由を手に入れたが、ずっと箱入りの剣聖だった彼女には、何をすべきなのかも分からなかった。

「おやおや、全部殺してしまいましたか」

 突然、どこからともなく聞こえた声。
少女が辺りを警戒するように見渡すと、どこから現れたのか。一人の老紳士が微笑みながら歩み寄ってきた。

「誰?」
「そう、警戒なさらず。私は貴方のすべきことを知っている者です」
「私の?」
「はい。共に来ていただければ、貴方が生まれた理由が分かります」

 決して笑みを崩さず、柔らかな物腰を見せる紳士。
 だが、根拠もなければ得体の知れない人物を信じるほど、少女は愚かでなはい。

「証拠は?」
「証拠、ですか? では、王から賜った書状はいかがでしょう?」
「見ても分からない」
「おや、そうですか。では、貴方の本当の名前を知っていると言ったら?」

 老紳士の言葉に、少女は息を呑む。
自分の名前を知っているのは、あの人だけ。もし、本当にこの老紳士の言うことが本当だとしたら、あの人が自分を呼んでいる可能性がある。

「言ってみて」
「構いませんよ」

 静寂の中、老紳士は目を細めながら剣聖の名を告げた。

『――……』

 瞬間、少女は目を見開いた。
老紳士の口から聞こえた名前は確かに自分のもの。
 そう、彼女が生まれた時、あの人から貰った唯一の贈り物。

「……わかった」
「納得していただけたようで良かったです。さあ、こちらへどうぞ」

 老紳士に導かれるまま、剣聖は廃墟を後にした。

 どれくらい経っただろう。
あれからしばらく、行く当ても分からないまま少女は馬車に揺られていた。向かいに座る老紳士は、何を尋ねても微笑み返すだけ。窓は閉じられ、どこにいるかも分からない。

「そろそろ着くようですね」

 馬の嘶きが聞こえたかと思うと、馬車は減速して止まる。そして、老紳士が開けた扉から見えたのは、大きな城の前だった。

「降りる前に、こちらを。その姿では皆の注目を集めます」

 渡されたのは、羽織る形の大きな装束。思えば、ところどころ破れた服を着たままで、女の子としては恥じらいがなかった。
 少女は少し目を背けながら受け取ると、くるまるように身を包んだ。

「こちらへ」

 老紳士の後について城内に入る。中は城を基調とした壁と赤い装飾が施された荘厳な作り。どことなく、あの神殿を思い浮かばせる。
 床はふかふかの絨毯が敷かれ、裸足の少女にとっては感じたことのない心地よさだった。

「どこに向かっているの?」
「先ずは湯浴みをしていただこうかと」
「湯浴み?」
「はい。湯に浸かって疲れをお癒しください」
「疲れ……」

 長らく獣小屋に閉じ込められてから忘れていたが、神殿にいた頃は風呂に入るのは当たり前だった。
少女は、気付かれないように自分の匂いを嗅ぐが、思わず鼻をつまんだのは言うまでもない。

「着きました。入り口にいる女中にお声がけください」
「わかった」

 老紳士に言われるまま、女中に声をかける。すると女中は嬉しそうに手を合わせた後、少女をお風呂場に案内した。

 湯浴みを終えた少女は、女中に通された部屋で休んでいた。
腰掛ける椅子は柔らかく、今まで自分がいた牢獄とは正反対。これまでとは違う待遇に、剣聖は戸惑っていた。

「いいのかな……」

数えて十の頃に牢獄に閉じ込められてから五年。地獄のような暮らしをしてきた彼女にとっては、王城で優遇される理由が見当たらない。どこか落ち着かなくて姿見の前に立つが、白金を基調とした服装に身を包んだ自分に驚く。
銀色の髪、青の瞳。幼い頃に見た覚えのある自分の容姿。だが、あの頃とは違って体は大きく成長している。
女の子らしくなったな、と鏡の前で色んな体勢を取っていた少女は、いつの間にか入り口にいた老紳士に気付かなかった。

「お気に召されたようですね」
「ひぇ!?」
「驚かせてすみません」
「よ、用があるなら言って」
「申し訳ございません。そろそろお時間だったものですから」
「お時間?」
「はい。貴方が剣聖であることを証明する時です。さあ、剣をお持ちください」

 少女は頷き返す。そして、近くにあった二本の剣を腰に携えると、老紳士に続いて部屋を出た。
足音が城の廊下に響く。剣聖である証明を果たすために私はここにいる。
 地獄のような日々を超え、剣聖という役割が、自分の生まれた意味がようやく分かる。きっと、皆が強くなった自分を受け入れてくれる。
 少女はそう信じて大広間の先ある、展望場に出た。

――瞬間、大きな歓声に剣聖は包まれた。

『皆さん、ご覧ください! この方が我らの剣聖です!!』

 少女を紹介する大きな声。民衆の活気は一層上がっていく。
 その様子を見た剣聖は、不思議と笑みがこぼれた。自分の本当の居場所はここだ、と。今までの悪夢は全てこの時の為にあったのだ、と。
 こんなにも多くの人が見てくれることが嬉しかった。

『これで世界は救われます!』
「……………………え?」

 少し戸惑うが、剣聖としての使命は滅びゆく世界を救うことなのだろう。ここにいる人たちだけでなく、この世界の皆を助けるのが自分の生まれた……

『彼女を生贄にして、世界中を幸せにしましょう!!』
『わあぁぁぁぁ!!』

どうして、民衆は盛り上がっているのだろう?
どうして、自分の死が喜ばれるのだろう?
少女には、理解できない。
剣聖として生まれた少女は最強が故に、孤独で。
 世界を救う為だけに作られた、生贄。

 この日、彼女は。
剣聖ルシアは、自分が死を全うする為だけに生まれたと知った。


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[No.11942] 2020/03/27(Fri) 07:04:38 (35942時間34分前)

感想お願いします (親記事) - 木星

春になると毎年のように三月三日を楽しみに待っている少女がいる。この少女には、七月七日の七夕の日にしか会えない彦星と織姫みたいに、三月三日の日にしか会えない人がいる。人と表現するには、曖昧な気はするが少女は人と認識していた。

 今日十歳になった三月三日、少女はその人に会うために、朝早くに家を出てある神社に向かった。

 鳥居を通る前に一礼した後真ん中を歩かないよう気をつけながら端を歩き拝殿に辿り着く。

「かりんちゃーん、あーそーぼー」

 しかし、拝殿からは誰も出て来ない。少女が辺りを見回しても人の気配すらない。どんどん気持ちが落ち込んでいく。

「いやいや、右、左見てなんで後ろ見ないのよ!!」

「あ、かりんちゃんだ。約束通り今年もきたよー」

 後ろを振り向くと、白いワンピースを着ていて、金色の髪の毛を風になびかせている、かりんと呼ばれた女の子が立っていた。
 かりんと呼ばれるこの人物は、少女は気づいていないが、この神社に住んでいる神様なのである。

「よく来たわね。最近じゃ貴方しか参拝しに来ないから暇を持て余しちゃって」

「毎日来ている事知ってるんだね。三月三日だけじゃなくて毎日顔を見せてくれればいいのに」

「前に言わなかった? 私これでも神様だから本来、人間に姿を見せてはいけないのよ。毎日来て掃除とか参拝してくれている貴方にだけ、特別に三月三日の日だけ会っているんだから」

「かりんちゃんの言ってること難しくてわからないけど神様になりたいって事は分かったよ」

「なにもわかってなーーーい!!」

 ニコニコ笑っている少女に、かりんは呆れ、諦めたような目で見つめていた。

「いつも思っていたんだけど、来てくれるのは有難いし、私も退屈しないで済むんだけど、今日貴方誕生日でしょ? 家族で過ごさなくていいのって」

「お母さんも、お父さんも仕事で夜遅くまで帰って来ないからね、かりんちゃんに会うまではいつも一人だったんだ」

 少女は、悲しむ様子もなく、さっきまでの笑顔で喋る。そんな少女の姿を見たかりんは、いたたまれなくなり、今まで隠していた事を言葉に出す。

「そ、そうだ。今日三月三日でしょ。神様の世界にも一年に一度、祭りがあってね今日がその日だから、今から行こう」

「そうなの!! 行こう!! でも、今まで三月三日に祭りがあるなんて知らなかったよー。前に来た時に、教えてくれればよかったのに」
 
「私、祭りとか苦手なの……。そんな事より早く行くわよ」

 かりんは、少女の手を掴み拝殿の裏にある山に入っていく。木々が生い茂り、進んでいくと辺りが段々と暗くなる、そんな山道であった。何も知らない子供が迷い込んだのなら泣き崩れてしまうだろう。少女も例外ではない、かりんがいなければ、間違いなく泣いていた。かりんもそれが分かっていたのであろう、少女の手を離さないように、強く握っている。

 ある程度登っていくと、一つの大きな岩が道を塞ぐように立ちふさがっていた。

「ここが入り口な訳なんだけど、人間である貴方がこのまま入ると、他の神様たちに攫われる可能性もあるわけ。そこで私の持ち物でもあるこれを付けて入れば問題解決。これさえ外さなきゃ、人間って事はバレないはず……」

 そう言って、かりんは右手に狐のお面、左手に赤いリボンを持ち、「どっち付けたい?」と尋ねた。

「うーん……どっちも!!」

「え? 二つとも付けるの? 一つでもいいのに」

「だって、狐さんのお面はかっこいいし、リボンもあまり付けた事ないからどっちも付けたい」

「まぁ、付けたいならいいけど。こっちおいで、リボン結んであげる」

 器用な手つきで、少女のロングヘアの髪型がポニーテールになっていく。狐のお面も頭にかぶり、ようやく準備完了だ。

 二人は大きな岩の前まで行き、かりんは手をかざした後、人間では発声不可能な言葉を使った。
 すると、さっきまでいた薄暗い山道ではなく、明るく騒がしい、周り一面屋台が広がる場所に移動していて、さすがの少女も驚いている。

「わー……。かりんちゃんって本当に神様なの?……」

「私、毎年言ってたわよね?」

「すごい、すごい!! 神様と友達だったんだ」

 はしゃぎながら、かりんの周りをぐるぐると回る。あまりのはしゃぎぶりに周りの神様達から、視線を向けられて顔が紅くなっていくかりん。彼女は、注目されるのが苦手なのである。

「入り口ではしゃぐと迷惑になるでしょ。早く行くわよ」

 早歩きで屋台の方に向かう、かりん。

「待ってよー、かりんちゃーん」

 その後を追いかける少女。

 二人は神様の祭り、もとい、神々の宴に入って行った。

 人間の祭りみたいに、神様の祭りも賑わいがすごかった。沢山の神様がいてその中には、かりんみたいに人型の神様もいれば、人の姿ではない異形な姿の神様もいる。

「かりんちゃん! かりんちゃん! 神様ってこんなにいるんだね。私、神様って一人だけだと思ってたよ」

「あまり神様、神様連呼しないの。人間だってバレちゃうじゃない」

 周りに聞こえないように、少女の耳元で囁く。

「ごめんね、静かにする」

「よろしい。さ、行くわよ」

 二人は、屋台を見て回っていると、少女が「金魚すくいやろ」と言って来たので金魚すくいの屋台に向かう。店の店主も神様なのだろう、見た目が人魚の姿をしていて、宙を浮いていた。
 お金を払おうとしたけど少女はお金を持っていなかったので、かりんが代わりにお金を払う。

「ごめんねかりんちゃん、お金持って来てなくて……」

「いいから、今日は私が奢るわよ。金魚すくい頑張ってね」

「うん!! 頑張る」

 ガッツポーズをして、金魚をすくう紙──ポイを水面に浸けて一匹の金魚に狙いを定める。少女は水の抵抗を受けないように、ポイを平行に動かす。狙っている金魚の下にポイを移動させたら、金魚をのせ、斜めに引き上げて器に移した。見事少女は金魚をすくったのだ。

「貴方……金魚すくい上手いわね……」

「あんまりやった事なかったけど、知識として知ってたからすくえたよ」

 彼女の器用さに唖然とするかりん。後何匹すくうつもりなんだろうと見ていると、少女は店主にポイを渡し「この子だけ貰うね」と言った。

「もういいの? まだ紙破れてないから後何匹かは、すくえたんじゃない?」

「いいの、いいの。この金魚さんは、あの子にすくってあげようと思っただけだから」

 少女の指差す方を見てみると、生まれたばかりの神様なのだろう、少女より身長が低い男の子がいて、羨ましそうにこちらを見ていた。

「あの子ね、ずっと金魚すくいやっていたのに一匹も釣れなかったんだ。それでも何度もやっている姿に、諦めないですごいなって思ったの」

 少女は小さき神様に近づき金魚を渡し、頭を撫でる。その姿は、まるで姉弟のようだ。少女は彼に手を振りながらこちらに戻ってきた。

「あの子すごい喜んでくれてたよ。よかった」

「それは、よかったわね。あの子も喜んでくれてたし。それで、次行きたい屋台ある?」

「うーんと、もうすこしで昼の時間だし何か食べ物買おうよ」

「もうそんな時間! 楽しいと時間が過ぎるのは、早いわね」

 時刻は、十一時三十分。二人は、食べ物の屋台を見つける度に、片っ端から買っていった。焼きそば、たこ焼き、フランクフルト、他諸々。
 少女もかりんも、手には大量のビニール袋を持っている。

「かりんちゃん、こんなに食べられるの?」

「食べられるわよ。もし残っても、私へのお供え物としてもできるしね」

「なら、安心だ! 残しても、かりんちゃんの為になるなら」

「そうそう。さて、どこで食べるかだけど、いい所があるからそこ行こう。付いてきて」

「はーい」

 二人は一旦、祭り会場から離れた、丘に向かった。

 そこにあったのは、辺り一面を覆い尽くすような大きな桜の木であった。三月の月始にも関わらず、花びらが春風に乗るように咲き乱れていて、散っていく。

「ここ、すごいね……。桜がもう咲いてるよ……」

「もう咲いている、と言うよりこの桜はね、散っても散ってもすぐにまた咲くのよ。枯れる事が出来ない桜……」

 かりんの説明を聞いていないかのように、相槌一つしないで少女は口を開けながらその桜を見続けていた。

「桜は食べながらでも見れるでしょ。準備準備」

 かりんが手をパチパチとして少女の意識をこっちに戻す。

「そうだね。お腹も空いてきたし桜は食べながら見よう。お花見だー」

 かりんはどこから取り出したのか、ビニールシートを出し地面に敷いた。そこに、手に持っていたビニール袋を置き、買ってきた食べ物を二人で並べる。

「並べ終わったわね。さ、食べましょうか」

「うん。いただきまーす」

 二人は買ってきた食べ物を食べる。少女は焼きそばから、かりんはたこ焼きから食べ始めた。二人とも美味しそうに食べる。

「美味しいね、かりんちゃん」

「そうね。誰かと食べてるからかしら?」

「きっとそうだよ」

 無邪気な笑顔で笑う少女に、かりんもにんまりする。

「そういえば、貴方この祭りに来た時、神様いっぱいいるねとか言ってたわね」

「言ったような、言ってないような……」

「言ってたのよ。その質問に答えようと思って。神ってね人の願いの数だけ生まれるのよ」

「人の願いの数だけいるんだ。素敵だね」

「たしかに素敵ね。でも、人の願いの数生まれる一方で、人に認知されない神はね、消えるのよ。私も本当は消えるはずだったの、でもね貴方が来てくれた……」

 顔が暗くなるかりん。少女はそんな、かりんに近づきギューッと抱きしめた。

「かりんちゃんは消えないよ。だって私が絶対に忘れないから」

 少女の嘘、偽りない言葉だった。

「ありがと。でも恥ずかしいから離して」

「かりんちゃん、照れてる!! 可愛い」

「別に照れてなわよ!! そんなことより、早く食べて祭りに戻りましょ」

「うん。もっと遊びたいしね」

 二人とも、無理のない程度に食べて祭りに向かう。言うまでもないが全部食べきれなかったので残った物は、かりんのお供え物になった。

 気づいたら空には赤い夕日が登っていて、少女を返さないといけない時間になっていた。

「そろそろ帰らないといけない時間ね。祭り楽しかった?」

「うん、楽しかった。また来年も来ようね」

「そうね。貴方と一緒なら行ってもいいかもね」

「やったー、約束だよ。」

「えぇ、さぁ帰りましょう」

 二人は来た時と同じように手を繋ぎ神社に帰っていく。山道も、朝来た時よりさらに暗くなっているが少女は怖がることなく無事に拝殿前まで戻ってこれた。

「とうちゃーく!!」

「無事戻ってこれたわね。一応言っておくけどこの事は他言無用ね。他の神達にバレたら私がどうなるか……。それに貴方も周りから変な目で見られるから気をつけるのよ」

「大丈夫だよ。誰にも言わないから。また明日もお参りと掃除しに行くからね」

「ありがとう。姿は見せられないけど、待ってるから」

「うん!! また明日ね」

「えぇ、また明日……」

 かりんは、帰る少女の姿を見えなくなるまで寂しそうに見つめている。

「早く、また三月三日にならないかな……」

 ポツリと呟き、ふわっとそこには何もいなかったかのように消えた。

 次の日、雨が降り注いでいた。春時雨だろうか。少女は雨の日だろうが毎日来ることを知っていたので、かりんは、参道を見つめ続ける。だけど、少女は来なかった。こんな事は少女が始めて、この神社に来てから初めてのことなので、かりんは心配したが雨だから来なかったと、自分に言い聞かせ今日を終えた。

 その次の日は、晴れだったがやはり少女は来ない。何日、何十日、何ヶ月待ち続けたが少女は、一日も来る事はなかった。それでも、かりんは待ち続けた三月三日なら、絶対に来てくれると信じて。

 かりんが少女に何があったのか知ったのは、三月三日のことだった。


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[No.11941] 2019/03/10(Sun) 22:53:17 (45118時間45分前)

キスシーンについて (親記事) - ボブ

今執筆中のライトノベルで高校生同士がキスをするシーンがあります。ですが、私は1度もまだしたことがありません。
やっぱり経験しておいた方がいいのでしょうか。


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[No.11940] 2019/01/21(Mon) 19:07:52 (46274時間30分前)

閃乱カグラの二次創作です。感想と書き方がおかしかったら教えてもらえると助かります (親記事) - おっぱい星人

ここは、忍達が身を休める忍寮だ。
寮では暗転時間が過ぎ、少女達は修業での疲れを癒すため、安らかな睡眠をとっていた。
 
 その一方、ある一つの部屋から少女とは思えない大きな鼾が聞こえていた。その主は、葛城であった。
よほど修業で疲れたのか、ハンモックに揺られながら気持ち良さそうに眠っていた。
「んん…ト、トイレ…」
尿意で目が覚めた葛城。
睡魔に襲われながらも、体をふらつかせながら部屋を出てトイレへと向かった。
 
 そして、トイレでの用事を済まし葛城は部屋へと戻ろうとした。
「ハァ〜スッキリした。
それにしても、修業の時に張り切りすぎたかな。
なんだか足が痛むんだよな」
そう言って、葛城は近く壁に手を掛けた。
 
 すると。
『カチッ』
壁の一部が、突然スイッチの様に凹みだした。
「ん…って、なんなんだコレ!壁に…スイッチ?」
あまりにも突然な事だったので、葛城は若干戸惑っていた。
さらに。
『ゴゴゴゴゴ』
なんと壁の面が自動扉の様に横開きになり、中から謎の扉が出現した。
「な…と、扉だと…。」
見たこともない扉の出現に、葛城は驚きを隠せませんでした。
 
 さっきまで睡魔に襲われていたのが嘘かのように、眠気は完全に吹っ飛んでいた。
葛城は、恐る恐る警戒しながらもその扉に手を伸ばしてみることに。
扉を開けてみると、真っ暗で何も見えません。
「寮にこんな隠し部屋が…。一体中はどうなってるんだ」
葛城は非常用にと胸の谷間にしまっていた小型懐中電灯を取り出し、光を照らしてみると。
「こ、この部屋…し、資料室?」
なんと中には、大量の本や辞書、巻物が収納されている棚がいくつもありました。
まるで、小さな図書室のようだ。
 
 「何だか、見たこともない巻物や本ばかりだな。これは、斑鳩のヤツが見たらさぞかし喜ぶだろうなぁ」
斑鳩の事をボソッとつぶやきながら、部屋の中を見て回る葛城。
見て回っていると、足に何かが当たりました。
気づいて灯りを照らしてみると、葛城は、ある一つ本を踏んでいました。
「うわっ、しまった。どこも汚れていないよな。もし汚れてたら弁償し…あれ?この本は…‘ヒーロー図鑑’」
 
 葛城が踏んでいたのは、ヒーローの図鑑であった。
特撮からアニメ、アメコミ、魔法少女など、様々なヒーローの事が綴られている。
「へぇ〜こんなモノまで置いてあるなんてなぁ。しかし、一体誰がこんな所に隠し部屋を⋯他の4人は知ってるのか?」
確かに、もし隠し部屋が見つかったとなるとそれなり報告があってもおかしくないが、他の4人(斑鳩・飛鳥・柳生・雲雀)は勿論、教師の霧夜からもこの部屋の事を教えてもらった覚えがない。
 
 葛城は、『もしかするとこの事を知っているのは、自分だけなのでは』と考えた。
「そうだ!この部屋をアタイだけのプライベートルームにするか。ここにテレビを持ち込んでプロレス鑑賞したり、テレビゲームやったり、それから…」
葛城は、新しい自分専用の部屋が出来たので凄く盛り上がっていた。
 
 「ふあぁ〜(あくび)、トイレ、トイレ」
すると、廊下から一人の少女の声が聞こえた。
声の主は飛鳥だ。どうやら葛城同様、尿意で目が覚めてトイレへと向かっている様子だ。
「げ、あの声は飛鳥。この部屋の事がバレたらまずい」
葛城は、隠し部屋の扉を急いで閉め、飛鳥に見つからないよう近くの物陰に隠れた。
「せっかく気持ちよく寝てたのに。水を飲みすぎたかな」
「ふぅ…間一髪だったぜ」
なんとか、飛鳥に隠し部屋の事を知られず、その場を凌ぐことが出来た。
 
 葛城は、こっそり部屋へと戻った。
「危ない、危ない。あと何秒も遅かったら、隠し部屋の事がバレる、所だった。あと、こんなお宝にも出会えたし」
葛城が胸元から取り出したのは、先程の隠し部屋に置いてあったヒーロー図鑑であった。
「こんなお宝、あそこに置いておくなんて勿体ないなぁ。では、早速」
葛城はヒーロー図鑑を開いき、読み始めた。
「おお、懐かしいな。こんなヒーローいたなぁ。おぉ、こんな裏設定まで」
 
 ヒーロー図鑑には、葛城も知らない裏情報がたくさん詰まっていました。葛城の興奮は、していた。
「そうだ、あのヒーローは載ってるかな。アタイが子供の頃、1番ハマっていたヒーロー…『美少女戦士 ラーメンガールズ』」
 
 葛城は、自分が子供の頃に1番ハマっていたヒーローの情報を探し始めた。
「ラーメンガールズ、ラーメンガールズ。ラーメン大好きな美少女が変身するラーメンガールズ。悪の組織『カムクラ次郎』に立ち向かうラーメンガールズ。どこだ〜、どこだ〜」
葛城は、次々とページをめくり、ラーメンガールズの情報を探した。
しかし、ページをめくればめくるほど表情は暗くなり、とうとう全てのページをめくりきっていた。
その時の葛城は、先程の興奮が嘘のように冷めきっていた。
 
 「ラーメンガールズが…載ってない。何でだよ…あんなに人気だったのに…何でだよ。ヒーロー図鑑なんだろう…コレ」
子供の頃の憧れであったヒーロー、ラーメンガールズは図鑑に載っていなかった。
「何でだよ、嘘だ!これは何かの間違えだ」
葛城が再びページをめくろうとしたその時、本のタイトルを見ると。
「な!お、‘王道 ヒーロー図鑑’…」
なんと葛城は、タイトルに書かれてた‘王道’という文字を見逃していたのです。
この2文字を見た途端、葛城の感情は、怒りへと変わった。
「王道ってなんだよ。ラーメンガールズは、王道じゃないっていうのかよ…何でだよ…一体どうなっているんだよ」
 葛城は、悔しがっていた。
「何が王道ヒーロー図鑑だよ…ヒーローは、王道じゃなきゃいけないのかよ!」
葛城は怒り、ヒーロー図鑑をゴミ箱に投げ捨てた。
「なんなんだよ。あんなのヒーロー図鑑でもなんでもねーよ!」
 
 葛城は、再びハンモックに横になり考えた。
「王道って、なんだよ…ヒーローは王道じゃなきゃいけないのか。いや、そんなこと無いさ。ラーメンガールズだって、世界平和を守るヒーローなんだ」
 
 ラーメンガールズは、葛城の子供の頃の憧れなのであった。
大きくなったら、自分もラーメンガールズになりたいと親に何度も話した事を、葛城は今も覚えています。
 
 「ハァ〜(ため息)、ラーメンガールズは邪道って事か。何で世の中は王道だとか邪道だとか決めるんだ。邪道のヒーローでも、頑張っているんだけどな…まぁ、頑張ってのはわかってるけど、なんか納得出来ないんだよな」
 葛城は横になり、そして悩んだ。
もし、王道ヒーローと邪道ヒーローというジャンルがあるとすれば、皆はどちらを信用するのか、どちらに未来を託すのか…っと。
「アタイがヒーローだったら、どうなっていたかな…」
小言をつぶやく葛城。
 
 すると、彼女は閃いた。
「ん!?アタイが…ヒーロー…ヒーロー…ヒーローに…なる。…そうだ、それだ!!」
何を思いついたのか、葛城はハンモックから起き上がり机に向かいました。
そして、紙とペンを用意して、あるモノを描き出した。何かのコスチュームのようだ。
「王道ヒーローがなんだよ。
もし、ヒーローに王道や邪道があるなら、アタイがその邪道ヒーローになってやろうじゃないか」
 
 なんと葛城は、自分がヒーローになると言いだした。しかも、王道とは逆の邪道ヒーローにと。
「たとえ周りが反対しても、アタイは止まらない。邪道ヒーローだって、世界の為に闘っているんだ。それを知ってもらう。邪道ヒーローだって未来を守れる」
葛城は熱く語りながら筆を進め、気がつけば夜明けの時刻に達していた。
そして、ついに…。
「ハァ、ハァ、ハァ…で、出来た」
葛城の目元には隈が出来ており、息遣いも荒く、今にも眠りそうな状態でした。
 
 「邪道ヒーローの頂点に立ってみせる。アタイが…いやっ『セクハラーメンマン』が…」
 葛城は、コスチュームを描き終えると、そのままぐっすりと眠り始めました。
 
 この時彼女(葛城)は、これから先に様々な試練が襲い掛かってくる事をまだ知らなかった。
これはヒーロー達の、作品の枠を越えた闘いの始まりでもあった。


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[No.11939] 2018/11/18(Sun) 15:27:53 (47814時間10分前)

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[No.11938] 2018/10/02(Tue) 23:54:22 (48933時間44分前)

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[No.11937] 2018/10/02(Tue) 23:53:36 (48933時間45分前)

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[No.11936] 2018/10/02(Tue) 23:52:49 (48933時間45分前)

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[No.11935] 2018/10/02(Tue) 23:52:02 (48933時間46分前)

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